蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【始まりの音に】Jリーグ 第21節 川崎フロンターレ vs ベガルタ仙台 (1-0)【変わるように】

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ川崎戦のゲーム分析。秋の連戦が再びベガルタ仙台の前に立ち塞がる。進撃を続ける絶対王者に、雨の等々力も微笑む。ピッチのすべてを支配された世界で、抵抗を示したのは2人の若者だった。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、前節からの変更で、フォワードに山田、セントラルMFに中原が、センターバックにQちゃんが入る。4-4-2で観た方が良さそう。

 川崎は中2日の強行軍。それでも、今季の異例シーズンで快進撃を続けている。メンバーもターンオーバー気味。家長、齋藤学がいる。ただターンオーバーと呼んでいいのかというメンバーではある。

 

ゲームレポート

FW横でプレッシングを無効化する川崎

  ベガルタが等々力で勝ったのは、およそ9年前、あの「決戦」以来になる。あの試合は、まるで見えない力で勝ったような、いや、「まるで」が余計だ。見えない大きな力で、勝ち取った試合だ。しかも、この試合と同じ、雨だ。あの試合から色んなものが大きく変わってはいるが、また再び、日本を未曽有の危機が押し寄せているのは変わらないのが、今年最も大きな出来事と言える。それでも、9年前もこの日も、雨の等々力で試合ができているのである。2度続けば、それは、奇跡ではなく本当の力である。

 そんな等々力で、ベガルタは4-4-2を披露。ゲデス、山田の2FWに、唯一9年前のピッチに立っている関口が、「左ウィング」に入った。右WGの道渕とのコンビで、サイドを上下動できるワーキングウィンガーを入れることで、川崎の高い位置を取るフルバックを牽制する狙いだ。そんな狙い通りに、4-4の2ラインが中盤を埋め、ファイナルラインは高い位置を取り続けコンパクトさを保つ。ピッチ中央に敷き詰められた4-4-2のブロックディフェンスに、仙台の「血」を感じた。サッカーは、血でも、プレー出来る。

 それでもこのスタジアムの主は、王者たる所以を見せる。2バック+アンカー田中の三角形型ビルドアップをセットしたが、アンカー田中がベガルタのFWに監視されていることを観察して気づくと、この日両インテリオールに入った2つの心臓、中村、大島が門を開こうと行動を開始する。FW横に落ちることで、瞬間的に三角形型から2+2のボックス型を作る。ベガルタはつるべの動きで、ホルダーへのプレッシャーとアンカーへのマークを交換するのだけれど、ホルダー→アンカーに切り替わる継ぎ目を、三角形+1することで狙い撃ちした。これが見事に効果を発揮。ホルダーからボールを受け、間髪入れずにアンカーへボール移動させる。ベガルタのFWはどうしても間に合わない。

 ベガルタも、椎橋、中原のセントラルMFコンビが落ちる14番と10番を追いかけるのだけれど、今度はその背後が空いて来る。加えて、川崎は左サイドで車屋が低い位置を取って擬似的な3バックを形成。なお一層ボールを持つ時間とスペースができる。もちろん、対面する右WG道渕のプレッシャーは織り込み済み。その背後をアタッカー陣が狙っていく様相に。背中を突く。川崎にも、血を感じた。ベガルタとしては、こうなると背後をカバーするしかなくなり、全体としてブロックが下がっていき、自陣に閉じ込められる時間が前半の大半を占めることに。また、ベガルタの左サイドでは、WG旗手がインサイドに、フルバックマテウスが高い位置を取るウィングロールで、パラを中央に押しのけ、関口を低い位置に押し込んだ。ベガルタの4-4-2による中盤からの押し上げは、逆に押し込まれ、だんだんと自陣でその姿を変えざる負えない状態へなっていく。

 それでも、40分間を耐え、同点あるいは最少失点で乗り切って、後半に圧をかける機会を伺うように見える。中2日の川崎は、ポゼッション勝ちしているとはいえ、必ず体力的に難しい局面が出てくる。ポゼッション負けして押し込まれると心が折れるが、折れなければ、相手が折れる。そんな入りだった。

 

同数プレッシングへの修正。上回る車屋

 後半開始から、ベガルタの前線からのプレッシングが反撃の狼煙を上げる。2バックに対して2フォワード、アンカーにはCMF、落ちる中村、大島には片方のCMFがつくことで同数プレッシングを敢行。川崎が自陣からビルドアップしていく、その過程を破壊する策で前への圧を取り戻す。ホームでのゲームの再現も頭にあったのだと思う。ただ、それで壊れる川崎フロンターレなら、こんな順位にいない。ベガルタがビルドアップをぶっ壊すなら、川崎はプレッシングをぶっ壊しにかかる。

 本来フルバック車屋が高い位置を取って、柳とのマッチアップを選択。自陣からのロングキックの受け手となって、ベガルタのビルドアップ妨害を無効化するべく、息継ぎポイントになる。柳も長身でCBも経験はしているのだけれど、このハイボールの競り合いにおいては、車屋が勝ちプレッシャー回避の役割を担う。

 

椎橋とワタルの2人で中盤を破壊する

 リトリートもプレッシングも対応され、リードされた展開を我慢しながら追いつく機会を伺っていた木山ベガルタ。後半中盤あたりから川崎のプレッシャーが徐々に落ちて来る。それと呼応するように、CMF椎橋がバックラインに落ちて、川崎FWによる前線からのプレッシングを回避。また、バックラインから上がる擬似フォアリベロでFWのカバーエリアを操作。椎橋をカバーするなら、フルバックセンターバックに時間とスペースができる。ボールを持たないポゼッション。椎橋が相手プレッシングを操作し、味方のポゼッションを助けた瞬間である。

 それを引き継いだのは、交代で入った田中渉。椎橋が見出したバックラインへのドロップとプレッシャー操作、加えてワタルの長所である左足のキックが炸裂する。ボールを持たなくてもポゼッションできるが、ひとたびボールを持てば、逆サイドへのサイドチェンジキック、中央へ刺すパス、選手間へ侵入するプレーと、雨の等々力のピッチで躍動。中盤から後方をワタルに任せ、長沢、ゲデスの2FW、両フルバックのウィング化と中央へ侵入するウィングで、川崎ゴール前への圧力を高める。終了までの15分間は、押し切っていったベガルタだったが届かず。奇跡は、2度続かない。2度続けばそれは……。 

 

 

考察

Good!

 川崎の中2日日程、5枚の交代枠、リトリートから前線のプレッシング、カウンター、ポゼッション、セットプレーとかとかとか。今持っているものフル動員でかかっていたゲームだったと思う。自らゲームを動かして、相手も動かしてしまうのが、木山ベガルタのひとつの特徴なのだけれど、自らじっと耐え相手も静かにしてしまうのもまた、ひとつの特徴と言えそうだ。相手や日程面など、本来「ゲームプラン」と呼ばれるもの、相手の攻略方法については、やはり引き出しが多い方が良いし、やれないよりやれた方が良いに決まっている。ホームとアウェイ、川崎に対しては、首位を走るチームに対しては、よく実行できたのではと思う。

 

Bad…

 ゲームモデル、チームが描く絵はどうだろうか。攻守においてアグレッシブなサッカーを表現できたのは、少なくとも、多く見積もっても後半、しかも交代で関口がアタッキングMFになったあたりからだ。本来なら、そこで激しい前線からのプレッシング、ライン間・選手間の狭いリトリートブロック、奪ったら相手陣深く突撃していくプレーというのは、1試合を通してどれくらい表現できたのかはチェックしたい。札幌戦、もとよりこれまでの多くの試合でもそうだけれど、ベガルタの場合は自分たちのプレー時間が90分のうち15分間とか30分間くらいで、あとは耐える展開が多い。そうなると、その短い時間を長くするか、短い中で密度を濃くするかになる。この試合においてはもちろん後者なのだけれど、前者の作業も取り組んでいるとは思うけれど、もっと自分たちのプレーを出したいし、長くしたいなと考えている。

 

Next

 難しい日程と開催地で、この3連戦もある程度戦略的に消化していくことが予想される。であればそれでいいので、マックス値を出し続けて、何が出来て何ができないのかをしっかりと確認してほしいと思う。きっとやれることは限られるので、自分たちが描いている絵を表現して、表現するための技術を試合でガンガン披露してほしいし、試してほしい。椎橋とワタルの取り組みは、おそらくその一歩目になりそうな気がする。気がするだけ。

 

おわりに

 やりたいこと、やりたいけれどできないこと、やりたくないこと、やるべきことのすべてが詰まるから、格上との対決は面白いし、自分のサッカー、プレーがより深く高みへと昇華される。できれば、お互い1週間の準備をして、フルメンバーで戦いたいところだったけれどそれはまた別の話。それでも首位の川崎にも、地方クラブが何かを示した、もたらした、影響できたならなお良いと思っている。完璧な状態で、勝敗を雌雄を決するなかで、必ず、この場所で、あの試合のように戦いたいと思っている。

 

「その意志が、全てを変える」こう言ったのは、Unknownだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

www.footballista.jp

www.amazon.co.jp

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silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com

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