はじめに
どうも、僕です。今回は、木山ベガルタのプレッシング戦術について。比較対象として、クロップが率いたドルトムントを引き合いに、ベガルタのプレッシングを見ていきます。面白い共通項があるのと、先生がいると理解も進むと思い記事にしました。同じところ、違うところを見ていけたらなと思っています。では、レッツゴー。
クロップ・ドルトムントの三角形ディフェンスと香川真司のポジショニング
アタッキングMF・ウィンガー・セントラルMFの三角形
いくつかクロップが率いたドルトムントの試合を観ていますが、2012年のバイエルン戦から取り上げます。動画は以下です。
ドルトムントのボール非保持時は、4-4-1-1。4-4-2系のゾーナル守備でブロックを組みます。アタッキングMF(トップ下)には、我らが香川真司。彼の「ボールホルダーと同じ高さに立つことでパスコースを限定する守備」を中心に、ボールサイドのウィンガー、セントラルMFと三角形を作ってディフェンスします。
図1
図にするとこんなイメージです。ボールホルダーへのプレッシャーへは五分五分程度。ホルダーにはある程度時間がありますが、出せるタイミングを圧縮することで「時間はあるけど『時間』が無い」状況を作ります。
図2
3人のタスクをざっくりと分けると図2のイメージです。ホルダーに対して、それぞれ「壁」を作ることで、目には見えない迷宮を創り上げます。スペースがあって侵入しても、壁が迫ってきます。肌感覚的には城。狭く、直線を避けて構造化することで、相手の侵入を防ぎ、侵入されても侵入速度を減衰させます。
セントラルMFを軸に閉じる『トラバサミ』
図3
仮にホルダーがそのままドライブでスペースへ前進した場合、アタッキングMFとウィンガーがホルダーを挟み込むようにプレッシャーをかけます。ホルダーを3つの壁で挟み込むようにして、空いていたスペースを圧縮させます。トラバサミのハサミのように、ホルダーに罠をしかけ仕留めます。
図4
ホルダーが三角形を迂回してパスを出すのであれば、「水流が岩にぶつかった」ように、隙間へとパスが流れていきます。フルバック(サイドバック)へ出れば、攻撃をサイドへ遠ざけ縦に細くでき、センターバックへパスが出れば前からのプレッシングへ移行することができ、相手の攻撃を減衰することができます。なお、中央へのパスを強行したとしても、すでに防衛網が構えられてますので、プレッシングの嵐を浴びせます。
図5
ベガルタ仙台のプレッシングメソッド
さて、ベガルタ仙台のプレッシングですが、4-3-3が主体となります。香川ロールはセンターFWの長沢で、ウィンガーがワイドに立つ選手へのパスコースを切りながら中央に立つホルダーへプレッシャーをかけていきます。また、長沢がアンカーやセントラルMFへのコースを塞ぎながら、ホルダーにプレッシャーをかけます。
図6
図7
図8
セントラルMFを軸に、ウィンガーとセンターFWがホルダーを挟み込んでいきます。図は理想型ですが、実際的には迂回したり、サイドへ展開されたりとしていますが、原理的、構造的にはクロップドルトムントとの類似性が見られます。相手を中央へ誘導する、パスコースを縦へ限定するなど、前線からのプレッシングの狙いが見て取れます。
図9
三角形を迂回された際の予防策も構えているように見えます。サイドへ展開されたら、ウィンガーとセントラルMFがスライドして、三角形とタッチラインでボールを圧迫します。また、アンカー(椎橋)とセントラルMFが中央で迂回先を守り、逆サイドのウィンガーは前線からのプレッシングを継続させます。試合によっては、逆サイドのプレッシング担当がセントラルMFの場合があります。いずれにしても、ピッチ中央へ誘導することでカウンター開始地点とし、サイドや敵陣へ迂回させることで、ゴール前に迫られるリスクを低減させます。木山監督が「攻守にアグレッシブなサッカー」と目指すべき哲学を述べていますが、「攻撃のための守備、守備のための攻撃」とも言えますし、「攻守表裏一体」を体現しようとしているとも言えます。
おわりに
クロップがリバプールを率いて、リーグ、CLを制覇しました。陣形的には4-3-3との親和性で見れば、今のベガルタとリバプールには似たような点があります。ただ、原則的なところは大きく変わっていないと思いますし、実際、クロップが率いたドルトムントには沢山の気づきがありそうでした。まだまだ再開後の数試合ですので、ベガルタの完成度ももっとこれから上がってくると思いますので、現状と理想とでさらにレベルの高いプレッシングが見られるのではと期待しています。「ボールを持っていなくても攻撃できる」をぜひとも、仙台の地で披露してほしいなと思います。では、またどこかで。