【ベガルタ仙台】オーバーライド【2024チーム編成分析】
はじめに
今回は、2024シーズンのベガルタ仙台のチーム編成について分析していく。クラブは、森山佳郎(ゴリさん)を監督に迎え、チームを刷新した。GM庄子春男のコンセプトは、①平均年齢を若くする、②生え抜きを多くする、ことだ。今季の戦略は、プレーオフ圏内に位置しつつ、昇格を狙う。実績のある選手が抜け、一回りパワーダウンしているが個人の成長、能力開発でダウン幅を小さくする、むしろアップするのがゴリさんの狙い。そんなこんなで、観ていきます。では、レッツゴー。
選手編成について
GK
背番号 名前 Name 生年月日
1 小畑 裕馬 Yuma OBATA 2001/11/7
21 梅田 陸空 Riku UMEDA 2000/10/27
29 松澤 香輝 Koki MATSUZAWA 1992/4/3
33 林 彰洋 Akihiro HAYASHI 1987/5/7
DF
背番号 名前 Name 生年月日
2 髙田 椋汰 Ryota TAKADA 2000/6/10
5 菅田 真啓 Masahiro SUGATA 1997/6/28
19 マテウス モラエス MATEUS MORAES 2001/3/6
20 知念 哲矢 Tetsuya CHINEN 1997/11/8
22 小出 悠太 Yuta KOIDE 1994/10/20
25 真瀬 拓海 Takumi MASE 1998/5/3
39 石尾 陸登 Rikuto ISHIO 2001/8/7
41 内田 裕斗 Yuto UCHIDA 1995/4/29
MF
背番号 名前 Name 生年月日
8 松下 佳貴 Yoshiki MATSUSHITA 1994/3/3
10 鎌田 大夢 Hiromu KAMADA 2001/6/23
11 郷家 友太 Yuta GOKE 1999/6/10
14 相良 竜之介 Ryunosuke SAGARA 2002/8/17
17 工藤 蒼生 Aoi KUDO 2000/5/31
23 有田 恵人 Keito ARITA 2002/1/24
24 名願 斗哉 Toya MYOGAN 2004/6/29
27 オナイウ 情滋 George ONAIWU 2000/11/11
31 工藤 真人 Manato KUDO 2001/5/7
37 長澤 和輝 Kazuki NAGASAWA 1991/12/16
50 遠藤 康 Yasushi ENDO 1988/4/7
FW
背番号 名前 Name 生年月日
7 中島 元彦 Motohiko NAKAJIMA 1999/4/18
9 中山 仁斗 Masato NAKAYAMA 1992/2/6
28 菅原 龍之助 Ryunosuke SUGAWARA 2000/7/28
30 西丸 道人 Minto NISHIMARU 2005/6/15
98 エロン ERON 1998/7/16
基本フォーメーション:《4-4-2》
攻撃時:《3-4-2-1》
守備時:《4-4-2》
基本的なゲームの進め方
①4-4-2ミディアムブロック
②中央を圧縮してボールをサイドへ迂回させる。
SBの迎撃をトリガーに1v1局面を作り出し、ボール周辺の密度上げ相手の時間を削る。
ファイナルラインは1+3チェーンの関係性。
③サイドで奪えれば一気にカウンター。
無理でも相手にボールを下げさせて、そこから全体がプッシュ。
相手のベクトルを後ろ向きにして自分たちは前掛かりになる。
ボール移動で相手が手間取るなら、サイドに迂回させる前からゴリさんはプレッシングゴーをかけさせる。
④自陣からのボール出し
相手プレッシングを引き込んで逆サイドのFWあるいはウィングがボールサイドまでフォロー。
4v4や3v3のフリーマンとして出没して、逆サイドへの解放役を担う。
順サイドを単突破は常に狙う。
⑤中盤からの押し上げ
ポジションチェンジでズレを作って攻撃。
基本的には相手の背後狙うので、FWの外流れがキーになる。
無理はせず順サイドの突破が難しいなら、ファイナルラインをU字移動で逆サイドから攻撃再開。
考察
まずマクロでいくと、きわめてオーソドックスな4-4-2でありながら、「ミディアムブロックでステイ」「相手のミスをきっかけにプレッシングスタート」「リトリートから相手の背後や逆サイドへの解放」など、「攻守の切り替え」がコンセプトにあるゴリさんのチーム。状況の把握、状態の認知、コンセプトに即したプレーの実行が必要で、味方1人がミスをしても全体が瓦解する危険性がある。キャンプスタートから、ゴリさんは「ミスを恐れず前からいって圧力を高めろ」といった趣旨の発言を選手たちに投げかけている。ひとつのミスが命取りになるからこそ、ミスを恐れず前に出ろということだと解釈している。なるほど。育成のひとらしい禅問答のようなコメントである。いずれにせよ、コンセプトに沿ったチームプレーが必要だと感じる。
各論でいけば、前後左右のスプリントは必要で、特にサイドの選手の負荷量は高くなるだろう。右サイドは、小出、真瀬、髙田、ジョージ、有田、郷家、遠藤と厚めの構成なのがそれを表している。左はややテクニカルなタイプで名願、相良がウィング候補で、バックスは内田、サイズとサイドへのカバーを苦にしない知念が候補になる。そこに石尾、ジョージが左右の兼用で試されている印象。そもそも左サイドは手薄だ。あと、攻撃時に3-4-2-1になるため、左SBはバック3化可能なタイプが必要になる。正しいポジションと機を見て加勢できる高い認知能力が必要で、現状内田のレベルが高い。
一方で、右ウィングやFWに1人は10番タイプを置きたがるゴリさん。背後を使うから手前でプレーできる、膠着した状況で打開できる、5秒ほどのカウンター局面で決定的なプレーができる選手が欲しいといった思想。いわゆるエキストラキッカーの存在だ。中島、郷家、遠藤がFWと右ウィングで第一候補グループになるだろう。新加入の有田も、ボールキャリーのスピードが速いだけでなく、ボール保持時もハーフスペースや逆サイドへのインバートを苦にせず、狭いエリアでもボール操作できる。後方の右SBが真瀬や髙田といった、ワイドに高い位置までプレーするハードワーキングタイプなのでウィングの中央でのプレーは必須だ。右サイドで逆サイドのアングルが使える遠藤康は、個人的に推したいところ。キャプテンだし。
ある意味ストロングになるだろうサイドの選手には、ボールを持っても持ってなくてもプレーできそうな選手が揃っている。一方、センターラインをどれだけ固められるかが重要になってくる。
まずはセントラルMF。昨季の実績から、鎌田、長澤が筆頭なのかもしれない。ただひとつ懸念は、ボールを奪う真の6番タイプが不在なところだ。本来、鎌田も長澤も4-3-3のインサイドMFの方がプレーしやすく8番に近い。17番を後継した工藤蒼生に期待がかかるが、シーズン通したパフォーマンス維持をどれだけ実現できるか。工藤真人もボールを奪い展開できるタイプ。ゴリさんのセントラルMFは、ボールを奪うと縦に刺すコンセプトがある。展開より奪って縦に刺すプレーまでをシームレスにできるかがキーになりそうだ。そういう意味では、松下のようなMFは重要になる。重要になるが、チームプレーのコンセプト(味方や状況を度外視したプレーをしないか)と彼の良さがどれだけ共存するかは、まだ分からない。
次はCB。菅田、マテウスとサイズと体重のある選手が揃っている。知念、小出と機動性のあるタイプもいるので、コンビを組みやすい選手同士がスタメンに名を連ねそう。SBの縦迎撃に呼応して、サイドへのスライドが必須になるCB。縦への強さがあった菅田と小出は、横へのカバーでどれだけプレーができるか。横の移動なら知念に一日の長がある。まずはやりたいことをやりたいで、開幕からは機動的な構成でバックスが組まれるかもしれない。ただ、どうしてもリトリートして耐える展開もあるはずなので、構えられる菅田、マテウスの連携を高めていってほしいと思う。
GKだけが昨季と同じ。林の守護神は変わらないだろう。ポゼッションではなく、攻守の切り替えを発生させるようなロングキックを蹴るのが彼の特徴だ。たとえタッチランを割っても、相手のスローイン=自分たちのプレッシングでリスタートできるという、非常に割り切ったドライなマインドができている。2nd GKは小畑のようにも思えるが、梅田、松澤が割って入ってきそうだ。意外と小畑は在籍4年の古参なのだけれど、ポジションを取り切れていない。クバや林といった名GKの壁はあったにせよ、昨季のチャンスを活かせていない。ゴリさんのもと、角度の高い成長曲線が求められる。
最後にFW。ここは難しい。正直横一線のように思える。FWの一席はさっき書いた通りエキストラキッカーが入る可能性が高いので、中島か郷家が入るとすると実質FWの椅子はひとつしかない。外流れできる機動力、押し込んだあとのクロス攻撃で機能するとなると中山大観音は第一候補に思える。菅原が中山を追いかけるような形か。エロンはキープできそうな印象をキャンプで与えている。ミディアムブロックでDFする際に、サイドへボール移動されたあとリポジションできず、中央の密度を下げていた。DF時のプレーがどれだけできるかがキーになりそう。攻撃のプレーは上手さがあると思う。そして期待の30番西丸。非常に利他的なFWで左右への外流れでボールを引き出し、味方を押し上げ、最後のゴール前には相手の認知の外側から飛び込んでくる。利他的なプレーができる選手が少なかったので、武器になりそうだ。新加入の若手選手みんなに言えるが、オフボール時のプレーにもぎこちなさがなく、プレッシングをかわされてもすぐに方向転換して制限をかけていく。西丸もそう。フィジカルを鍛え、プロのスピードに慣れ始めるとこれも武器になる。
スタメン予想
最後に全体像を確認。やはり、セントラルMFがやや薄く感じるか。利き足の都合で松下、工藤真人は左に置いているが、タイプ的には8番タイプの鎌田、長澤側に組み分けされるだろう。左ウィングは、正直やれる選手もやりたい選手もいるのでそこまで問題ではなさそう。競争力のあるポジションは右ウィング、右SBと予想。その競争力がそのままチームの躍進の原動力となればいい。いずれにせよ、どのポジションも競争があってポジションを確約された選手はいないはず。
ちなみに下図は、これまで観た試合やキャンプの練習試合でのプレーを考慮して、実績や年齢をある程度ミックスさせた形でスタメンを組んでみた。個人的に名願に注目。練習試合では、ロングボールのコントロールがうまく相手DFと正対できていたので、たとえば右サイドからのボール解放先になって一気にカウンターを仕掛けられそうだなと感じた。あと貴重な6番役として工藤蒼生。プレッシング適性の高い西丸、有田はモダンな選手なので、フィジカルさえ適合できれば期待だ。
おわりに
実績だけで見れば、昨季と比べて一回りスケールダウンした印象だけれど、代わりに若くてモダンな選手たちが加入している。2019年から、ゲームの進め方が目先の結果と監督交代と選手の入れ替わりとともに変遷してきたベガルタ仙台。言葉を選ばなければ、いい加減地に足をつけてチームを強化して結果を残してほしい。結果というのは、決していい結果だけでなくいわゆる課題も結果のひとつだ。思想だったりチームビルディングの進め方だったり、試行錯誤して強いベガルタ仙台を創りあげていってほしいなと思っている。目の前の1試合に集中して、勝ちに拘っていくなかで成長していこう。