せんだいしろーによるサッカー分析ブログ

戦術を通してサッカーを考える。我らがベガルタ仙台中心。知恵の墓場。

【Revolution】Jリーグ 第16節 ベガルタ仙台vsFC東京 (2-0)

はじめに

 では、いきましょうか!ホーム東京戦のゲーム分析!帰って来た僕たちのシアターオブドリーム。負けないユアスタ劇場。迎え撃つは、首位、FC東京。過去との決別。自分たちらしさの呪縛。すべては、この日のために。与えられた運命に気づいた先に見えたものとは。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタも東京も4-4-2。どちらも似た者同士、がっちり噛み合わさった。ベガルタは、右ウィングに吉尾が入っている。東京は闘い方継続で、久保の代わりをどうするのか考えていく必要がある。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

ボール保持時

ポジショナルは生きている

 ベガルタのビルドアップは、ボックス型。2CB+2CH。時折、椎橋が降りることで 、逆丁字型にもなっていた。相手の2トップに対して、2CBあるいは、2トップ背後の第2レイヤーのアンカーポジションにポジショニングすることで、相手が守っているところいないところを嵌めて外してが可能になる。変形時の違和感もない。

 さて、ポジショナルアタック。トランジションの火花が散るなか、息継ぎの時間として、というよりボールが持てるなら、時間があるならきちんとポジショナルに攻める形を見せた。特に、63分に道渕が交代で入ってから加速する。道渕の強さは、トムキャットでハーフレーンもウィングレーンもプレーできること、前にも後ろにもポジションをとっても苦にしない運ぶドリブルを持っている。そして、オフボールのランニングで、スペースクリエイト・ユーズを繰り返す。

 もう一つ見逃せないユニットが2トップ。長沢も、石原先生も、ダイナミックにサイドに張るわけでもなく、相手DFの間に立ったり開けたスペースに入ったり、中央に残ったりなど、相手ブロックの間のややこしいところでも問題なさそうに見えた。ハモン、ジャメのダイナミックな展開(オープンスペースへのラン)も魅力的なのだけれど、よりウィングとSBのアウターラップ、インナーラップ、カットイン、カットアウトの合わせ技が必要になるのでチーム戦術の難易度が上がる。今は、攻守表裏一体、というよりトランジションの束の結束力重視なので、物理的な距離が近い方がやりやすいというのもある気がする。気がするだけ。

 関口のゴールシーンも、シマオがドライブ(運ぶドリブル)で上がって、椎橋が下がってカウンター管理。ハチがシマオに寄って、道渕が縦にランニングするダブルパンチ。道渕が空けたスペースに石原先生が入ってくることでCBをおびき出し、中央で長沢、関口が2on2を創り出すことができた。

 東京との決定的な違いは、ポジショナルな攻撃の部分だった。これは松本戦にも言えるのだけれど、4局面のうち、ボールを持っている時間のクォリティで差をつけた感がある。ボールを動かすことで、相手と味方の立ち位置を調整して前進させ、最後は相手の戦術思考をフリーズさせる。激しさと冷徹さの同居。情熱と論理の表裏。きわめてシンプルに、難しいことはせずともボールは前に進みゴールが生まれる。ポジショナルは生きている。

ネガティブトランジション

光速ゲーゲンプレス

 ベガルタのゲーゲンプレスは、エリア制圧型。抜け出されるとオープンスペースで「カウンターラリーゲーム」が始まる。52分ごろは、まさにそのようなシーン が多く、トランジション世界とは反転した世界でのミラーゲームになっていた。

 ただ、そのなかでも、選手個人で独力で奪い返すシーンもあり、決して一時期のようなアリバイゲーゲンではなくなっていた。戦う理由が見つかった。

ボール非保持時

圧倒するシマオ・マテ

 ベガルタのセットディフェンスは、4-4-2のフラット型。2トップはわりと相手CBにもプレスをかけるシーンが多かったように見えた。また、東京が3バックビルドアップの場合は、吉尾が高い位置をとって擬似3トップで相手を牽制した。ただ、吉尾の背後のスペースを高萩や東に使われていたので、どこまで有効だったのかは少し分からなかった。

 この吉尾の高い位置取り。僕は、2つの策のためだと考えている。ひとつは、シマオへの誘導。 この試合、東京のトップは、個人能力に優れた2トップ。D・オリヴェイラは、屈強なFWで決定力もある。ボールがクリーンに前進すれば、必ず彼にボールが入ると考え、シマオをオリヴェイラ担当にする。シマオはこれを全うし、見事封殺した。ソファ幅を守るのだけれど、誰が来るか分かっていれば守れるし、誰にも座らせない守備だ。もうひとつは、吉尾のトランジションの斬り合いで勝てれば、抑止力になる。ただしこちらはあまりうまくいかなかったようだった。もしかしたら、吉尾の個人判断かもしれないし、違うかもしれない。こればかりは、僕の考えということにしておく。しておくだけ。

ポジティブトランジション

ピッチ各所で起きるトランジショントランジションの火花に突っ込め。

  奪ったら縦、縦志向は強かった。これは、4-4-2のポジティブトランジションによく見られる傾向だ。まずは、2トップ。ここにボールを前進させて、深さを取ってから、陣地回復を図る。それがポゼッションなのか、ゲーゲンプレスなのか、いずれにせよまずは相手が守っていないところから攻めて、自分たちが確保するエリアを増やす。 

考察

攻守表裏一体

 今のチームにおいて、ボールを持っていない時、あるいはボールを失った時に力を入れいているなかで、これまで取り組んできたボールを持っている時の質がよく出た試合だったと思う。ボールを持っていないとき命!も大事なのだけれど、それを止められ死んでしまったらよくない。死んだら終わりだから。そういう意味で、取り組んできたことがついに収束されていく感がある。松本も東京も、逆側からの取り組み、それ一本の取り組みをやっているチームと当たるなかで、勝利するなかで、ベガルタはさらにその先を歩いていて、実は目指していたものの背中が見えてきたのではないか。決して遠回りなんてない。すべては運命。それに気づくのが早いか、遅いか、それしかない。そして、気づいた。

 

おわりに

 彷徨い続けた果て。ボールを持ちたくて、立ち位置を取りたくて。戦う理由を探して。最後は個人コンセプトのダークサイドがファントムメナスのように近づいてきて。気づけば、盤面をひっくり返したような火花が咲く決闘の嵐。

 これが今年のベガルタ。支離滅裂。分裂した性格。それでも、信じて尽くして、道は自ずと拓けた。というより、ようやく気づいた。自分たちが何者で、何のために戦うのか。ユアスタという約束の場所に、これまでの苦悩も、痛みも、喜びも全てが集まり、いまのベガルタを創り上げている。革命前夜は、もう明けた。 

 

「常に自分らしくし、自分を表現し、自分を信じろ。どこかの成功者のお手本なんてマネするな。」こう言ったのは、ブルース・リーだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html

 

 

【ボールの主は】Jリーグ 第19節 愛媛FCvs京都サンガF.C. (0-2)

はじめに

 どうも僕です。今回は、愛媛vs京都の試合を観ていきます。普段見慣れているチームではないこと、リアルタイムで一度しか観ていないこともあるので、ご承知おきをお願いします。では、レッツゴー。

前半

 京都は4-3-3。右SBに福岡、アンカーには庄司が入る。ボール保持時は、2-3-2-3で非保持時には4-5-1の基本型。ビルドアップでは、両SBはオリジナルのポジションを取って、アンカーの庄司は時折CB間に降りるアンカー落としを見せるが、基本はアンカーポジションをキープ。CBがボールを持っている時、SBがフォローで近寄り、ウィングも降りてくるので自陣付近ではビルドアップにかかわる人数は多かった。ミドルサードまでボールを運べば、2-3-2-3がピッチを幅広く立つ。

 愛媛は3-4-2-1。シャドーに神谷が帰ってきている。保持時に3-2-5、非保持時に5-4-1になるポジショナル入門フォーメーション。ボールは持ちたいが相手が京都のため、非保持のリトリート、ビルドアップ妨害からのトランジション勝負が狙いの様子。特に、両SHが京都SBにボールが入ると鋭くスライドして前を向かせない。その前提として、1トップがアンカーを消し込みつつ、CBにボールを持たせるので、ボール方向としてはCBからSBにボールが移る間にSHのプレスとCBにボールが戻った際に1トップが連動してプレスをかける。京都の大宮戦をよく研究していたのかなと思う。形は5-3-2だったのだけれど、敵陣でアンカーを消しつつボールサイドに閉じ込めて窒息させる策だ。

 どちらも、サイドチェンジなど、ロングキックを使って、ワイドに開く選手をよく使っていた。京都はファイナルサードで密集攻撃をかけるも、愛媛も数合わせしてくるので、かなり難しくなっていた。この辺りは、愛媛の狙い通りだと思う。京都は、SB、ウィングが降りて、インテリオールが裏抜けするベクトル変換の動きを見せていた。愛媛はこの動きに対して、ハーフディフェンダーがおびき出されてしまうのだけれど、リトリート速度(ネガティブトランジション)を上げて対応したい。

 後半

 後半入りも同じ形。京都は少しずつ、愛媛のビルドアップ妨害を剥がし始める。キーになったのは、「ボールを運ぶ」こと。2タッチ以内のパスで誘き寄せて、第3レイヤーへのロブパスで擬似カウンターのような形でボールを前進させる。また、CBの本多、安藤がボールを持って上がるドライブ(運ぶドリブル)で敵陣にボールを近づけていった。愛媛のプレス基準、リトリート守備に選択を迫る形で、愛媛をハーフコートに閉じ込める時間を長くした。また、5-4-1の4の間、ハーフレーンに刺すパスを通すか数を増やすことで、SBをプレッシャーから解放させたり、あえて味方SBに相手を引き連れて寄ってから相手の背中が作ったスペースを使うなど、細部にもボールを前に進める術を持っていた印象だ。

 愛媛も途中から3-1-4-2に変更することで、前輪駆動型でボールを前進させたかったところだったが、3トップのプレスを顔面から受ける形で結果として、ビルドアップが窒息気味になってしまった。ここは難しいところで、京都の「1人で2人を守る」をうまくやらせてしまった感はある。

 京都は、57分のFK、60分の一美による連続ゴールで結果としても現れた。2010スペイン代表のように、ボールを長く保持して、決勝点はセットプレー、最終スコアはウノゼロのような、ポジショナル型の系譜を受け継ぐような形で最後は勝利を掴んだ。

 おわりに

 非常に見ごたえのある試合でした。お互いに相手の出方を見ながら、よく観察しながら、ボールを動かしたり相手を動かしていた非常に能動的な両者だったような気がします。できる限り敵陣でプレーしたいという狙いも、両者明確にあったのかなと感じます。あとは両チームともGKがボールに関与するシーンも多く、かなり高いレベルでやっている印象です。少しずつではあると思いますが、今の取り組みを継続して基礎作りをしてきけば、どちらも良いチームに仕上がりそうな、良い予感を感じました。では、また。

【拝啓、25のベガルタへ】Jリーグ 第15節 松本山雅FCvsベガルタ仙台 (0-1)

はじめに

 さあ、いきましょうか!アウェイ松本戦のゲーム分析!鬼門のアウェイ。相手は、反町監督率いる松本山雅。難しくない試合なんてない。まだまだ戦いは続くんだとばかりに、雨のアルウィンに乗り込んだベガルタ仙台。アウェイ7連敗の果てに目にしたものとは。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは変わらず4-4-2。トップに石原先生が帰って来た。毎試合出るメンバーがベストメンバーといったところか。

 松本はいわゆるソリボール。でも、前田がいない。杉本太郎が入ることで、ボールポゼッション味を加えたいところか。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

ボール保持時

トムキャットと圧縮形5-4-1の噛み合わせ

 ベガルタのビルドアップは、いつものようにボックス型ビルドアップ。2CB+2CHがボックスを作ってボール保持の基盤を作る。この型は、わりと維持されていたように思える。相手が1トップでCHやSHが擬似2トップになるシーンもあまりなかったので、ベガルタにとっては、これが最適手といったところか。+1の法則。

 合わせのポジショナルアタックは、これもいつもの可変ウィングトムキャット。両ウィングがハーフレーンにレーンチェンジして、相手守備者に対して、焦点のプレーで選択を迫る。ただし、2CBに時間と場所があれば、どこかでしわ寄せがくる。それが松本陣内になる。ボックス前に5-4の城壁を築き、しかも中央を締める形で、トムキャットに合わせる形でWBも絞ってきた。こうなると、焦点のプレーで使いたいハーフレーン・第3レイヤーが単なる窒息ポイントになる。ただ、良いか悪いか分からないのだけれど、CBがシマオと平岡だったので、「刺してはカウンター」を繰り返すようなことにはならなかった。 ここで、ベガルタは、立ち位置の変化と前進ポイントを見つける。

図1

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図2

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図3

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左右非対称の両翼とダブルパンチの右サイド

 25分ごろから、関口が本来のウィングポジションでウィングロールに。試合後監督コメントもあったように、チームとしての指示だった様子。相手右WBの田中隼磨を監視して、中央の圧縮濃度を下げる狙い。一方の右サイド。こちらは可変ウィングを継続。ミチのオフボールの動き、つまりは可変の動きの良さと焦点のプレーにより、蜂須賀が前進できる場所を提供。ミチとハチとでベクトルが異なる「ダブルパンチ」が発動。相手SHを迷わせ、出足を遅らせることに成功。少しずつだけれど、蜂須賀と道渕の場所からボールを前進させることができた。また、石原先生のカットアウトもあり、相手CBもサイドに引っ張り出すことに。死んだものと思われていた右サイドが完全に息を吹き返した。

図4

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図5

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ボール非保持時

圧勝するシマオ・マテ

 完勝だった。シマオは相手FWのペレイラとの決闘に勝利し続け、見事払いのけた。常田、ジョンヤにCBが変わったころからそうだったのだけれど、今の4-4-2における重要ポジションは、翼を支えるCBと頂点のFWになる。ここで勝ち続けることで相手に優位を与えないことがポジショナルアタックの必要条件になっている。ある意味、松本が求めている戦い方のようにも思える。何かこの辺りから、ピッチの現象が両者入り混じるような気もするし、そうじゃない気もした。多分。

松本ポジショナルとベガルタ4-4-2ディフェンス

 この試合の松本には、ほかに闘う相手がいた。過去の自分たちだ。いわゆるソリボールと言われるスタイルは、走力と決闘、セットプレーで何が何でも勝利をもぎ取るスタイルだ。その走力である前田がいない、FWが競り勝てない、セットプレーが無いなか、どうやって勝ち点をもぎ取るのか。これが彼らが闘う相手だったように見えた。中断期間中にはその辺りに時間を割いたようなコメントも聞かれたし、この試合は、対ベガルタより、対自分たちに寄ってしまったような、そんな気がした。

 「お手軽にポジショナルを体験したいなら3-4-2-1を選べ!」とポジショナル初心者本に書いていたわけではないのだけれど、ベガルタも採用していたベールクト型3-4-2-1。4-4-2ディフェンスの空いているスペースをキレイに突くことができるフォーメーションだ。この試合でも、杉本太郎がハーフレーン・第3レイヤーでポジショニングして、SHとSBの注目を集めて、WBをフリーにさせたシーンもあった。そう意味では、選手と戦術とのマッチングは可能性としてはあるのかもしれない。可能性としては。

 けれど、我々が良く知るところの3バックが放置されると途端にボールと立ち位置が停滞した。前線7人で10人の4-4-2ディフェンスを破るのは、並大抵のことではできない。しかも、CHが「気を利かせて」CB間に降りるナチュラルボーンミシャ式によって、さらに空洞化が進む。ご存知、中盤のドーナッツ化現象。関東平野もビックリだ。

昨日の僕が明日の僕が目の前を通り過ぎていく

 そんなこんなで、ベガルタにとっても、非常に感慨深いというか(選手は戦っているのでそうではないのだけれど)、自分たちの過去や苦しみ、これまで歩んできた道、そして自分たちがこれから歩いていくだろう道や姿が未来がピッチを飛び交うことに。そして、勝ったのだ。 

図6

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考察

見えてきた戦い方と勝利

 色んなことを経験して、そのエッセンスが随所にみられるようになったベガルタ。ある時は決闘勝負、ある時はポジショナルにと、本当に状況に合わせて引き出しを高速で開けていく作業を淡々と行っている。理想が何かは分からないのだけれど、少なくとも、目の前の現実を理想的な状態に持っていこうという意欲と行動が見られるゲームだった。見事にシックスポインターをものにした。

おわりに

  天皇杯決勝から続いた呪縛を見た。相手ではなく自分たちと闘い、壁から逃げるために味方を助け、本質から遠ざかっていく。僕たちにとっては、過去だ。これは、僕たちが過去の自分たちと決別するために用意された場所だった。僕たちが言えることは、松本にも、僕たちが体験した試練が待っているはず。それを乗り越えられると信じ続けるよう願うばかりだ。

 松本のスタイルは、今僕たちが目指す一部分に近いかもしれない。松本にとっても、僕たちの未来は過去なのかもしれない。青春時代の荒波も、大人になった時の荒波も、同じ荒波だ。だからこそ、過去の自分は未来の自分に希望を、未来の自分は過去の自分に願いを託すのかもしれない。アウェイ連敗を抜けた先に見えた世界。夜のアルウィンに降り続いた雨がお互いの時間を溶け合わせてしまうような、不思議な時間だった。

 

 「待ってて、あたしきっと行くから!未来で待ってて!」こう言ったのは、ソフィー・ハッターだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

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footballhack.jp

www.footballista.jp

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東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

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sendaisiro.hatenablog.com

 

【可変ウィング】ベガルタ仙台 トムキャット型4-4-2 攻撃分析①

はじめに

 どうも僕です。今回は、ベガルタ仙台の攻撃分析です。ルヴァン杯で成果が出て、リーグ戦でも採用している可変ウィングの4-4-2を取り上げます。取り上げるといってもまとめのような内容で、物珍しさは無いのかもしれませんが、あったかい目で読んでください。

 開幕からは3バックを採用した渡邉ベガルタでしたが、リーグ戦の結果がふるわず、メンバーも入れ替えながらの戦いで、そのなかで見出した一つの答えが4-4-2でした。ただ、その実態はこれまでの3-4-2-1や3-1-4-2といった、3バックの攻撃が活きる形の4-4-2でした。そんなベガルタ可変翼を採用したトムキャット型4-4-2に迫っていこうと思います。では、レッツゴー。

さまざまな4-4-2

 単なる数列表記なのだけれど、4-4-2にもいくつかタイプがある。フラット型、ダイヤモンド型、守備重視ダイヤモンド(4-3-1-2)型、攻撃重視ダイヤモンド(4-1-3-2)型、クリスマスツリー(4-3-2-1)型、ワイドトップ型とかとかとか。さっと思いつくだけでもこれだけある。もちろん、フラット型4-4-2からの派生も可能だ。

トムキャット型4-4-2

トムキャットとは

 名前の着想は、アメリカの戦闘機、F-14戦闘機の可変翼から。ある方との会話のなかで、その方がウィングの可変のことをトムキャットと呼ぶと仰っていたのをありがたく使わせていただく。ベガルタの4-4-2をトムキャット型と呼んでいる。

ウィングの可変によるポジショナルな攻撃

 基本の立ち位置は、4-4-2。そこから、ウィング(SH)が横あるいは斜め後ろにポジション移動する。レーンチェンジだ。ウィングレーンからハーフレーンへの移動で、味方と協働し、相手を混乱させる。また、2CBにボール配給に優れたタイプ(常田、ジョンヤ)を置くこと、裏抜け系2トップ(ジャメ、ハモン)と合わせることで、常に相手DFに背後を狙われている危機感を与えることができる。

 ベガルタの攻撃は、2トップや高い位置をとったウィング、SBへのダイレクトな攻撃が主軸になっており、こうした可変によるポジションチェンジとのセット攻撃で威力を発揮している。選択の連続を迫り、ひとつ判断を誤れば、即守備の約束の束が解ける。

図1

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図2

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 オリジナルフォーメーションは4-4-2。より正確にいえば、SBがCHの高さまで取ってSHを押し上げウィング化させるので2-4-4に見える。相手が4-4-2系でセットディフェンスの組むのであれば、完全に噛み合った状態に。

ウィングの静的なポジショニング

図3

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 そこからハーフレーンにレーンチェンジするウィング(SH)。まずは、SBの束縛から「離れ」、味方のボールホルダー方向に「寄る」動きで、SBについて来るか来ないかを選択させる。

 ウィングは、大体の試合で右ウィング吉尾、左ウィングタカチョー(石原)が入っている。2人とも、シャドーストライカー的な性格で、純粋なタッチライン際だけでなくハーフレーンに入っても十分に力を発揮する。というより、この可変翼機構を完成させるうえで重要な選手になる。

図4

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 キーは図中のコメント。特に2人以上の選手の間に立つ焦点のプレーは超重要。ハーフレーン攻撃の要と言える。

図5

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 この焦点のプレーだけで、相手SB、SH、CHに問題を引き起こす。こうした静的なポジショニングによって、自分たちの負荷はそれほど上げず、相手の判断負荷を上げてしまうあたりはポジショナルプレーで言うところの位置的優位性と言える。

SBとFWによる動的なポジショニング

図6

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 合わせ技でSBが高い位置を取って、今度はSBがウィング化。いわゆるウィングロールを全うする。ボールホルダー方向に「寄る」ウィング(SH)と「離れる」SB。いわゆる動的ポジショニングにおける「ダブルパンチ」の動き。相手の頭にはてなマークを浮かべさせる。

図7

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  さらに応用の合わせ技。FWがカットアウト、つまりはタッチライン方向に外流れしていく動きでボールホルダー含めて4人称の崩しも可能。相手SBは、戦術的判断において高負荷状態になる。さらにそこへウィングが「差金の動き」でローポストに突撃。しかも、ハモンロペスやジャメといったタイプがFWに入るともう止められない。

おわりに

 今回は、ベガルタの可変ウィングの4-4-2が焦点のプレーを代表とする静的なポジショニング、SBとFWが連動するダブルパンチのような動的なポジショニングで相手守備を攻略していくポジショナルな攻撃を紹介しました。

 次回を一応予定していて、次回は翼を支える胴体、ビルドアップについて紹介したいと考えています。よろしければどうぞ。

参考文献

①可変システムについて

ビエルサ×ビルバオのコレクティブフットボール

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_21.html

 ビエルサ×ビルバオのコレクティブフットボール

 http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html

②焦点のプレー

将棋とサッカーの共通項2

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/05/blog-post_28.html

考えて走る10 味方を追い越してフリーにさせる

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2011/06/blog-post_20.html

③ダブルパンチ

https://www.youtube.com/watch?v=jeWD2Yrts18&list=PL11wlb1rGmn8ZgFAAqrrje0IhbIP6SmTx&index=14&t=0s

 ④F-14 トムキャット

https://www.youtube.com/watch?v=Stouo-bGLV0

【熱き決闘者たち】Jリーグ 第14節 ベガルタ仙台vs名古屋グランパス (3-1)

はじめに

 さあ、いきましょうか!ホーム名古屋戦のゲーム分析!静岡決戦が敗北に終わり、何もかもが終わりかと思ったその時、起死回生の一撃が飛び出る。俺たちのターンはまだ終わっちゃいないぜ。ということで、今回もゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、非常に迷ったのだけれど、3センター系の4-2-3-1と解釈。4-5-1として考えておけばよさそう。CBとSHは総入れ替え。シマオと平岡、関口と道渕がスタメンに。ゴール前とサイドに蓋をする狙いか。

 対して名古屋。ジョーがいない。マテウスがトップに入る。風間八宏トメルケール革命軍。狭いエリアを躊躇なく突っ込んでくる非常に恐ろしいチームだ。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く) 

ボール保持時

ビルドアップへの対抗は、ビルドアップ

 ベガルタのビルドアップの型は、CB間に富田が降りる、さらにそこにダンが加わる擬似3バックのスクエア型。特に後半開始の15分間によく見られた。合わせ技で、松下と吉尾も連動するのだけれど、立ち位置自体は不定形。横並びでCH化することもあれば、縦並びで松下がアンカーポジションにつくこともあった。ただ、やはり、2CB+富田+ダンのスクエアは変わらず。 

図1

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図2

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 後半開始からの15分間というのは、ベガルタがボールを保持する「俺たちのターン」だった。数字というのは、クライアントが望む結論に到達するための根拠として集めたり、夫が妻に対して飲酒を正当化するために休肝日の日数を説明したり、ひとつの主張についてその説得力を増すことができるツールのひとつだ(後者の例については上手くいかないケースが多く見られるのだけれど)。ベガルタは、データ上も60分までのポゼッション率が49.9%と八宏グランパスとほぼ互角に。前半に決闘を申し込み続け、勝利し、相手がよれて大人しくなったところでボールを、ゲームを支配した。

ポジショナル復活の15分

 対抗する名古屋の4-4-2ディフェンス。明らかに、守備の基準を見失っていた様子だった。2トップは、アンカーポジションにつく選手(富田や松下)を監視するぐらいで、CBやCBポジションに降りる富田に時間とスペースを与える結果に。時折、SHが3バック撲滅にくるのだけれど、自らトラップカードに飛び込むように、結局CH脇にスペースをつくることに。タカチョー投入後、特に顕著だったのだけれど、ベガルタ可変ウィングの第一攻撃パターン、「SHのハーフレーンへのレーンチェンジ」が徹底的に突く構造になった。73分のゴールシーンも、松下-平岡-シマオの並びに、アンカーポジションに富田。これもまた、松下に対して、名古屋のSHが3バック撲滅を図るも「CH脇が空く問題」が解決されず。タカチョーのハーフレーンへのレーンチェンジ、可変ウィング攻撃が決まる。

図3

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 また、51分、シマオからのレイヤースキップパス(最初→第3レイヤー)も見られた。レイヤースキップパスは、ベガルタにとって、「ボールを持てるぜ」、「ポゼッションできるぜ」を示すことができるひとつのバロメーター。後方のビルドアップ隊に時間とスペース、選択肢が存在し、前線が立ち位置調整できたことの証明。ポジショナルプレー、復活の15分間だった。 

 GKダンを含めた自陣でのビルドアップから、名古屋の守備基準を破壊し、複数の選択肢を提示。この伏線は、前半の決闘だったと思われる。消耗戦を避けるために、名古屋の監視が緩まった。そのわずかなズレで、名古屋にボールが持てない時間を創り出し、最後にはゴール前での大きなズレとして3つのゴールを生み出す結果になった。 

ボール非保持時

デュエルスタンバイ

 ベガルタのセットディフェンスは、4-4-1-1のような型。実際には、吉尾がシミッチ番、松下が米本番、関口が宮原番だったので、5-3-1-1のような形に見えた。70分くらいからは、4-5-1ぽく。さらに因数分解するのであれば、サイド守備は4人(SB、SH)、中央守備は5人(CB、CH)と見ればよい。テレフォン。

図4

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図5

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 中盤3人が2センターなのか、3センターなのか、いずれにせよ相手ポジションによって変わったため、富田がアンカー役としてカバー専門になり、松下と特に吉尾は、この世のまで相手を追い続けた。当然、ボールが入れば、激しいデュエルで対抗し制圧した。主役は、平岡、シマオの2CBだった。

相手に前を向かせない2CB

  平岡とシマオは、名古屋の2トップに前を向かせまいと圧倒的な制圧力を見せた。シマオは、長谷川にボールを一瞬たりとも持たせないようにとデュエルを仕掛け、奪い取った。また、SBがぺナ幅に陣取って、SHが降りてディフェンスライン化する傾向が強く、巷で話題になっている「SB-CB間チャンネル空いてどうするの?問題」への解を見せた。

図6

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 よく見る形だ。特に、より戦術的に戦う、通俗的に言えば守備的に戦う場合、SHがSB化して5バックだ6バックだになるのはよくある形だ。人海戦術と言われればそこまで。でも、デュエル勝利し、ボールの主人であろうとチャレンジし、そして支配するまでにつながった。チャンネルを空ける心配をせずアタックできたことも関係がある気がする。気がするだけ。

考察

ボール保持の表裏

 ボールを持たせないこと、ボールを持つことに対して、よりチャレンジングに挑戦的に取り組んだものと思う。やはり、静岡決戦の連敗が彼らを大きく進歩させたようにも感じる。もちろん、対名古屋感はあるし、次節の松本戦で同じやり方でうまくいく保証はない。ただ、渡邉監督が言う守備のプレー原則「球際、切替、走力」により立ち戻れたのだと思う。ここの攻撃時の「良い立ち位置」。出現した4-3-3。行きつく先は、オールコートマンツーマン+ボーダーレスポジションのビエルサスタイルかもしれないし、そうじゃないかもしれない。いずれにせよ、個人コンセプト優先主義の磐田、清水、名古屋と闘い敗れ、勝利したことで得られたものは大きい。 

おわりに

 僕は、「球際」という表現があまり好きではない。何なんだ球際って。何と何の際なのか。ホームと線路との境を線路際だ、ホーム際だと呼ぶのだけれど、では球際とは。ボールと何の際なのだろう。言葉遊び?そう、遊んでるよ。真面目に遊ばなければ、面白くない。

 当然、ボールと選手との際だと思う。だからこそ、僕はあまりその表現が好きではない。あれは、「僕」と「彼」との際だ。ボールを持つ彼の聖域に、聖域侵犯をしてボールを奪いに行くのが僕だ。

  ボールが欲しい。サッカーをやる以上は、どんな選手でも、ボールを使ってサッカーをしたい。けれど、相手がそうさせてくれない。相手だって、ボールが欲しい。サッカーがしたいのだから。そんな思いと主張と決断がぶつかるのが、「球際」と呼ばれるものなのだと思う。

 思いが強い方が勝てるとは、当たり前なのだけれど、必ずしも限らない。でも、どっちがサッカーをしたがっていて、いままでも、これからもサッカーをしたいと考えている方が少なくとも考えていない方よりは、ボールを奪えそうな気がする。多分。ディベートのような、主張のし合いのような、一番ボールを欲しがっている相手と。あれは、まさに決闘だった。そして、僕たちが勝った。

 

 「逃げる?それもいいわ…でも、前を向かぬものに勝利は無い!」こう言ったのは、アンジェ(AC4)だ。

 

参考文献

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【Freude, schöner Götterfunken】Jリーグ 第13節 清水エスパルスvsベガルタ仙台 (4-3)

はじめに

 さて、いきましょうか。アウェイ清水戦のゲーム分析。灼熱の日本平。静岡決戦2ndレグ。まさに光る宇宙。撃ちあいの試合は衝撃的な結末を迎えました。パスカット型ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、長沢がスタメンに。あとは変わらず4-4-2。

 清水は、監督交代後初のホーム。手堅く4-4-2からカウンターが現実的な路線か。2トップが強力。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

ボール保持時 -ビルドアップ-

北川vsベガルタビルドアップ隊

 ベガルタのビルドアップは、2CB+2CHの基本型。志向としては、ダイレクト志向。ハモンを中心として、シンプルに2トップに当てる形だ。対して、清水のビルドアップ妨害は、基本は2トップが縦にならび、ボールを持っているCBに対して、パスレーンを限、4-4が網を張ることで出しどころに困らせる作戦だ。いわゆる、4-4-1-1ディフェンス。レスターの岡崎が輝いた策だ。よくある型なのだけれど、強力だ。特に、ボールを「持たせる」CBの質がもろに出る。また、たとえボールが出ても、個人の決闘デュエル)が待っている。勝負。

 特に、北川は、背中にも目をつけることでCHを監視しつつ、CB常田をチェックした。俗にいう、カバーシャドウ。1人で2人を守るやり方だ。常田のパスレーンをSB方向に限定することで、ベガルタの攻撃の入口を邪魔することに成功。さすが、日本代表といったところだ。

図1

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第2レイヤーに出現するSHが相手CHをピン留め

 では、ベガルタはどうするか。簡単だ。基準を増やして、選択肢を増やして、局面を複雑にすることで相手に戦術的負荷をかけること、頭を沸騰させることだ。まずは、SH。8分ごろから、タカチョーが相手SB-CH付近に降りる焦点のプレーで、相手に選択を迫った。タカチョーにボールがつけば、ハーフレーンで前を向ける。それを邪魔するなら、ウィングレーンとセントラルレーンが空くハーフレーンのメリットを存分に活かせる。あとは、タカチョーからレイオフでCHに落とせば、北川のカバーシャドウを無効化できる。

 ただ、結果として、常田のミスも響いてしまった。彼が細かくボール交換して、相手のベクトルを操作する操作系CBではないこともある。あとは、常田にボールが回るように仕向けてきたのは北川であり、清水だ。そこにどう対応するかも、サッカーの魅力のひとつだ。全てができる人間なんてこの世にいない。いや、メッシがいた。いたけど、彼は神だ。やっぱり、そんな人間そうそういない。なので、「みんなで攻めれ」ばいい。

図2

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椎橋とダンによる擬似3バックビルドアップ

 ひとつの解決策だ。2CB+2CHのボックス型ビルドアップの底の枚数を変えることで、相手に選択を迫れば良い。まずは、椎橋がCB大岩とSB蜂須賀の間に降りることで3バックになり、2トップでは追いきれない状況を創った。対する清水も、場面によっては、SHが3バック撲滅を図るシーンもあったのだけれど、基本的には2トップに任せていた。そこまで整備されていないと取るか、自分たちの狩場で獲物を捕らえたいのかは、少し分からなかった。そのどちらのような気がする。気がするだけ。

図3

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 椎橋だけでなく、ダンも加わってビルドアップに参加していた。ただ、こうなると流石に清水も前線に枚数を送り込んで、ビルドアップ妨害を図ってくる。今や懐かしい光景なのだけれど、かつて(シーズン開幕後何試合かは)、ベガルタはCHが降りるは、シャドーが降りるは、WBが降りてくるはで大変だった時代がある。相手もぞろぞろ引き連れて、大学生の飲み会ではないのだから、そんなことでは自陣で窒息してしまう。なので、この試合のように、CHが降りてきたり、SHが降りたりするのはCBを助ける意味においては大きいのだけれど、それが全てを解決してくれる神のご加護ではない、ということだ。難しい。

吉尾のレーンチェンジとハモンのカットアウト

 そんななか、希望が見えそうな形がウィングレーンで縦パスを送る「1レーンアタック」だ。有効か?と聞かれたら、「とても有効だ」と答えよう。キーになるのは、SH吉尾が担当するウィグレーンからハーフレーンにカットイン、自分がいたスペースを空けることで、「誰か」が走り込む場所とボールが移動できる場所を提供。吉尾のこの動きで、2つの効果があるのだからお得。そして、その誰かとは、2トップの1人、ハモン・ロペス。相手SBが吉尾におびき出されれば、その裏を、出されなくても、SBに出現して担当者に激務を課すことができる。パラレラ、インナーラップの効果と同じで、タッチラインと並行にボールを受けられるので、ロストしにくいし、なによりボールロストしてもサイドなので危険なカウンターを浴びにくい。しかも、相手陣深くにボールが入るため、そこからポゼッション組み立て、ゲーゲンプレスへの移行など、良いことだらけだ。サイドの田楽刺しは、さながら、棒銀戦法のように論理的だった。 

図4

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考察

やるべきことは変わらない

 試合全体を通して見れば、お互い4-4-2からダイレクトに組み立て、同点・逆転されたタイミングからベガルタがビルドアップの形からボールを持ち始める。細かなミスもあって、なかなかうまくいかなかった部分もあったのだけれど、前半で同点までもっていけたのは大きい。だからこそ、前半終了間際の失点はもっと大きかったのだけれど。

 だからこそ、後半に同点に追いつき、選手のコンディションもあるなかで押し込み続け勝利をつかみにいったチームの姿勢は、尊敬と称賛を集めるべきた。でもそれを美しい敗戦でまとめたくない自分もいるし、神は細部に宿るのをまたも実感する試合だったように思える。 

おわりに

  灼熱だった。スタンドがだ。対面するゴール裏、清水サポーターが陣取るスタンドは、とても降格圏にいるような、監督交代というショック治療を行ったチームの熱量には見えなかった。もちろん、席には空席も目立った。静かに戦況を見守りながら、選手がファイトすれば歓声を上げ、ゴールを奪えば、さらに大きな歓声をあげ、旗がたなびいた。試合後、日本平の夕陽は、一段とオレンジ色に輝いていた。

 僕も3度ガッツポーズを繰り出した。とびきりのやつだ。でも、何かが足りない。多分、足りなかったんだと思う。そのプレーを、一瞬を喜び、声を上げることができたのか。サッカーを、ベガルタを観る喜びをかみしめてますか?頭にしわを寄せることだけが、人生を生き抜く秘訣ではない。その時、その一瞬に生命を燃やしているか。これから、僕は僕自身に問い続けたいと思う。誰にも強要はしない。今度のガッツポーズは、最高のやつを用意したいと思う。試合には負けたのだけれど、日本平の海は、輝いていた。

 

 「苦悩を突き抜ければ、歓喜に至る」こう言ったのは、ベートーヴェンだ。

 

参考文献

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【もっと強くドアを突き破るんだ】Jリーグ 第12節 ジュビロ磐田vsベガルタ仙台 (2-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ磐田戦のゲーム分析。静岡決戦の1stレグ。順位表見てもここをものにできるか否かが、これからの戦いの難しさを左右しそうだ。気温も上昇してきて、コンディション面での心配事もあるが勝てる時に勝っておく、それだけだ。今節もいつものゲーゲンで。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは4-4-2。変わらず。

 磐田は、5-4-1になる3-4-2-1。アダイウトンの突破が脅威。守備陣も神ンスキーと大井が中央をブロックする。あとは強力な神通力。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

ボール保持時

ビルドアップの型で変わる磐田のプレス

 ベガルタのビルドアップの基本型は、CH2人+2CBになる。そこにSBがCH高さぐらいに構えて、出口を創っておく。この試合も例外なくその型になった。ボックス型と逆丁字型、あとは松下が相手のCHからのプレッシャーを嫌ってか、高さはそのままハーフレーンに立つこともあった。台形型というべきか。いずれにせよボックス型の亜型だ。

 対決する磐田。セット守備は5-4-1、あるいは5-2-3、シャドーの一角がトップのポジションくらいまで上がって5-3-2ぽく見えることもあった。まあいつものピッチの状況を観察する時の入口ぐらいで考えればよろし。

 ただ、面白いことにちょっとした化学反応が起きる。ベガルタの 2CBを中心としたボックス型に対しては、磐田の前線が激しくプレッシングする。失うものは何もない。信じて走る。魔法。一方、この試合では椎橋だったのだけれど、CB脇・SB背後、CB間に降りる逆丁字型ビルドアップのパターンだと、シャドーが行くの?WBがいくの?CHがいくの?トップがいくの?といった具合に出足が鈍る。ちょっとしたバグが起きたように。

図1

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図2

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 考えられるのは、ベガルタのビルドアップに対して、前線からのプレス、いわゆる前プレというやつで顔面からプレスを浴びせる作戦だったのだけれど、そこまで仕込まれていなかった。つまりは、「2CBには激しくいけど、ただし3人になったら…」。もちろん、戦術的に、狙いを持って3人に対してはリトリートせよなら良いのだけれど、ちょっと躊躇する辺りなんとも言えない。ということで、ベガルタは、徹頭徹尾3人でボールを持った、というわけではなく、相手を押し込んだ形で基本的には2CB+2CHの形をとった。

混乱する磐田の5-4-1と2トップに力負けしない強さ

 ベガルタのポジショナルアタックの基本型は、2CHが相手の2CHを相手して、SBがウィングレーンに張り出す。相手のCHとSH(攻撃時シャドー)に対して、あえて争点(攻守の切替が発生する場所)を与えた形だ。そのなかで、SHの吉尾とタカチョーがハーフレーンにレーンチェンジ。CHの後方にポジショニングすることで、相手に選択を迫った。

 特に右からの攻撃が多かったベガルタ。ハーフレーンには吉尾。磐田の担当者は田口になる。いち早く吉尾の存在を警戒したが、結果として、CH間の門を開けジョンヤからハモン、ジャメの2トップへの楔パス(スキップパス)を許した。ただ、そこで勝てなかった。ハモンもジャメも潰されるシーンが多かったし、そもそも5バックなので、選手間の幅も狭い。奪われてもゲーゲンプレスに移行できればよかったが、CHが前目に加勢したこと、アダイウトンのロングトランジションを警戒してかエリア制圧がなかなか見られなかったことが背景として考えられる。

図3

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 加えて、CBのミスから先制点を許してしまうなど、2FWと2CBが高いパフォーマンスを出せるか、相手にとって優位になれるかが今後の鍵になりそうだ。

ハーフレーンで苦悩する吉尾

 ただし、あくまで2トップを使った直接攻撃は、空いているなら攻める第一優先であって、ダメなら他をあたるだけだ。それがハーフレーンの吉尾だった。吉尾は、SHとしてウィングレーンに張って、ハチと協力して瞬間的に数的優位を創ったり、レーンチェンジで位置的優位を創るなど、役割を果たそうとしてた。そう、「していた」のだ。

 実際にはうまくいかなかった。それは、トラップのミスやキックミス、あとは奪われたあとのプレスバックに現れてしまった。32分ごろから、ベガルタの攻撃はあまりうまくいかなくなる。たとえば、ワンタッチでレイオフできれば、攻撃速度を減速させずに進めたところを2、3タッチかかってしまったり、奪われてから磐田の選手に置いていかれたり。

 当然、「敗北の原因は吉尾」だなんて言わない。絶対に。彼だって、コンスタントに試合に出続ける難しさ、大変さだって今まさに経験中なわけで。ミスはするし、むしろするべきだと思う。彼がもっと大きく成長するために。ただ残酷なのは、試合の流れを左右しそうな、キーになるポジションに入ってしまったことだ。あとは、交代で入った道渕とのコントラストだ。カットアウト、差金の動き、ローポスト襲撃とかとかとか、可変4-4-2のSHに求められる動きをしていた。やはり残酷だ。

 可変4-4-2のSHは間違いなく、今のベガルタの翼だ。それを誇りに思おうが、そこで「違い」を見せようが、流れを手放そうが、それがやはり吉尾の財産になる。すべてを込めて、ドアを叩け。もっと強く。Gotta knock a little harder。

ボックスベタ張りにするベガルタ。ゴールは近そうで遠い

 特に後半は、磐田の一撃カウンターを警戒しながら、相手を押し込んでポジショナルアタックを繰り出していた。松下からジャメへスキップパスを刺したり、ハチがハモンに刺したり。それでも遠かった。逆転した2試合が劇的だったが、やはり先制点が取れないゲームではね返すのにはパワーがいることを痛感した。 

考察

完成度が高まる4-4-2

 まだ、3バックのころの癖が残るのだけれど、どこに立って、誰が空くかが分かって来たような気がする。しかも相手に選択を迫るプレーができている。ここから、可変せず4-4-2のまま攻撃するなど、嵌めたり、外したりを繰り返して相手を混乱させるような試合運びをしたいものだ。

世界の果て

 この試合を観てふと思った。いつか、高い個人コンセプト(選手個人の技術負荷が高く、技術難易度が高い)によって、並みのポジショナルプレーは駆逐されてしまうのではないかと。ポジショナルプレーが技術的負荷を極限までそぎ落として、プレー技術難易度を下げてプレーすること(いわゆる「シンプルにプレーすること」)、3つの優位性からピッチでの影響力と影響範囲を高めることなら、「高負荷のプレー、高難易度のプレーを局所的に、瞬間的に」やれば、突破は可能なのではと。いくらポジショニングを徹底したところで、アダイウトンは独走するし、ファイナルサードで人数かけられたら守備は決壊する。

 そうなると、ペップ、クロップのポジショナルチームと風間さんの止める蹴るチームしか、この世の果てにはいなくなるのではと。アヤックスが日本ぽくて話題になった。少しずつ、見えてきたのかもしれないし、見えてないかもしれない。それに、これは僕の思い過ごしかもしれない、思い過ごしじゃないかもしれない気がする。気がするだけ。

 その時、ベガルタは?と思ったのだけれど、ベガルタベガルタなので、特別気にする必要もないのかなと思った。これは間違いないと思う。 

おわりに

  負けた。それだけだ。ミスをすれば不利な状況になるし、ミスを続ければ失点にもつながる。試すなかでの失敗なのか、たんなる凡ミスなのか、これは見なければいけない。すべてが許されるのは、勝利した日の夜だけだ。では、上手くなればいいのか?技術を高めれば解決されるのか?すぐ結論にとびつくな。結論に飛びつくのは危険だ。事実は見つけて、事実を積み上げる。それが実績になる。

 何が正解か分からないこの世の中において、何かに振り切ってしまうというのは、ある意味ひとつの答えかもしれない。でも、あちらとこちら、0と1、黒と白との間に常識が存在しているように、両ゴール前だけでサッカーすべては語れない。行間を読むこと、文脈に身を委ねることで初めて、どちらも見えてくる。

 ちなみに僕はまだ見えない。もしかしたらもう見えてるかもしれない。サッカーを見るというのは、とても難しい。でも常に、ピントを合わせたりぼかしたり、サッカーとして見たり、ひとりの人間として見たり続けていこうと思っている。

 

 「ただ、探しているだけだ。扉をな」こう言ったのは、ヴィンセント・ボラージュだ。

 

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