蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【可変ウィング】ベガルタ仙台 トムキャット型4-4-2 攻撃分析①

はじめに

 どうも僕です。今回は、ベガルタ仙台の攻撃分析です。ルヴァン杯で成果が出て、リーグ戦でも採用している可変ウィングの4-4-2を取り上げます。取り上げるといってもまとめのような内容で、物珍しさは無いのかもしれませんが、あったかい目で読んでください。

 開幕からは3バックを採用した渡邉ベガルタでしたが、リーグ戦の結果がふるわず、メンバーも入れ替えながらの戦いで、そのなかで見出した一つの答えが4-4-2でした。ただ、その実態はこれまでの3-4-2-1や3-1-4-2といった、3バックの攻撃が活きる形の4-4-2でした。そんなベガルタ可変翼を採用したトムキャット型4-4-2に迫っていこうと思います。では、レッツゴー。

さまざまな4-4-2

 単なる数列表記なのだけれど、4-4-2にもいくつかタイプがある。フラット型、ダイヤモンド型、守備重視ダイヤモンド(4-3-1-2)型、攻撃重視ダイヤモンド(4-1-3-2)型、クリスマスツリー(4-3-2-1)型、ワイドトップ型とかとかとか。さっと思いつくだけでもこれだけある。もちろん、フラット型4-4-2からの派生も可能だ。

トムキャット型4-4-2

トムキャットとは

 名前の着想は、アメリカの戦闘機、F-14戦闘機の可変翼から。ある方との会話のなかで、その方がウィングの可変のことをトムキャットと呼ぶと仰っていたのをありがたく使わせていただく。ベガルタの4-4-2をトムキャット型と呼んでいる。

ウィングの可変によるポジショナルな攻撃

 基本の立ち位置は、4-4-2。そこから、ウィング(SH)が横あるいは斜め後ろにポジション移動する。レーンチェンジだ。ウィングレーンからハーフレーンへの移動で、味方と協働し、相手を混乱させる。また、2CBにボール配給に優れたタイプ(常田、ジョンヤ)を置くこと、裏抜け系2トップ(ジャメ、ハモン)と合わせることで、常に相手DFに背後を狙われている危機感を与えることができる。

 ベガルタの攻撃は、2トップや高い位置をとったウィング、SBへのダイレクトな攻撃が主軸になっており、こうした可変によるポジションチェンジとのセット攻撃で威力を発揮している。選択の連続を迫り、ひとつ判断を誤れば、即守備の約束の束が解ける。

図1

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図2

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 オリジナルフォーメーションは4-4-2。より正確にいえば、SBがCHの高さまで取ってSHを押し上げウィング化させるので2-4-4に見える。相手が4-4-2系でセットディフェンスの組むのであれば、完全に噛み合った状態に。

ウィングの静的なポジショニング

図3

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 そこからハーフレーンにレーンチェンジするウィング(SH)。まずは、SBの束縛から「離れ」、味方のボールホルダー方向に「寄る」動きで、SBについて来るか来ないかを選択させる。

 ウィングは、大体の試合で右ウィング吉尾、左ウィングタカチョー(石原)が入っている。2人とも、シャドーストライカー的な性格で、純粋なタッチライン際だけでなくハーフレーンに入っても十分に力を発揮する。というより、この可変翼機構を完成させるうえで重要な選手になる。

図4

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 キーは図中のコメント。特に2人以上の選手の間に立つ焦点のプレーは超重要。ハーフレーン攻撃の要と言える。

図5

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 この焦点のプレーだけで、相手SB、SH、CHに問題を引き起こす。こうした静的なポジショニングによって、自分たちの負荷はそれほど上げず、相手の判断負荷を上げてしまうあたりはポジショナルプレーで言うところの位置的優位性と言える。

SBとFWによる動的なポジショニング

図6

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 合わせ技でSBが高い位置を取って、今度はSBがウィング化。いわゆるウィングロールを全うする。ボールホルダー方向に「寄る」ウィング(SH)と「離れる」SB。いわゆる動的ポジショニングにおける「ダブルパンチ」の動き。相手の頭にはてなマークを浮かべさせる。

図7

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  さらに応用の合わせ技。FWがカットアウト、つまりはタッチライン方向に外流れしていく動きでボールホルダー含めて4人称の崩しも可能。相手SBは、戦術的判断において高負荷状態になる。さらにそこへウィングが「差金の動き」でローポストに突撃。しかも、ハモンロペスやジャメといったタイプがFWに入るともう止められない。

おわりに

 今回は、ベガルタの可変ウィングの4-4-2が焦点のプレーを代表とする静的なポジショニング、SBとFWが連動するダブルパンチのような動的なポジショニングで相手守備を攻略していくポジショナルな攻撃を紹介しました。

 次回を一応予定していて、次回は翼を支える胴体、ビルドアップについて紹介したいと考えています。よろしければどうぞ。

参考文献

①可変システムについて

ビエルサ×ビルバオのコレクティブフットボール

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_21.html

 ビエルサ×ビルバオのコレクティブフットボール

 http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html

②焦点のプレー

将棋とサッカーの共通項2

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/05/blog-post_28.html

考えて走る10 味方を追い越してフリーにさせる

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2011/06/blog-post_20.html

③ダブルパンチ

https://www.youtube.com/watch?v=jeWD2Yrts18&list=PL11wlb1rGmn8ZgFAAqrrje0IhbIP6SmTx&index=14&t=0s

 ④F-14 トムキャット

https://www.youtube.com/watch?v=Stouo-bGLV0