蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【強欲】Jリーグ 第10節 ベガルタ仙台 vs 清水エスパルス (0-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。ホーム清水戦のゲーム分析。ついに手に入れた勝利。敵地での歓喜は、遠く杜の都にも届く。歓喜の朗報もつかの間、王国清水をホームユアスタにて迎え撃つ。止まらないボール。走るオレンジ。そんな清水に対抗するかのように、ボールを握り、スペースへとウィンガーが駆け抜ける。緊迫のゴール前。攻防を握る中盤にどんな未来を見出すのか。そして、左ウィングが駆け上がる。今回も、ゲーゲンプレスで振り返っていきます。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

f:id:sendaisiro:20200818195544p:plain

 ベガルタは前節同様のフォーメーション、メンバーでホームに清水を迎え撃った。リザーブには道渕が復帰。ただ、ジャメやゲデスなどの再開後を支えた選手たちが軒並みケガでリザーブに入れないほどの火の車。なんとかやりくりしてくなかの4-2-3-1なのかもしれない。

 一方の清水。今季から、ポステコフットボール革命開放戦線の分派として、クラモフスキー監督が就任。アタッキングフットボールの旗の元、王国清水に攻撃サッカーを開花させようとしている。ただし、実際にはマリノスとは似て非なるチームで、また直近は守備にも重点を置いており、フルバックがゴール前にアタックを仕掛けるシーンなどは少ない。両チームとも新任監督のもと、試行錯誤を繰り返している印象だ。

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • 『蹴球仙術メソッド』を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • 文章の伝わりやすさから、便宜的に、『攻撃・守備』を使用。
  • ボールを奪ってからの4秒間をポジティブトランジション、ボールを奪われてからの6秒間のネガティブトランジションとしている。

ボール保持時

ボール保持への挑戦と変わらないウィングへの縦志向

 ボール至上主義とアタッキング革命軍であるクラモフ清水を迎え撃つベガルタ仙台流星騎士団のボール保持攻撃は、いつものボックス型(2CB+2CMF)ビルドアップ。4-2-3-1 であれば、椎橋と浜崎はオリジナルポジションでビルドアップを開始できる。利点は、攻守でポジションチェンジが少ないので、ボール主導権の切り替わりに即時対応できる点だ。これは、清水としても同じメリットを享受している。また、両フルバックもなるべく深めの位置で、ボールがハーフラインを超えてファイナルサードへと前進したタイミングをみて高い位置を取っている。

 ベガルタは、GKが足元がうまい小畑であっても、まずは3FWにボールを送り込むことを至上命題としていた。前線が競り勝つ、あるいはセカンドボールを回収することで、ボールを前進させる攻撃だった。ただこの試合も、GKがクバであるにもかかわらず、自陣ゴール前からのボールを繋ぎビルドアップの下地とする。当然、清水も前線から4人のアタッカーと2人のセントラルMFでプレッシングをかけていくのだけれど、きちんと外していく姿勢を見せる。時にはアタッキングMFの関口が、相手CMF横に顔を出してビルドアップの出口役になる。また、RCMFに入った浜崎は、他の選手に指差しやジェスチャーで指示出しをするコンダクター。2CBにプレッシングをかける背後をとり、RBの柳からボールを受け、プレス外しを見せる。ボールを持てば、左サイドへの展開やウィンガーへロングキックを蹴るなど、長短パスとインサイド表裏を使って清水のプレッシングを無効化。マタドールターンから猫背気味の姿勢でインサイドパスを出す姿は、かつてのシャビ・エルナンデスを彷彿とさせる。

 ファーストサード、ミドルサードでボールを持って、ボールを回していく木山ベガルタ仙台革命解放維新伊達者連合だったのだけれど、攻撃の原理自体は変わらない。『攻守においてアグレッシブなサッカー』という崇高な理念を崇拝する敬虔なチームの攻撃の仕組みは変わらない。ボールを動かしてプレスを剥がせば、まずは攻撃の一番槍としてウィンガーへ長いボールを送り、積極的に1vs1を仕掛けさせる。特に、左ウィングに入った西村は、この日チーム最多の6本のシュートを放つなど、相手フルバックとの一騎打ちを挑み続けた。清水のファイナルラインは、基本ラインを維持し、両フルバックともガンガン縦迎撃する意識はそれほど感じられなかった。4人のアタッカー+2人のセントラルMFの6人プレッシングが基本のように見えた。ベガルタのウィング攻撃を警戒している可能性もあるし、そういう意味では、相手を自陣に押し込み高い位置を取り続けるという狙いのひとつを達成できたともいえる。

 

ファイナルサードで「何に」合わせるかという問い

 清水のボール非保持時の振る舞いは、とてもシンプルだった。仙台陣内では前線からプレッシングをかけるが、ひとたび外されてしまえば潔く自陣撤退し4-4-2のようなブロックを組んだ。ベガルタとしても、中盤でボールを握り、サイドで人数をかける時間とスペースがあったと言える。ファイナルサードへの侵入も何度もあった。ただ、試合後に木山さんがコメントしたように、最後の崩しの部分、木山さんは「表」と表現したゴール前での攻撃、相手ブロック前での攻撃までは到達していた。その「裏」であるライン背後への攻撃や完全に守備組織をバラバラに破壊するまでには至らず、西村のバッティングセンターと長沢の反転シュートが印象に残る展開になった。

 後半投入された赤﨑も、前節のような「会ってすぐゴール」というわけにもいかず、惜しいシュートシーンもあったのだけれど得点まで届かなかった。最後に攻撃を完結させるには、2つの「ライン」の考え方がある。ひとつは、「ランライン」。FWがファーからニアに入ってくる線上やライン背後へ抜ける線上など、見えないけれどFWが確実に入ってくれるラインをランラインと呼んでいる。いわゆるストライカーの動きに合わせるというやつだ。もうひとつは「パスライン」。シティのデブライネのように、強力なクロスやパスがあるなら、そのクロスの線上に走りこめば、その交差地点でボールにピンポイントで合わせられる。いずれにせよ、人やボールを基準にプレーしているとどうしても合う、合わないがあるし、競り合いなどの不確定要素が多くなる。それが確実にこの線上に走ってくる、ボールが来るとなれば、自分たちは分かっているが相手にとっては予測が難しい状態にできる。

 ちなみに清水の場合は、仙台の両サイド深くをとにかく取って、そこからマイナスのクロスを入れる、あるいはプラスでもGKとDFとの間にクイッククロスを送り込む「パスライン」を持っていた。あとは合わせるだけというやつである。では、ベガルタは?そもそもどちらかでもラインを持っているのだろうか。個人的には、長沢のニアへのラン、赤﨑のファー抜け、蜂須賀・浜崎のクロスが最も可能性があると考える。ただ、それが最も発揮できる仕組みがあるか?は分からない。当然選手の組み合わせやパッチワーク的要素もあるのだけれど、ボールをゴール前まで運ぶことに長けているチームが勝てるルールだったらきっとベガルタも上位にいるんだと思う。まあ、そんなことを前節の蜂須賀のクロスからの赤﨑のゴールを見た後なもので、なおさらそう感じるのだ。

 

ボール非保持時

4-4-1-1ブロックの外切り→内切り守備

 ベガルタのセット守備は、4-4-1-1でアタッキングMFの関口がアンカーロールの清水CMFを警戒する形。両ウィングは、ワイドに張る選手を警戒しつつ、相手CMFやCBにプレッシングをかける。清水のビルドアップは、ボックス型(2CB+2CMF)でLCM竹内がドロップで擬似3バック化する逆丁字型ビルドアップとのハイブリッドだった。左CBの立田が竹内とのボール交換から、時間とスペースとボールを持って攻撃の司令塔となった。さらに、清水の4-2-3-1はトムキャット可変でウィングがワイドレーンからハーフレーンへレーンチェンジする。ハーフレーンからFB-CB間のチャンネルを狙うカットアウトで、ボールを引き出しつつ、ベガルタのCMFやCBをサイドへ引っ張りだそうと狙ってきた。 ベガルタのWGも、ワイドに張るフルバックを警戒したポジションを取り、柳も蜂須賀も相手フルバックへ縦迎撃する形だったので、ハーフレーンへの楔パスやカットアウトランも非常に刺さる形となった。10分過ぎから飲水を経て、WGが明確にハーフレーン上に立ってトムキャット可変を警戒しつつ、ワイドに張るフルバックへのセカンドチェックでの対抗に修正する。

 こうなると、清水も中央3レーンを攻撃することも難しくなったのだけれど、2つの変化を加える。ひとつは、ボックス型ビルドアップでの時間を長くし、CMF竹内もアタッキングに加わること。竹内が選手間を抜けていく動きをすることで、ベガルタのマーキングにズレが生まれ、前述のトムキャットとカットアウトとの合わせ技で中央のエリアが空いて来る。これには、長沢と関口が2CMFを監視することで対応。よって、ベガルタのプレーエリアは低くなり、相手CBには時間とスペースを与え相手ポゼッションを許すことになった。もうひとつの変化は、サイドチェンジ。前述の通り、CBに時間があるので、特に立田や竹内から逆サイドへサイドチェンジキックで局面を打開するような攻撃を見せ始めた。ベガルタも横スライドと、ゴール前は逆サイドの柳がカバーするギリギリの守備でなんとか持ちこたえる状況になる。こういった状況になることも見越してなのかは定かではないのだけれど、自陣でボールを持てるようにしていたのかもしれないし、そうじゃなのかもしれない。

 

考察

これからの戦い方について

 非常に狙いたいことが見えた攻撃だったと思う。ボールを持てば、自陣でもきちんとボール交換し、相手のプレッシングをかわしていく。清水のプレッシングは数合わせでプレッシングしてきたこともあって、1人で2人を守る守備でもなかったので幾分かは楽だったのかもしれないのだけれど、それでも繋いでかわして前線へ、という形はよく仕込まれていたように見えた。 ただ、まあこれはもちろんポゼッション時間が短い、ポゼッションするエリアが低いということもあるので、何とも言えないけれど、ファイナルサードで誰がどうやって得点を取るのかはイメージがしづらいし、結局オープンエリアでの西村のカウンターアタックの方が可能性を感じたのが実際のところだ。じゃあ相手を引き寄せるためのポゼッションなのか?僕はそれなら〇だと思う。でも課題は、「ファイナルサードでの崩し」だと言う。であるなら、これだけスペースや選手間のラインが広がっている守備相手に、前半で2、3発入れるのが筋だと思う。撃ちあい上等!を嫌がって、守備に軸足を置いた結果の「0-0」ならそれはそれで僕は良いと思う。でも高い位置を取りたい、ボールを握りたい、最後の局面で崩したい、のであれば、ゼロ得点は本当に評価できる結果なのだろうか。あれだけ敵陣で時間とスペースをもらっているのもあるなかで。欲しい結果と得られた結果との噛み合わなさ、やりたいこととできてることとのギャップ。いろんな要素があるなかで、完璧を求めるのは酷だと思う。やりくりが厳しいなかで無理難題なんだと思うし、今はやれることをやるだけなんだとも理解する。とても難しいなと感じている。降格も無い。今年は勝負の年じゃない。それも分かる。全部分かっているつもりだ。でも、やるべき時にやるべきことをやれなければ、それはどんな時であれ、手痛いしっぺ返しがお釣りが出るほどやってくるし、試したはいいけれど最後の最後で解決策が見つかりませんでした!お試し期間も終わります!にならないよう、良い失敗と良い挑戦を続けてほしいと思う。

 

おわりに

 要約するとゴールが欲しい!!!クロスが風に流れて入るとかオウンゴールとかじゃないゴールを見たいんんだ!!!僕は強欲だ!!!もっともっとだ!!!以上!!!

 

「死んだ奴に会いたいも、金が欲しいも、女が欲しいも世界を守りたいも、全部ほっする心。すなわち、願いだ。俺に言わせりゃ、欲にいいも悪いもねぇ。欲っつうもんに偉そうに格付けするから、人間はややこしいんだよ」こう言ったのは、グリードだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

www.footballista.jp

www.amazon.co.jp

www.amazon.co.jp

silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com

sendaisiro.hatenablog.com

sendaisiro.hatenablog.com

sendaisiro.hatenablog.com

sendaisiro.hatenablog.com