はじめに
どうも、僕です。前回上げたアザールの懐の続きをやっていきます。
今回見るのは、懐縦突破の派生形である「懐マシューズ表裏」です。マシューズフェイントは、利き足が右足なら右足アウトで相手の重心ベクトルの逆をついていくドリブルです。アザールもですが、イニエスタやメッシの得意技ですね。相手と正対した状態のマシューズが表、相手を背後にして相手を回転軸にしてマシューズからターンで抜けていくのをマシューズ(裏)と呼んでいます。いずれも、懐をつくった状態から繰り出すので、前回記事で取り上げた通り、ボールを包んで隠して守って抜いていくことが懐マシューズ(表)(裏)の要諦になります。
懐マシューズ(表)(裏)
正対→2歩1触→懐マシューズ(表)
下の写真は2歩1触の2歩目(1触)。
小さいが利き足(右足)を引いて懐をつくる。
DFの右足が浮く。
DFの右足が浮く=左足に重心がかかる(ベクトルの根っこ)と判断しマシューズ(表)をしかけます。
DFの両足のバランスが戻る。マシューズ(表)をキャンセル。
そのまま姿勢を低く、懐を作る。
DFはアザールの利き足(右足)の直線上に立ってDF。縦(ベースライン)を抜かれない構え。
DFの縦(ベースライン)を抜かれない意識の高さからか、左足側へ体重がかかっています。右足が完全に浮く。
懐マシューズ(表)。DFとしては縦をカバーして右足側に誘導したかったのかもしれませんが、アザールは構わず縦突破を図る。
DF左足に重心が残っているため、DF対応範囲(守備範囲)が限定される。そこを懐マシューズ(表)でボールを逃がしていきます。
突破成功。DFが左足に重心をかける2度のタイミングで、2回とも懐マシューズ(表)で縦突破を図ろうとしたアザール。DFとしては利き足側、縦を守っていたのに突破される構図。「縦を防がれているから縦突破は避ける」では芸がないです。相手の足の立ち位置から意図を察知し、その裏をかくプレーになります。感覚的には「表の裏の裏(=表)のプレー」といったところでしょうか。
懐マシューズ(裏)
まず、懐を作る。背後からのプレッシャーを感じつつ、目視で相手を観察。
DFの右足が着地。このシーンも、DFは利き足(右足)の直線上に立ち、縦(ベースライン)をカバー。
DFに縦を警戒させて右足に重心をつくる。これは、懐マシューズ(表)と同じく基本と言えます。そして、縦を抜きにかかります。
姿勢は低くの基本に忠実に。懐を作りながら懐マシューズ(裏)でDFの右足側、重心側、縦側を抜きます。
このシーンはかなり大成功。DFは右足を伸ばしてもボールに触れることはできないでしょう。
そのまま、縦突破。ゴールに背中を向けていても、懐をつくり、縦を警戒させて身体を硬直化させれば突破できます。
ポイント
- 懐縦突破同様、懐マシューズ(表)(裏)も縦を抜いていくことが基本。
- DFは縦を警戒するが、「抜かれたくない!」と意識すればするほど余計な力が入ります。力が入ると身体硬直化して、急加速やリズムチェンジについていけなくなってしまいます。
- 利き足が右足で右サイドであるなら、縦に深くを警戒されているだろうし、逆に左サイドであればカットインからの中央を警戒されます。これを「DFの表の心理」だとすれば、裏をかかれないように対策します。
- ただし、アザールの懐ドリブル(縦突破、マシューズ表裏)では、警戒して力が入っているところを狙いますし、「あくまで縦突破が基本」にあります。
- 懐縦突破と同様、相手に踏み込んでいくこと、DFの着地足を確認することが重要になります。
ここまでが、懐ドリブルの縦側の突破を見ました。いわゆる、最初はグーであり、先制パンチでもあります。もちろん、縦だけの駆け引きも、縦突破とマシューズ(表)(裏)の3パターンありますが、相手の逆をつくやり方もあります。次回は、現代型クライフターンである懐クライフを見ていきます。