蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【今その拳は何を叩く】Jリーグ 第24節 名古屋グランパス vs ベガルタ仙台 (1-0)【今その瞳は何を睨む】

はじめに

 さあ、いきましょうか。 激動の1週間を過ごしたベガルタ仙台は、瑞穂にいた。暗黒とも呼べる毎日が嘘のように、嘲笑うように、優し気に、青空の、秋晴れの週末。週末の瑞穂だった。掲げられたベガルタ仙台のフラッグが風にたなびく。まさに仙台には、風が吹いてた。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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ゲームレポート

名古屋の変則3バックビルドアップとプレッシング

 ベガルタは、この試合で左サイドに手を加える。ウィングに佐々木匠、フルバックにタカチョーを起用。前節浦和戦で柳、蜂須賀の両フルバックが負傷。WGタカチョーにフルバック起用になったと思われる。DFにアピアタウィア久ことQちゃんが入ったことから、関口、タカチョーをワイドにした3-4-2-1も予想されたが、実際にはQちゃんを右フルバックとした4-4-2でセットアップ。長沢、ゲデスの2FWを基本型とした。

 ディフェンスも変わらず、FWがアンカーを基準として横切りからのサイド限定を主としたプレッシングで連動していく4-4-2ディフェンス。そのままいけば、名古屋の4-4-2とガチ当たりする。ただ、名古屋の自陣ビルドアップには少し変化がある。右フルバックの成瀬は低い位置だが、左のジェソクが高い位置を取る変則3バックのような形になる。また、米本がバックラインへのドロップで、擬似的に3バックを作る。仙台の2人のフォワードに対して、数的に上回った状態でのビルドアップを敢行する。

 仙台は、左WGの匠がそのまま成瀬へ噛み合わせるが、右の関口は、対面するジェソクにつくのか、リスクをとって名古屋の左CB丸山へ前線からのプレッシングを発動するのか選択することになる。開始から15分までは、FW+関口で前線からのプレッシングが成立していたシーンもあったが、だんだんと高い位置をとるジェソクに引っ張られる形で関口がブロックラインに吸い込まれていった。理由は、名古屋のセンターバックには仙台のプレッシングの構造上、わずかに時間とスペースがある。そこから一気にジェソクや、さらに高い位置にいる左WGマテウスへロングキックを蹴りこんで、前線からのプレッシングを物理的に破壊した。自陣深い位置で4-4-2リトリートの展開になったのは、CBへのプレッシング姿勢も見せていた関口が、サイド深い位置で対応するようになってからだった。

 

プレッシング、リトリートでも変わらないセントラルMFの意義

 仙台は、左サイドでも問題を抱えていた。ウィングの匠の背後に入る選手を捕まえられない問題だ。アタッキングMF阿部に加えて、金崎や前田、ポジションチェンジした際にはマテウスなど、最前線アタッカー4人が入り始める。名古屋は、センターバックセントラルMFが最後方から、楔を撃ち続けた。対面する匠も、本来は、ワイドにいる成瀬へのプレッシングをしたいなか、インサイド、中央へのボールもカバーする苦しい展開に。CMF浜崎も椎橋も、匠と横並びでいわゆるホワイトボード上便宜的な「ライン」状態で、匠との間へボールを入れられることを許した。

 匠も、中央をカバーする立つも、今度はワイドの成瀬やウィングへボールを一気に渡され、外側から中央へボールを斜めに刺される展開になる。こうなると、匠も「一旦」低い位置に構えなければならず、右サイドの問題と合わせて、仙台がローブロックとなった要因のひとつとなる。CMFがWGのプレッシングを後方から支え切れていないのはこれまでの試合でも続く課題である一方で、ローブロックを組んでも、いわゆる「バイタルエリア」へ刺すパスへの予測、カバーが弱く、「そこにいるのに何を守っているのか?」というある意味浮いた存在になってしまっているのが致命的だ。

 

スペースを空ける手間が必要無いのなら……

 こうして、ローブロックの時間が長く、カウンター距離も長いため、なかなかボールを持ってからの攻撃に苦労した。後半開始からは、関口のリスクをとったプレッシングや、フルバックに出た先でボールを奪って、FWを中心にトランジションからのカウンター攻撃を見せる。ボール保持攻撃も、名古屋はシンプルに前線4人でプレッシングをかけてきたが、連戦の疲労もあって、セントラルMF、ファイナルラインが追従できていないシーンが多く、「外せば持てる」状態であった。中盤にスペースができたなかで攻撃に圧をかけるも、米本、稲垣の門番2人は「これだけは絶対にやらせない」とばかりに中央へのパスを警戒。仙台としては、チームの狙いでもあるサイドへボールを展開した攻撃に拍車がかかった。

 ただ、カウンターで仕留めきれず、スペースがあっても崩しまでいかない展開で、自陣でのミスで致命的な失点を食らった。ベガルタは、ホルダーが前線の選手にボールを当てて、当てた選手に対して追い越していく前進のサポートをする。そこにもう1人、2人と関係するが、原則は変わらない。オフボールではなく、オンボールでその動き出しなので、ホルダーとレシーバーの2人称攻撃になりがちだ。ホルダーに対して、1人、2人が追い越す、交差することによる前進サポートがあれば、もう少し局面の状況は好転しそうに見える。どうしてもレシーバーは相手DFを背負ってボールを持つことになるので、相手ゴール前の状況が見えないし、ベクトルが後ろになる。なんだかラグビーのような気がする。気がするだけ。それならそれで、やはりレシーバーへのサポートの人数を増やす、サポートで追い越す選手が空けたスペースを再利用するなど、局面局面でもやれることはあると思う。

  

考察

Good!

 いろいろな要素はあれど、機を見て前線からのプレッシングを仕掛けていたこと。

Bad…

 名古屋のセントラルMFとの差が鮮明だったこと。

Next

 守備でも攻撃でももっとプレーに絡むというか、ボールから遠くても連動してほしい。

 

おわりに

 晴れていた。少し風も吹いていた。スタジアムとは元来、そういう場所だ。入場にあたるいくつかの通過儀礼を終え、こと今現在の状況において言えば余計な、いや必要なことではあるのだけれど、サッカー観戦という文脈に限っていえば、どのスタジアムにもある追加検問を終えて入場する。ゲート入口で、スタジアムでは命とパスポートと同価値であるチケットを見せて、スタンド入りする。眼下に広がる緑色の芝。青と白の空。狭いコンクリの世界から、一気に、開放的な世界、オープンワールドが現れる。そんな週末だった。目にするものすべてが灰色になる世界など、この景色の前では無力なのだった。終末世界にだって週末がくる。

 なに、大それたことを書いているが、天気の良い週末に、スタジアムで見た景色は、最高だった、と書きたいだけである。そこで聴く『青春に捧ぐ』も最高だった。そして、試合が始まれば赤い万雷の拍手がベガルタ仙台を出迎え、試合が終われば、送り出してくれた。これもまた、最高だった。もうひとつ、最高を味わえるのなら、それもまた、最高だ。

 

「そいつは素敵だ 大好きだ」こう言ったのは、少佐だ。