蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【錆びついていたままの】Jリーグ 第20節 ベガルタ仙台 vs コンサドーレ札幌 (3-3)【扉を打ち破れ】

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ札幌戦のゲーム分析。撃ち破られた前節から1週間。再びコンサドーレ札幌と、北海道の地で戦う。少しずつ取り戻してきた身体で、北の空を羽ばたく。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、前節からGKを小畑に変更。リザーブには、ケガでの長期離脱から復帰したクエンカが入る。

 札幌は、長いボールを使うなど、マイナーチェンジなのかスタイルを模索。それでもバックラインのポゼッション能力は健在。元仙台のミンテがリベロとして進化しているのも感慨深い。左シャドーの小柏は懐ドリブルの使い手で注目。

 

ゲームレポート

ミシャ式へ「つるべの動き」で対応

  北の大地で繰り広げられた壮絶な撃ちあいは、ミシャのチーム特有のビルドアップに対して、ベガルタがどう対処するのかの解答をまずはピッチで表現することで始まった。挨拶代わりというやつである。札幌は、3-4-2-1から、セントラルMFがバックラインにドロップすることで、4-1-5へ可変するいつものミシャ式。対するベガルタは、4-2-3-1。ボール非保持時は4-4-2でセットDFを組んでいく、こちらもいつもの形。あとは、誰が誰にプレッシングするのかの噛み合わせになる。

 まず、ゲデス、関口の2人がセントラルMFをカバーしながら、ホルダーへプレッシングをかける。それを合図に、片方(特に関口)がアンカーロールで残っているセントラルMF(特に荒野)をカバー。2バック化する札幌がボールを移動させると、ゲデス、関口が「つるべの動き」でプレッシング役とカバー役を交換していく。そこからサイドにボールを追いやり、ボールサイドを限定すると、ベガルタのプレッシング網が札幌のボールを絡めとろうとその網を縮めていく。ウィングに入った道渕、西村は、ワイドに広がるセンターバックをターゲットにプレッシングを敢行。同時に柳、パラの両フルバックはフォローに降りるウィングバックをターゲットに、高い位置まで縦迎撃プレッシングで縦へのコースを封鎖。シャドーへのコースをCMFである椎橋、浜崎がカバーするディフェンスで、ミシャ式ビルドアップを妨害する。

 結果として、4-2-4のような形にはなるけれど、札幌には両CB田中、福森と展開力のある選手がいることから、まずはバックラインへの制限をかけたかったのだと思う。前線からのプレッシングがかかれば、呼応して中盤から最終ラインも高い位置を取り、全体としてコンパクトな守備陣形を保てる算段だったのかもしれない。試合開始後、攻撃チャンスもあるなかで、まずまずのスタートを切ったと言っても良かった。あの大技が出るまでは。

 

ボックス型への変更と浮く田中に後手を踏む仙台DF

 札幌も修正を入れる。左CB福森、CBミンテの2バック+荒野、高嶺の2CMFによるボックス型ビルドアップに変更。右CB田中がワイドに開いた変則3バックとも取れる。中央2バック+1アンカーの3人で回すと、ベガルタのゲデス、関口にはコースを切りながら「1人で2人守る守備」をされてしまう。ここを4人にすることで、新しいパスコースを作ることになる。また、セントラルMFフォワード横に顔を出すなど、パスコースを作るための「外す」動きで、ゲデス、関口の「つるべの動き」を無力化。さらには浮いた田中が息継ぎポイントになるので、ベガルタのプレッシングは簡単に嵌らなくなってくる。

 ベガルタも応急処置的に、左WGの西村が中間ポジションをとって、セントラルMFとCB田中を見れるポジション取りをしたり、右WG道渕がCMFのマーク役を担当するなどで対応。ただ警戒している左右CBへのプレッシャーが弱まったこと、シャドーを警戒するCMFが低いポジションを取ることで、前線4人のプレッシング隊背後に大きなスペースを創ることになる。その代償として、先制点は、左CB福森からのロングキックという大技が決まって許してしまった。

 

襲いかかる赤黒とダイレクト志向で取り戻す前進

 ボール回収地点がどうしても高くならないベガルタ。奪ってビルドアップを開始するも、ミシャ札幌精鋭プレッシング部隊の激しいプレッシングを受けた。自陣からのビルドアップが多かったベガルタ。ボールを持つ時間を長くとって、相手のプレッシングを誘発して、アンストラクチャ(陣形が崩れた状態)を作り攻撃チャンスを作るのが目的であるけれど、これが完全に標的にされた形だ。2バック+2セントラルMFに両フルバック、GKを使ってボールを動かすも、ミシャ式と違って大きく立ち位置を動かさないベガルタは、ボールサイドを限定されると、ほとんどマンツーマンのような形でプレッシングをかける札幌に時間とスペースを制限され、次第に窒息していくようになる。

 嵌らない前線からのプレッシング、逆襲の形で前線からプレッシングをかけられ窒息するベガルタ。飲水後から先制点を許し、前半終わりまでは開始直後の様相とは打って変わってしまった印象だ。

 後半から取り戻したのは、ダイレクト志向だ。ボールを持つと、両ウィングが果敢に前進をかける。そこへシンプルにボールをつける形で、ボールの高さを確保する攻撃を見せる。パラ、柳も積極的なプレッシングから前線へ持ち上がる動きを見せ、特に柳は前半なかなか相手陣深くまで侵入できなかったが、コーナーフラッグ付近まで持ち上がるようになる。クロスがカットされてもコーナーキックを確保できるフラッグ攻撃の復活だった。ボールを持っても、持っていなくても前への圧を止めない札幌。ボール保持側が切り替わるトランジション局面で、3バックしか自陣にいないことはある意味代名詞的であって、ベガルタとしても前半のうちからこの代名詞を突きたかったのだと思う。

 後半開始から立て続けに3ゴール奪った流れは、この狙いをよりシンプルに徹底した形だった。逆襲のベガルタ。2点リードを有効に使えば、このゲームは「You belong to me」だった。ただ、自分たちが用意した罠が、間を置かず牙をむく。

 

FWのプレスバック機能不全がもたらす「4-4-0-2」ディフェンス

 後半開始から、ベガルタは選手配置を変更。FWを西村、ゲデスとして、関口を左WGへ変えている。構造的に浮く右CB田中への対処、間延びする守備陣形を考えた時、両ウィングを上下左右に守備で走れる「ワーキングウィンガー」にしたのはある意味納得いく変更だった。ワイドへ張り出すウィングバックを両WGが見て、シャドーをフルバックが監視することで、CMFが極端に低くなる現象を解消しようとするものだった。もちろん、2FWはCMFを警戒して、ボールサイドを限定する。ただ、試合開始後から警戒していた両CBがボールを使って地獄の門を開け始める。

 そもそも、3バック+2セントラルMFの3-2M字型ビルドアップなので、2FWでは物理的に見切れない。なので、限定して制限した先でグループとしてボールを奪っていくことが、ベガルタディフェンスにとっては至上命題となる。4-4のリトリートディフェンスは整理された。ただ、ファーストプレッシャーラインであるFWのプレスバックが効かない。CBからワイドにボールをつけてから、もう一度荒野や高嶺がボールを持っても、西村がそのコースを切れていない、ゲデスが戻り切れないなど、今度はハーフラインとフロントラインの間が空いてきてしまう。さながら、「4-4-0-2」といった具合だ。 

 特にゲデスは、2ゴールを取って仕事完了でアフター5に思いを馳せていたのか、ジョグで自陣に戻るなど、前半ほどの献身さは影をひそめることに。加えて、CBからのロングキックはそもそも制限をかけずにいるので、中央も使われながら大技も使われる非常に危険な状態に。と、考える間もなく立て続けに2失点を食らい同点。3失点目は、GK小畑が若さを見せたとも言えるけれど、そもそもは高い位置をとったWBから、FW背後にできたスペースを使った荒野からの長いボールが起点だ。ゲデスに代わって長沢、西村に代わってタカチョーが入り、最前線に道渕が入ったのはまさにこの部分の手当だと言えるだろう。

 

 

考察

Good!

 前へパワーをかけると、ゴール前に迫って攻撃が危険になることが改めて分かった。あとはその圧をどこでかけるのかにはなるけれど、先制を許すとなかなか大変な作業になる。それでも逆転できる力があるのは証明している。ウィングやフルバック、関口が相手陣深くまで攻め込める攻撃を継続できれば、セットプレーの機会もあるわけで、相手ゴール前でも何かが起こる可能性が増える。

 

Bad…

  試合開始から、札幌のストロングを非常に警戒して、さらにそれへの対処も見せたベガルタ仙台。ライン背後へのボール警戒の比重を高めたことで、変化する札幌のビルドアップへ追従できなかった印象だ。交代から終盤ごろには同数プレッシングを見せるなどしていたけれど、やはり後半開始直後の2FW起用は、より攻撃的な圧力をかけるのと同時に、守備陣形を整える策ではあったと理解する。ゴールを奪えたからなのか、それとも関口の役割はあくまで関口しかできないのか。選手の特徴上難しいのか。チームとして徹底させてきれているのか。やはり選手に任せているのか。などなど、いくつかの疑問が浮かぶ。試合後の木山監督は、メンタリティの部分を出すのも分かる「リード直後の失点」の繰り返しぶりではあるけれど、この試合については2FW起用である程度予測できたのでは、そもそもトレーニングでの落とし込みはやりきれていないのか、関口、道渕しかできないのか。コメントの意図である「リードしたことによる精神的優位をプレーにも活かそう」という試みと徹底で済めば、この話はそれほど難しい話ではなさそうに思えるが……

 

Next

 1点リードされるものの逆転し、そのリードを広げたにもかかわらずドローに終わった。表現したい統率のとれた前線からのプレッシングが生命線であることを証明しているし、相手や状況でどう機能させるのかを突き詰めたいなと。使えるものを使って、試せるものは試して、残りのシーズンを戦ってほしい。まだまだ強豪との対戦も待っているので、何が通じて何が足りないのかを明確にしていければいい。前線のプレッシングを支えるバックラインを高く保ちたい、そのためにはセントラルMFが接着剤になるので、ここが噛み合ってくればと考えている。

 

おわりに

 半歩ずつ進んで、2歩下がってまた半歩ずつ進んでを繰り返している。目指す場所に到達できるのか、その場所からまた次に目指す場所が見えてくる。今は、夏には見えなかった景色が見えているので、このまま歩みを止めないで、進み続けてほしいと思っている。

 

「ただ探しているだけだ。扉をな」こう言ったのは、ヴィンセント・ボラージュだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

www.footballista.jp

www.amazon.co.jp

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silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com

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