蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【今その拳は何を叩く】Jリーグ 第24節 名古屋グランパス vs ベガルタ仙台 (1-0)【今その瞳は何を睨む】

はじめに

 さあ、いきましょうか。 激動の1週間を過ごしたベガルタ仙台は、瑞穂にいた。暗黒とも呼べる毎日が嘘のように、嘲笑うように、優し気に、青空の、秋晴れの週末。週末の瑞穂だった。掲げられたベガルタ仙台のフラッグが風にたなびく。まさに仙台には、風が吹いてた。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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ゲームレポート

名古屋の変則3バックビルドアップとプレッシング

 ベガルタは、この試合で左サイドに手を加える。ウィングに佐々木匠、フルバックにタカチョーを起用。前節浦和戦で柳、蜂須賀の両フルバックが負傷。WGタカチョーにフルバック起用になったと思われる。DFにアピアタウィア久ことQちゃんが入ったことから、関口、タカチョーをワイドにした3-4-2-1も予想されたが、実際にはQちゃんを右フルバックとした4-4-2でセットアップ。長沢、ゲデスの2FWを基本型とした。

 ディフェンスも変わらず、FWがアンカーを基準として横切りからのサイド限定を主としたプレッシングで連動していく4-4-2ディフェンス。そのままいけば、名古屋の4-4-2とガチ当たりする。ただ、名古屋の自陣ビルドアップには少し変化がある。右フルバックの成瀬は低い位置だが、左のジェソクが高い位置を取る変則3バックのような形になる。また、米本がバックラインへのドロップで、擬似的に3バックを作る。仙台の2人のフォワードに対して、数的に上回った状態でのビルドアップを敢行する。

 仙台は、左WGの匠がそのまま成瀬へ噛み合わせるが、右の関口は、対面するジェソクにつくのか、リスクをとって名古屋の左CB丸山へ前線からのプレッシングを発動するのか選択することになる。開始から15分までは、FW+関口で前線からのプレッシングが成立していたシーンもあったが、だんだんと高い位置をとるジェソクに引っ張られる形で関口がブロックラインに吸い込まれていった。理由は、名古屋のセンターバックには仙台のプレッシングの構造上、わずかに時間とスペースがある。そこから一気にジェソクや、さらに高い位置にいる左WGマテウスへロングキックを蹴りこんで、前線からのプレッシングを物理的に破壊した。自陣深い位置で4-4-2リトリートの展開になったのは、CBへのプレッシング姿勢も見せていた関口が、サイド深い位置で対応するようになってからだった。

 

プレッシング、リトリートでも変わらないセントラルMFの意義

 仙台は、左サイドでも問題を抱えていた。ウィングの匠の背後に入る選手を捕まえられない問題だ。アタッキングMF阿部に加えて、金崎や前田、ポジションチェンジした際にはマテウスなど、最前線アタッカー4人が入り始める。名古屋は、センターバックセントラルMFが最後方から、楔を撃ち続けた。対面する匠も、本来は、ワイドにいる成瀬へのプレッシングをしたいなか、インサイド、中央へのボールもカバーする苦しい展開に。CMF浜崎も椎橋も、匠と横並びでいわゆるホワイトボード上便宜的な「ライン」状態で、匠との間へボールを入れられることを許した。

 匠も、中央をカバーする立つも、今度はワイドの成瀬やウィングへボールを一気に渡され、外側から中央へボールを斜めに刺される展開になる。こうなると、匠も「一旦」低い位置に構えなければならず、右サイドの問題と合わせて、仙台がローブロックとなった要因のひとつとなる。CMFがWGのプレッシングを後方から支え切れていないのはこれまでの試合でも続く課題である一方で、ローブロックを組んでも、いわゆる「バイタルエリア」へ刺すパスへの予測、カバーが弱く、「そこにいるのに何を守っているのか?」というある意味浮いた存在になってしまっているのが致命的だ。

 

スペースを空ける手間が必要無いのなら……

 こうして、ローブロックの時間が長く、カウンター距離も長いため、なかなかボールを持ってからの攻撃に苦労した。後半開始からは、関口のリスクをとったプレッシングや、フルバックに出た先でボールを奪って、FWを中心にトランジションからのカウンター攻撃を見せる。ボール保持攻撃も、名古屋はシンプルに前線4人でプレッシングをかけてきたが、連戦の疲労もあって、セントラルMF、ファイナルラインが追従できていないシーンが多く、「外せば持てる」状態であった。中盤にスペースができたなかで攻撃に圧をかけるも、米本、稲垣の門番2人は「これだけは絶対にやらせない」とばかりに中央へのパスを警戒。仙台としては、チームの狙いでもあるサイドへボールを展開した攻撃に拍車がかかった。

 ただ、カウンターで仕留めきれず、スペースがあっても崩しまでいかない展開で、自陣でのミスで致命的な失点を食らった。ベガルタは、ホルダーが前線の選手にボールを当てて、当てた選手に対して追い越していく前進のサポートをする。そこにもう1人、2人と関係するが、原則は変わらない。オフボールではなく、オンボールでその動き出しなので、ホルダーとレシーバーの2人称攻撃になりがちだ。ホルダーに対して、1人、2人が追い越す、交差することによる前進サポートがあれば、もう少し局面の状況は好転しそうに見える。どうしてもレシーバーは相手DFを背負ってボールを持つことになるので、相手ゴール前の状況が見えないし、ベクトルが後ろになる。なんだかラグビーのような気がする。気がするだけ。それならそれで、やはりレシーバーへのサポートの人数を増やす、サポートで追い越す選手が空けたスペースを再利用するなど、局面局面でもやれることはあると思う。

  

考察

Good!

 いろいろな要素はあれど、機を見て前線からのプレッシングを仕掛けていたこと。

Bad…

 名古屋のセントラルMFとの差が鮮明だったこと。

Next

 守備でも攻撃でももっとプレーに絡むというか、ボールから遠くても連動してほしい。

 

おわりに

 晴れていた。少し風も吹いていた。スタジアムとは元来、そういう場所だ。入場にあたるいくつかの通過儀礼を終え、こと今現在の状況において言えば余計な、いや必要なことではあるのだけれど、サッカー観戦という文脈に限っていえば、どのスタジアムにもある追加検問を終えて入場する。ゲート入口で、スタジアムでは命とパスポートと同価値であるチケットを見せて、スタンド入りする。眼下に広がる緑色の芝。青と白の空。狭いコンクリの世界から、一気に、開放的な世界、オープンワールドが現れる。そんな週末だった。目にするものすべてが灰色になる世界など、この景色の前では無力なのだった。終末世界にだって週末がくる。

 なに、大それたことを書いているが、天気の良い週末に、スタジアムで見た景色は、最高だった、と書きたいだけである。そこで聴く『青春に捧ぐ』も最高だった。そして、試合が始まれば赤い万雷の拍手がベガルタ仙台を出迎え、試合が終われば、送り出してくれた。これもまた、最高だった。もうひとつ、最高を味わえるのなら、それもまた、最高だ。

 

「そいつは素敵だ 大好きだ」こう言ったのは、少佐だ。

 

【赤い涙で覆われた悲しみを】Jリーグ 第23節 浦和レッズ vs ベガルタ仙台 (6-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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ゲームレポート

赤い閃光

  埼玉スタジアム。鬼門である。赤い壁がところせましと、ピッチへ圧をかける。このスタジアムで、ベガルタは勝てていない。天皇杯の落とし物も、このピッチのどこかに転がっている。声のないスタジアム。そんないつもと違う埼スタで、ベガルタは長年続くジンクスと戦うことになる。いや、2つのチームが正面からぶつかり、戦いの火ぶたが早々にも切られることになる。

 ベガルタは、これまでの連戦同様、4-4-2でボール非保持時のセットディフェンスを組む。それに対し、赤い剣闘士たちは、ポジションを入れ替え、攻撃陣形を整える。2CBに左フルバックが加わる変則3バックビルドアップに、右フルバックとウィングが高い位置を取って圧をかける形で攻撃陣形を組んだ。ベガルタとしては、ワイドに高い位置を取るフルバックへ、2人のウィングがカバーする策で対抗するため、バック3となると1人余ることになる。4-4-2DFへ小さなズレを作り、最終的にゴール前で大きなズレにしようとするのが、アジアで最もプライド高く戦う埼玉のチームが吹く、開戦を告げる砲火だ。

 加えて、右フルバック橋岡がインサイド、右ウィングのマルティネスがワイドにと、レーンチェンジの一工夫を加えたうえに、マルティネスがドロップ、橋岡が高い位置を取るダブルパンチで、対面するタカチョー、柳、さらにはセンターバックのシマオにまでその波及効果を及ぼす。逆に浦和左サイドは、飯尾、Qちゃんの背後を狙う興梠、武藤で問題が起きている。中央、左右と、この赤いホームチームは、その色でピッチを染めるかのように、各所でベガルタ陣へと攻撃を繰り出してきた。

 ベガルタとしても、マークの交換やハイラインで対抗するものの、だんだんと着いていけなくなり、ラインも下がるなかでボックス内でボールを持たれれば仕事をされてしまうし、自陣に磔になれば、セットプレーの機会も与えてしまうあるあるな展開に。前半で3点リード。後半開始から飲水までに2点追加で5失点。光よりも速い赤い閃光が、ピッチを切り裂いた

 

翼は、死んだ

 そんなベガルタも、先制を許してからは、ボール保持の時間が増える。椎橋、ワタルのCMFがバックラインにドロップで逆丁字型ビルドアップ。加えて、ウィングがハーフレーンにレーンチェンジ、というよりは、はじめから中央にポジションを移していた。追従して、フルバックが高い位置を取るウィングロールで攻撃をセットアップする。ウィングのいないベガルタにとっては、模造の翼をこしらえ、中央のアタッカーを活かす策に見える。実際、アタッキングMFに入ったクエンカは、ボールホルダー付近へ寄ったり、サイドに流れたりと、フリーロールだった。左ウィングのタカチョーも、逆サイドへ出てくるなど、攻撃はかなり中央に寄りながらポジションは空いているスペースといった具合だった。

 対する浦和は、アンカーを基準にFWが構え、サイドが変わればそのサイドのウィングがバック3の両脇にプレッシングをかける。こうなると高い位置にいるフルバックが空いてくる。特に、ベガルタ左サイドの柳がへボールが周り、浦和右フルバック橋岡が縦に迎撃を強いるシーンは多く見られた。その背後をFWかWGが突くシーンを見せたかったのだけれど、前述の通り、クエンカは自由人。タカチョーも低い位置を取るような動きでなかなか前進できない。こうなると浦和としても、ボールが渡るフルバックへフルパワーでプレッシングをかければ良いとばかりに、浦和両フルバックが強く速く当たる。そうなると、飯尾、柳もボールを保持する時間も余裕もできなくなる。ベガルタのボール移動も、CBからフルバックへの横への移動で、ファイナルライン背後へのボールも少なく、ホームチームがピッチでソファのうえで葉巻をくゆらす展開になっていった。

 また、前線もフルバックもライン間に同列で並ぶだけで、その先が見えない。5手先の未来を見てポゼッションするべきところが、1手先の未来で終わっていたのが、なかなかに問題の根深さを感じた。どのエリアを狙うのか、誰が狙うのか、そのために誰がどこへ動くのか。ボールを持った選手もそうだけれど、88分間ボールを持たないサッカーにおいて、ボールを持っていない選手は「関係ない」で終わるのだろうか。11人に神経が通っていない攻撃で、最後の希望は脊髄反射アタックだけれど、それだって神経が通ってなければ反応できない。 

 

 

考察

Good!

 中央でタカチョーがボールをもってターンしたり、サイドから何かを起こそうとしていた。ゲデスも拍手を送ったり、失点シーンではシマオより声をだして叱咤している。1個1個の記号が、ひとつの式になる、それをゴドーを待ちながら待っている。

 

Bad…

 中央にあれだけ人数を揃えながら中央へ刺せない攻撃。背後を取ろう、出し抜こう、駆け引きしてやろう、仕掛けようというアクションのない攻撃。失点してから、ボールは持っても主導権は持てない。もうポジショナルの魔法は、遠の昔に解けている。魔法が解けているのにシンデレラ気取りをしているのがもっとも愚かだ。ピッチにいる自分たちで解決しなさいが至上命題なら、それを果たすべきだ。たとえ翼が無くても。地べたをはいずり回ってでも。

 

Next

 6失点もして課題も何も無いのだけれど、ではなぜ得点はゼロだったのか。ここを課題に挙げる選手もいる。アンストラクチャに、カオスに、一気呵成がこのチームのつよみなら、その課題をクリアして、目先のミスなんてゴールですべてを解消すればいいを地で行けばいい。何を恐れるというのか。

 

おわりに

 選手の個人的な問題から発展した契約解除。それまでの経営危機、試合結果にさらに追い打ちをかける形で、仙台に、暗黒の1週間をもたらした。もはや試合など、ピッチなどなんだ。そんな同情さえも、受けて当然と思える。それどころではないのが、当たり前というか、正直なところだ。でもこれだけ情けない思いをして、まだピッチの上ですら、やり返せていない。ひとつひとつ、やり返す。失われたものを取り戻す。すべてを奪ったすべてへ。反撃だ。逆襲だ。その一歩目を踏もう。この焼け野原に、闘いの灯が見えるぞ。

 

「天と地のはざまには 奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる」こう言ったのは、少佐だ。

 

 

【振り絞った感情が】Jリーグ 第22節 ベガルタ仙台 vs 横浜FC (0-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。ホーム横浜FC戦のゲーム分析。連戦2試合目。関東から仙台へ、そしてまた関東、しかも埼玉スタジアムという強行軍。耐える展開のなかで、ここユアスタでも圧倒的なポゼッションを武器にする横浜FCが相手になる。1日、1日をどう生きるか。チームから、必死の抵抗が聞こえる。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、前節からセントラルMFに松下が復帰。CBにはシマオに代わって平岡。4-4-2で臨む。

 横浜FCはいつのまにやら4-4-2に。ビルドアップで変形して3-1-4-2のような形になる。左ウィング松尾は馴染みのある仙台の地を踏む。斉藤は警戒するべきアタッカー。六反おかえり!

 

ゲームレポート

4-4-2守備とポゼッション型チームとの噛み合わせ

  横浜FCといえば、かつて山口素弘が選手としても監督としても戦っていた印象が、個人的には強い。下平監督のイメージもあるのか、青年監督がチームを鍛えあげて上位へ連れて行く印象がある。あくまで個人的な印象だ。世界的な流行もそうだけれど、自陣からのビルドアップを精密に設計して、チームの武器にしているのが今の横浜FCというチームだ。通俗的に『持たざる者』と呼ばれるチームが採用する武器が、GK含めたビルドアップと、前線からのプレッシングだ。相手陣と自陣で見合う展開を意図的に作り出して、対面勝ちする戦いは、野心溢れる若手からすると非常に相性が良い。そんなチームと、ベガルタ仙台は、ホームユアスタで連戦2日目に戦うことになる。

 ベガルタは、ゲデス、山田の2フォワードを継続して起用。ボール非保持時には、4-4-2でブロックを組む。前節の川崎戦とある程度同じような展開で進めたい意図か。ウィングも、関口、道渕のワーキングウィンガーを採用。横浜FCのビルドアップは、4-4-2からCMFをドロップさせて3バック化させる逆丁字型に、ウィングがハーフレーンへレーンチェンジするトムキャット型と、前と後ろで可変するシステム。ベガルタとしては、3バックとアンカー化したバックライン、それにともなってワイドに高い位置を取るフルバックインサイドのWGへの対応が争点となる。

 しかし、ベガルタとしては、やはり川崎戦との大きな変化点を避けた印象でゲームを進める。FWは、アンカーロールをカバーしながら、ホルダーにサイド限定のワイパープレスを敢行。その先に、7番と18番の両翼がハーフレーンに突き刺さるパスを警戒しながら、ワイドのフルバックへボールが出ればサイドへスライドして対応する守備が基本型とした。4バックはなるべくペナルティ幅を守り、CMFがレーンチェンジするウィングを見る形。ファイナルラインはなるべく高く、ただし、フロントラインのプレッシャーはハーフライン付近とし、中盤からの押し上げを基調とした。

 こうなると、これもやはり川崎戦同様、相手にボール保持の時間を多く持たせ、自陣でのディフェンスを受け入れざる負えなくなる。関口、道渕のWGがもともと低いことと、中央へのパスをまずは消し込む立ち位置のため、ホルダーの前方付近にはスペースができる。FWのつるべの動きは、4人ビルドアップに対して物理的に間に合わないのは、札幌戦からずっとなのは変わらず、サイドに限定してもホルダーにはある程度の時間が許された。フルバックを警戒しつつ、ホルダーにもプレッシングにいける中間ポジションといえば聞こえは良いのだけれど、結果としてはCMFと横並びのようなポジションになり、結局その間に縦パスを刺されるような展開になる。守備に段差がつかないと、人の羅列になる。ソーシャルディスタンス。

 一方左サイドは、関口が早いタイミングでフルバックの前方を抑えるべく、自陣深くポジション取りをするので、パラを中央に残したまま5バックのような形になる。ただFWのプレスバックが弱いので、左右非対称のいびつな5-3-2のような陣形になり、ボールは持たれ続けてしまう。

 後半になり、これもいつもの展開でハーフタイムに修正が入ったか、ウィングのプレッシング位置が高くなりバックラインへの圧を高める。特に横浜FCフルバックで躍動するマギーニョの背後は、スペースが空いているため、前から圧をかけて中央で奪うと、前線に残るウィングにボールが渡ると一気にチャンスになった。交代で入ったタカチョーのプレッシングとカウンターが修正の効果が顕著だったように見える。連戦のなか、ケガ人が少しずつ帰って来たなか、非常に繊細なチームビルドを要求されているだろう木山ベガルタ。ただどこかでテンションを上げ、陣形を前目に崩さないと、チャンスにならない。崩した状態にしなければ、相手も崩れてくれない、といった具合だ。そのパワーのかけどころがどこかなのだけれど、これはもう後半勝負を覚悟!なのだと思う。

 

中央を避ける攻撃ルート

 ベガルタも椎橋がバックラインに落ちることで、3バック化はするものの、攻撃ルートはフルバックへのU字ルートが基本だった。特にセンターバックがボールを持っても、フルバックへのパスなので、中央へのパスというものがあまり見られない。守備陣形をあまり崩さないで攻撃するベガルタなので、攻撃面で膠着することはある程度想定されるのだけれど、セントラルMF松下の復帰もあるので、今後中央からの攻撃も増やして良い気もする。ただリスク回避で比重としては高くなりそうにないけれど。

 ちなみにボールを奪った瞬間は横浜FCに圧倒され、カウンターが不発。これは川崎戦とも同様。どうもローブロックからのカウンターは、開幕戦の名古屋戦同様、ウィングに縦に速い選手がいないと厳しい印象がある。速いというか、そもそもジャメも前残りしていたので攻撃開始地点が高いというのはある。2FWが一番高い位置を取るなら、サイドに流れるなど、『空いているところを攻める』の基本で攻撃していくことが必要かと思う。このままローブロック4-4-2をするなら。でなければ、エデン・アザールでも獲ってくればいい。 

 

考察

Good!

 横浜FCは自陣から中盤のデザインに特徴があって、ベガルタとしても苦労した部分だと思う。ただ、もっとも大事なゴール前での決定的な仕事はさせず、だんだんと怖さも無くなっていったように見えた。最後にはGKクバが待っているという安心感もありながら、シマオがほとんどの時間不在のなか、リトリートを完遂させたのは良いのかと思う。

 

Bad…

 スコアもさることながら、90分間でも攻撃らしい攻撃を見せられなかった。交代で前線にパワーを出すいつものやり方も、相手からしたら予測しやすかったのではと思う。開始15分受けきったら前に出るなど、時間帯で攻撃型を構築するのが相手に予測されにくくなる、駆け引きになるという点で必要になると思う。

 

Next

 ゲームモデルである攻守においてアグレッシブなサッカーには、正直見えない試合。ただ、この試合、あるいはこの連戦だけではなくて、シーズントータルで、または来季も含めてそれが実現できるのか、実現できる材料を揃えているのかがポイントだと思う。ウィングがいない今、そこに拘ってもやむなしと思う反面、耐えるしかないにしても限界を迎えないような、チームビルドが必要になりそうだ。正直、この日程で、トレーニングもクソもなく、リカバリーとやってきたことの確認、微調整レベルなのだと思う。川崎戦前の1週間でこの連戦を戦う大枠、テーマは決めている(おそらく4-4-2ローブロック省エネ)はずなので、まずはそれを実行して遂行して、できないところは課題として解決する試行錯誤サイクルは回してほしい。

 

おわりに

 まさに半歩、半歩。チームの構造化、機能化を図るうえで、足りないところだらけで。もちろんその過程にはサポーターも入っているわけで。チームの総力は50%も出せていないだろう屈辱的な状態でも走り続けているわけで。こちらとしては、とにかくこれ以上のダメージがなく今季を終え、来季生き残る術を、下地を作ってほしいと思う。2022年にベガルタ仙台J1リーグで戦うことが、目標なのだから。これはチームも、クラブも、当然リーグも同じ文脈である。あらゆる分野で挫けるひとが出るなか、好きなことを仕事にできるプロとして、最後までその半歩を踏み出し続けてほしい。

 

「返すとも、アンタには借りがある!」こう言ったのは、スパイク・スピーゲルだ。

 

参考文献

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【始まりの音に】Jリーグ 第21節 川崎フロンターレ vs ベガルタ仙台 (1-0)【変わるように】

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ川崎戦のゲーム分析。秋の連戦が再びベガルタ仙台の前に立ち塞がる。進撃を続ける絶対王者に、雨の等々力も微笑む。ピッチのすべてを支配された世界で、抵抗を示したのは2人の若者だった。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、前節からの変更で、フォワードに山田、セントラルMFに中原が、センターバックにQちゃんが入る。4-4-2で観た方が良さそう。

 川崎は中2日の強行軍。それでも、今季の異例シーズンで快進撃を続けている。メンバーもターンオーバー気味。家長、齋藤学がいる。ただターンオーバーと呼んでいいのかというメンバーではある。

 

ゲームレポート

FW横でプレッシングを無効化する川崎

  ベガルタが等々力で勝ったのは、およそ9年前、あの「決戦」以来になる。あの試合は、まるで見えない力で勝ったような、いや、「まるで」が余計だ。見えない大きな力で、勝ち取った試合だ。しかも、この試合と同じ、雨だ。あの試合から色んなものが大きく変わってはいるが、また再び、日本を未曽有の危機が押し寄せているのは変わらないのが、今年最も大きな出来事と言える。それでも、9年前もこの日も、雨の等々力で試合ができているのである。2度続けば、それは、奇跡ではなく本当の力である。

 そんな等々力で、ベガルタは4-4-2を披露。ゲデス、山田の2FWに、唯一9年前のピッチに立っている関口が、「左ウィング」に入った。右WGの道渕とのコンビで、サイドを上下動できるワーキングウィンガーを入れることで、川崎の高い位置を取るフルバックを牽制する狙いだ。そんな狙い通りに、4-4の2ラインが中盤を埋め、ファイナルラインは高い位置を取り続けコンパクトさを保つ。ピッチ中央に敷き詰められた4-4-2のブロックディフェンスに、仙台の「血」を感じた。サッカーは、血でも、プレー出来る。

 それでもこのスタジアムの主は、王者たる所以を見せる。2バック+アンカー田中の三角形型ビルドアップをセットしたが、アンカー田中がベガルタのFWに監視されていることを観察して気づくと、この日両インテリオールに入った2つの心臓、中村、大島が門を開こうと行動を開始する。FW横に落ちることで、瞬間的に三角形型から2+2のボックス型を作る。ベガルタはつるべの動きで、ホルダーへのプレッシャーとアンカーへのマークを交換するのだけれど、ホルダー→アンカーに切り替わる継ぎ目を、三角形+1することで狙い撃ちした。これが見事に効果を発揮。ホルダーからボールを受け、間髪入れずにアンカーへボール移動させる。ベガルタのFWはどうしても間に合わない。

 ベガルタも、椎橋、中原のセントラルMFコンビが落ちる14番と10番を追いかけるのだけれど、今度はその背後が空いて来る。加えて、川崎は左サイドで車屋が低い位置を取って擬似的な3バックを形成。なお一層ボールを持つ時間とスペースができる。もちろん、対面する右WG道渕のプレッシャーは織り込み済み。その背後をアタッカー陣が狙っていく様相に。背中を突く。川崎にも、血を感じた。ベガルタとしては、こうなると背後をカバーするしかなくなり、全体としてブロックが下がっていき、自陣に閉じ込められる時間が前半の大半を占めることに。また、ベガルタの左サイドでは、WG旗手がインサイドに、フルバックマテウスが高い位置を取るウィングロールで、パラを中央に押しのけ、関口を低い位置に押し込んだ。ベガルタの4-4-2による中盤からの押し上げは、逆に押し込まれ、だんだんと自陣でその姿を変えざる負えない状態へなっていく。

 それでも、40分間を耐え、同点あるいは最少失点で乗り切って、後半に圧をかける機会を伺うように見える。中2日の川崎は、ポゼッション勝ちしているとはいえ、必ず体力的に難しい局面が出てくる。ポゼッション負けして押し込まれると心が折れるが、折れなければ、相手が折れる。そんな入りだった。

 

同数プレッシングへの修正。上回る車屋

 後半開始から、ベガルタの前線からのプレッシングが反撃の狼煙を上げる。2バックに対して2フォワード、アンカーにはCMF、落ちる中村、大島には片方のCMFがつくことで同数プレッシングを敢行。川崎が自陣からビルドアップしていく、その過程を破壊する策で前への圧を取り戻す。ホームでのゲームの再現も頭にあったのだと思う。ただ、それで壊れる川崎フロンターレなら、こんな順位にいない。ベガルタがビルドアップをぶっ壊すなら、川崎はプレッシングをぶっ壊しにかかる。

 本来フルバック車屋が高い位置を取って、柳とのマッチアップを選択。自陣からのロングキックの受け手となって、ベガルタのビルドアップ妨害を無効化するべく、息継ぎポイントになる。柳も長身でCBも経験はしているのだけれど、このハイボールの競り合いにおいては、車屋が勝ちプレッシャー回避の役割を担う。

 

椎橋とワタルの2人で中盤を破壊する

 リトリートもプレッシングも対応され、リードされた展開を我慢しながら追いつく機会を伺っていた木山ベガルタ。後半中盤あたりから川崎のプレッシャーが徐々に落ちて来る。それと呼応するように、CMF椎橋がバックラインに落ちて、川崎FWによる前線からのプレッシングを回避。また、バックラインから上がる擬似フォアリベロでFWのカバーエリアを操作。椎橋をカバーするなら、フルバックセンターバックに時間とスペースができる。ボールを持たないポゼッション。椎橋が相手プレッシングを操作し、味方のポゼッションを助けた瞬間である。

 それを引き継いだのは、交代で入った田中渉。椎橋が見出したバックラインへのドロップとプレッシャー操作、加えてワタルの長所である左足のキックが炸裂する。ボールを持たなくてもポゼッションできるが、ひとたびボールを持てば、逆サイドへのサイドチェンジキック、中央へ刺すパス、選手間へ侵入するプレーと、雨の等々力のピッチで躍動。中盤から後方をワタルに任せ、長沢、ゲデスの2FW、両フルバックのウィング化と中央へ侵入するウィングで、川崎ゴール前への圧力を高める。終了までの15分間は、押し切っていったベガルタだったが届かず。奇跡は、2度続かない。2度続けばそれは……。 

 

 

考察

Good!

 川崎の中2日日程、5枚の交代枠、リトリートから前線のプレッシング、カウンター、ポゼッション、セットプレーとかとかとか。今持っているものフル動員でかかっていたゲームだったと思う。自らゲームを動かして、相手も動かしてしまうのが、木山ベガルタのひとつの特徴なのだけれど、自らじっと耐え相手も静かにしてしまうのもまた、ひとつの特徴と言えそうだ。相手や日程面など、本来「ゲームプラン」と呼ばれるもの、相手の攻略方法については、やはり引き出しが多い方が良いし、やれないよりやれた方が良いに決まっている。ホームとアウェイ、川崎に対しては、首位を走るチームに対しては、よく実行できたのではと思う。

 

Bad…

 ゲームモデル、チームが描く絵はどうだろうか。攻守においてアグレッシブなサッカーを表現できたのは、少なくとも、多く見積もっても後半、しかも交代で関口がアタッキングMFになったあたりからだ。本来なら、そこで激しい前線からのプレッシング、ライン間・選手間の狭いリトリートブロック、奪ったら相手陣深く突撃していくプレーというのは、1試合を通してどれくらい表現できたのかはチェックしたい。札幌戦、もとよりこれまでの多くの試合でもそうだけれど、ベガルタの場合は自分たちのプレー時間が90分のうち15分間とか30分間くらいで、あとは耐える展開が多い。そうなると、その短い時間を長くするか、短い中で密度を濃くするかになる。この試合においてはもちろん後者なのだけれど、前者の作業も取り組んでいるとは思うけれど、もっと自分たちのプレーを出したいし、長くしたいなと考えている。

 

Next

 難しい日程と開催地で、この3連戦もある程度戦略的に消化していくことが予想される。であればそれでいいので、マックス値を出し続けて、何が出来て何ができないのかをしっかりと確認してほしいと思う。きっとやれることは限られるので、自分たちが描いている絵を表現して、表現するための技術を試合でガンガン披露してほしいし、試してほしい。椎橋とワタルの取り組みは、おそらくその一歩目になりそうな気がする。気がするだけ。

 

おわりに

 やりたいこと、やりたいけれどできないこと、やりたくないこと、やるべきことのすべてが詰まるから、格上との対決は面白いし、自分のサッカー、プレーがより深く高みへと昇華される。できれば、お互い1週間の準備をして、フルメンバーで戦いたいところだったけれどそれはまた別の話。それでも首位の川崎にも、地方クラブが何かを示した、もたらした、影響できたならなお良いと思っている。完璧な状態で、勝敗を雌雄を決するなかで、必ず、この場所で、あの試合のように戦いたいと思っている。

 

「その意志が、全てを変える」こう言ったのは、Unknownだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

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【錆びついていたままの】Jリーグ 第20節 ベガルタ仙台 vs コンサドーレ札幌 (3-3)【扉を打ち破れ】

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ札幌戦のゲーム分析。撃ち破られた前節から1週間。再びコンサドーレ札幌と、北海道の地で戦う。少しずつ取り戻してきた身体で、北の空を羽ばたく。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、前節からGKを小畑に変更。リザーブには、ケガでの長期離脱から復帰したクエンカが入る。

 札幌は、長いボールを使うなど、マイナーチェンジなのかスタイルを模索。それでもバックラインのポゼッション能力は健在。元仙台のミンテがリベロとして進化しているのも感慨深い。左シャドーの小柏は懐ドリブルの使い手で注目。

 

ゲームレポート

ミシャ式へ「つるべの動き」で対応

  北の大地で繰り広げられた壮絶な撃ちあいは、ミシャのチーム特有のビルドアップに対して、ベガルタがどう対処するのかの解答をまずはピッチで表現することで始まった。挨拶代わりというやつである。札幌は、3-4-2-1から、セントラルMFがバックラインにドロップすることで、4-1-5へ可変するいつものミシャ式。対するベガルタは、4-2-3-1。ボール非保持時は4-4-2でセットDFを組んでいく、こちらもいつもの形。あとは、誰が誰にプレッシングするのかの噛み合わせになる。

 まず、ゲデス、関口の2人がセントラルMFをカバーしながら、ホルダーへプレッシングをかける。それを合図に、片方(特に関口)がアンカーロールで残っているセントラルMF(特に荒野)をカバー。2バック化する札幌がボールを移動させると、ゲデス、関口が「つるべの動き」でプレッシング役とカバー役を交換していく。そこからサイドにボールを追いやり、ボールサイドを限定すると、ベガルタのプレッシング網が札幌のボールを絡めとろうとその網を縮めていく。ウィングに入った道渕、西村は、ワイドに広がるセンターバックをターゲットにプレッシングを敢行。同時に柳、パラの両フルバックはフォローに降りるウィングバックをターゲットに、高い位置まで縦迎撃プレッシングで縦へのコースを封鎖。シャドーへのコースをCMFである椎橋、浜崎がカバーするディフェンスで、ミシャ式ビルドアップを妨害する。

 結果として、4-2-4のような形にはなるけれど、札幌には両CB田中、福森と展開力のある選手がいることから、まずはバックラインへの制限をかけたかったのだと思う。前線からのプレッシングがかかれば、呼応して中盤から最終ラインも高い位置を取り、全体としてコンパクトな守備陣形を保てる算段だったのかもしれない。試合開始後、攻撃チャンスもあるなかで、まずまずのスタートを切ったと言っても良かった。あの大技が出るまでは。

 

ボックス型への変更と浮く田中に後手を踏む仙台DF

 札幌も修正を入れる。左CB福森、CBミンテの2バック+荒野、高嶺の2CMFによるボックス型ビルドアップに変更。右CB田中がワイドに開いた変則3バックとも取れる。中央2バック+1アンカーの3人で回すと、ベガルタのゲデス、関口にはコースを切りながら「1人で2人守る守備」をされてしまう。ここを4人にすることで、新しいパスコースを作ることになる。また、セントラルMFフォワード横に顔を出すなど、パスコースを作るための「外す」動きで、ゲデス、関口の「つるべの動き」を無力化。さらには浮いた田中が息継ぎポイントになるので、ベガルタのプレッシングは簡単に嵌らなくなってくる。

 ベガルタも応急処置的に、左WGの西村が中間ポジションをとって、セントラルMFとCB田中を見れるポジション取りをしたり、右WG道渕がCMFのマーク役を担当するなどで対応。ただ警戒している左右CBへのプレッシャーが弱まったこと、シャドーを警戒するCMFが低いポジションを取ることで、前線4人のプレッシング隊背後に大きなスペースを創ることになる。その代償として、先制点は、左CB福森からのロングキックという大技が決まって許してしまった。

 

襲いかかる赤黒とダイレクト志向で取り戻す前進

 ボール回収地点がどうしても高くならないベガルタ。奪ってビルドアップを開始するも、ミシャ札幌精鋭プレッシング部隊の激しいプレッシングを受けた。自陣からのビルドアップが多かったベガルタ。ボールを持つ時間を長くとって、相手のプレッシングを誘発して、アンストラクチャ(陣形が崩れた状態)を作り攻撃チャンスを作るのが目的であるけれど、これが完全に標的にされた形だ。2バック+2セントラルMFに両フルバック、GKを使ってボールを動かすも、ミシャ式と違って大きく立ち位置を動かさないベガルタは、ボールサイドを限定されると、ほとんどマンツーマンのような形でプレッシングをかける札幌に時間とスペースを制限され、次第に窒息していくようになる。

 嵌らない前線からのプレッシング、逆襲の形で前線からプレッシングをかけられ窒息するベガルタ。飲水後から先制点を許し、前半終わりまでは開始直後の様相とは打って変わってしまった印象だ。

 後半から取り戻したのは、ダイレクト志向だ。ボールを持つと、両ウィングが果敢に前進をかける。そこへシンプルにボールをつける形で、ボールの高さを確保する攻撃を見せる。パラ、柳も積極的なプレッシングから前線へ持ち上がる動きを見せ、特に柳は前半なかなか相手陣深くまで侵入できなかったが、コーナーフラッグ付近まで持ち上がるようになる。クロスがカットされてもコーナーキックを確保できるフラッグ攻撃の復活だった。ボールを持っても、持っていなくても前への圧を止めない札幌。ボール保持側が切り替わるトランジション局面で、3バックしか自陣にいないことはある意味代名詞的であって、ベガルタとしても前半のうちからこの代名詞を突きたかったのだと思う。

 後半開始から立て続けに3ゴール奪った流れは、この狙いをよりシンプルに徹底した形だった。逆襲のベガルタ。2点リードを有効に使えば、このゲームは「You belong to me」だった。ただ、自分たちが用意した罠が、間を置かず牙をむく。

 

FWのプレスバック機能不全がもたらす「4-4-0-2」ディフェンス

 後半開始から、ベガルタは選手配置を変更。FWを西村、ゲデスとして、関口を左WGへ変えている。構造的に浮く右CB田中への対処、間延びする守備陣形を考えた時、両ウィングを上下左右に守備で走れる「ワーキングウィンガー」にしたのはある意味納得いく変更だった。ワイドへ張り出すウィングバックを両WGが見て、シャドーをフルバックが監視することで、CMFが極端に低くなる現象を解消しようとするものだった。もちろん、2FWはCMFを警戒して、ボールサイドを限定する。ただ、試合開始後から警戒していた両CBがボールを使って地獄の門を開け始める。

 そもそも、3バック+2セントラルMFの3-2M字型ビルドアップなので、2FWでは物理的に見切れない。なので、限定して制限した先でグループとしてボールを奪っていくことが、ベガルタディフェンスにとっては至上命題となる。4-4のリトリートディフェンスは整理された。ただ、ファーストプレッシャーラインであるFWのプレスバックが効かない。CBからワイドにボールをつけてから、もう一度荒野や高嶺がボールを持っても、西村がそのコースを切れていない、ゲデスが戻り切れないなど、今度はハーフラインとフロントラインの間が空いてきてしまう。さながら、「4-4-0-2」といった具合だ。 

 特にゲデスは、2ゴールを取って仕事完了でアフター5に思いを馳せていたのか、ジョグで自陣に戻るなど、前半ほどの献身さは影をひそめることに。加えて、CBからのロングキックはそもそも制限をかけずにいるので、中央も使われながら大技も使われる非常に危険な状態に。と、考える間もなく立て続けに2失点を食らい同点。3失点目は、GK小畑が若さを見せたとも言えるけれど、そもそもは高い位置をとったWBから、FW背後にできたスペースを使った荒野からの長いボールが起点だ。ゲデスに代わって長沢、西村に代わってタカチョーが入り、最前線に道渕が入ったのはまさにこの部分の手当だと言えるだろう。

 

 

考察

Good!

 前へパワーをかけると、ゴール前に迫って攻撃が危険になることが改めて分かった。あとはその圧をどこでかけるのかにはなるけれど、先制を許すとなかなか大変な作業になる。それでも逆転できる力があるのは証明している。ウィングやフルバック、関口が相手陣深くまで攻め込める攻撃を継続できれば、セットプレーの機会もあるわけで、相手ゴール前でも何かが起こる可能性が増える。

 

Bad…

  試合開始から、札幌のストロングを非常に警戒して、さらにそれへの対処も見せたベガルタ仙台。ライン背後へのボール警戒の比重を高めたことで、変化する札幌のビルドアップへ追従できなかった印象だ。交代から終盤ごろには同数プレッシングを見せるなどしていたけれど、やはり後半開始直後の2FW起用は、より攻撃的な圧力をかけるのと同時に、守備陣形を整える策ではあったと理解する。ゴールを奪えたからなのか、それとも関口の役割はあくまで関口しかできないのか。選手の特徴上難しいのか。チームとして徹底させてきれているのか。やはり選手に任せているのか。などなど、いくつかの疑問が浮かぶ。試合後の木山監督は、メンタリティの部分を出すのも分かる「リード直後の失点」の繰り返しぶりではあるけれど、この試合については2FW起用である程度予測できたのでは、そもそもトレーニングでの落とし込みはやりきれていないのか、関口、道渕しかできないのか。コメントの意図である「リードしたことによる精神的優位をプレーにも活かそう」という試みと徹底で済めば、この話はそれほど難しい話ではなさそうに思えるが……

 

Next

 1点リードされるものの逆転し、そのリードを広げたにもかかわらずドローに終わった。表現したい統率のとれた前線からのプレッシングが生命線であることを証明しているし、相手や状況でどう機能させるのかを突き詰めたいなと。使えるものを使って、試せるものは試して、残りのシーズンを戦ってほしい。まだまだ強豪との対戦も待っているので、何が通じて何が足りないのかを明確にしていければいい。前線のプレッシングを支えるバックラインを高く保ちたい、そのためにはセントラルMFが接着剤になるので、ここが噛み合ってくればと考えている。

 

おわりに

 半歩ずつ進んで、2歩下がってまた半歩ずつ進んでを繰り返している。目指す場所に到達できるのか、その場所からまた次に目指す場所が見えてくる。今は、夏には見えなかった景色が見えているので、このまま歩みを止めないで、進み続けてほしいと思っている。

 

「ただ探しているだけだ。扉をな」こう言ったのは、ヴィンセント・ボラージュだ。

 

参考文献

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【静寂の闇を】Jリーグ 第19節 ベガルタ仙台 vs セレッソ大阪 (2-3)【切り裂くように】

はじめに

 さあ、いきましょうか。ホームセレッソ戦のゲーム分析。逆風吹き荒れる杜の都。クラブの存続をかけた闘いに漕ぎ出すなか、チームは三度、セレッソと刃を向け合う。静かな刺し合い。訪れる歓喜。すべての闇を打ち払うべく、金獅子のフォワードの二撃が、理不尽な世界への抵抗を示す。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、ここ2試合採用していた3-4-2-1から、4-2-3-1に変更。アウェイ限定のフォーメーションだったことを試合後に明かした木山監督。原点のウィングが帰ってきた。右ウィングに道渕、左フルバックにはパラが入る。

 セレッソは、いつもの4-4-2。セントラルMFに藤田ではなく木本、左サイドハーフで攻撃の全権を握る清武はリザーブ

 

ゲームレポート

4-4-2 vs 4-4-2

  アディショナルタイム。桜色の10番が放ったシュートは、鮮やかにゴールネットを揺らす。1週間の準備と関東連戦、逆転の2ゴールを挙げたベガルタ仙台を絶望の底へと叩き落とすのには、十分すぎるほどの、決勝ゴールとなった。ただ、これまで幾度となく味わってきた絶望とは違う。手も足も出ない、ゲームを成立させるので手一杯の情けなさも悔しさでもなく、自分たちが表現したいことのマックスをたった一本のゴールで上回れた悔しさだ。ここまで、戻って来たのである。挑戦できる場所まで。

 ベガルタは、この試合、関東連戦で採用した3-4-2-1、ボール非保持時5-2-3ではなく、4-2-3-1を採用。ボール非保持時には4-4-2で、ゲデス、関口の2人がセレッソのCMFを基準としながら、ホルダーになるセンターバックへプレッシングをかけていく。ボールサイドが決まれば、ウィング-セントラルMF-フルバック-センターバックのユニゾンスクエアで、サイドのボール前進を妨害。セレッソがボールを自陣へと下げるのを合図に、4人のアタッカーがプレッシングの号令をかける。セレッソ陣内に侵入すると、噛み合わせるかたちで同数プレッシングでビルドアップを妨害する。

 セレッソも4-4-2。攻撃の形は、4-4-2の形をある程度維持したまま実行する。ビルドアップも、2+2(CMF+CB)のボックス型。嵌りやすい形でもある。ボールを奪えば、縦への速攻よりは、きちんとプレッシングの波を外しながら、ボールを維持するポゼッション志向。お互いの4-4-2は、前線からのプレッシングとディフェンスに3人、4人と連動する多段守備。加えて、ボールを持って攻撃していくまさに「ミラーゲーム」のようなゲームになった。

 

ドロップで打開を図る両チーム

 膠着状態には、小さなズレが大きなズレを作るのが定石型である。バタフライエフェクト。くしゃみをすればどこかの森で蝶が乱舞する。まずは、ベガルタセントラルMF椎橋が、バックラインへ降りて、セレッソの前線からのプレッシングを外す。場所は、センターバックフルバックの間。左フルバックのパラは、高い位置を取り、左ウィング西村が相手フルバック-センターバック間のゴールに寄り近い位置でプレーすることが可能になる。ビルドアップの押し上げである。

 対するセレッソも、ボックス型ビルドアップから、セントラルMFをバックラインに落ちることで1+3の逆丁字型で噛み合わせにズレを起こそうとする。前半、ベガルタはこの噛み合わなさに、一時撤退を余儀なくさせられる。逆丁字型の影響で、よりワイドで高い位置を取るフルバックに、両ウィングが対応し、ゲデス、関口も1人残ったセントラルMFを監視するとなると、バックラインへのプレッシングが効かなくなる。時間とスペースのあるバックラインから、サイドチェンジのキックやピッチを広く使ったポジショナルアタックが繰り出されるのは、ある意味必然だった。

 ただベガルタも、飲水タイムで問答無用の修正が入る。ゲデス、関口とボールサイドのウィングで同数プレッシング。アンカーロールには椎橋がつき、フルバックにはフルバックが縦に迎撃する顔面ファイアープレッシングで対応。意地でも、前線から圧をかけることに拘り実行した。セレッソは、ベガルタの広く空いたセントラルMF横へ顔を出し息継ぎポイントを作る。こうなると、ベガルタとしてもまずはリトリートとなるが、もちろん前でカットできれば、武器である超ショートカウンターが炸裂する。決してオープンではないけれど、一歩間違えれば刺されるやり取りがピッチ上で繰り広げられた。その口火を切ったのは、本来担当する列から下がるドロップだった。

図1

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前に圧がかからないセレッソの中盤と空いたスペースを有効活用できないベガルタ

 もちろん、セレッソとしては、ベガルタの対応は織り込み済み。すかさずウィングが前線へとプレッシングへ駆け上がり、噛み合わせを維持する。そもそもセレッソの場合は、ウィングがホルダーの縦へのコースを切り、フォワード(特に奥埜)が横パスを制限する立ち位置を取る。そうなると、ホルダーにはバックパスで下げるか、中央のエリアにリスク覚悟でパスを刺すかの選択肢が「あえて」与えられる。バックパスならセレッソのプレッシングトリガーを引くことになるし、中央へのパスは2人のセントラルMF(特にデサバト)が大きな口を開けて待っている。その「縦を切る」ウィングが戦線を上げることになっても、多段守備が維持できている以上は、より前への圧が強まるメリットしかない。いつもの風景になるはずだった。ベガルタフルバックが、インサイドにいなければ。

 ベガルタは、椎橋のドロップと、パラのレーンチェンジの合わせ技で、セレッソのサイドの多段守備を崩しにかかる。右ウィング坂元は、パラへのコースを制限しながら椎橋への圧をかけたいが、肝心のパラはもとのワイドなポジションからインサイドにいる。こうなると、右CMFデサバトも、パラに対応しながら坂元のプレッシングに追従しなければいけないというダブルスタンダードを突きつけられる。また、デサバトには、背後にウィング西村、アタッキングMF関口がオフボールランを繰り出す、そのカバーにもする必要があり、非常に戦術的なストレスフル状態になる。

図2

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 この連戦を6試合(途中交代含めて)で続けているチームの中心であるCMFデサバト。先の戦術的負荷と体力的負荷からか、前線との距離が伸び、コンパクトさを維持できなくなってしまう。ベガルタとしては非常に有利な状態で、戦術的なポジショニングで使えるスペース、奥埜、坂本、デサバトの三角形が間延びしたエリアを有効に使って攻撃したいところ。実際、CMF浜崎がボールを受け、前線へと供給する。ただ、逆サイドのパターンもそうだけれど、椎橋、浜崎のパスの殺傷能力が上がらない。背後に抜けるボールなのか、間受けさせるボールなのか、前線と合わないシーンが見られる。また、非常に基本的なトラップであったり、パスの1本1本がズレるなど、せっかく相手の状況を利用して自分たちでつくったエリアを有効に活かし切れてないように見えた。

 結局、後半にはセレッソのFWが下がり目のポジションを取ることで、全体のコンパクトさを取り戻し、使えるスペースというのは限定されることに。ただし、同点ゴールは逆に時間とスペースができた平岡からの攻撃であり、横も縦も制限がかからないなか、前半から続けたパラのポジショニングとの合わせ技のゴール。だからまあ、サッカーは簡単ではないってことだ。2点目は多少のズレはあったが、最終的には西村のPKを誘発。これは前述の空いたエリアを使えたシーンだったと言える。

 

サイドからの打開

 この試合、膠着する両チームがドロップで時間とスペースを創り、打開を図ったのがサイドだった。お互いコンパクトな4-4-2。ボールサイドに人数をかければ、逆サイドのエリアが大きく空いて来る。セレッソは、バックラインからロングキックを蹴る。また、ベガルタがリトリートすると、セレッソ同様、横パスの制限がかからなくなり、ショートパスでもサイドを変えることができるようになる。

 ベガルタも、左サイドでポジショニング勝ちをして時間とスペースができると、逆サイドを駆け上がる柳に何度もボールを供給。ボールサイドの転換で、チャンスを作り出す。

 

間延びする75分以降

 スタートから、統率の取れた4-4-2ディフェンスだったベガルタ。前線からの圧力を維持し続けようとしていたが、ラインが上がりづらくなってくる。交代も使いながらなんとかプレー強度を維持したまま戦いたかったけれど、同点、逆転と失点を許してします。防戦一方ではなく、ポゼッションでの「回復モード」を設けることで、全体のコンパクトさ、前線からのプレッシングを維持しようと取り組んでいるような気がする。気がするだけ。そのバランスについては、再開後の試合で最もよかったのではと思える完成度だった。それでも、相手が相手なら見逃してはくれないし、一発で局面を打開されてしまう怖さがある。最前線と最終防衛線とを繋ぐのは、中盤だと思うし、全体がコンパクトさを維持しながら前線からのプレッシングを支えるのは、4-4-2であればセントラルMFになるのかなと思う。ロティーナの、セレッソ大阪を見て、なお一層、そう思うのである。

 

考察

Good!

 全体が連動したプレッシング、後手に回らないディフェンス、奪ったらボールを握りながらスペースを創り使う攻撃など、メンバーが入れ替わるなかそれでも十何試合とやってきた積み上げを見せることができた。関東連戦用フォーマットと、ホーム用フォーマットを準備した木山ベガルタ。さすがとしか言えない。しかもそれは決して継ぎはぎパッチワークではなく、きちんとチームの設計図たるゲームモデル、選手の行動指針であるプレー原則をもとに、ズレの修正、個別対策をやってのけた。対策する余裕がないと書いて申し訳ない気持ちしかない。

 

Bad…

 中盤のスペースしかり、75分以降のゲームコントロールのところもそうだけれど、やはり自分たちでつかみ取ったチャンスやペースを活かし切ってほしいと思うし、そのために血みどろの努力をしているわけで。もちろんそれはこれからの課題であって、これはまだ、まだ一歩に過ぎないのだと思う。やるべきことをやってきたチームなのだから、これからもきっと変わらず続けていけばいい。

 

Next

 先鋭的でポジショナルなサッカーを披露し、4-4-2のコレクティブディフェンスを見せた渡邉前監督は、そのサッカーとは裏腹に、非常に「人間臭い」チームだったように思える。西村、野津田、奥埜、板倉、富田、道渕、関口、シマオなどなど。チームとして表現することが変わっても、どこか選手個人が輝くような、逆を言えば、そこが突き抜けられなければ、青天井を迎えてしまうなど。その分、木山監督のサッカーはどこかドライで、システマチックで、冷徹さを感じるかもしれない。ただ、1人いるいないが大きな影響を及ぼし、チームがやれることにまで影響するようなことはなく、チームの設計図であり、目指すべき絵がこのチームの主役だ。この明確な絵を選手がみんな共有して、輝くからこそ、西村はゴール後に芝生の上を滑りゴローと抱き合い、パラは胸を叩いて吠えたのである。どちらかが良い悪いなんて当然ない。どちらも、良いのである。

 

おわりに

 さて、いろんなことが今のベガルタを取り巻いていて、正直試合どころじゃねえって言う感想もあるかと思う。けれどそれは、これまでもずっと言われてきたことであって、今年はさらにあのクソッタレが世にはびこっていることもある。 必ず訪れる災難には必ず立ち向かう必要があって、やってくる試合にもまた、立ち向かわなければいけない。そんなことを考えられるくらいに、この日のチームは最高だったし、サッカーに神様がいるって信じたくなる結果にはなったけれど、彼らの良い挑戦を微力ながら支える三下の三下として、また進みたいと思っている。

 

「Always be yourself, express yourself, have faith in yourself, do not go out and look for a successful personality and duplicate it.(常に自分らしくし、自分を表現し、自分を信じろ。どこかの成功者のお手本なんてマネするな)」こう言ったのは、ブルース・リーだ。

 

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【矛盾だらけの世界を】Jリーグ 第18節 横浜・F・マリノス vs ベガルタ仙台 (3-1)【その手で撃ち放て】

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイマリノス戦のゲーム分析。新たなフォーメーションで、かつての輝きを取り戻しつつあるベガルタ仙台。王者相手に、真正面から飛び込んでいく。降りしきる雨のなか、無数の弾丸が飛び交う。長く続く苦闘に、自分を取り戻すことができるか。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、前節同様、3-4-2-1で守備時には5-2-3でセットする形。スタメンは9人を変更。中2日の完全に頭が狂ってる日程に対応するためのローテーションだ。対マリノスかどうかは別として、先週1週間でゲームモデル、プレー原則の確認は済ませているはずなので、メンバーが変わっても表現できるはず。

 マリノスもなんと3-4-2-1。ベガルタ戦の前から変更はしているけれど、王者にも色々あるんだあと思った。喜田名人がリベロ。どっちのジュニオールか迷うようになった柏から獲得したジュニオール・サントスがセンターFWを務める。鬼のような連戦でも、マリノスもやること、表現したいことは変わらない。

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • 『蹴球仙術メソッド』を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • 文章の伝わりやすさから、便宜的に、『攻撃・守備』を使用。
  • ボールを奪ってからの4秒間をポジティブトランジション、ボールを奪われてからの6秒間のネガティブトランジションとしている。

ボール保持時

コレクティブな超ショートカウンターの復活

 ベガルタの狙いは、復活したプレッシングからの超ショートカウンター。敵陣、いや相手ゴール前でボールを奪い、一気にゴールまで迫っていく。 また、ハーフラインでボールを奪っても、その姿勢は変わらず。マリノスのDFライン背後を狙う前線へ、ダイレクトにボールをつけていく。特にマリノスは、極端にハイラインを敷くのと、ボールを奪われた後、WBが高い位置でカウンタープレスからの即時奪回を試みるので、3バックの横にスペースができる。ベガルタは、両シャドーがこのスペースを狙うのを第一優先とし、兵藤、中原のセントラルMFが3列目から飛び出していくプレーも見せる。また、飯尾、パラの両WBも、対面するWBを引きちぎりながらスペースへランニングする。

図1

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 3-4-2-1と最前線は、ゲデスのセンターFWのみだけれど、後列のシャドーやCMF、WBが同じくらいの高さへランニングするのは非常に攻撃力がある。特にラインを上げて、ボール周辺の密度を高めたいチームにとっては、そのコンパクトさをランニングで引きちぎられる。マリノスも、特に右WB水沼にとっては背後のスペースを気にしながらだったので、対面したパラも水沼のパワーをすべて受けることを避けながらプレーできたように見える。相手陣への侵入回数も多く、ボックス内へも果敢に仕掛けた。

 

ボール非保持時

復活した前線からのプレッシング

 ベガルタ同様、3-4-2-1の布陣で挑んだマリノス。ビルドアップについても、たとえばCMFがDFラインに降りるなどの可変を見せることなく、ある程度陣形を維持したままビルドアップする強気の姿勢。王者の風格。覇道を行くとはこのことだ。そんなマリノスに対して、我らベガルタ仙台は、試合開始から顔面にプレッシングを浴びせる。

 ベガルタのDFは、5-2-3の守備陣形で、そのままマリノスの陣形に噛み合わせるように、オールコートマンツーマンさながらの前線から攻撃的なプレッシングを展開。敵陣でボールを奪取してしまう策だ。リーグ再開後、4-3-3の陣形からのプレッシングは大きな驚きと、手ごたえを感じたのは記憶に新しい。木山さんのコメントの通り、形は違えど、自分たちの原点に戻ってきた形だ。  マリノス3-2のM字型ビルドアップに対して、ベガルタも強気の姿勢で対抗。そのまま数を合わせて、プレー時間を制限することに。サポートに降りるWBに対しても、パラと飯尾の両WBが果敢にプレッシングをかけていく。マリノスが後ろ向きなら、ベガルタは前向きに守備ができるし、奪えば攻撃方向と身体の向きが一緒なのも、攻撃のスピードアップへの貢献も大きい。

図2

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 そんなこんなで、前線からのプレッシングからゲデスの先制点が生まれる。中央で嵌り切らなくても、サイドで、シャドー、CMF、WBが三角形を作って、縦にスピードアップさせない。また、前プレした背後へも簡単にボールを出させなかった。加えて、マリノスのシャドーに対しては、柳、平岡の両CBが中盤まで降りる2人に徹底マーク。「地の果てまでマーキング」で簡単に仕事をさせなかった。柳はサイドの選手ながら、強さと速さを買われ、マルコス番としての役割を果たすことに成功。連戦の疲労やピッチコンデイションなどもあるのか、マリノスのプレースピード、パススピードがアップしないこともあって、出足勝負に勝つことになる。

 

押し込まれるDFラインと前から行きたい前線

 ただ、そんなマンツーマンDFも長くは続かない。マンツーマンのデメリットは、相手がマークを外そうと動くので攻撃がテンポアップすること、人についていくので背後を裏抜けされることがあり、DFしているのに相手の攻撃がどんどん良くなっていくことがある。さらに、相手も時間経過とともにマークに「慣れ」が生まれる。それでも、ボールが出た先やマークする選手で相手を上回ることが重要になる。柳がDFラインを離れてDFするような大胆さが必要になる。ただ、マリノス絶対王者として、ベガルタDFを攻略しにかかる。

 2人のシャドーが中盤まで降りるようになり、ベガルタのマークにズレが生まれ始める。さすがに、柳も平岡もハーフライン付近まで毎回行くのはためらったのか、DFラインに留まるようになる。ただしこれには、マリノスの両WBが空いたスペースを突くような裏抜けのランを何度か見せていたので、パラと飯尾がかなり難しい対応を強いられていたことも関係している気がする。気がするだけ。そんな関係性のなかで、シャドーへのマークを引き継いだのは兵藤と中原のCMF。相手CMFへはゲデスを中心としたボールサイドのシャドーが担当することになる。こうなると、マリノスのバックラインに時間とスペースが生まれる。また、CB間の距離も、試合開始直後は近い距離だったけれど、ワイドに広がることで、ベガルタの3FWのプレッシングを分散。シャドーが前線からプレッシングをかけるのか、全体としてリトリートするのか、その辺りの意思統一に微妙なズレがあるなか、前半のうちに同点を許したのは痛かった。

図3

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 ハーフタイムを挟んだり、選手を交代することで、前から圧を取り戻すベガルタ。荒れたピッチに、ボールスピードが遅くなったり、コントロールに手間取るようなら、前線3人とWBが試合開始直後のように、リーグ再開直後のように、前へ前へとプレッシングする。ただ難しかったのは、バックラインが追従してラインを高くし、全体をコンパクトにできなかったことだ。プレッシングにおいて、人口密度を維持して「次から次ディフェス」を仕掛けるのがひとつ重要であって、DFラインも前線のプレッシングに呼応する必要がある。ただ、試合経過の疲れや選手の特徴、再三マリノスがライン背後を裏抜けしてくる(CMFの裏抜けも)ので、そう簡単にはいかないのかなとも思う。

 

考察

前線3-2のプレッシング

 鹿島戦の記事で、5バックの世界線については触れていたけれど、実際には少し違っていた。3人のFWは維持したまま、CBを3人にすることで背後のスペースをカバーする策を取った。5-2-3で前線からのプレッシングを蘇らせた。さすがである。前線でのプレッシングは、センターFWとシャドー、セントラルMFの3人が挟み込んでいく形だし、中盤に押し下げられたら、シャドーとセントラルMFが横と中央を切り、WBが縦を封じていく。ピッチ各所に三角形を作って守ることで、相手の侵入を抑える。その形が最も出るのが、現状5-2-3ということになる。背後を気にするな!は、口で言うのは簡単だけれど、たしかなロジックと実際的な方法論が無いと、すぐに破綻してボールを蹴り飛ばされ、サッカーコートはこんなにも広いんだということを嫌というほど味わうことになる。プレッシングに行く選手の背後のカバーが弱点だった4-3-3に対して、WBやCBなど、5バックが強力にカバーするのであれば、前からの圧というのは消えることは無いと思う。

 

「コンパクトさ」か「スペースのカバー」か

 とはいえ、3失点目のシーンは、バックラインがパラのプレスを合図にラインアップしていたらと思うし、アンカーがいれば1失点目も、3失点目も無かったのではと、「たられば」を考えてしまう。どちらのアプローチでも良いのだけれど、前線の「プレッシング隊3-2」を支えるための策は、今後も必要になりそうだ。そこに手が入らないと、CMFの位置が低くなって、全体が低い位置に5-4-1の壁を立てることになる。この試合で、柳がどこまでもマルコスをマークしていたように、やり切ることが大事になってくるのかなとも思っている。

 

連戦の先に

  個別対策を立てるのは難しいなか、プレー原則でどこまで戦えるかが重要になる。マリノス戦も、落ちるシャドーにどこまで対応するのかや、東京戦みたいにCBの横に落ちる三田へのマークなど、「対策の対策」まで正直手が回っていないのだと思う。だから、やり続けることが重要で、フォーメーションやチームの性格もあって完全に噛み合ったマリノス戦のようにならないこともあると思うけれど、自分たちのマックス値をとにかく出し続けてほしいと思っている。

 

おわりに

 貫くところに戻って来た感のあるこの2試合。絶望の連戦に、少しではあるけれど、陽の光が射しはじめる。雨の関東。ハレとケ。次は仙台で。勝ててないホームで。輝き。次節、9月、最後の試合である。

 

「I fear not the man who has practiced 10,000 kicks once, but I fear the man who has practiced one kick 10,000 times.(わたしは一万種の蹴りを一度だけ練習した男は怖くないが、一つの蹴りを一万回練習した男は恐ろしい)」こう言ったのは、ブルース・リーだ。 

 

参考文献

sendaisiro.hatenablog.com

sendaisiro.hatenablog.com
sendaisiro.hatenablog.com

www.footballista.jp

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birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

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www.amazon.co.jp

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silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com

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