蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

黒松華憐に花束を。 #2

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 01

「なあ長町」

「なんだ」

始まったな。いつものが。

「好きなサッカークラブを教えてくれ」

これはまた無理難題だ。

「好きな?」

「そう」

好きなクラブねぇ。

「無いよ。特に無い。適当にリーグ戦とかカップ戦の結果を見るくらいで、どこかに入れ込むとか無い」

「本当?」

「そう。本当だ」

これは半分が本当で、半分が嘘だ。

昔はあったというのが、正解だ。

「じゃあ好きだったチームとかは無かったのか。これまでもずっと」

察しが良い。勘が鋭い。

俺はこれに真面目に答えるべきか、適当にあしらうべきか、嘘をつくかの三差路に立っている。

黒松華蓮に嘘をつくのは気が引ける。

かといって大真面目に答えるほど、俺は優しいという自覚は無い。

「あったよ。昔、スタジアムに行って応援するほどのチームがあった。今はそれほどでもない」

俺にとってはかなり真面目に答えた方かもしれない。

「長町は、そのチームが好きじゃないの?」

好き……か…

好きか嫌いかと問われたら、果たしてどちらだろうか。

時折ニュースで結果を知るくらいで、彼らが今どうなっているのかなんて知らないし、知ろうとも思わない。

興味がない。

興味がないんだと思う。多分。

どうでもいい。

「興味ないよ」

「そうなのか?」

「そうだよ。興味もない、特に価値を感じない、好きとか嫌いとかの感情すら湧かないチーム。興味の対象とするのが意味の無いチームだ」

「そうか……」

きっと、黒松華蓮にはそれが分からない。

なぜなら、彼女にとって、僕は「サッカーを観てる奴」に部類されるからだ。

こうして会話しているのも、それがきっかけだからだ。

「無関係という関係性なんだな。なるほど、よく分かったぞ」

「無関係という関係性……」

関係を断ち切ることは、できないのか。

僕と、あのクラブと。

僕の中のなにかが冷温停止しているのなら、無関係関係であるのなら、いつの日か再臨界して関係者になる日が来るのだろうか。

今の僕には、まったく想像できない。

「まあよく分からんが、黒松にとってプロ野球チームに関心が無いのと同じだよ。そんなひねくれた関係性なんかなくてさ」

「私は、じいちゃん、お父さん揃って、根っからの巨人ファンだぞ」

「面倒くせえ例えを使っちまったァァァァァァ!!!!!!」

 

02

なんで親子三世代巨人ファンの奴に、偶然にも例えに野球を出しちまうんだよ。

「そうか。長町なら知ってると思ったのだが」

「何を」

 

「『好きなクラブとかチームをどうやって応援するか』だ」

 

……どうやって応援するか。

分からない。

黒松華蓮には申し訳ないが、俺にはそれが分からない。

「私も、どこか好きなチームとかを見つけて、応援してみたいと思ってな」

「スタジアムにも行けない奴が?」

「うっ……………」

とっさに、俺は彼女を刺した。

純粋な興味を俺は、先回りして、道端で待ち伏せしていたかのように、しかも彼女の心臓を一突きするようなセリフで、刺した。

俺は、自分を責めた。

最低だと思う。

「…………」

「…………」

でも同時に、好きになる必要なんて無い、応援なんてやらなくていいとも思っている自分がいる。

離れた時の寂しさや、過ぎ去ったことへの切なさを感じたり、どうにもならないことへの怒りを覚えるくらいなら、はじめから無関心であればよかったと思う。

好きだったはずのものをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てては拾ってを繰り返すような人生を味合うことに、何の意味があるのだろう。

理解できるが、納得はしていなかった。

そんなふるまいをする自分に。

そして、そんな想いをしている自分を裏切るような、他人やチームに触れて自傷するくらいならいっそ他人事であれば良いのだと思う。

僕には、彼女に、そんな想いをしてほしくないという気持ちすら生まれつつあった。

 

「……でも…でも」

 

たったひとつ、いや、まだまだあるのだろうけれど、俺が黒松華蓮を誤解していたことは、彼女は俺のナイフなんかでは死なない、ということだ。

 

03

「好きなチームがあれば、応援したいひと達がいたら、私は居てもたっていられなくなるかもしれない」

……

「たしかに今はスタジアムに行くのに大きな勇気がいるが、その一歩を後押ししてくれるかもしれない」

……

「だから、まずは私が応援したい、好きになりたい。誰かを推したい。自分だけ好きでいてもらいたいなんて都合が良すぎる。私は、支え合いたい」

 

言葉が出なかった。

俺にとって、黒松華蓮は、とても眩しかった。

 

「そう……じゃあ好きなチーム探せばいいよ。いくらでもあるだろ」

「うん………そうだな。探してみる」

「見つけたら、また教えてくれ」

「ああそうする。決まったら、長町に一番最初に報告するからな」

 

いつも唐突な黒松華蓮が、そう、宣言した。

 

 「はいはい、分かったよ」

 

 

 

【Don’t forget a hole in the wall】Jリーグ 第26節 ベガルタ仙台 vs FC東京 (1-2)

はじめに

 さあ、いきましょうか。ホームFC東京戦のゲーム分析。この日も勝ち点を争う一戦。今日も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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ゲームレポート

ミッドウィークの戦い

 ベガルタ仙台は、4-4-2。FC東京のビルドアップは、ボールサイドのサイドバック+2CBのバック3に、MFがひとり加わる3-1ビルドアップ。仙台は、いつも通り、フォワードがセントラルMFを基準としながら、ホルダーであるバックラインの選手へとプレッシャーをかけていく。東京は、ボールサイドと逆サイドのサイドバックがセントラルレーンへレーンチェンジしている?セントラルMF三田がCB横へポジショニングすることでのカウンター予防ポジション?

 東京は左SB+CBでのビルドアップが中心。右サイドは、SB鈴木がワイドに高い位置を取り、仙台のタカチョーを引っ張り出すことが狙い。その背後を田川が狙う。仙台は、ファイナルサードでサイド奥にボールが入った際、CBがカバーに入っていたがこれを追わず、ゴール前でクロス対応の準備をしている。右サイドでも、高萩がCB横へカットアウトした際、セントラルMF松下がカバーに入っている。これまでCBがサイドまでカバーして、全体がボールサイド3レーンに密集するDFを主体としていたが、もしかしたら変更が入ったのかもしれない。あるいはこの試合限定か。

 仙台のビルドアップは、セントラルMFがバックラインにドロップする3-1ビルドアップ。特に、左利きの松下がCB間に入り、3バックのリベロ役になる。相手2FWに対して、数では上回っているが、相手DFへ正対せず、あるいは正対しようという意識の優先順位が低くスペースと正対しているため、ボールが爆弾ゲームになる。結局、サイドの選手にその爆弾が手渡される。

 上原、フォギーニョの2-2ビルドアップであれば、FW-FWライン上あるいはFW-WGライン上で同時に焦点プレーを起こせるので、相手FWからするとむやみにホルダーであるCBへプレッシャーをかけづらくなる。福森、QちゃんのCBには、十分な時間とタイミングが確保できた、その結果正対することもできた、というのが横浜FC戦の教訓だった。

 一方、3-1ビルドアップの場合、バック3がボールを持つ時間とタイミングは多く存在するが、MFによる焦点プレーを1か所に絞られることになる。こうなると、賢くカバーシャドウするか、走力などフィジカルを使うかで、ある程度時間とタイミングを限定することができる。

 この試合も、仙台のバック3はボールを持つことに成功しているが、スペインすらも驚かせたFW永井に、賢いプレーヤーのひとりである高萩がトップ下にいてファーストプレッシャーラインを形成している。よほど、3-1ビルドアップに熟練度が無いと、その回避は難しい。というより、そこの成熟度があったうえで、駆け引きが存在するがそうも言ってられないのが現状というわけだ。

 よって、仙台のビルドアップは、その次のボール保持攻撃へ繋がっていく時点で、すでに様々な無理のうえに成り立っており、最終的にはサイドからのクロスか、セットプレーを取りに行くプレーへとつながっていく。東京のCBは、渡辺とオマリ。逆サイドのサイドバックもゴール前で構えるリーグでも相当に底堅い形。横串には強い。彼らの弱点である正面攻撃の機会を増やせれば、あるいはそこからサイドへの展開は可能性も感じた。

 この日は、上原力也がトップ下に。本来赤﨑のロールであるカットアウトで、サイド奥に起点を作る係を任せられる。SB鈴木がレーンチェンジする氣田に引っ張り出されて、その背後をタカチョーがバックカット。鈴木は良い選手だが、まだJ1の危険性というものを肌で感じている途上。仙台はもっと突ければよかったのだが。なお、コーナーキックメーカーの関口に、2010年ごろを思い出すなど。

  

考察

 プレー強度、つまりは予測にもとづく集中力で、FC東京は高い質を保っている。それがどんな時でも、誰であっても。この試合においても、その片鱗は出てきたわけで、「いつものFC東京」だったわけだ。たとえ、フルコンディションではなくても。仙台が同じ土俵で戦うには、少し、というよりかなり分の悪い相手だったことは間違いない。おまけに、加藤千尋、赤﨑の中心プレーヤーを怪我で欠いたなか、他の選手のコンディションケアもしながらだったから、ある意味自分たちとの戦いだったとも言える。ただ、スタメン、あるいはリザーブを絞って固定化するチームビルディングの性質上、そういたネガは出てしかるべきだし、それに対するアンサーを用意しておくのがマネジメントにおけるリスクヘッジというやつだ。FC東京は戦い方で。ある意味信仰心に近い、宗教に近いような「らしさ」がすべての拠り所で、それを表現できるメンバーを送り出している。では仙台はというと、すでにその戦い方は今シーズンで何度も変遷している。すでにチームも残留を主目的とした戦い方、マインドにシフトしている。そうなると、信じられるのは、任務だけ、ということになる。任務とは、その試合における目的、目標、それらを実現するためのあらゆる手段、犠牲のことである。「用意された犠牲」を用意するのが、指揮官、ということになる。

 

おわりに

 本当のところは、個人的な感情をいえば、選手にはあまり悲壮感を感じてほしくなくて、責任をすべて背負ってほしくなくて。彼らには彼らの、選手としての人生があって、本来ならそれを全うしてほしくて。彼らが昨日よりも今日、今日より明日、うまくなってサッカーを極めてくれればそれで良いし、ベガルタ仙台というクラブを通してそれを実現できたらなお良いなと思っている。もちろん、幾多の勝利や敗北を通して。それが残留するためだけに、すべてを犠牲にするというのは、もちろんこのクラブの宿命でもあるのだけれど、なんというか、それだけってのは悲しいなと思うわけで。まあそれは僕個人の想いだから、そんなものは置いておいて、お前たちは先に行け。でなければ、死は恐ろしいほど速くやってくる。勝ち点3を取らなければ、我々に未来は、無い。

 

「泳ぐ鳥よ、お前の体が何で出来ているか知っているか?泳ぐ鳥よ、お前の魂は何で出来ているか知っているか?お前の体は宇宙の全てと繋がっていながら、お前にしかなり得ない。お前の魂は宇宙の全てを含んでいながら、お前でしか有り得ない。それはこの私も、そして誰しも。誰かが憎ければ、お前は自分を憎んでいる。誰かを愛していれば、お前は自分を愛している」こう言ったのは、ラフィング・ブルだ。

 

【光る三本線】Jリーグ 第25節 ベガルタ仙台 vs 横浜・F・マリノス (0-5)

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイマリノス戦のゲーム分析。この日も勝ち点を争う一戦。今日も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

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ゲームレポート

マリノスのビルドアップとがんばる仙台のリトリート

 仙台は、442でセットDF。マンツーマーキング。3分、左サイドバック和田がハーフレーンへレーンチェンジ。右ウィング中原の背後にポジショニング。左ウィング前田は、ワイドに高い位置。中原は、ゾーナルマーキングである前田へのパスラインを切る、または4:6ボディバランスで外を切りながらハーフレーンへのパスを誘発させるようなポジションを取らず、あくまで和田を背中で意識しながら縦へのパスを切ることを選択。この日もマンツーマーキングでマリノスのプレー時間を削ぐ狙い。

 フォワード富樫と中原のFW-WGライン上にセントラルMF喜田が焦点プレー。マリノスは両サイドバックがハーフレーンへのレーンチェンジを見せる。インバーテッドフルバック。FWはボールサイドに寄り、ウィングも鎖に繋がれているかのように中央へ移動。ボールサイドから中央3レーンを使って攻撃。ボールサイドアタック。 

 FW-WGのライン上で焦点のプレーをする喜田と扇原。マンツーマーキングを主体とするベガルタ仙台にとって、特に中原、関口の両WGにとってはターゲットとなるサイドバックが自分の背後に居るなか彼らへのプレッシャーだったりパスラインを管理するのは至難の業となった。

 仮にボールを受けられても、ワイドへのパスラインをけん制しつつハーフスペースへのパスを誘発させるポジションを取っていれば、ハーフスペースへのボールはセントラルMFセンターバックがマンツーマーキングで刈り取れば、まだ彼らの戦術負荷を下げられたかもしれない。いずれにせよ、マリノスはボールサイドがどちらであっても、両セントラMFがボールとポジションをキープする時間があり、プレーできるタイミングも多くなった。
 仙台としては、サイドにボールが出たところでWGのプレスバック、サイドバックのプッシュでカバー。センターバックがサイドに引っ張り出されても、そのスペースをセントラルMFがカバーするというわけではなさそう。キャラの問題?かは分からない。富田もセカンド回収のポジションにいる。上原はいわずもがなだ。そもそもタイプが違う。もし仮に今のCBコンビを継続していくのなら、CB起用されている吉野をセントラルMFに上げて防御力を上げるのもやり方としてあると思う。

 リトリート局面でのCB福森は、中央カバー重視。タカチョーがサイドをカバーするとSB-CBライン上が延びる。前述したとおり、セントラルMFによるカバー、パスライン、ランラインのカットも無し。マリノスはここを突破してくる。サイドバックをターゲットとしている関口は、サイドバックがそのスペースを使うならプレスバックでカバーする。左WGエウベルがハーフスペースに。合わせてタカチョーも中央へ絞る。ワイドに空いたスペースをトップ下マルコスがカットアウトで使う。マークマンはセントラルMF上原。途中までマーキングするが、ぼやっとタカチョーに受け渡し。タカチョーは、ワイドのウィンガーをターゲットとしているからか、エウベルを離してマルコスをカバー。リトリートで危うい綱渡りをする。

  

考察

 仙台のFW-WGライン上を使うセントラルMFを中心としたビルドアップに、ボールサイド3レーンに密集させたボール保持攻撃を繰り出すマリノス。中原と関口のがんばりには頭が下がる展開に。FW西村、富樫のサイドバック背後へのカウンター攻撃で勝機を見出すが、カウンター距離が伸びれば伸びるほど、仙台としては針の穴を通す精度が要求される。押し込み続けたマリノスはさすが強者だと感じたし、かといって自陣からのカウンター攻撃だって速くて危険だった。そんな難しい相手に前半の事故のような失点のみでよく守ったとも言える。ただ、優勝争いのテンションと残留争いのテンションの差も感じられた気がする。気がするだけ。追いつけ追い越せと決して負けられない責任感のコントラスト。こればかりは仕方ない。

 

おわりに

 次に行こう。勝ち点3を取らなければ、我々に未来は、無い。

 

「人類に黄金の時代を」こう言ったのは、メルツェルだ。

 

お知らせ

 どうも、僕です。ということで宮城に帰ります。約1年間の延期を経て、今年の初めから某国での海外駐在生活でしたが、会社を転職し地元宮城に生活拠点を移すことになりました。生活が変わるので、ブログの更新などに影響も出ると考え、ここにお知らせさせていただきます。まあいろいろあるんですが、やはり家族を優先したい気持ちが一番にあって、今の仕事、今後の進路なども考えた結果になります。総合的に検討したってやつですね。何はともあれ、念のため、ご報告になります。一応ブログは細々と続けてきますので、ブクマとかいろいろとかアレ願います。引き続きよろしくお願いします。それではブログ、Twitter、配信でお会いしましょう。では、また。

【復帰】せんだいしろーが宮城復帰へ。6季ぶり

 せんだいしろーは、現職をFAし、地元宮城に復帰することが決定した。複数の関係者が伝えており、正式リリースが出る見通し。せんだいしろーは、今季から某国に活動の場を移していたが、6季ぶりに地元へ復帰することになる。今季、ベガルタ仙台手倉森誠監督、楽天イーグルス田中将大投手など、宮城にゆかりのある人物の復帰が相次いでいる。(日刊BBC共同東京スポーツ放置デイリーフジ通信新聞)

【咲いて咲いて】Jリーグ 第23節 セレッソ大阪 vs ベガルタ仙台 (0-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイセレッソ戦のゲーム分析。この日も勝ち点を争う一戦。今日も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

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ゲームレポート

リトリート局面でのマンツーマーキングをどう捉えるか

  仙台は、前節のガンバ戦に引き続き、大阪対決。近そうで間遠い、あの大阪だ。前節からセンターバックにQちゃんが入り、左ウィングには加藤千尋セントラルMFにフォギーニョがスタメン入り。セレッソのボール保持攻撃を想定して、中盤からリトリートの局面でブロッキングを形成する意図が見られる。

 一方のセレッソ。CBに瀬古が復帰。代わりに右サイドバック松田が不在に。メンバー固定が常のセレッソ。ここまで交代カード枠だった高木が左WGで先発に。代わりに左でフリーマンだった清武がトップ下に入る。セレッソの左サイドは、左SB丸橋がワイドに高い位置を常に取り続けるため、清武のフリーマンと組み合わさると、左サイドに広大なスペースを創ることになっていた。鳥栖戦では、その背後を突かれる形やブロックを組んだ際に、1stプレッシャーがかかってもかかっていなくても異様に高いファイナルライン、広い442選手間を使われ一時、一方的にリードされていた。今節は、瀬古の復帰もあり、それまでCBだった西尾を右サイドバックに起用。清武も中央で使うことでサイドの穴をカバーした形だ。

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図1

 さて試合開始からせわしない展開が続いたが、次第に仙台が望んだ通り、セレッソがボールを持つ展開になる。特にMF3人は、2-1の三角形から原川をアンカーに、奥埜と清武がインサイドMFのような逆三角形のポジションを取る。トップ下清武は、左SB丸橋が上がったスペースを使うように、CB横にまで移動。いわゆるインサイドMF落としだ。呼応して丸橋がワイドに高い位置に、左WGの高木がハーフレーンにレーンチェンジする。フリーマンの清武と攻撃的な丸橋のポジショニングをWGに高木を入れることでバランスを取った。

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図2

 ただそこに対して、仙台DFはいつもの「FWによる誘導限定からのマンツーマーキングDF」で対応。時には、FW西村がセントラルMF原川をカバーするほどの徹底ぶり。仙台は、ワイドレーンの低い位置にサイド、MF、FWが密集して球際でのDFを敢行した。本来というか、一般的には相手陣地深くやスローイン時にこうした密集DFで対応するものだが、仙台の場合は自陣に引き込んでDFする。そのおかげで、セレッソのポジション移動にも対応できているのだけれど、西村や赤﨑の位置が低くなり、代わりに攻撃力が減衰してしまった印象だ。さらには、CBのQちゃんもワイドに逃げる相手を追いかけるようにDFするし、セントラルMF富田が猟犬なのは言わずもがなだ。そうなるとボールを奪った仙台は、DFに最適化、ステータス全振りしているため攻撃ポジションを取れていない。よって、バックパスからCBのロングキックか真瀬かWGの単騎攻め上がりで陣地回復するかになる。前半は耐え、後半に勝負の意図は分かるが、セレッソとしてもカウンターの槍を喉元に突きつけられていないのなら、心理的にも余裕があったのではとも思う。

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図3

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図4

 

翼と錨に垣間見る、ボール保持攻撃の光

 そんな仙台の攻撃は、左WGにオッティ、セントラルMFに上原が入ってからが勝負だったし有効だった。その時間20分。短期決戦だ。しかしその内情はいたってシンプルだ。左サイドで順足のオッティが入ったこと、セントラルMF上原が相手FW-FWライン上に立つ「焦点プレー」でピン留め。味方センターバックの息継ぎの時間を与える。さらに、左サイドバックのタカチョーがハーフレーン、あるいはセントラルレーンに移動するファントムぶりを発揮。さらに、やや下がり目で、Qちゃん、吉野とバック3ビルドアップにも参加。そうなると、今度は中央でリベロになれる吉野のロングキックが炸裂する。

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図5

 セレッソDFも素直にマーク役にマーキングする傾向にあったためか、オッティがSBを引っ張り出してその背後を西村が使うことができた。セレッソのDFは仙台と異なり、ボックス前にいるような約束事なのか、SBの背後まで、サイドまで出てこない。カバーするのはセントラルMF。代わったセントラルMF藤田には少し酷だったか。馬力のある奥埜ならば…とも思う。空いたスペースを上原使ってミドル、こぼれ球を西村が外す、この試合最初で最大の決定機を作り出した。

  

考察

 セレッソに対して、ボールを持つか捨てるかの選択肢があって、今の仙台は鳥栖のような戦い方は現実的ではないので、この試合の進め方はわりと素直な選択だと思う。一方で、そのDF方法が引き込んでのマンツーマーキングDFなので、どうしてもサイドで低い位置に多くの選手が集まりやすい。そうなるとカウンターは、サイドの速い選手が一気呵成に攻め上がるか、ロングキックを蹴るかになる。これまでは、逆サイドへの展開がひとつ武器であったが、展開力のあるMF松下、上原が不在となるとそれも難しくなるし、そもそも、ワイドに選手がいないとなると出し先もない。「守備のための守備」としては成功したと言えるが、「攻撃のための守備」かと問われたら、まだまだだと思うし、そういうプランじゃないとも言えるが、攻撃の希望があるから守備できるというのはわりとよく聞く言説だ。なので、現状は、そこから前線からのプレッシングに切り替えるまでチェイスする。仙台が相手のポジションめがけてプレッシャーをかけるようになったのは、そういう攻撃のネガを少しでも解消するためなのかもしれない。ただどうしても、フィジカル面でそれを夏場過ごすのはしんどいし、リトリートやミドルブロックの局面で相手の選択肢、パスコースを管理する「立ち位置」で、攻撃的なポジション、高い立ち位置を取りながらもDFできれば良いのだけれど。おそらく富田が中盤の王である以上、今のマンツーマーキング志向は継続されると思う。

 あとボール保持攻撃だが。この試合でもはっきりしたのは、中盤には松下なり上原なり中原なりがいないと、センターサークル付近でポジショニング、陣地転換のミドル-ロングキックも出ない。ハーフレーンに絞るウィングについては…これは方法論なので、ワイドに張るべき、内側に絞るべきなどはないが、その立ち位置についた後の展開が選手次第というか、選手の質やコンディション、相手との力関係次第になっているのがこの攻撃方法を難しくさせている一つだと思う。CBがホルダーなら3手先までは形がある、その先は選手が力を発揮する、といえばやや書き方的にはマイルドになるけれど、逆に言えばそこがネックで攻撃が停滞するとも言える。ウィングに入ったオッティがワイドを駆けるのを見るとなおそう思う。

 DF時には、どの選手が出ても同じようなやり方やポジションを取れるので、そこから攻撃的な選手を組み込んで攻撃力を上げていく作業になるか。基本的に、攻撃に関しては選手次第なので、良いか悪いか分からないが「組み合わせ」次第になる。それでも、ボール非保持時に力を発揮する選手を起用するあたりを見ると、チーム、監督としてもかなりプレッシャーがかかっているのではと察せるし、選手からも「覚悟」のようなコメントも聞かれるようになった。もう一度、自分たちは何なら相手より上回っていて、精神的な優位性を持てるかを確認してほしいし、ミドルブロックからのサイドへの追い込みは自信を持っていいはずだ。

 

おわりに

 追い込んでいるのは、相手ではなく自分だったりする。もう夏も中盤。勝ち点的にも試合的にも苦しい状況だと思う。勝ち点3が取れなかったのと同じく、日程的に優位があったガンバ、DF時に脆さが出るセレッソに対して、得点0というのは非常に痛いしダメージが大きかったと思う。これまで準備したり、増やしてきた手札をすべて使う総力戦でこれからも臨む必要がある。

 

「pray for Answer」ARMORED CORE for Answerより。

 

【大きな坂を振り返って】Jリーグ 第5節 ベガルタ仙台 vs ガンバ大阪 (0-1)

はじめに

 さあ、いきましょうか。ホームガンバ戦のゲーム分析。勝ち点を争う一戦。今日も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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ゲームレポート

開かない扉

  五輪中断空けの一戦。Covid-19とACLによってスキップされた第5節。仙台としては、残留を争うクラブのひとつとして、当然ながら勝ち点を積むべくホームユアスタにガンバを迎えた。ガンバは、イケメンショナルプレーのひとりである宮本監督の交代。背に腹は代えられない状況なのは、ガンバも同じである。

 仙台は、中断前同様4-4-2を基本フォーメーションとした。開始早々のロングボール合戦も落ち着いてきたところで、仙台はフォワード赤﨑-西村が相手セントラルMFを基準に、中盤からの押し上げ局面でボールサイドの限定誘導を図るDFを取る。対するガンバは3バックに2CMFの形。ここの対応がまずは求められた。

 ガンバの3バックは、左センターバックのキムヨングォンが2人のCBが離れたポジションを取り、ワイドレーンでボールを受ける。シャドーの矢島、宇佐美がハーフレーンを落ちる。CBからWBにボールが入るの合図に、彼らが落ちてくる。仙台としては、2FW+ウィング(関口)でファーストプレッシャーラインを形成。変則3バックには、変則フロントラインで対応。まあ実際には、このところのマンツーマーキング志向DFの延長線上には変わらない。落ちる宇佐美には、富田か上原のMFがマーキングする。WBには、フルバックの真瀬。逆サイドにサイドチェンジされれば、CBには無理につかず、氣田がWBを、タカチョーがシャドーをマーキングして簡単に突破されない陣形だった。

 ガンバとしても、ホルダー+1の2人称の関係だけでは仙台DFを崩せず、たとえばCMF山本はシャドー矢島が落ち、WB小野瀬が低い位置を取ることで仙台DFを引っ張り出したスペースを縦に上がって使ってライン突破している。また、基本的にはゴール前固定だったセンターFWパトリックも、宇佐美が空けたスペース落ちると簡単にボールを受け前進できた。こんな感じで、仙台DFもガンバのボール保持攻撃が2人称であるうちは強固なDFであったのだけれど、3人称となると途端にDFラインを超されてしまうのである。

 ただし、ガンバとしても頻繁に、しかも極端にポジションチェンジすれば、トランジション時の穴となる。勝ち点を伸ばすやり方としては、あまり動かさず、攻撃でリスクを取らないこと。これは仙台にも言える。しかも暑いと来てる。特にガンバは日程面でも厳しい。そんなこんなで、飲水後から真瀬のファントムゴールにパトリックがCKからの爆撃で得点したあたりから、相手陣でボール保持攻撃するか、自陣でリトリートするかの戦いを繰り広げた両者。時折、突けば何かが起こるかもしれないビルドアップにプレッシャーをかけたりするなど。お互いがミスをしないように、相手がミスするのを、ゴドーを待ちながら待ったわけだ。

 仙台のボール保持攻撃も見ておこうか。左サイドは、ウィングの氣田が高い位置を取り、右サイドはなぜそこに居るステルス真瀬が高い位置取りをする。特に右サイドは熱かった。西村、関口がカットアウトランで相手WB背後を執拗に狙い、CB吉野からロングキックが飛び出てくる。仙台の両WGは、ハーフレーンにレーンチェンジすることで相手WBを引っ張り出し、後方にできるスペースに西村を飛び込ませる『門を開ける人』役を任せられていた。よって、左フルバックのタカチョーも自制しながら後方のボール出しを徹底。仙台も変則的な3バックぽさがあった。実際は、2CB+2CMFのボックス型にタカチョーがプラス1されたと解釈して差支えは無い。

 ボールがサイドに出た後は?もちろんクロス!クロス!クロス!だ。ゴール前に待つのは、FWと逆サイドのWG。左からのクロスには、おいで真瀬も飛び込んでくる。ただ非常に難しいのは、クロスが来ると思って準備している相手に、文字通りクロスからゴールの奪うのは難易度が高いということだ。真瀬のファインゴールになる予定だったゴールも、疑似的なカウンターのような形であった。クロスに祈れ!というのなら、もちろん祈るしかないのだけれど、ガンバクラスのセンターバックがリーグ屈指だとしても、クロス教としての道を求道しないといけなくなりそうだ。 

  

考察

 勝ち点を1つも取れなかった試合として、記録も記憶も刻めば良い試合だと思う。多くの時間でボールを持てたが、ガンバはそれを良しとしていたし、フィジカル面でそれが選択肢として入っていたのだろうと思う。それに仙台としてはボールを手放したい。「さあどうぞ、どうやって攻めてみるんですか?」と言われると「アッ…アッ」となりかねない。というよりなっている。オフサイドによる得点取り消しに、CKからの失点は、流れとしては不運ともいえるが、ある意味そういう運みたいなものを頼りにしていると感じる両者。ガンバは分かる。打ち出の小槌があるわけだし、アウェイだし勝ち点1でも万歳なわけだ。小槌が無いなかクロスを打ち続けたが、あと100回、あと1000回っ繰り返せば成果につながるのだろうかと考えるか、まだ僕の中で結論はついていない。

 

おわりに

 守備に重点を置いて、それを表現できるメンバーからの逆算なのだから仕方ないという言説もあると思うし理解できる。監督がテグとなると、彼自身のハードルがあって、やりたいことがあってそれができるメンバーをまず選ぶとなると、今日のメンバーだってベストに近いと思う。結局は何を優先して何を犠牲にするかなのだけれど、それがプラスマイナスでプラスになる目論見ならそれでいい。パトリックのゴールはあくまで不運だった、クロスがゴールにならなかったのも不運だったと言ってもいい。どうやって勝つのか、勝点を取るのかも、運次第になる。それで良いなら、それで良い。その運が10回あって8回、命を運んでくるのであれば、それで、それで良い。人事を尽くして天命を待つ。人事を、尽くしてくれれば、誰よりも多く、たくさん、尽くしてくれれば、それで良い。

 

「腕がなけりゃ祈れねェとでも?祈りとは心の所作」こう言ったのは、ネテロだ。