蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【抜錨】Jリーグ 第1節 ベガルタ仙台vs名古屋グランパス (1-1)

はじめに

 さあ、いきましょうか!開幕戦のゲーム分析!ついに始まる2020年シーズン。不安と期待を胸に始まる初戦。新しい戦い舞台に踊りだす戦士たち。黄金のピッチ。赤い春雷がユアスタに襲いかかる。今季もゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタ仙台は、FWにケガ人続出の影響でキャンプで取り組んでいた4-2-3-1ではなく2トップの4-4-2。新加入で古巣対戦となる赤﨑をスタメンで抜擢。また、手薄の左SBには緊急補強で加入した柳が登録直後にスタメン。匠は左ウィングで起用。

 名古屋は、ルヴァンの鹿島戦と同じメンバーとフォーメーション。SBに離脱者が出ているのと、こちらもFWが離脱中。本来1トップを期待されている山﨑が途中出場カードに。両ウィングのカウンターアタックが強力。

sendaisiro.hatenablog.com

 概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • 本ブログにおいては、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。(文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)
  • また、ボール保持時については、①相手守備陣形が整っている(セットオフェンス)、②相手守備陣形が整っていない(ポジティブトランジション)に分ける。ボール非保持時についても、①味方守備陣形が整っている(セットディフェンス)、②味方守備陣形が整っていない(ネガティブトランジション)局面に分けている。

ボール保持時

主戦場はサイド。そして速く。

 攻守にハードワークと強度の高いプレッシングを今季テーマに掲げる木山ベガルタ。フルメンバーをなかなか揃えられないなか、この試合でもその取り組みの一端が垣間見えた。ベガルタのポジショナルアタックは、縦志向が強く、CBがボールを持つとウィングをターゲットにボールを蹴りこんだ。特に、右ウィングに入った道渕をターゲットに相手を押し込み、トランジション勝負に持ち込もうという意思を感じた。1トップ不在のベガルタ。攻撃ルートが両ウィングの2方向しかない「頭をもがれた鳥」状態なのだけれど、この試合の左ウィングは匠。決してハイボールを競らせたくないし、王にそれは相応しくない。そこは、加入したばかりだが木山さんが良く知っている柳が担う。

図1

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 185㎝、80キロの柳の決闘相手は、19歳のSB成瀬。なるほど、色々と捗るな(違う)。1トップを張れる選手がいないなか、ポイント作りたかったのは両ウィングになった。もともとウィングがキーになるというコメントもみかけた木山さんのサッカーにおいては、非常に重要なポジションになる気がする。気がするだけ。プレビューでも触れたのだけれど、ゼロトップ的に2トップが動き、ウィングはSBを狙い撃ちする策だ(実際はゼロではなく2トップのままだったのだけれど)。名古屋のウィングは、スピードもありがんばれるタイプでもあるので、守備で不利な状況になれば果敢にプレスバックしてくる。また、SBが高いポジションを取れば、追従して自陣深くまで下がってくる。そんな「ベガルタがやりたいこと」と「名古屋の戦術的習性」を重ねることで、より高い位置で優位性を築こうとしたのがこの試合の木山ベガルタだった。実際に先制して失点するまでそれなりに実行できていたように見える。ただ、そう簡単にいかないのが、サッカーというスポーツの良いところであり、意地悪なところだ。

左ハーフレーンは誰のもの?問題とマッシモ流電撃プレスバック

 実際には、サイドで高い位置でポイントを作る作業がうまくいっていたかと言われるとそうとも言えない。左サイドは、柳、匠、ジャメの連携がまだまだ。当然といえば当然だった。木山さんの言うように柳も攻撃的な選手なので、自らボックス内に向けて仕掛けるシーンがあった。これは彼の良さでもあり、問題のあるプレーではないのだけれど、向かう先は左ローポスト。インスタ映えする大人気エリアだった。匠もそのエリア付近でプレーしたがるし、左利きのジャメはやはりカットアウトで外流れしてくる。そうなると、「誰が前に出て、誰が後ろをフォローして」のスペーシング的思考からは遠く、結果左ハーフレーンで渋滞を起こす結果になった。もちろん、19歳SB成瀬の対応の良さや中谷・丸山の2BCコンビ、米本・稲垣の鬼センターのケアもあったのだけれど、簡単には崩せなかった。いくつかシュートシーンまでもっていったので、そこは今後突き詰める部分になる。

図2

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 ただし、問題は、名古屋のプレスバックがかなり強力だったことだ。名古屋のトランジション時のプレッシングは、敵陣ではエリア制圧型になって、ボールを奪って超ショートトランジションを発動して攻め切ってしまう意思を感じられた。ベガルタも、戦前にその特徴を理解していたのか、前述の縦に速い攻撃であったり、なるべくなら敵陣にボールを運びたい意図を感じた。それでも、名古屋のスピードは速く、なかなかポイントを作るまでに至らなかった。それでも、道渕を中心に相馬やマテウスの背後にできたエリアをポジティブトランジション時には攻撃していたのだけれど、プレスバックに加えて、両SBがカウンター予防で残っているので、2CBと1CHと合わせて5枚との対決になってかなり難しかった。

 また、この試合で名古屋の2センターが強力だったこともボールを持った攻撃を難しくした要因にも見えた。たとえ、SBを引っぱり出したとしても、米本と稲垣がSB-CB間チャンネルを埋めるので、簡単にチャンネルアタックを繰り出すことができなかった。高く上がれば背後を突かれる不安もあるので、SBが深くマイナスクロスを出せる位置まで前進できなかったのも、こうした「前線でのポイント」づくりがなかなかうまくいかず、全体的に低い立ち位置を取らざるを得なかったのかと思う。多分。 

図3

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ボール非保持時

ゾーンごとで変身するセット守備

 ベガルタのセット守備は、4-4-2でセットアップ。ゾーン2~ゾーン3のハーフラインから敵陣では、SBが高い位置まで縦迎撃する。ウィングはもちろん相手SBをターゲットにチェックをかける。2トップは、相手CBへ強烈にプレスをかけるわけではないのだけれど、2センターを意識しながらサイドを限定して、前述のウィングとSBで取り切ってしまう意図が見えた。また、押し込まれた時は、SBがディレイディフェンス。ウィングがリトリートする時間を稼ぎ、ウィングvsウィングの構図を作る。SBは後方のスペースを埋める手厚い形に。名古屋の4バックがゴール前を守る形を堅持するのに似ている。似ているが、自陣にリトリートしてしまった時の対策であって、基本型は前プレで嵌めこみたいのだと思う。

 守備の約束事。かなり整備されて意図的なものを感じるので、キャンプ中も注力したのだなと感じる部分だった。ただし課題になるのが、その「継ぎ目」の部分であって、「どこまでは前プレでどこからはリトリートなのか」は、試合やトレーニングを重ねて練度を上げないといけない部分に見えた。特に、蜂須賀、柳は、ウィングにバックカットやドリブルで背後を取られるシーンもあり、ウィングが素早くフォローにこないとリトリートもままならず迎撃で対応⇒背後を取られるの悪循環が生まれそうだ。この辺りは、木山さんが言う攻守にハードワークする部分の気がするし、個人的な感情を言わせてもらえれば、「頭をハードワーク」させていち早くその場所にかけつける、先に潰し込んでおくやり方が見られたらいいと思うし、そこがチームの進化代だと考えている。

図4

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図5

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 また、この試合でいえば、4-4-2の構造的痛点である2トップ脇を2センターに使われ、そのまま全体を押し下げられる展開になったのもどう対応するのかは、今後の彼らの対応を見たい。2トップは相手2センターと2CB、ウィングがSBに対応となると、誰がみるんだ?問題が発生する。しかも、ハーフレーン/第3レイヤーにトップ下やウィングが入ってきて、背中でマークするとなるともう相手CHにプレスをかける余裕はなくなる。というか過負荷になる。そこは2トップの一角にがんばってほしいのだけれど、あるいは全体として前プレ傾向にして、CBにもプレスをかけてビルドアップの根本からそぎ落とす策もある。そんなこんなもあり、蜂須賀にとっては、かなり大変な試合だったのかなと思っている。攻撃で高い位置を取れないのも構造的な問題の犠牲になった気もするのでやむなしだという説を取る。選手が良くないと感じる時は、そいつが悪いのか、そいつが悪いように見えているのかをよく観察する必要がある気がする。気がするだけ。見るのではなく、観察。多分。

図6

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ゲーゲンプレスが、来る。  

 前半は敵陣でなかなか嵌らなかったボール非保持になった瞬間の6秒。いわゆるネガティブトランジションというやつだ。自分たちの陣形も崩れているので、ゲーゲンプレスによる即時奪回か4秒リトリートで陣形を整えるか、その両方かになる。この試合は、わりと即時奪回を目指すシーンがあったのだけれど、するっと抜かれてしまってもいた。ただ、後半入りからそこを修正したのか、ボールを失った瞬間の初速があがった。ただ、やはりボールを高い位置に運べず、回収地点も自陣深くなってしまったので、あまり長い時間は見られなかった。それでも、54分ごろのジャメのシュートがあった辺りはゲーゲンプレスも決まっていたので、いい流れからゴールを決めたかった。こういう一本入る入らないが、新しい取り組みにおいては大事になってくると思う。 

考察

やりたいことはいっぱい。できないこともいっぱい。

 とにかく目先の試合は、今できることを最大限出すことが至上命題になりそうだ。高い位置からのプレッシングや即時奪回。狙いや意図が見えるポジショナルアタックなど、表現したいと思われる記号が見えた。ほんのチラッとだけど。昨季までのベガルタは、可能性は無限大にあって、その無限大の可能性の宇宙をいかに広げるかの作業だった。だから、その辺の惑星が崩壊の危機にあろうが、宇宙を大きくすることでメリットを最大化する作業だった。今は、どちらかといえば最適化。いくつか可能性があって、その可能性をひとつつずつ実現していく作業になると予想している。どちらがいい悪いはなくて、目指す先、目的地は同じく勝利することでしかない。個人的な感情でいえば、早く攻撃の形を見たいなと思っている。まあそれもひとつずつ。何というか後回しにしたり、放置したりするような感じが、肌感覚的にはないので必ず見えてくると思っている。 

おわりに

  コンコースに溢れる活気。寒く冷たいコンクリートが少しだけ暖かくなったように感じた。ゲートをくぐれば旧友への挨拶があちこちで交わされるのを見かける。最上段の席は、七北田川を通る風の通り道。やはり、寒かった。アウェイ席はマグマのように、赤く、そして熱かった。午後のユアスタ。時折輝く太陽がスタンドを照らす。金色の壁が姿を現した。帰り道は、車が主役の道が僕たちのレッドカーペットになる(勝って輝かせたかったけど)。毎年のことなににどこか緊張感もある開幕。今年もありがたいことに、サッカーが僕たちの街にもやってきた。こうして、2020年のJリーグが、ベガルタ仙台が始まった。さあ、いくぞ。

 

 「この感覚… 行くぞ!」こう言ったのは、アンジェだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html

 

 

イメージの向こう側へ。

 どうも、僕です。

 いつも、『蹴球仙術』を読んでいただき、ありがとうございます。今回は、日ごろご愛顧いただいている方々に、ひとつおしらせがあります。実は、本業の方で日本を離れ、海外生活することが決まりました。3月末には海を渡っています。

 仕事も生活も大きく変わります。正直、ベガルタもサッカーもどれだけ見れるのか分かりません。そして、書けるのかも分からないです。今季、いろいろと楽しみにしているというコメントをオンオフライン問わずいただきました。とても嬉しく、そして苦しかったです。

 書けなくなるまで書くを信条にやってきたので、残りの時間、書いていこうと思います。4月からも、変わらず書けたらいいなと思っています。

 では、よろしく。

【すべてを力に変えて】Jリーグ 開幕節 ベガルタ仙台vs名古屋グランパス 戦術プレビュー

はじめに

 どうも、僕です。今回は、2020J1リーグ開幕戦プレビューになります。キャンプでケガ人が多く出て、長期離脱者も出たベガルタ仙台。開幕前からかなりのピンチと言えます。そんななかで、リーグ開幕戦が非常に大きな試合になると思います。木山さんとしても、新しいチームとしても。そこで、開幕戦の相手であるグランパスのキャンプ、ルヴァン杯の情報から開幕戦の展望と対策を考えたいと思います。では、レッツゴー。

目次

グランパスのキャンプ状況

 有料記事なのであまり詳しくは書けないのだけれど、以下タグマでキャンプ状況を「コンテクスト分析的視点」で確認した。

www.targma.jp

 そのなかでキーワードとして、「プレッシング」や「前線から」といったワードが多く見られた。文脈的にもかなりポジティブというか、積極的に取り組んでいる様子がうかがえた。逆に、ビルドアップやポゼッションは、バランスを見てとか、全てではないのような少し引いたような視点で捉えられていた。どちらかというと、ボール非保持時のボール奪取、奪取直後の攻撃を重点的に取り組んでいるのだろうと仮定した。

 そのなかで、ボール奪取も、①相手陣でのビルドアップ妨害なのか、②ゾーン2あたりでセット守備を組んでハイ~ミドルプレスをかけることなのかをチェック。攻撃についても、相手陣形が崩れたいわゆるポジティブトランジションでの攻撃だけでなく、相手陣形が整っているポジショナルアタックについても見たいと思う。

ルヴァン杯 1節 名古屋グランパスvs鹿島アントラーズ(1-0)

ボール保持

 名古屋のボール保持攻撃は、4-2-3-1。陣形を大きく崩すことなく攻撃する。サイドでボールを回すと、トップ下に入った阿部がウィングとSB、CHの3人に加わることでスクエアを形成。サイドからの突破を目指した。ゾーン2、ゾーン3でのポジショナルアタックにおいては、高い「止める」「蹴る」能力を背景としたポゼッション志向が見られた。加えて、ボール非保持で触れるのだけれど、ボール奪取を中心としたデュエル能力の高さも加わっていた印象だった。いわゆる局地戦の3on3や4on4で鹿島相手にそこまで苦慮していなかった。

 ボール保持攻撃のなかでも、ボール保持を始めたばかりで相手陣形が崩れているポジティブトランジションでは、1トップに入った前田やウィングに縦志向強くボールを出していた。特にウィングは、相馬もマテウスも単騎突破できるタイプのウィンガーであり、サイドでボールを奪ったり、ボール回しでプレスを回避できると、一気に逆サイドのウィンガーがフリーになったり、1on1を仕掛ける展開になった。

 この試合、1トップだった前田はポストではなく本職がウィング。後半途中から山﨑が出てきたのだけれど、試合を通してサイドからのクロスやハイボールがほとんどなかったのでもしかしたら少し戦い方を微調整しているのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。GKからのキックは、どれも1トップ目掛けたハイボールで、CBとの競り合いにはほぼ勝てなかった。そこはあえて蹴っているのか、特に優先順位が高くないのかは少し分からなかった。

ボール非保持

 名古屋のボール非保持時のセット守備は、4-4-2。2トップがボールホルダーに制限をかけてサイド限定する形。SBが縦迎撃ではなく、後方待機することで背後のスペース管理に注力していたように見えた。全体的にラインは高く設定。陣形もコンパクトにしてボール奪取ポイントをより相手陣に近いエリアに設定していた。

 ボールが自陣に入ると、4バックはゴール前の守備を堅持。特にSB-CB間のチャンネルを意地でも通させないような意思を感じた。鹿島が4-4-2だったこともあり、守備としてはかなり嵌めやすかったようにも思える。ただ、ウィングがハーフレーンにレーンチェンジして、SBが高い位置を取ってウィングロールを発動し始めると少し対応が変わってきた。鹿島が2CB+SBの3バックでビルドアップの底を支えると小さなズレが出る。レーンチェンジしたウィングにSBやCBが引っぱり出され、ファイナルラインの背後を突かれるシーンが見えるようになる。前半20分ごろにはウィングが高い位置を取るSBに対応する処置で5バック、6バック化になる。セカンドも拾われる形になり、かなり厳しい型だったように見えた。後半も1点取ったこともあるのか押し込まれる展開もあったが、あくまで4バックは背後を取られないよう後方待機、ウィングが深くSB対応する。

気になった点

 トップ下に入った阿部が攻撃の全権を握っていた。ハーフレーンを主戦場としながら、サイドで数的優位を作るために動き、時にはレイヤーを降りてボールを受けたり最後のレイヤーに飛び出したりと躍動していた。面白いのが2トップ下ではなく1トップ下(3トップ下の解釈でもOK)な点。阿部がボールを持てば、同サイドのウィンガーと協力するシーンや逆サイドが走り込むシーンなど、攻撃ルートが2トップと違って広く、精度が上がっていけば間違いなく脅威になる。

 また、交代で入ったシャビエルも興味深かった。今のウィンガーの役割的には、ファーストチョイスではないのだろうけれど、トップ下に瞬間的に入ったり、阿部と協力して右サイドでポゼッションしたりと、後半押し込まれた右サイドを押し返すには十分だった。活動限界があって、もちろん時間限定、状況限定なのだろうけれど、相手を押し込んだ状態でも切れるカードがあるのは非常に心強い。

開幕戦の展望と実践的な対抗策

 さて、リーグ開幕戦の展望に入るが、名古屋グランパスの状況をまとめる。

  • 攻撃、守備もどちらも4-4-2系が基本型。
  • 4バック+2センターの守備意識が高く底堅い。4人のアタッカーで攻撃(SBが機を見て攻撃参加)。守備については2CB+2CHがキーになりそう。2人のSBはバランス重視。逆サイドのSBは基本上がらず、チャンスを伺う感じ。
  • 極端なビルドアップ妨害よりはトランジションを考慮したバランス型。4-4-2がコンパクトに高い位置からプレスをかけていく。ただし、あくまでもサイド限定。
  • マッシモ体制で十分に時間も取れており練度は高い。我々が知っているマッシモが見られそう。
戦型予想

  ベガルタは、4-2-3-1を予想。1トップには、ルヴァンで欠場した赤﨑が入る。ルヴァンから手を入れるのなら左サイド。ウィングには関口、SBにはパラが入る形でバランスを取る。トップ下には、匠のほかに、兵藤、ルヴァンで2ゴールのワタル君が入る可能性もある。ベガルタにとって痛いのは、FWの人選がかなり限られてくることだ。現状ジャメか山田か赤﨑になるが、正直1トップタイプだとはいえない。なので、4-2-3-1とはしているが4-4-2系と捉えた方が適切かもしれない。電話番号。

 名古屋も4-2-3-1と予想。1トップには山﨑が入るのではないかと読む。前田はあくまでウィングプレーヤーとしての姿に戻る。もし、前田が1トップ継続であれば、これまで阿部とコンビを組んでいたメリットを活かす意図かもしれない。あるいは、山﨑もいきなりスタメンではなくルヴァンのようにスーパーサブ的に出場する可能性も十分ある。核となる2センターには米本、稲垣が入り、2バックには丸山、中谷が入る。ここの要塞は崩さないだろう。また、攻守の要である阿部はもちろんトップ下に入るだろう。1トップ以外のセンターラインはかなりしっかりしているのが今のグランパスの強みと言える。

図1

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 と、こんなところで、実践的な対抗策を考えてみた。

mission1:コンパクトな前プレで窒息させろ!

 今季の取り組みのひとつである前線からの連動したプレッシング。また、セット守備に難があることもあり、前線からのプレッシング、いわゆる前プレで相手をビルドアップの根本から切り崩してしまう策だ。名古屋のビルドアップは、4-4-2から大きく形を変えず、苦しくなれば前線へとボールを蹴る。そこにいるのが山﨑なら有効かもしれないのだけれど、そこはシマオ、平岡に封殺することで回収、ショートトランジションを発動する算段だ。もちろん相手陣深く、ゾーン3で奪えたら非常に大きなチャンスになる。 あとは、両ウィングがスピードのあるタイプを起用すると予想されるので、ファイナルラインの背後を取られる、取られないの駆け引きに勝てるかどうかに注目だ。あるいは、山﨑が少し低めに構えて、松下や吉野とハイボールを競り合う展開になると少し嫌な展開になる。GKのランゲラックが蹴りこむことが増えると思うので、なるべくいい体勢でキックさせないように圧力をかけたい。

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mission2:ポジショナルアタックでゴール前に封じ込めろ!

 名古屋のセット守備の痛点として、ウィングがスピードと強度がある選手を起用する分「頑張れる」ことがある。具体的には、自陣深くまでボールとひとを追いかけ守備できてしまうことにある。昨季のベガルタに少し近いかもしれない。ウィングが相手SBに追従することで5バック、6バックになり陣地回復に時間と負荷がかかることだ。

 ベガルタも、4-2-3-1のオリジナルフォーメーションから、SBのウィングロール、CHのアンカー落とし、トップ下の列降ろし、ウィングのトムキャット可変で3-4-2-1へと変形。4-4-2セット守備の痛点である5レーン、4レイヤー、5ゾーンを同時攻撃する。トップ下の列降ろしは、兵藤の方が機能するかもしれない。

図2

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図3

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mission3:「FW」抜きでゴールを奪え!

  開幕戦のベガルタに与えられた命題のひとつとして、純粋なFWがいないなか、誰がスコアラーになるのかを決めないといけない。正確には、サッカーにおいては誰もがホームランバッターにはなれるのだけれど、西村問題のように誰がどこで点数を取るのかを作るのもまたサッカーの特徴のひとつだ。ホームランバッターを作ることができる。去年スタメンだった長沢、新加入のアレシャンドレが恐らく1トップ候補だった2人がいないなか、ゴールを奪う道筋を見つけるのが木山監督に求められる期待だ。

 「『誰かストライカーを探す』のではなく、『誰かをストライカーにする』」作業。その答えのひとつはウィングだと考える。ウィングがファイナルラインにストレスをかけ続けることで、たとえ直接ゴールにならなくても相手守備にダメージを与えることになる。名古屋は4バックがゴール前をまずは守ることを意識している。SB-CB間の狙い撃ちは難しくとも、背後へのオフボールランでSBをピン留めさせ、相手が前に出るパワーをそぎ落としたい。

図4

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 合わせて、中盤を手厚くすることでエリア全体を支配することが可能になる。そもそも、名古屋の2CBはかなり強力なので、そこをスポイルして2センターに対して数的優位を作った方がいいのかもしれない。ウィングが絞ってCH化するタイプではないのと、トップ下の阿部が前プレ担当であるなら、相手2センターが対応することになる。いわゆる「ゼロトップ」的な考え方で、①中盤構成能力のアップ、②4バックピン留め、③距離が近いことでボールを失った際の即時奪回が可能になる。たとえば、赤﨑でもジャメでも、中盤のボール回しに参加するために降りてくるのは効果的だと思う。まあ、これはウルトラCだろう。

おわりに

 今回、はじめてプレビュー記事なるものを書きました。キャンプでのベガルタがケガ人続出でかなりピンチだと聞いたのがきっかけでした。一応、界隈の隅っこで三下の三下とはいえ、『サッカー戦術ブロガーを名乗っている以上は、応援するチームのピンチに活路と希望を見出してみろよ。サポートしてみせろよ。』って言い聞かせながら書きました。タグマで名古屋を事前予習して、実際に試合を観て照らし合わせる作業は結構面白かったりしました。

 ただ、ベガルタに不確定要素が多く、プレビューというか、予想・妄想の類に分類されますね。それだけ、初戦というのは情報が少ないですし、逆にいえば情報が多いとも言えます(関係ないものもキャッチアップするという意味で)。名古屋は、王道の4-4-2で来ます。4-4-2は矢倉と同様、その弱点や強みが明確になっています。ウィングが開いたり、絞ったりするトムキャット可変で相手に選択を迫りつつ、SBが駆け上がることで攻撃に厚みをもたせれば、相手も引かざる負えないと思いますしそれを受け入れるメンタリティがあると思います。

 これ以上、失うものはないので、相手が引くならどんどん畳みかけてほしいです。逆に、引いてしまうと、ルヴァンでも弱さを見せたように、あまりいい形にはならなそうです。今季の取り組みにもリンクするので、少しの勇気と良い挑戦を後押ししたいと思います。それでは、またどこかで。

「君が広く攻めるなら、私はもっと広く攻めましょう。」と微笑む君。6

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新・3年生

春。

まだ少し寒い。

登校。

道を歩く女子生徒に声をかける男子。一人。

「おはようございます。詩さん」

国府多賀城朗。ただのサカオタ。

「おはよう。朗」

宮城野原詩。ただの重い女。

「少し待っててもらえれば、一緒に行けたんですけど…」

「あら、ごめんなさい。でも、そういうのは、本来幼馴染キャラがやるものだと思うのだけれど。」

「いやべつにキャラとか関係ないでしょ…」

「それに…」

「それに?」

「昨日の夜はあんなに激しかったのに、よくもまあそんなぬけぬけと朝の登校の話ができるわね朗。そういうデリカシーが一ミリも感じられない発言、私だからいいものの、ほかの女だったらあっという間に破局よ。私が聖母マリアのような寛容さを持っていたことに、もっと感謝をしてほしいものね。」

「ちょっと!!昨日というか深夜ですけど、スカ○プ繋ぎながら試合観ただけすよね!!!激しいのもプレミア特有の試合展開ってだけですよね!!!」

相変わらず。仲がいいようで。

「ああやってボールを追いかけまわしたり、ゴール前になるとシュートを撃つことしか考えられなくなるのどうにかならないのかしらね。」

「いやそれが醍醐味だったりするからね!!!」

英国からの花嫁

着席。

もろもろのおしらせ。

受験。大事な時期。大事じゃない時期なんてあるのか。

そしてひとつおしらせ。

「みなさんにひとつおしらせです。去年の9月から日本を離れるのでお休みされていた八乙女さんが3年生から復帰することになりました。」

戦慄。

戦闘態勢を取る。宮城野原詩。

「入って。」

扉が開く。

金色の髪をなびかせ。赤いリボンで結んだ「今日は」ツインテール

帰ってきた。

「あらためて、八乙女李七さんもこのクラスの一員だから、大丈夫だと思うけど、みんな仲良くお願いね。」

チャイム。休み時間。

金色の周りにできる壁。人垣。

「はは、すげーな李七。人気者だもんなー。」

「朗も行かなくていいのかしら。せっかく幼馴染が半年ぶりに帰って来たというのに。少し冷たいんじゃないかしら。」

「ああ、まあ僕は別にいいですよ。どうせ家も近いし、そのうち話すことになるでしょ。」

やばい。朗。それは悪手だ。

「……そう…『俺は李七のことをいつでも好きにできるからお前たちの後にたっぷり楽しんでやるよ(イケボ)』って言いたいのね。そういうことなのね……」

「違う違う!近所だし別に今じゃなくてもいつでもいいっていうか!」

「まるでレアル・マドリーのような強者の余裕みたいなの一体なんなのかしらね…そんなの『今日家に両親がいないから、一緒にご飯食べようよ(イケボ)』みたいなイベントが発生するに決まってるじゃない…私とは朝一緒に登校してくれないけど、八乙女さんとはいつでもできるってわけじゃないの朗…」

浮かび上がる黒いオーラ。セカンドインパクトの続き。世界の終わり。

「そんなアニメ展開ないですって!!!あと、やっぱり朝一緒に登校したいんじゃないですか!!!なんで言ってくれないんですか!!!」

黒い空気に、襲来する、金色。

「久しぶり、朗!」

「お、おう李七。元気だったか?」

「なによ心配してくれてるの?もちろん元気だったに決まってるでしょ?まあでも、ずっとママの実家にいてさすがに疲れたかも…」

「そ、そうか、まあよかったな…」

「なに?もしかして寂しかったの?それなら私もよ朗。早く日本に帰りたくて仕方なかったわ。ああ、でもそれなりに向こうも楽しかったんだけどねー」

「いいよなーイギリスだもんな。で、プレミアは?現地観戦できた?」

「ええ当たり前よ!と言いたいけど、実際スタジアムで観れたのは1試合だけだったわ…なかなか行けなくて。」

「まあピアノの練習と発表が本業だもんな。でも、1試合は観れたんだな!すげえよ、憧れるぜ!」

「何言ってるのよ朗。結婚したあとなんていつでも観に行けるじゃないの。今年で3年生になったんだし、そろそろ卒業後について具体的に話を詰めないといけないわね!」

「え!ああ、いや、それはだな…」

圧倒的輝き。黒さ爆発。

「………おかえりなさい八乙女さん。」

「ん?ああ、いたの宮城野原詩。相変わらず彼氏も作らずマイナスオーラ全開のオタクサッカー人生まっしぐらって感じのようね。」

「少しはイギリスの曇天で頭も心も曇っているかと期待していたのだけれど、あなたの方こそ相変わらず能『天気』のようでむしろ感心してしまったわ。」

日英戦争。

「言ってくれるじゃないの宮城野原詩!あんたみたいな根暗性悪グラビティ女がいまだに地上を闊歩していることに私の方が驚いているわよ!」

「あなただって、もう少しイギリスに居た方がよかったのじゃないのかしら?あなたみたいな頭すっからかん能天気バカがいた方がもう少し晴れの日に貢献できた気がするのだけれど!気がするだけかしら!」

止まらない悪口のプレス合戦。

「はいちょっとストップ!!休み時間終わるから!!」

ハモる。二人。

「「続きは放課後ね!!!!!!」」

「あの、僕の精神が持たないのでもうやめてください…」

新しい攻め合いのはじまり。はじまり。 

人物紹介

宮城野原 詩 (みやぎのはら うた)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタクなのは隠している。見る将。李七とはあらゆる面でライバル。

八乙女・ヴィクトリア・李七 (やおとめ・ヴィクトリア・りな)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタク。見る将。父親が日本人で外交官、母親がイギリス人で作家でハーフ。

 名前の「七」は、エリック・カントナの背番号から。

国府多賀城 朗 (こくふたがじょう あきら)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタク。見る将。 サッカーの見方を勉強中。

 李七とは幼馴染。子どものころに李七をお嫁さんにすると約束したらしい。

「君が広く攻めるなら、私はもっと広く攻めましょう。」と微笑む君。5

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続、そして序

宮城野原 詩という女性を語るにあたっては、少し時をさかのぼって捕捉する必要がある。彼女がどうして「再び」自らがつくった孤独の部屋に閉じこもるようになったのかというと、明確に、そして、決定的な理由があった。

彼女の人生のほとんどは、その「明晰な頭脳」と「並外れた成績」ですべて物語られてしまう。自然と彼女に集まるのは、その「知」を得たい者たちばかりだった。

ただし、彼女もひとりの「人間」である。まったくもって当たり前の話だが、知の集合体ではない。彼女はその知を使って、多くのひと達と繋がりを持ちたかった。いわゆる、コミュニケーションである。しかし、いや、当然かもしれないのだけれど、人間が生きてきた文化形態において、もっとも難しい行動のひとつがそのコミュニケーションである。

 

「重いよ。」

「え?」

宮城野原さんは重いんだよね。別に話聞きたい時に聞きにいくからさ。なんていうかそうやって、『私とは話さないの?』とかマジな顔で聞かれちゃうと困っちゃうんだよね。」

回想。 

 

相手のコンテンツ化。人間のコミュニケーションのひとつの進化系である。知恵袋や検索サイトのように。彼女自身への興味ではなく、彼女の中身である情報に、周りは高揚し畏怖し、利用した。

以来、彼女が近寄り難い雰囲気と学校で言葉を発する姿をほとんど見ないのには、十分すぎる理由があった。周りが『自分<宮城野原詩>』を必要としないと言うのなら、自らもまた、周囲を必要としなかった。その近寄りたいのに近寄らない、鬱屈した、根暗な、腹黒な、純粋で子供っぽい行動は、彼女のささやかな『無言』の抵抗なのであった。彼が現れるまでは。

約束の場所

下校。

探す。あのサカオタを。

探さなければ。そして僕は何を話せばいい?

 

勾当台公園。少し寒い。

見つけた。そして、異様な光景。女子高生を取り囲む小学生。

「いいかしら。ボールポゼッションを維持したいのなら、6秒間のゲーゲンプレスが必要よ。即時奪回して、攻撃形態を維持する。これがボール保持攻撃の要諦よ。いえ、守備陣形を整えながら攻撃する、といってもいいわ。」

「ちょっっっっっっとまったああああああああ!!!!!!!!!」

「あら?」

介入成功。

「ちょっと!!!なにやってんの!!!(CV:ブライト・ノア)。小学生相手に何やってんですか!!!」

「あらやだ。初等教育からクライフイズムを伝授中よ。」

「きわめて高尚な主義を隙あらば広めようとしないで!!!」

蜘蛛の子。散る。

「それで。何をしにきたの。」

「詩さんこそ、どうしてここにいるんです…」

「私はあの子たちに授業を。」

「そうじゃなくって。この公園に、またいるんですか。ここは、僕たちが一番サッカーの話をした場所じゃないですか。」

「そうね。でもそれも、あなたに近づくため。話題も場所もどうでもよかったわ。私からしたら、何か口実を作って話ができればそれで……」

堰が、切れた。

 

「俺はまだ、なにも話せてない!!!」

 

「……!」

「俺はほとんど、いや、まだなにも話せてない。いつも、教えてもらってばっかりで。だから、俺、サッカーの見方とかめちゃくちゃ勉強して、もっともっと話せるようにしたくって。」

「え…」

「食べる時間も寝る時間も友達と遊ぶ時間も、プレミア観る時間だって削って、いやそれは観てたか…とにかく!このまま一方通行になるのだけは…嫌だったから…」

「だから、最近は休み時間とか昼休み話せなくって。それが凄く苦しくて。ごめん。」

「そんな…そんなの知らない…」

「もっと…俺も話したくて、ただその一心で。」

「だから…そんなの知らないよ…」

涙。さようなら。涙。

「俺、詩が好きなんだ。サッカー話す詩も、そうじゃない詩も。全部。それにどんな理由でも、詩がサッカーが好きなことだって、紛れもないたったひとつの『事実』だ。」

ようやく見つけた。

 

「…もし君が広く攻めるなら、俺はもっと広く攻める。攻めてみせる。だから、いままでのように、これからも一緒に。」

 

私の光。 

「…私、『重い』わよ。朗君が想像している532倍は。」

「いいよ、どこへでも飛んで行ってみせる。」

「…私、重いうえに根暗でオタクよ。朗君が想像している433倍は。」

「いい。オタクさなら負けない。」

試合終了の笛が吹かれる。追加タイムも、逆転Vゴールも無い。完璧な試合だった。

Prelude

「でも、大事な告白を奇人マルセロ・ビエルサの名言から文字るなんて。そんな辱めあるかしら。」

「……!」

「そういえば、さらっと呼び捨てで呼んでくれちゃっているのだけれど、随分と大きく出たわね朗君。」

「……!!うああああ!!!ごめんなさい!!!つい!!!つい!!!」

「しかも、なにやら主人公キャラにでもなったかのように、熱いセリフの連続で。ゴール裏で声出し飛び跳ねした方が貢献できるんじゃないのかしら。」

「きゃああああ!!!やめてください!!!恥ずかしくて死んじゃうから!!!」

耳元で、囁く。

「しかも、『俺』ですって。」

さようなら、俺。ただいま、僕。

「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

「はいはい、少し落ち着いて。」

「数分前の僕をボコりたい。数分前の僕をボコりたい。数分前の僕をボコりたい…」

後の祭り。これからも祭り。

「でも、」

「でもとても嬉しかったわ。私以外に使ったら…そうね、少し、嫌かも。」

「絶対使わない!詩さんだけですから!」

「まあ、少しというか、すごーーーーーーーーーーーーく嫌かも。」

「ひーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

これにて、終劇。また、どこかで。

「ふふふ。さ、いきましょ。暖かいコーヒーを飲みながら、リーガでも観ましょう。あとそれと…」

「…それと?」

「私の方がもっと広く攻めてみせるわ。」

厳しい寒さに、和らぎが射しこみ始める3月の勾当台公園で。

そう彼女は、微笑んだ。

Fin

 

人物紹介

宮城野原 詩 (みやぎのはら うた)

 17歳。仙台市内の学校に通う高校生。朗とは同級生。

 サッカーオタクなのは隠している。見る将。自称重い女。根暗オタク。やったね!

国府多賀城 朗 (こくふたがじょう あきら)

 17歳。仙台市内の学校に通う高校生。詩とは同級生。

 やっぱりサッカーオタク。見る将。 サッカーの見方を勉強中。やる時はやる。

あとがき

  どうも、僕です。みなさん、「きみせめ」を楽しんでいただけてますでしょうか。年末にある会合で、サッカー本を読んでた時の自分の反応?を周囲に面白がられたことから「誰かが楽しんでることを観る」って実は面白いのでは?(性悪)と閃いたのがきっかけです。もともと、サッカーの見方とか一般論をみたいなのをまとめたいと思っていましたが、教本みたいにして説教臭くなるのも嫌だったので、「面白く読んでたらいつのまにか分かってた」ができたらいいなと思って小説形式にしました。ちなみに最初の構想は、解説を老人、聞き手を青年の設定だったのですが、上から目線を助長すると思って没にしました。

 実は、サッカー関連、サッカー関連以外問わず参考にしたブログ、モデルにしたキャラはいるのですが、「面白くする」がとてつもなく大変な作業で日々格闘でした。今でも果たして面白いのか自分ではよく分からないです。内容は、フォーメーションの基本的な解説になるので、試合見る時の参考程度で。詩と朗が性懲りもなく寒い公園でサッカー話している姿を愛でてもらっても構わないです。二人のように、サッカーを通して、日常によいサッカー与太話が溢れていきますよう願っています。それでは、また。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

ついに始まる新学年。止まらない観る将たちの与太話。

彼らを阻むのは、受験か、夏祭りか、学園祭か、それともかつての宿敵か。

サッカーの母国、イギリスより現れるのは、新たな観る将であり金髪の許嫁。

攻めて、攻め返される日常に、新たな舞台の幕が開ける。

次回、「君が広く攻めるなら、私はもっと広く攻めましょう。」と微笑む君。第6巻

『英国からの花嫁』 

何ゴール前でちまちまパス回してんのよ。さっさとシュートを撃ちなさい!

ーーー2ndシーズン作成中

「君が広く攻めるなら、私はもっと広く攻めましょう。」と微笑む君。4

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いつもと違う日常。

宮城野原詩は、苛立っていた。

その「会合」は、幾日も開催されていない。とはいっても1週間程度なのだけれど。

引き金を引くあのサッカーバカ<国府多賀城朗>が来ないから。

「(今日ももう帰ろうかしら)」

苛立ち。不安。

戻ってきたかつての日常。

忘却の檻に閉じ込めていた。孤独。

開く扉。彼が重い扉から出てきた。

「お疲れさまです…なんだんか、久しぶりになっちゃいましたね。」

「…なにかしら。私忙しいのだけれど。」

まずは様子見。牽制球。嬉しさを隠して。

「あ、ご、ごめんなさい。じゃあ、また今度にした方がよさそうですね。」

釣れない。苛立ちゲージUP。

「ハァ…少しくらいならいいわ。なにかしら。」

仕方ない。「いつもの」やつが始まる。

5-3-2というやり方

「5-3-2?」

「ええ、そうなんです。5バックのやり方というか、4-4-2からMF1人をDFに回したやり方を教えてほしくて。本読んで少し予習もしてきたんですよ。といっても、寝落ちしてましたけど…」

「ああ、そうなの。」

「だめ…ですか…?」

「いえ。別に構わないのだけれど。よりによって、5-3-2なんてね…」

「なにかあります…?」

「別に………」

不用意。スイッチオン。着火。

「(ブツブツ)そもそも陣取りの要素が強いサッカーにおいて大半のエリアを最初から相手に明け渡すのは好き勝手してくださいと言ってるしか…というか男気に欠けるのよ…(ブツブツ)こっちはリスク背負ってボール持って攻めてるってんだからちゃんと応戦しなさないよ…これがうちらのやりかた?知らないわよ!サッカーなのに初めからボールを持つことを放棄するだなんて考えられないというか…フッまあいいわ。100歩譲って勝つためだとしても、それで勝てなかった時何が残るのかしら…勝敗がすべてになった時、それは本当にサッカーなのかしら…(ブツブツ)」

「えーっと、あのー…やっぱりやめましょうか…?」

主義主張。好き嫌い。十人十色。

「いえ、続けましょう朗君。」

「は、はい…」

「ご存知の通り、5-3-2は、4-4-2のMFの1人をDFにしてDF5人した形なのだけれど、とても守備が固いやり方になるわ。中央にセンターバック3人とセントラルハーフ3人の計6人で中央エリアを守ることになる。」

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「す、凄すぎる…」

強固。城壁。

「さらに、サイドでの守備も、ウィングバックと呼ばれるサイドの選手が縦にスライドすることで、相手の前進に蓋をするわ。」

「あれでも、縦にスライドしたウィングバックの背後を突かれるのでは?」

「ええそうね。定石としてはね。」

「…違うんです?」

「たとえウィングバックの背後にボールが出たとしても、ゴール前にはまだ、4人のDFがいる。そう、カバーが間に合ってしまうのよ。」

「そうか!そうなるとウィングバックだって、後ろのカバーよろしく!って思いっきり前に出れるってことなんですね!」

「ええ。たとえば朗君がこうして後先考えず私に迫ってくるみたいに。」

妄想。才能。本望。

「ちょっとまったぁああぁぁ!!!勝手に歴史改変するの止めてって!」

「あら、巷じゃ異世界転生ものとか、並行世界線ものが大流行りだと思うのだけれど。最近の流行には敏感になるべきよ朗君。」

「それはそうですけど、僕の人生まで1秒ごとに世界線を超えさせないで!!!」

運命石の扉。あまり他作品のことを言わないでほしい。

「でも、散々サッカーのことを勉強したいとか言いながら、ありがちなハーレム独り勝ち展開でウハウハになったら許さないから。」

「勝手に膨らませた妄想で怒らないで!!!」

3人のセントラルハーフ

「とはいっても詩さん。ウィングバックだって各サイドに1人しかいないし、いくらカバーがくるとはいえ、90分間続けるのはいくらなんでも無理があるんじゃ…」

「たしかにそうね。だから、5バックの基本は、後方待機してあらかじめスペースを埋めることなのよ。とても気に入らないことなのだけれど。そうなると今度は、3人のセントラルハーフが力になる。」

「セントラルハーフ?でも彼らは、中央を守ってるじゃないですか。3バックと一緒に。」

「もちろんそれが最優先事項よ。けれど、サイドへの横スライドで相手の前進を止めることもまた、彼らに課せられた使命なのよ。」

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「ええ!3人がピッチの横幅をカバーするってことですか。そんな無茶な。」

「朗君。たとえば左舷の弾幕が薄かったら、厚くするのは当然よね。」

「ひとを歴戦の艦長みたいに言わないでください。」

「私にはもっと、手厚くしてくれてもいいのよ…」

「えーっと…そうやってウィングバックとセントラルハーフが協力して、相手の前進を防いでボールを下げさせるのか。あとはボールが下がれば、それぞれの選手が高い位置に移動して、前線からのプレスに移行していく。もうこうなってしまえば、5バックとかアビー・ワンバックとか関係無いですもんね。」

「説明口調ありがとう朗君。あとさらっと、アメリカ代表ストライカーを入れないの。」

「いやつい…」

女子選手。偉大。

「もちろん、サイドチェンジされてしまうと厳しいものがあるのも事実。でも、5バックとGKがいる安心感もあるわ。あとは、守備力の高い選手がセントラルハーフに入ることが多いから、役割とキャラがマッチするとも言えるわ。」

「凄いな。やっぱりすごいよ!」

「なによ、5-3-2党にでもなるのかしら。そうなったら、私とは袂を分かつことになる。できれば、別の形で会いたかったわ朗君。こんな残酷な世界があるなんて。」

「いやそうじゃなくて。やっぱり詩さん凄いよ!いろいろ知ってるし、説明も抜群に上手いし!」

称賛。称賛。

「ま、まああれね、そんなにそこまではだと思うのだけれど…でも私としてはもう少し、こうして話をするだけではなくて、リケルメのプレー集を永遠見たりしたいものなのよ。あ、あと、スタジアム観戦なんてのも行ってみてもいいわよ…」

「よし、じゃあ僕戻りますね。」

「…え?本当に5-3-2のことだけ話にきたわけ?」

疑念。不穏。

「え?まあ、今日はそうですね。僕としては、疑問が晴れたというか。次に話すことも考えておきたいですし。今日はこの辺で…」

忘却の檻に閉じ込めた怪物が、鉄格子を破った。

「…なによそれ…一方的に説明だけさせておいて、満足したらそれでハイ終わりだなんて。失礼にもほどがあるんじゃない?私を知恵袋かなにかと勘違いしているのかしら…」

「いやいや!そういうわけじゃなくて…ていうか、『いつも』話してる感じでしたよね?」

不安というものは、走り出したら止まらない。

「そう、そうそうそうそうよ!その『いつもの』やつもそう!そうやっていっつもいっつも、聞きたいことだけ聞いてさようなら。フッ、辞書とかG〇〇gleみたいに使って…」

言葉が止まる。俯く。

「…詩…さん…?」

「もういい。もうサッカーの話なんてしない。どうでもいいわ。そんなもの。さようなら。」 

 反、そして続。

扉の前。入るか、止めるか。

「待ってください!どうしたんですか詩さん!僕が何か気に障ることしましたか?謝りますって!」

「別になんでもないわよ!ただ、どうせあなたも、今までさんざん利用してきたひと達と同じように、私に利用価値が無くなれば、私のことなんて忘れていくのでしょう?もう耐えられないのよそんなこと!」

「そんなことしませんよ!大体、こんなにサッカーが大好きなひと僕は知らないですし、もっとたくさん話したいことだらけですって!」

静寂。開口。

「……別に、」

「私がサッカーに興味を持ったのは、あなたがサッカーに興味をもっていただけよ。」

「……え?それってどういう…」

「夢中になって『サッカー』の話をするあなたがとても輝いてみえたの。その日までのすべてが、どうでもなるくらいには。私、こう見えて単純なの。」

「だから、学校から帰ってすぐに勉強したわ。夜が明けるまで試合を見た。毎日のように。本も、駅前の本屋の棚はすべて読んだ。すぐにでもあなたと話せるように。」

「不思議なことに全く苦にならなかったわ。何も知らない競技がいつしか私を引きずり込む沼になっていた。そして、これも不思議なことに、あなたの方から私のところへやってきた。」

「…それって…詩さんは、詩さんがサッカー好きな理由は、僕だったっていうの…?」

一呼吸 。

 

そうか。あなたもそうだったものね。

あなたが話したいのは、『宮城野原<わたし自身>じゃなくて、詩さん<サッカーの話>なのよね』。

 

二呼吸。

ーーーあなたとわたしの、唯一のパス交換。繋がり。

「どう?失望したでしょ?あなたが愛するサッカーを私は利用した。あなたに近づくための道具にした。あなたが別の話をしていたら、それに詳しくなっていたかもしれないわね。嘘だと思うかもしれないのだけれど、これが事実よ。」

「いつもみたいに言うのなら、『真実は100通りあるけど、事実はひとつしかない』わ。」

ーーーそう、これが事実であって、現実。覚めない夢はとっくに覚めていた。

「さようなら。もう…もうきっと、話すこともないでしょう。サッカーと、サッカーを愛するひと達を裏切るような真似をした私とは口を利かないことが賢明ね。」

ーーーさようなら。サッカーに、夢なんて、無い。

「これで…終わりにしましょう…」

ーーーやってしまった。再び突き放すしかできなかった。傷つく前に。傷つける前に。

 

答えも聞かず駆けだす。たった独りで。

ただいま、孤独。ようこそ、暗闇。

おかえり、

 

涙。

人物紹介

宮城野原 詩 (みやぎのはら うた)

 17歳。仙台市内の学校に通う高校生。朗とは同級生。

 サッカーオタク?

国府多賀城 朗 (こくふたがじょう あきら)

 17歳。仙台市内の学校に通う高校生。詩とは同級生。

 やっぱりサッカーオタク。見る将。 サッカーの見方を勉強中。

【信じるもの】リーガ21節 バレンシアvsバルサ(2-0)

 はじめに

 どうも、僕です。高速レビューチャレンジ。今回は、リーガから。試合終了後10分で書き上げたので、状況だけをさらっとです。 

前半

 バルサは、ボール保持時3-3-4。中央2トップ的にいるメッシとグリーズマンに両ウィングの形。非保持局面は少なかったが、4-4-2でセット。メッシとアルトゥールの形と思われるが、メッシが右サイドに流れたりしていると4-5-1っぽくも見えた。前半通して、ボールを持つ時間を長くして、ネガティブトランジション時にはゲーゲンプレスによる即時奪回からの攻撃継続を目指したキケバルサ。3バックがボールを持つ時間が多いのだけれど、3センターがハーフレーンで受けて、ボールを前進させる機会が少なかった。右インテリオールのデヨングは、4-4-2ブロックの脇であるワイドゾーンでボールを受けることが多く、左インテリオールのアルトゥールはブスケツ位置とわりと低い位置でボールを引き出していた。こうなると、両ウィングから突破を図りたいが、あまり効果的な攻めができず。右ハーフレーンをメッシが使うので、デヨングが配慮してポジションを空けている気がする。ただし、ボールホルダーに近づく・離れるのダブルパンチの形が無く、スペースを創る・使うの連続攻撃が初陣ほど見られなかった。

 バレンシアのほとんどの時間は、4-4-2によるボール非保持だった。ゾーン1・2のローブロックを敷く対抗型を組む。ボールサイドに4-4-2が極端に片側圧縮する形で、ボールを追い払い、バルサが逆サイドにボールを運ぶと、逆サイドのサイドハーフが前プレ。それを合図に、全体が前プレのビルドアップ妨害で嵌めこもうとする。中央3レーンを4-4-2で封鎖していることと、バルサがそれでも中央をこじ開けようとしてこないので、ある程度プランが嵌った形。PKを決めたいところだったが、GKが凄かった。幅取りのウィングに手を焼く展開だと、守備強度が終盤まで持たない懸念があるがこの前半ならそれもなさそう。ただ、ウィングからハーフレーンにレイオフが決まって、それがメッシだったり、デヨングだったりするとかなり難しい対応をすることになる。

 バレンシアのウィングの封殺が決まっている状態なので、例えば、メッシがインテリオールで中央レーンを無理やりドライブしてくると厄介だが、そうなるとFWがいなくなるので、収支としてあまり得ではないかもしれない。バルサとしては、「クライフ原理主義」のまま、それをどう解釈してどう攻めるかの「いつもの」問いかけに答える必要がある。

後半

  両チームともメンバー、フォーメーションの変更なし。後半開始早々に、バレンシアが先制。サイドを振られて、味方に当たったとはいえ、シュートチャンスの多かったバレンシアが1点リードしての後半開始となる。バルサは、相変わらず、メッシとデヨングがハーフスペースの取り合い。基本的には、デヨングがワイドレーンにレーンチェンジで避けるが、それは味方の都合であってバレンシアからするとそれほど脅威ではなさそうだった。そこにアルトゥールが寄ってくるので、たとえばセルジ・ロベルトがボールを持って上がるだけで、右ハーフレーンが渋滞状態になった。バルサは、アルトゥールに代えてビダルを投入。前線でのゲーゲンプレス要員とボールサイドから離れさせることでネガティブトランジションを改善しようとした。また、メッシをインテリオール化して、デヨングをFW化した縦のポジションチェンジもして、交通整理を行う。この辺りから、バルサがきちんとポゼッションができるようになった。ただ、バレンシアの4-4-2ローブロックの強度が下がるような決定打にはならず、ウィングが輝く展開にもならなかった。プレーの切れ目であるスローインから追加点を挙げたバレンシア。万事休すのバルサになった。終了間際にラキティッチを投入したバルサラキティッチがハーフレーン突撃を繰り出すことで、ハーフレーンのスペース解放とDF裏への攻撃で押し切れそうだったが、タイムアップ。

 バルサとしては、このタイプのサッカーでいつも言われるウィングの力とメッシ以外の攻撃力が再燃しそう。バレンシアは、勝ててない状況だったようだが、いっぱいのサポーターに素晴らしいプレゼントをした形になった。

おわりに

 キケ・セティエンの取り組みのなかで、いろいろな制約と誓約があって難しいかじ取りが必要な印象でした。クラブが待ってくれるのかくれないのかはよく分からないのですけれど、まだまだ始まったばかりですからね。バレンシアの4-4-2はセリアAっぽくボールに寄らないのに相手が困るタイプの名人ゾーナル守備でした。ゴール前でよく足も出てましたし勝ててよかったのかなと思います。