蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【反骨】Jリーグ 第14節 ベガルタ仙台 vs ガンバ大阪 (1-4)

はじめに

 さあ、いきましょうか。ホームガンバ戦のゲーム分析。今日の導入はあっさりと。でも振り返りはしっかりゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは変わらず4-2-3-1。左ウィングには西村。リザーブに、ケガから復帰したシマオが入る

 ガンバは、5-3-2。四列表記なら3-1-4-2。宇佐美、アデミウソン、井手口、倉田が中央、サイドを使って攻撃。守備では自陣に5-3-2のブロックを組む手堅い形。監督は、イケメンショナルプレーのひとり、ツネ様である。

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • 『蹴球仙術メソッド』を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • 文章の伝わりやすさから、便宜的に、『攻撃・守備』を使用。
  • ボールを奪ってからの4秒間をポジティブトランジション、ボールを奪われてからの6秒間のネガティブトランジションとしている。

ボール保持時

自陣からのビルドアップ

  ベガルタのビルドアップは、いつものボックス型。両フルバックが低めの位置を取り、前線アタッカー4人が相手DFの選手間やスペースを突く形。ファーストサードでのビルドアップでは、GKクバも含めたポゼッション志向。陣形は大きく崩さず、4-2+GKで、前線から降りる関口も加えてボールの出口を探りながらのビルドアップ。ガンバも前プレで嵌めようという志向が見えたけれど、ベガルタはかわして逆サイドへ展開するなど、ホルダー周辺のフォローと外縁への展開がセットだった。

 マリノス戦以降、GK含めたポゼッション型ビルドアップに取り組むベガルタ。当然、相手もビルドアップ妨害のために前線からプレスをかけてくるが、3ラインの守備陣形を崩してマンツー気味のプレッシングのため、「はじめから守備陣形が崩れている」メリットを享受できる。昨年の大分が繰り出した十八番「擬似カウンター」の要諦である。ベガルタは、あからさまな「カウンター状況の意図的な創出」をしているわけではないのだけれど、それでも、「陣形が崩れている状態(アンストラクチャ)での攻撃」を好む今のチームにとっては非常に重要な攻撃のひとつに思える。

 

5バックの攻略

 広島戦に続き、5バックの攻略型を披露することになったベガルタ。ガンバは、3センターが横へスライドすることで、両フルバックの前進を妨害するため、WB背後・CB横を簡単には空けなかった。今のベガルタにとってこれは重要な変化点で、低めに構えるフルバックが相手WBを誘き出し、その背後をウィングが、サイドへカバーしにきたCBが空けたスペースを関口やゲデスなどのFWが攻撃する一連の攻撃にひと手間加える必要がある。

図1

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 この試合のひと手間は、サイドチェンジだ。3センターの横スライドと言えば、簡単に聞こえるけれど、一度サイドを変えられてしまえば3人ですべてをカバーすることは物理的に不可能だ。ベガルタは、サイドでボールを持って相手3センターがフルバックをプレスしていると見ると、逆サイドへ展開していった。特に逆サイドのフルバックは時間とスペースがあり、プレスをかけるのは3センターの横スライドが間に合わない分WBの役割になる。こうなれば、あとは芋づる式で、前述した一連の攻撃が成り立ってくる。

 一言で言ってしまえば、この試合のベガルタの攻撃は「成功」している。敵陣深くまで入り込み、相手にカットされてもCKから得点を上げる。また、ボールをボックス内に送り込む機会も多くなるので、ファウルトラブルも増える(今回はハンド)。PKを決めて2-2としていれば、失点の部分は別として、攻撃の部分においては狙い通りの形と得点だったと言ってもいい気がする。まあ、たらればになってしまうのだけれど。

図2

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ボール非保持時

サイドを2人、中央を2人で守る

 ベガルタはいつもの4-4-1-1ブロック。対するガンバは、3-1-4-2と完全に噛み合う形に。ただベガルタのプレッシングターゲットは、数字上の噛み合わせでいくと、4-2-1-3になるので、2の横で受ける相手WBへの対応が肝になってくる。蜂須賀や柳が縦迎撃プレスをかければ、背後に空いたスペースへインテリオールの井手口や倉田など、サイドへカットアウトできる機動力を持った選手が飛び込んでくる。ベガルタのCBやCMFがフルバック背後をカバーすれば、今度は中央が空いてくる。そこを使うのは、ガンバで攻撃の全権を任されている宇佐美とアデミウソンになる。  

 ベガルタは、2人のCMFとCBが協働。背後のスペースをCBに任せて、降りて来る宇佐美やアデミウソンにCMFが対応するなどの修正で乗り切ろうとする。ガンバとしても、サイドでカットアウトしたインテリオールとWBとの連携がもっとあれば、中央がより難しくなったのだけれど、早い段階で中央からゴールへ向かっていくのでベガルタとしても人数の多いエリアで守ることができた。

図3

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考察

『アグレッシブなサッカー』の途中経過

 また久しぶりに、2019年のモンテディオ山形の全ゴールシーンをチェックした。何かを判断したり評価する時には、横軸と縦軸と事実が必要で、「歴史」は重要な横軸になる。得点で印象的だったのは、以下。

  • セットプレー(CK、FK、PK)での得点が多い
  • 相手守備陣形が崩れた状態での得点(カウンター)が多い

 

 実はベガルタでのサッカーも、そこまで大きく変わっていないと思っていて。この試合でも浜崎のCKからのゴールだし、カウンター局面でのゴールは他の試合でも多く見られた。ただ、この2つが完全に機能しているかというと、不完全だという方が良いのかもしれない。

 そもそもセットプレーでの得点は、セレッソ戦の蜂須賀のゴールが今シーズン初。それまでは機会はあっても、ゴールに結びつかなかった(開幕戦はセットプレーの流れとカウント)。永戸の移籍、松下の不在もありながら、ようやくキック上手の浜崎がスタメンに据えることで、この問題は解決に向かおうとしている。ただ、山形時代はFKやCKから1試合2点とか決めているし、PKでの得点もあった。この辺は、「攻撃したいエリア」にも関連するので後述する。

 また、相手が崩れている状況がそもそも少なかったり、あっても瞬間的だったりするなど、カウンターを針の穴を通す精度でやらないといけない。J1との比較という文脈で、山形相手に失点していたJ2の各チームは「プレスバックがない」「ラインがバラバラ」「過度に攻撃に人数を割いていてカウンター予防に誰もいない」など、なかなかにハードコアな世界観が広がっていた。ある意味、ここを強度高く「奪われたら奪い返す」「奪ったら前へ出る」を実行できたら、とても脅威になるなと感じる。ただ、J1の場合は、J2チームの括弧書きをまずは整備している(「プレスバック当たり前」「ラインを揃える」「カウンター予防する」)。そんな中で、「相手が崩れている方がなかなか少ないなかで、どうやって攻撃するのか」をずっと取り組んでいるのだと思う。

 ひとつは、相手陣での前プレ。これは相手がビルドアップに最適化した陣形なので、守備陣形が崩れている。もうひとつは、自陣でのビルドアップに前プレさせて誘き出す。これは前述したとおり。でもこれらは狭義で言えば「相手が崩れている状態」。だから今取り組んでいるのは、「自分たちで崩す」作業だ。この作業を前節も今節も表現している。崩すにはその目標地点が必要なのだけれど、木山ベガルタの目標地点は「コーナーフラッグ」だ。

 

 正確には相手フルバックの背後、センターバック横ととも捉えられる。ただあえてコーナーフラッグと呼びたい理由は、先ほど書いたように、本当はセットプレーの機会を増やしたいしもっとゴールを取りたいのだと思う。よく柳が縦にドリブルしてパスしたりしてカットされるシーンがあるが、あれで成功なのである。柳を本職の右フルバックにした理由をあれこれ考えていたのだけれど、今のところの結論はそこにいきついた。なんなら真瀬も縦→縦→クロスなのも、同じように、CKを狙っているのかなと。狙っているというよりは、「CKの可能性もあるエリアで攻撃しよう。一次攻撃がダメなら二次、三次攻撃しよう」という発想なのだと思う。実践家で戦術家の木山さんらしい。

 その次に目指すのは、ボックス内。コーナーフラッグ付近へボールを送る機会を増やすのと同じように、ボックス内へボールを送り込む機会を増やすことで、当然シュートチャンスやファウルトラブルによるPKゲット機会が増える。ボックス内に入れなければ、当たり前だけれどPKも無い。サイドからクロス、クロスなのも、とにかくボールをボックス内に置きたいという狙いがあるのだろうと予想する。ひとつだけでなくて、可能性が増えるエリア、プレーで攻撃しようというのが、大原則のように思えるし、そのためにウィングを大事にして、相手フルバックの背後を突き、敵陣深く(コーナーフラッグ付近)へと侵攻。ボックス内へボールを送り込むのも、「ウィングを使いたいから」ではないのだと思う。

図4

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 一番の理想は、中盤のプレスで奪い、相手守備陣形が整っていないなかウィングが敵陣深くボールを運んでいくことだ。コーナーフラッグへボールをどのぐらい運べたか、そこからセットプレーがいくつ生まれたか、ボックス内へどれだけボールを送れたか、が『アグレッシブなサッカー』のひとつの調子のバロメーターになるのだろうと思う。川崎ですら、自陣での守備やプレスバックに難点があり、そこを突いた長沢のゴールが今季もっとも理想的なゴールなのだと思う。ただ、さっきも書いたように、プレスをかけてもかわされたり、プレスバックも速かったりすると、たちまちうまくいかなくなる。今はプレスやカウンターではなくて、ボールを持って相手を崩して、コーナーフラッグを目指している。ガンバ戦に限ればその回数は多かったし、結果として多くのCKやFKも取れていた。試合後に木山さんが「それほど悪くなかった」と言ったのは、おそらくこの辺りだろうと思う。

 

 ということを前提に、2019年山形の映像をチェックしてほしい。さっそくセットプレーで得点しているはずだし、相手陣深くに突っ込んでいくアタッカー、ボックス内へクロスを放り込んでいるはずだ。個人的な感情を言えば、セットプレーというストライカー不在がここまでの攻撃で苦しんでいるひとつの要因だと見ている。

 

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 完全に余談なのだけれど、フラッグ付近へFWを外流れさせるのは、手倉森ベガルタの十八番だった。フルバックとマッチアップの不平等を生み出し、相手CBを引っぱり出し、中央に待つのはセンターFWとなぜそこにるステルス戦闘機だった。敵陣深くボールを運び、相手を下げさせてから繰り出される10番のキック。そういえばセットプレー鬼だったな。なお、選手間を攻撃する手法は渡邉ベガルタの大原則。僕は、木山ベガルタベガルタ仙台の戦術史を見ているような気がする。気がするだけ。(ちなみに4-2-3-1フォーメーションは、オーストラリアサッカーの父と呼ばれた、名前は、えっとなんだけっけか、なんかそんな人が一瞬、ほんの一瞬地獄のようなサッカーを体験させてくれたけれど、一応同じ4-2-3-1。べつにそこまでリバイバルしなくてもいいのに…)

 

おわりに

  僕は、落ち着ている。落ち着いてられない外の喧騒に疲れるだけで。降格のないシーズンに、何が危ないのだろう。来年、リーグやクラブがあるかどうかも分からない危機感の方がよっぽど僕にはある。目の前で、4点も5点も取られようと、来年リーグ戦がきちんと機能するのなら、降格枠が増えることの方がよっぽど怖いと思っている。この「Jリーグっぽい何か」の何に怖がっているのだろうか。試合を成立させるだけでも、とてつもない労力がアディショナルに発生している。何が怖いのか。危ないのか。歴史を紐解き、先人の知恵を拝借し、自分で考えて噛み砕いて肌で風を感じれば、サッカーの中身についてはそこまで悲観的な論議をする必要もないし、超過密日程と突然消える試合、35度を超える芝生の上で、何をそんなにやってほしいのか。負けるのがダメならダメとそう言えばいいし、全試合勝たなきゃ意味がないと言えばいい。筋を通して結果だけですべてを語ってほしい。不都合な状況に立ち向かう選手たちを見たいんじゃないのか?反骨心や野心溢れるチームを見たいんじゃないのか?

 試合後の関口のTwitterコメントや他の試合後の選手たちのコメントを見ると、本当に悔しがっているのが分かる。自分たちがやりたいことをやっても勝てなくて悔しい、何も出来なくて悔しい、そのすべてだと思う。「自分のやるべきことをやるだけです」とドライに選手が言っているのであれば、それは一大事だけれど、再開後に劇的に変わったサッカーと選手たちのチャレンジングな姿勢。あとは勝負事だ。反転攻勢の機会はやってくる。その機会を待つんだ。待てる自信はたしかに僕も自信ないけれど、自信がないからやれることをやる。やりつくす。僕は山形時代の映像を見て、J2チーム監督時代の分析系の記事もいくつか読んだ。そしてこうして、記事を書いている。それが何だ?何になるんだ?そうだ、何にもならないかもしれない。でもいつか、テグやナベを懐かしく思い出すように、木山さんも思い出したくなる指導者だと、僕は信じている。だからこうして、その足跡を書いている。未来の自分たちへのタスキだし、誰かのタスキになるかもしれない。そう思い込んで、今日も書いている。

 

 

「To know oneself is to study oneself in action with another person.(自分を知るということは、他人の振る舞いから自分を学ぶということだ)」こう言ったのは、ブルース・リーだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

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birdseyefc.com

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【古兵】Jリーグ 第13節 サンフレッチェ広島 vs ベガルタ仙台 (1-1)

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ広島戦のゲーム分析。堅牢な盾のつぎは、攻守に激しく戦う広島。どんな壁が目の前を塞ごうとも、それでも前へ進み続けるベガルタ仙台。恐れることなく、相手守備陣へと飛び込んでいく。相手で埋め尽くされた空を解放し、一撃の閃光が走る。長い沈黙から目を覚ました男の、一撃だった。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは4-2-3-1のまま、ウィングにタカチョー、センターFWにゲデスを起用。リザーブには兵藤が帰って来た。

 広島は3-4-2-1。人とボールを基本として、攻守に戦うチームの印象。青山がスタメンにいない。

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • 『蹴球仙術メソッド』を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • 文章の伝わりやすさから、便宜的に、『攻撃・守備』を使用。
  • ボールを奪ってからの4秒間をポジティブトランジション、ボールを奪われてからの6秒間のネガティブトランジションとしている。

ボール保持時

スペースを創り、使い、再利用する攻撃

 ベガルタのビルドアップは、いつもの通りボックス型(2CB+2CMF)。左フルバックの蜂須賀が低め、右フルバックの柳が高めに位置取りするのもいつもの通りだ。広島は、セット守備では5-4-1で対抗型を組んできたこともあり、CB、FBの1人がボールを持つ時間とスペースがあった。 広島は、先制点を奪い、15分ほど経過してくると自陣でのリトリート守備へ移行。1トップがボールを奪えないのと、ホルダーに対して高さ維持を目的とした横のパスコースを消す『横切り』をしないので、ベガルタも高さを維持できたし、前進したボールをチャレンジングに中央へ入れたり、バックパスで前プレを誘発させるようなことにならなかった。そういった、ビルドアップでの余裕から、ベガルタがボールを持つ時間が増えていったのだと思う。

 ボール保持攻撃は、両ウィンガーが相手CB-WB間へカットアウトランを繰り出す攻撃を主軸とした。広島の守備がかなり人とボール基準の守備だったので、蜂須賀や柳がボールを持つと、WBが縦へ迎撃プレスをかけて来る。その背後を真瀬、タカチョーの両翼が狙った形だ。なお、WBの迎撃プレスも、左サイドでは蜂須賀が低めに構えること、背後をタカチョーに走られることから、中途半端な高さまでの迎撃にとどまった。よって蜂須賀には時間とスペースができることになる。

 さらに左サイドの攻撃を見ていくと、タカチョーを監視するCBが、前述したとおり人とボール基準のためかサイドまで出てき対応するので、今度はCB-CB間が広がってくる。1トップのゲデスをマークしていると、中央CBが空いたスペースをカバーしないシーンもあり、ベガルタはアタッキングMFの関口がそのスペースへオフボールランを繰り出すことで攻撃していった。CMFの椎橋も絡んで、左サイドの4人がDFライン背後へのバックドアカットの連続攻撃で、広島DFを引っぱり出しては背後やスペースを突いていく。

図1

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広島DF攻略の鍵は広島DF?

 人とボール基準のいわゆるマンツーマン守備の特徴として、「相手がマークを外そうとして人やボールの動きが活性化し攻撃を円滑にさせてしまう」特徴がある。つまり、広島DF自身が相手の攻撃を活性化させているということになる。この試合でも、ベガルタは3人がボールに絡むと、斜めと横のサポートで三角形を作りながら、先ほど書いたバックカットとバックカットした選手が空けたスペースを使う「スペースの半永久活用」を繰り返した。ベガルタの攻撃型は、右サイドでも見られたので、チームとしての狙い、相手選手間を狙い撃つ攻撃の主原則だと考えられる。右サイドは、WGの真瀬、FBの柳が背後を狙っていく、非常にシンプルだけれどCMF浜崎が絡むと攻撃力が増した。同点のシーンも、その浜崎ですら選手間のスペースへ走り込み、浜崎がいたスペースを椎橋が使い縦パスを刺した。

 ベガルタの攻撃は、真瀬、関口、タカチョー、柳が相手DF背後や選手間のスペースへとオフボールランを繰り出し、1トップのゲデスも選手間スペースを突きながら楔パスを受けたり、レイオフをする。動きのあるサイド攻撃を支えるのがCMFの椎橋と浜崎になるというのが、今の攻撃の根幹になっている気がする。気がするだけ。もともと、4-3-3の際は、アンカーとCB以外がスペースや背後を突く役割を担っていたので、再開後のチームがいかに攻撃的だったかが想像できるし、今はかなりバランスをとっているようにも思える。それでも、最大限の攻撃力を発揮できるよう調整を続けてきたのだと思うと、さすがの一言である。

 

ボール非保持時

対3-4-2-1攻撃へのプレッシングメソッド

 ベガルタのセット守備は、4-4-1-1。広島のビルドアップは、3CB+2CMFのM字型ビルドアップであり、4-4-2ディフェンスに対して、手軽に威力の高いポジショナルアタック 、定位置攻撃を繰り出せる3-4-2-1で攻撃型を組んでいる。簡単にいうと、4-4-2が抱える構造的に空いているスペースである痛点を突くポジションに初めから選手を配置しているのが3-4-2-1である。ベガルタとしては、「この構造的な痛点を分かっているうえで、何で対抗するのか?」がこの試合での最大のポイントである。

 まずは両ウィング。プレスターゲットは、左右CB。これは、これまでの3バックへの前プレでもよく見られたプレッシングであり、あくまでワイドの選手ではなくCBへ前線からプレッシングしていくのが基本原則である。右WGの真瀬は、今までの試合でも見せていたように、CBからハーフレーンへのパスコースを切りながら、WBや中央へのプレッシングもできる位置からプレススタートする。逆に左サイドのタカチョーは、CBに対して完全に横切りをする。タッチラインへのボールを完全封鎖することで、CBの選択肢を中央へのプレーに限定。中央は、関口やCMF椎橋、浜崎が待っているので、今度は中央エリアでのプレッシングが始まる。広島としては、ハーフレーンのシャドーへの一本のパスで攻撃スピードを上げたかったのかと思うのだけれど、そもそもそこへ入れさせない、入ってもその次のプレーに繋げさせない守備でベガルタは3-4-2-1ポジショナルアタックに対抗した。

図2

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3-4-2-1の難しさ

 相手CBへWGのプレッシャーがかかっていれば、ワイドに張りながらフォローに降りるWBへ両フルバックがプレッシングをかけた。それに追従して全体は横へスライド。ボールサイドに4-4-2のブロックを作って、逆サイドに相手選手が余っているが前進を許さなかった。こうなると広島としても、もう一度「外す」作業が必要になってくる。これは3-4-2-1の脆弱性であり、限界でもあるのだけれど、「はじめから外れててスペースに立っていると何をどう外していくのかの不安定になる」状態に陥る。さながらポジショナル迷宮。また、そもそも最初から外しているのに、もう一度外さないといけないのであれば、3-4-2-1である必要性を問いたくなるのである。ある意味、終盤のサイドからのクロス攻撃が解答かもしれないのだけれど、フィジカルやスピードで解決しようという策もわりと見かける解決策だし、夏の連戦でどこまでそれが維持できるか。守備で動かされ体力も削られたなかで。まあこんなことを、2018年後半から2019年前半のどこかのチームを思い出しながら、見ていましたとさ。

 いずれにせよ、ベガルタの守備に手が入ったのは間違いなくて、WGの前線からのプレッシング回帰、フルバックの前プレ、2CMFのスペース埋めと、こちらもなかなかに負担の高そうな守備ではあるのだけれど、「限定して限定した先で120%のパワーで奪う」をとにかく継続しようという姿勢がうかがえる。あとは、「それでも中央にパスを入れる、ドリブルで侵攻してくる」強者に対して、どこまで耐えきれるのか。でもここは強みの部分であるし、逃げずに真正面からあたってほしい。

 

考察

つながっていくDNA

 もともと4バックの選手間を攻撃するアイデアを3FWで表現しようとしたのが、渡邉ベガルタであり、今の木山ベガルタも相手選手間を攻撃しようという攻撃の主原則が多いに見られる。今のチームの場合は、3FWだけでなく、アンカーやCB以外の選手がそれを実行するので、過去の取り組み以上に挑戦的であり攻撃的である。また、プレッシングも、限定してその先で奪い、前へパワーを持って進むこととも、ベガルタ仙台アイデンティティとなりつつある。枝葉やノウハウの部分が違うだけで、最新版アップデートと呼ぶべきか、リバイバル、リブートと呼ぶべきか、全く新しいベガルタになろうとしているのか、いずれにせよ何かまったく違うチームというわけではなさそうだ。

可能性の幅

 現時点の順位表を見ると、トップハーフを走るチームには敗北、ボトムハーフのチームには何と無敗。ただ2勝でそれ以外が引き分けと、互角かそれ以下になってしまっているのが今の順位になっている要因かもしれない。強豪に食い下がり、競合には勝ち切る「清く正しい姿」を見せていけば、順位は自ずと上がってくる。問題は、来年以降のチームがどれだけ維持できて、きちんとしたリーグ戦として戦えるのかが全くの未知数なところ。とにかく今年は、やれることの幅、できないことを見極めて、チームを大きくする作業を引き続き継続してほしいと思っている。もうすぐ、9月だ。

 

おわりに

 守りながら攻撃なのか、攻撃しながら守るのか。別にどちらでもいいのだけれど、その難しさをとても実感している。ボールを持って戦う以上、奪われるリスクがある。奪われても、奪い返す確かな方法論とメンタルが必要。心技体。攻守表裏一体。すべては繋がっている。これまでも、これからも。でも、今日のカウンタープレスは、速かった。

 もう少しで、それぞれ表現してきたことが繋がって、ひとつの、一枚の岩になるのだなと感じる。我々は、ひとつになって、束になって、何度も食らいつく。そんなクラブだ。そのクラブカラーを体現していければいいと思う。もう少し、あと少し、反骨心と野心が続きますよう、タカチョーのランや真瀬のプレス、兵藤のゴールを眺めながら、そう思うのだった。

 

「 大丈夫ですよ。人間誰しもいつかは死にますから。そんなことよりも、いま僕たちが考えなきゃいけないのは、目の前の一手です」こう言ったのは、村山聖(聖の青春)だ。

 

参考文献

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【原点】Jリーグ 第12節 セレッソ大阪 vs ベガルタ仙台 (2-1)

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイセレッソ戦のゲーム分析。手に入れたクリーンシート。一歩、そしてまた一歩と前へと歩み進めるベガルタ仙台。そんな彼らに、リーグ最強の盾が立ちふさがる。堅牢な守備は、ベガルタが羽ばたく空を狭くする。真夏の連戦を戦う戦士たちが見つけようとした答えとは。何が起こるか分からない世界で、この試合もまた戦い続ける。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、神戸戦からスタメンとフォーメーションを固定。ベンチにケガからゲデスが帰ってきている。ボール非保持時には4-4-2のブロックを組んで相手を受け止め、攻撃時には変わらずウィングからスタートする。特に、左WGの西村が攻撃の一番槍を任されている。

 セレッソは、4-4-2。前節川崎戦で大量失点したがパスコースを消し、ボールホルダーには時間とスペースがあるにも関わらず攻撃を限定する「奪わず奪う守備」でリーグ2位につけている。元仙台の心臓である奥埜が前線からのプレッシングで全体のプレッシングのスイッチになり、代表クラスの清武がフリーマンのように振る舞い攻撃の全権を託されている。 

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • 『蹴球仙術メソッド』を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • 文章の伝わりやすさから、便宜的に、『攻撃・守備』を使用。
  • ボールを奪ってからの4秒間をポジティブトランジション、ボールを奪われてからの6秒間のネガティブトランジションとしている。

ボール保持時

堅牢なブロックの隙間へと

 ベガルタのビルドアップは、2センターバック+2セントラルMFのボックス型。左フルバックの蜂須賀が低めの位置を取ることで、ボックス型+1をとるいつもの形。右サイドのフルバックである柳は、高い位置を取るウィングロールかハーフレーンへレーンチェンジするファントムアタックで、前線へのプレッシングを仕掛けてくる傾向にある左サイドハーフの清武の背後を狙った。また、左サイドは、左ウィングの西村、アタッキングMFの関口がCMF横を狙う立ち位置を取った。自陣でのポゼッション志向が強く、GKを含めてのビルドアップはマリノス戦からの継続である。ただし、ウィングへの縦のキーパスは変わらずなので、セレッソがボールを持つ時間を与えてくれたことがあるけれど、メンバーが戻ってきて気温も下がってくれば自陣でのプレス回避からの擬似カウンターへ軸足を移していくのかもしれない。

 一方、セレッソのセット守備の基本原則は、FW-SH-CMFの3人で三角形のブロックを形成することにある。たとえば、FWに入る奥埜が横パスをさせないようホルダーの横に立ち封鎖。それに呼応するように、SHが縦ののコースを切り、ホルダーのスピードアップを阻止して減速、CMFが中央に入るパスをカバーする守備だ。ホルダーに激しいプレッシャーがかかっておらず、ある程度の時間とスペースがあるにも関わらず、選択肢を限定され、中央へパスやドライブを強要される。

 セレッソが守備的だとか、ロースコアを狙っているという言説は表面をなぞっているにすぎず、高い位置から多段にも防御壁を作って自陣防衛する攻撃的な主張だと見える。攻撃とか守備とかそういう言葉ではなくて、駆け引きするなかでゲームを有利に進めようとするのが、今のロティーセレッソだ。そういうチームが、この日のベガルタの前に立ち塞がったということになる。

 

ボールの進行方向はサイド。課題はゴールへの直線的な攻撃か。

 そんなセレッソの守備原則をうけて、ベガルタとしても、浜崎、椎橋のCMFに時間とスペースがあるなかでボールを持つことができた。また、左サイドについては、かなり警戒されているなかハーフレーンに立つ関口や西村を狙った縦パスが入っていたので、ボールが入ったあとの展開でゴールに仕掛ける攻撃だとより怖さがでたか。攻撃では、ウィングや関口、西村にボールが入るとスイッチが入るのだけれど、そこから2、3人の連携でサイドを崩す意識の方が強く、連携しながらでもゴールへ直線的にボールを運んでいくルートはなかなか見いだせていなかったし、木山監督のコメントにあったように、4-4のブロックの外側からの攻撃と対応された後に空くスペースが狙いだったとすれば、やむなしといったところか。ブロックのなかで息継ぎしながらプレーできる選手がいれば、もっと相手を中央へ寄せてから外への展開、ウィングやフルバックにボールが渡った後に中央のスペースを突くなどのバリエーションも期待できたのではないかと思う。ボール非保持を度外視するのなら、佐々木匠あたりが得意とするプレーの気がする。気がするだけ。

図1

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ボール非保持時

フリーマンを使ったビルドアップ vs 4-2-3-1プレッシング

   ベガルタのセット守備は、4-4-2。敵陣では両WGが相手CBへ、ミドルサードでは柳、蜂須賀の両FBがウィングロールのFBへプレッシングをかけていく攻撃的な守備。選手個人をターゲットとした守備がかなり色濃く出ている。積極的なプレッシングを実行するワイドプレイヤーに対して、2FWは相手CMFを背中でカバーしながらボールのサイド限定する。2人のCMFは、両FBがワイドレーンへプレッシングをかけたことで出来る後方のスペースを埋めるために自陣へのランも実行。セレッソも、両SHがハーフレーンへのレーンチェンジ攻撃やチャンネル(FB-CB間)をオフボールランで攻撃するので、4-2-3-1と2人のセントラルMFがいるメリットを活かした形になる。これまでは、ファイナルラインの4人がペナルティエリア幅でラインを作って守る形だったのだけれど、フルバックセントラルMFも、スペースへ入ってくる選手へプレッシングをするようになり、柏戦、ルヴァンのセレッソ戦での大量失点やクリーンシートが湘南戦と清水戦の2試合だけなのを気にしているのだと予想される。

 一方のセレッソの攻撃は、4-4-2の陣形をなるべく崩さない形で、2CB+2CMFのボックス型を基本に、GKキムジンヒョンと左SHの清武をプレッシングから逃げるビルドアップの息継ぎポイントにした。セレッソ陣でベガルタの前プレ隊と見合っても、両CBはペナルティエリア幅いっぱいに広がりGKと擬似3バックを形成。一方で両フルバックはワイドに構えるので、ベガルタの西村、真瀬の両WGのプレッシングを分散させることに成功。加えて、両SHがCMF横までドロップするので、特にオンボールに優れた清武を誰見るんだ?問題が発生。浜崎は、真瀬に指示出しをしながら、清武と対面する藤田を監視。最終的には、2CMFでセレッソ両SHを見る形をとることになる。

図2

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図3

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 ベガルタの4-2-3-1プレッシングでのギャップを清武のポジショニングとGKキムジンヒョンで無効化し、時間とスペースを創った。できた時間とスペースで、逆サイドの坂元やFWのブルーノ・メンデスへの中長距離パスで一気にベガルタ陣へと侵攻していった。

 

人で圧をかけるも……

 ベガルタとしては、GKとCBの時間とスペースはある程度許容して、2人のCMFを背中でカバーすることに注力。清武には浜崎が管理するように修正。ミドルサードでの攻撃へ移行させれば、2CMFがハーフレーンへレーンチェンジするSHへつく形に完全移行した。西村と真瀬のWGは、ボールを持つCBからの縦パスを妨害するよう縦のパスライン上に立ち、ワイドレーンに立つフルバックへボールが出ればプレッシャーをかけていった。ベガルタのプレッシングの特徴である「ウィングがCBへプレッシングをかける」は、4-2-3-1になっても変わらない基本原則なのが確認できた。

図4

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 ただ、左サイドについては、西村が対面する松田へのプレッシャーが曖昧というかムラがあり、縦に強くプレッシャーをかけけるのはLBの蜂須賀だった。SH坂元がハーフレーンではなく、オリジナルポジションであるワイドに立ち位置を取るとかなり苦しくなり、2失点目のシーンも敵陣深くプレッシングにいった蜂須賀が必死に自陣まで戻ってきたが間に合わなかった。1失点目も、蜂須賀の後方スペースを使われ、本来中央を守ってほしいCMFがサイドへ誘き出される形になっている。

 ウィングとフルバックという、ワイドプレイヤーが高い位置からプレッシングをするのは今のチームの特徴なのだけれど、外された時や上手くいかない時のリカバリー策にかなり苦慮している印象だ。たとえば、一段目のプレッシングを外されたWGが、中央のスペースをカバーするなど「行ったきり戻ってこない現象」に少し手を入れたい気もする。でも、攻撃の時にカウンターの急先鋒としておきたいウィングの西村。この試合において、攻守の収支バランスがかなり微妙な感じで、清武とは対照的な印象になる。清武もフリーマンとは言うものの、ボール非保持時は中央へ絞ってカバーしている。ボールを奪えば、ゴールへ一番近い3線(中央3レーン上)にいる攻守表裏一体ポジションを取っている。セレッソは守備的ではないと主張したいもう一つの理由にもなる。

 WGの守備は、かなり低い位置まで守備する仕組みにはなっていて、それが守備力を安定させてはいるのだけれど、攻撃との両立という側面でおいて言えば、やや守備的に振り過ぎてるとも取れる。だから、エリアによっては高い位置からプレッシングをかけていく判断も分かる。前線からのプレッシングで、攻撃力を補いたいというのも分かる。ただ、プレッシングの基本原則は、①噛み合わせ、②裏を取られない、③コンパクトさがある。2失点目は、ビルドアップのミス→前プレ移行→前プレ外されるから生まれていて、すべてがバラバラだった。さらに、リトリートして自陣を埋めるルーティンも守られていないとなると、話は難しくなってくる。GKへプレッシングをかけたのに、真瀬が追従しておらず天を仰いだ長沢と同じように、故郷の空を思い出しながら坂元のゴールを見届けるしかなかった。

 

考察

「最後は外」攻撃の精緻化

 マリノス戦から、GKを使ったビルドアップに注力しているベガルタ。前節同様、ボールをしっかりと握って攻撃したい姿勢をプレーやコメントからも見聞きできる。ボール保持攻撃については、いずれ取り組むべき課題だと思っているので、遅かれ早かれやる必要はあるしましてやセレッソ相手となると、ボールを持つ時間も長くなるのは自明だ。ただ、前節清水戦では4-4-2のブロックにスペースや時間があっても、最後の局面で崩すに至らなかった背景から、セレッソ相手に崩せるものだとは正直思っていなかった。だからボール保持攻撃が課題とは思わない。ただ、最後は結局外からのクロスボールになるのなら、そのクロスの精度やパターン、駆け引きにはこだわりたい。

 いくら固いセレッソでも、クロスに対してフルバックセンターバックとでギャップができることがあったり、川崎との対戦でセットプレーから失点を食らっていることから、「自陣で深く守ってはね返す」ことについてはそこまで強さは無いのかなと(それでも高い守備力ではある)。であれば、この日の狙いというのも理解はできる。理解できるからこそ、もう少しクロスのコースやパターン、クロスと「見せかける」プレーをもっと増やしたいと感じる。柳と蜂須賀が持ったらクロスが来る、と思われたら、守る側としては予測しやすい。

 

このチームの怖さ、つよみとは

 ボールを持っても結局は「ウィングへの縦のパス」「大外からのクロス」がゴールの前の目標であるなら、そこをもっと極めればいいし、守備においても前線からのプレッシングや奪われた後のカウンタープレスも極めていけばいい。いずれにせよ、「ベガルタって〇〇が怖いよね」ってなれば、我々としては大成功なのである。さらにもっといえば、ウィングへの縦パスに対して相手DFが「攻撃したいけどまずはちゃんと逃げずに対応して勝たないといけない」と思わせるぐらいやってほしいのである。相手が警戒すれば、固さが出て、固さが出れば瞬間の対応に遅れやズレが出る。ズレが出ればチャンスになる。もちろん、相手も成長したり研究して上回ってこようとするなら、それは「相手チーム・選手を成長させることを手伝った」と捉えればいい。ベガルタとしては、それを上回ればいい。そうやって、サッカーが深くなっていく。でもその前に、自分たちが表現したいことを整理して、何ができて、何ができないのかを明確にして潰し込んでいけばいい。あとは、失点やケガ人が続いたチームで選手の士気が下がっていないかが心配である。

 

おわりに

 みなさんは、CLの決勝をフルタイムでご覧になったでしょうか。僕はサッカー観戦者底辺なので、しっかり見逃し配信で見ました。よく日本では、海外に勝つために素早くプレーするなんて言われますが、画面で繰り広げられていたのは、速く、強く、思考も速くを90分間連続で繰り返す2チームでした。読みも予測も、対応も最後の一歩も段違いでした。サッカーは難しいです。難しいですが、難しいからこそ、世界中にはサッカーを理解しようとし、技を磨こうとする人がたくさんいると改めて実感しました。

 僕の個人的な感情を言わせてもらえれば、サッカーにはいろんな可能性があると思っています。ある監督は4-4-2のゾーナルブロックを表現し、ある監督は3バックと3フォワードでポゼッションとポジショニングでサッカーはできると、ベガルタJリーグで表現してきました。今は、また新たに、ウィングというポジションを置き、攻守の切れ目ないアグレッシブなサッカーを表現しようと挑戦しています。まったく異なるサッカーでも、勝ったり負けたりを繰り返しながらも、ベガルタ仙台というクラブは成長してきましたし、間違いなく表現してきたサッカーの幅は広がっています。

 そのたびに僕たちサポーター、観戦者は、知らなかったことに理解を深め、できなかったことができたことに喜び、結果も成果も得られず不甲斐ない戦いをすれば「何やってる!?」と叫んできました。遠い欧州の地で繰り広げられたサッカーにはまだ遠いかもしれないですが、彼らと同じように少しずつでもサッカーを理解し、技を高めてきたのだと思います。クラブも僕たちも。でも「勝てなければ」のこだわりからは逃れられないですし、僕の理想は、「相手も味方も完璧な状態で完全に勝利すること」です。その理想の実現はまあ、まだまだ先ですね。難しいことだらけなのがサッカーなので、難しいなら少しずつ理解していけばいいし、そうやって「サッカーを極めて」いけたら僕はいいと思っています。

 そんなこんなで、この試合の彼らへのひとことは、僕が尊敬する心の師匠の一人から言葉を借ります。

 

「そんなんじゃ ねェだろ!!俺が求めた 武の極みは」こう言ったのは、アイザック・ネテロだ。

 

参考文献

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【強欲】Jリーグ 第10節 ベガルタ仙台 vs 清水エスパルス (0-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。ホーム清水戦のゲーム分析。ついに手に入れた勝利。敵地での歓喜は、遠く杜の都にも届く。歓喜の朗報もつかの間、王国清水をホームユアスタにて迎え撃つ。止まらないボール。走るオレンジ。そんな清水に対抗するかのように、ボールを握り、スペースへとウィンガーが駆け抜ける。緊迫のゴール前。攻防を握る中盤にどんな未来を見出すのか。そして、左ウィングが駆け上がる。今回も、ゲーゲンプレスで振り返っていきます。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは前節同様のフォーメーション、メンバーでホームに清水を迎え撃った。リザーブには道渕が復帰。ただ、ジャメやゲデスなどの再開後を支えた選手たちが軒並みケガでリザーブに入れないほどの火の車。なんとかやりくりしてくなかの4-2-3-1なのかもしれない。

 一方の清水。今季から、ポステコフットボール革命開放戦線の分派として、クラモフスキー監督が就任。アタッキングフットボールの旗の元、王国清水に攻撃サッカーを開花させようとしている。ただし、実際にはマリノスとは似て非なるチームで、また直近は守備にも重点を置いており、フルバックがゴール前にアタックを仕掛けるシーンなどは少ない。両チームとも新任監督のもと、試行錯誤を繰り返している印象だ。

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • 『蹴球仙術メソッド』を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • 文章の伝わりやすさから、便宜的に、『攻撃・守備』を使用。
  • ボールを奪ってからの4秒間をポジティブトランジション、ボールを奪われてからの6秒間のネガティブトランジションとしている。

ボール保持時

ボール保持への挑戦と変わらないウィングへの縦志向

 ボール至上主義とアタッキング革命軍であるクラモフ清水を迎え撃つベガルタ仙台流星騎士団のボール保持攻撃は、いつものボックス型(2CB+2CMF)ビルドアップ。4-2-3-1 であれば、椎橋と浜崎はオリジナルポジションでビルドアップを開始できる。利点は、攻守でポジションチェンジが少ないので、ボール主導権の切り替わりに即時対応できる点だ。これは、清水としても同じメリットを享受している。また、両フルバックもなるべく深めの位置で、ボールがハーフラインを超えてファイナルサードへと前進したタイミングをみて高い位置を取っている。

 ベガルタは、GKが足元がうまい小畑であっても、まずは3FWにボールを送り込むことを至上命題としていた。前線が競り勝つ、あるいはセカンドボールを回収することで、ボールを前進させる攻撃だった。ただこの試合も、GKがクバであるにもかかわらず、自陣ゴール前からのボールを繋ぎビルドアップの下地とする。当然、清水も前線から4人のアタッカーと2人のセントラルMFでプレッシングをかけていくのだけれど、きちんと外していく姿勢を見せる。時にはアタッキングMFの関口が、相手CMF横に顔を出してビルドアップの出口役になる。また、RCMFに入った浜崎は、他の選手に指差しやジェスチャーで指示出しをするコンダクター。2CBにプレッシングをかける背後をとり、RBの柳からボールを受け、プレス外しを見せる。ボールを持てば、左サイドへの展開やウィンガーへロングキックを蹴るなど、長短パスとインサイド表裏を使って清水のプレッシングを無効化。マタドールターンから猫背気味の姿勢でインサイドパスを出す姿は、かつてのシャビ・エルナンデスを彷彿とさせる。

 ファーストサード、ミドルサードでボールを持って、ボールを回していく木山ベガルタ仙台革命解放維新伊達者連合だったのだけれど、攻撃の原理自体は変わらない。『攻守においてアグレッシブなサッカー』という崇高な理念を崇拝する敬虔なチームの攻撃の仕組みは変わらない。ボールを動かしてプレスを剥がせば、まずは攻撃の一番槍としてウィンガーへ長いボールを送り、積極的に1vs1を仕掛けさせる。特に、左ウィングに入った西村は、この日チーム最多の6本のシュートを放つなど、相手フルバックとの一騎打ちを挑み続けた。清水のファイナルラインは、基本ラインを維持し、両フルバックともガンガン縦迎撃する意識はそれほど感じられなかった。4人のアタッカー+2人のセントラルMFの6人プレッシングが基本のように見えた。ベガルタのウィング攻撃を警戒している可能性もあるし、そういう意味では、相手を自陣に押し込み高い位置を取り続けるという狙いのひとつを達成できたともいえる。

 

ファイナルサードで「何に」合わせるかという問い

 清水のボール非保持時の振る舞いは、とてもシンプルだった。仙台陣内では前線からプレッシングをかけるが、ひとたび外されてしまえば潔く自陣撤退し4-4-2のようなブロックを組んだ。ベガルタとしても、中盤でボールを握り、サイドで人数をかける時間とスペースがあったと言える。ファイナルサードへの侵入も何度もあった。ただ、試合後に木山さんがコメントしたように、最後の崩しの部分、木山さんは「表」と表現したゴール前での攻撃、相手ブロック前での攻撃までは到達していた。その「裏」であるライン背後への攻撃や完全に守備組織をバラバラに破壊するまでには至らず、西村のバッティングセンターと長沢の反転シュートが印象に残る展開になった。

 後半投入された赤﨑も、前節のような「会ってすぐゴール」というわけにもいかず、惜しいシュートシーンもあったのだけれど得点まで届かなかった。最後に攻撃を完結させるには、2つの「ライン」の考え方がある。ひとつは、「ランライン」。FWがファーからニアに入ってくる線上やライン背後へ抜ける線上など、見えないけれどFWが確実に入ってくれるラインをランラインと呼んでいる。いわゆるストライカーの動きに合わせるというやつだ。もうひとつは「パスライン」。シティのデブライネのように、強力なクロスやパスがあるなら、そのクロスの線上に走りこめば、その交差地点でボールにピンポイントで合わせられる。いずれにせよ、人やボールを基準にプレーしているとどうしても合う、合わないがあるし、競り合いなどの不確定要素が多くなる。それが確実にこの線上に走ってくる、ボールが来るとなれば、自分たちは分かっているが相手にとっては予測が難しい状態にできる。

 ちなみに清水の場合は、仙台の両サイド深くをとにかく取って、そこからマイナスのクロスを入れる、あるいはプラスでもGKとDFとの間にクイッククロスを送り込む「パスライン」を持っていた。あとは合わせるだけというやつである。では、ベガルタは?そもそもどちらかでもラインを持っているのだろうか。個人的には、長沢のニアへのラン、赤﨑のファー抜け、蜂須賀・浜崎のクロスが最も可能性があると考える。ただ、それが最も発揮できる仕組みがあるか?は分からない。当然選手の組み合わせやパッチワーク的要素もあるのだけれど、ボールをゴール前まで運ぶことに長けているチームが勝てるルールだったらきっとベガルタも上位にいるんだと思う。まあ、そんなことを前節の蜂須賀のクロスからの赤﨑のゴールを見た後なもので、なおさらそう感じるのだ。

 

ボール非保持時

4-4-1-1ブロックの外切り→内切り守備

 ベガルタのセット守備は、4-4-1-1でアタッキングMFの関口がアンカーロールの清水CMFを警戒する形。両ウィングは、ワイドに張る選手を警戒しつつ、相手CMFやCBにプレッシングをかける。清水のビルドアップは、ボックス型(2CB+2CMF)でLCM竹内がドロップで擬似3バック化する逆丁字型ビルドアップとのハイブリッドだった。左CBの立田が竹内とのボール交換から、時間とスペースとボールを持って攻撃の司令塔となった。さらに、清水の4-2-3-1はトムキャット可変でウィングがワイドレーンからハーフレーンへレーンチェンジする。ハーフレーンからFB-CB間のチャンネルを狙うカットアウトで、ボールを引き出しつつ、ベガルタのCMFやCBをサイドへ引っ張りだそうと狙ってきた。 ベガルタのWGも、ワイドに張るフルバックを警戒したポジションを取り、柳も蜂須賀も相手フルバックへ縦迎撃する形だったので、ハーフレーンへの楔パスやカットアウトランも非常に刺さる形となった。10分過ぎから飲水を経て、WGが明確にハーフレーン上に立ってトムキャット可変を警戒しつつ、ワイドに張るフルバックへのセカンドチェックでの対抗に修正する。

 こうなると、清水も中央3レーンを攻撃することも難しくなったのだけれど、2つの変化を加える。ひとつは、ボックス型ビルドアップでの時間を長くし、CMF竹内もアタッキングに加わること。竹内が選手間を抜けていく動きをすることで、ベガルタのマーキングにズレが生まれ、前述のトムキャットとカットアウトとの合わせ技で中央のエリアが空いて来る。これには、長沢と関口が2CMFを監視することで対応。よって、ベガルタのプレーエリアは低くなり、相手CBには時間とスペースを与え相手ポゼッションを許すことになった。もうひとつの変化は、サイドチェンジ。前述の通り、CBに時間があるので、特に立田や竹内から逆サイドへサイドチェンジキックで局面を打開するような攻撃を見せ始めた。ベガルタも横スライドと、ゴール前は逆サイドの柳がカバーするギリギリの守備でなんとか持ちこたえる状況になる。こういった状況になることも見越してなのかは定かではないのだけれど、自陣でボールを持てるようにしていたのかもしれないし、そうじゃなのかもしれない。

 

考察

これからの戦い方について

 非常に狙いたいことが見えた攻撃だったと思う。ボールを持てば、自陣でもきちんとボール交換し、相手のプレッシングをかわしていく。清水のプレッシングは数合わせでプレッシングしてきたこともあって、1人で2人を守る守備でもなかったので幾分かは楽だったのかもしれないのだけれど、それでも繋いでかわして前線へ、という形はよく仕込まれていたように見えた。 ただ、まあこれはもちろんポゼッション時間が短い、ポゼッションするエリアが低いということもあるので、何とも言えないけれど、ファイナルサードで誰がどうやって得点を取るのかはイメージがしづらいし、結局オープンエリアでの西村のカウンターアタックの方が可能性を感じたのが実際のところだ。じゃあ相手を引き寄せるためのポゼッションなのか?僕はそれなら〇だと思う。でも課題は、「ファイナルサードでの崩し」だと言う。であるなら、これだけスペースや選手間のラインが広がっている守備相手に、前半で2、3発入れるのが筋だと思う。撃ちあい上等!を嫌がって、守備に軸足を置いた結果の「0-0」ならそれはそれで僕は良いと思う。でも高い位置を取りたい、ボールを握りたい、最後の局面で崩したい、のであれば、ゼロ得点は本当に評価できる結果なのだろうか。あれだけ敵陣で時間とスペースをもらっているのもあるなかで。欲しい結果と得られた結果との噛み合わなさ、やりたいこととできてることとのギャップ。いろんな要素があるなかで、完璧を求めるのは酷だと思う。やりくりが厳しいなかで無理難題なんだと思うし、今はやれることをやるだけなんだとも理解する。とても難しいなと感じている。降格も無い。今年は勝負の年じゃない。それも分かる。全部分かっているつもりだ。でも、やるべき時にやるべきことをやれなければ、それはどんな時であれ、手痛いしっぺ返しがお釣りが出るほどやってくるし、試したはいいけれど最後の最後で解決策が見つかりませんでした!お試し期間も終わります!にならないよう、良い失敗と良い挑戦を続けてほしいと思う。

 

おわりに

 要約するとゴールが欲しい!!!クロスが風に流れて入るとかオウンゴールとかじゃないゴールを見たいんんだ!!!僕は強欲だ!!!もっともっとだ!!!以上!!!

 

「死んだ奴に会いたいも、金が欲しいも、女が欲しいも世界を守りたいも、全部ほっする心。すなわち、願いだ。俺に言わせりゃ、欲にいいも悪いもねぇ。欲っつうもんに偉そうに格付けするから、人間はややこしいんだよ」こう言ったのは、グリードだ。

 

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アザールの懐②

はじめに

 どうも、僕です。前回上げたアザールの懐の続きをやっていきます。

 

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今回見るのは、懐縦突破の派生形である「懐マシューズ表裏」です。マシューズフェイントは、利き足が右足なら右足アウトで相手の重心ベクトルの逆をついていくドリブルです。アザールもですが、イニエスタやメッシの得意技ですね。相手と正対した状態のマシューズが表、相手を背後にして相手を回転軸にしてマシューズからターンで抜けていくのをマシューズ(裏)と呼んでいます。いずれも、懐をつくった状態から繰り出すので、前回記事で取り上げた通り、ボールを包んで隠して守って抜いていくことが懐マシューズ(表)(裏)の要諦になります。

 

懐マシューズ(表)(裏)

 正対→2歩1触→懐マシューズ(表)

下の写真は2歩1触の2歩目(1触)。

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小さいが利き足(右足)を引いて懐をつくる。

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DFの右足が浮く。

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DFの右足が浮く=左足に重心がかかる(ベクトルの根っこ)と判断しマシューズ(表)をしかけます。

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DFの両足のバランスが戻る。マシューズ(表)をキャンセル。

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そのまま姿勢を低く、懐を作る。

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DFはアザールの利き足(右足)の直線上に立ってDF。縦(ベースライン)を抜かれない構え。

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DFの縦(ベースライン)を抜かれない意識の高さからか、左足側へ体重がかかっています。右足が完全に浮く。

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懐マシューズ(表)。DFとしては縦をカバーして右足側に誘導したかったのかもしれませんが、アザールは構わず縦突破を図る。

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DF左足に重心が残っているため、DF対応範囲(守備範囲)が限定される。そこを懐マシューズ(表)でボールを逃がしていきます。

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突破成功。DFが左足に重心をかける2度のタイミングで、2回とも懐マシューズ(表)で縦突破を図ろうとしたアザール。DFとしては利き足側、縦を守っていたのに突破される構図。「縦を防がれているから縦突破は避ける」では芸がないです。相手の足の立ち位置から意図を察知し、その裏をかくプレーになります。感覚的には「表の裏の裏(=表)のプレー」といったところでしょうか。

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懐マシューズ(裏)

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まず、懐を作る。背後からのプレッシャーを感じつつ、目視で相手を観察。

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DFの右足が着地。このシーンも、DFは利き足(右足)の直線上に立ち、縦(ベースライン)をカバー。

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DFに縦を警戒させて右足に重心をつくる。これは、懐マシューズ(表)と同じく基本と言えます。そして、縦を抜きにかかります。

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姿勢は低くの基本に忠実に。懐を作りながら懐マシューズ(裏)でDFの右足側、重心側、縦側を抜きます。

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このシーンはかなり大成功。DFは右足を伸ばしてもボールに触れることはできないでしょう。

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そのまま、縦突破。ゴールに背中を向けていても、懐をつくり、縦を警戒させて身体を硬直化させれば突破できます。

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ポイント

  • 懐縦突破同様、懐マシューズ(表)(裏)も縦を抜いていくことが基本。
  • DFは縦を警戒するが、「抜かれたくない!」と意識すればするほど余計な力が入ります。力が入ると身体硬直化して、急加速やリズムチェンジについていけなくなってしまいます。
  • 利き足が右足で右サイドであるなら、縦に深くを警戒されているだろうし、逆に左サイドであればカットインからの中央を警戒されます。これを「DFの表の心理」だとすれば、裏をかかれないように対策します。
  • ただし、アザールの懐ドリブル(縦突破、マシューズ表裏)では、警戒して力が入っているところを狙いますし、「あくまで縦突破が基本」にあります。
  • 懐縦突破と同様、相手に踏み込んでいくこと、DFの着地足を確認することが重要になります。

 

 ここまでが、懐ドリブルの縦側の突破を見ました。いわゆる、最初はグーであり、先制パンチでもあります。もちろん、縦だけの駆け引きも、縦突破とマシューズ(表)(裏)の3パターンありますが、相手の逆をつくやり方もあります。次回は、現代型クライフターンである懐クライフを見ていきます。

 

アザールの懐①

はじめに

 どうも、僕です。ここでは、footballhackの懐理論からアザールの懐ドリブルを見ていきます。理論の確認→実践例の確認→概念化・私論化および他の分野との類似性を確認していきます。実際にはfootballhackでも、アザールの懐ドリブルについては取り上げられていますが、自分で解釈と実践をしましたので、その内容を記事化します。

 懐理論から今回取り上げるのは以下です。

  •  2歩1触
  • 懐縦突破
  • 懐マシューズ (表)、(裏)
  • 懐クライフ

この記事だけではすべてを記せないので、いくつか記事に分けます。少なくとも上記の4つ+自分の整理まとめ解釈記事を1つか2つ上げるつもりです。全編上がったらまとめて読んでみてください。そして、ボールを持って試してみてください。

 

懐理論について

 footballhackから最高に分かりやすい動画解説が上がっていますので共有します。今回の題材はこちら。

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非常にシンプルに言ってしまえば、懐ドリブルとは以下です。 

  • 懐ドリブルとは、懐の深いドリブルのこと。
  • 踏み出した軸足と後ろに残した利き足で三角形(懐)を作る。利き足側にボールを置く。
  • かがめて姿勢を低くしボールを包み急加速して抜いていく。 

では、まずは懐から縦に抜いていく懐縦突破から見ていきます。

 

懐縦突破

 まずは、懐ドリブルの基本であり第一の武器である懐縦突破。まずは縦に抜いてスピードアップすることがオフェンス側にとっては重要ですし、ディフェンス側としてはこれをまず防ぐことが使命になります。2歩1触については別記事で実践例を見ます。ここでは、2歩で1回タッチする理解で構わないです。

 

正対→2歩1触→懐縦

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正対しながらゴール前へ進行。

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左足を着地。2歩1触の1歩目。その時目をDFと合わせると、DFは動けなくなる。(ゴーゴンの眼)

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2歩1触の2歩目と1触。右足くるぶしから足の甲へ向けての横のラインと中指縦ラインが交差する部分でタッチ(触)。

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綺麗な2歩1触。ボールの後ろに小さな三角形(懐)ができる。

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懐。左足をボール手前に着地させず、大きく開いた三角形でボールを包む。

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右足でボールをタッチしながら急加速。

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 懐の最大メリットは、ボールをDFから隠せること。文字通り懐に包むことで、DFからのボール奪取を防ぎつつ、ドリブルで前進することです。また、2歩1触からのリズムチェンジで急加速→相手を置き去りにできます。

 

2歩1触の1歩目。

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2歩1触の2歩目と1触。

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右手でハンドオフ。右足で懐をつくるわずかな空間を生み出すための技。

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右足着地。バランスは崩れているが懐。股下の三角形でボールを包む。

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左足にボールをつけて、懐縦突破の構え。DFは、背中でボールを目視で確認できない。実際に自分がDF側になって試してみましたが、本当に全く見えなくなります。

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アザールもバランスを崩していますが、DF側の方が顕著。倒せば1発ファールのリスクとボールが見えないことから、中途半端な対応に(=DFできていない)。

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ボールをキープすることに成功。

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ポイント

  • 2歩1触と懐ドリブルの合わせ技でリズムチェンジ
  • 基本的には、利き足側にボールを置き、軸足を開いて懐を作る。
  • 軸足は相手の間合いに踏み込む感覚。バスケでいうピボット。達人の居合のイメージ。
  • 2歩1触のドリブル姿勢からボールを包むようにかがむことで、背中と踏み出した軸足でボールを隠す。
  • DFがボールを目視できない状況で、利き足でボールを押し出し急加速。ボールをブロックしつつ抜いていく。
  • 目を合わせること、踏み込むことで、人間(DF)は防衛本能から身体を固める(ゴーゴンの眼効果)。岩(固まったDF)の脇をすり抜ける流水の感覚で抜く。

 

 参考

  今回、懐ドリブルを記事化しようとしたもともとのきっかけは以下の動画です。特にオフハンドの見せ方の動画で見せるドライブは、まさに懐縦突破です。ほかにも、駆け引きするうえで大事な考え方だらけなので、このシリーズのまとめあたりで言及したいと思います。

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【真瀬】Jリーグ 第9節 ヴィッセル神戸 vs ベガルタ仙台 (1-2)

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ神戸戦のゲーム分析。試練の果てに見える世界。何が起きても不思議ではない世界で、挑戦を続けるベガルタ仙台とそのサポーターたち。幾千もの立ち塞がる壁に、立ち止まることなく挑み続ける。圧倒的な個人差を見せつけて来るヴィッセル神戸に、ひとりの青年が、空を切り裂き滑空する。試練と勝利と。それでも戦いは続いていく。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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  ベガルタは、前節に続き4-2-3-1。右ウィングには真瀬、右セントラルMFには浜崎が入る形。4-4-2系の守備から攻撃へと繋いでいくのがキーだと言える。

 神戸は、3-4-2-1。他の試合では、4-3-3や5-3-2を採用しているが、サンペールを中央センターバックに据え山口とイニエスタで2センターを組んだ。エースの古橋はケガのため不在。

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • 『蹴球仙術メソッド』を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • 文章の伝わりやすさから、便宜的に、『攻撃・守備』を使用。
  • ボールを奪ってからの4秒間をポジティブトランジション、ボールを奪われてからの6秒間のネガティブトランジションとしている。

ボール保持時

左右非対称のビルドアップ

  ベガルタのビルドアップは、2CB+2CMFのボックス型。LBの蜂須賀が深めの位置を取って、ボックス型+1を取る形。ただ、RBの柳は、ビルドアップの初期段階から高い位置を取る。これまでのベガルタのビルドアップでは、フルバックが深めの位置をとり、センターバックセントラルMFと連携してビルドアップを担当していた。カウンター予防と相手のプレッシングを引き出す狙いもあったのだと考えられる。ただしこの試合では、RBの柳が明らかに高い位置、しかも本来フルバックが担当するワイドレーンではなく、ひとつ内側のハーフレーンに立っていたのが印象的だった。

 そんなこんなで、左右非対称のビルドアップなのだけれど、ある意味右サイドが異質だったと解釈するべきと思える。神戸のブロックは5-4-1。山口が関口をカバーするので5-1-3-1とも取れるような形で対抗型を組んだ。本来、対面するはずの柳が自分の背中にいるのだから、左シャドーに入った郷家にとっては頭を使う状況になったと思う。しきりに背後を確認するために首を振ったり、前半の飲水後は明らかに柳を意識したディフェンスにシフトしていた。こうして、まずは噛み合わせのところで先制パンチを食らわしたベガルタ仙台。特にセンターバックはその恩恵を受け、時間とスペースができていたのだけれど、そんなボール保持攻撃で準備していたのは、右サイドのローテーションだった。

 

偽ウィング真瀬とファントム柳を支えるCMF浜崎

 ハーフレーンで高い位置を取る柳に合わせるように、右ウィングの真瀬は低めの位置へ落ちる。また、CMFの浜崎が右センターバックの吉野の横へドロップ。神戸の1トップ横のプレッシャーがかかりにくいエリアでボールを受ける。こうなると、RB柳とRW真瀬で相手サイドハーフポジションに入る郷家に対して、どちらにつくのか選択を迫るダブルパンチを食らわすことになる。加えて、CMFの浜崎が目の前でボールを持つのにプレッシャーをかけづらい状況を創り出した。浜崎のポジションには、RCBの吉野が入るケースもあった。

 噛み合わせという構造的な部分で時間とスペースを捻出し、その時間を使ってローテーションで右サイド全体の時間とスペースをコントロールすることに成功したベガルタ仙台。神戸の5-4-1がハイプレス系ではなかったことも要因としてあるのだけれど、いずれにしても、自分たちが持っている時間とスペースの拡大策を取ったのは、ゲームを進めていくうえでも重要だ。ボールの進行方向、ロストポイントも管理できるので、いわゆるトランジションのコントロールも可能になる。

図1

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 神戸としても、この状況をそのまま放置せず、落ちるRW真瀬に対してWBの酒井が縦迎撃する対抗手を見せる。ベガルタも、その対応手に対して柳がカットアウトで酒井の背後のスペースを突くなど、織り込み済みといった具合だった。もちろん、左センターバックヴェルマーレンがカバーするのだけれど、サイドに引っ張り出せれば、神戸ゴール前にはアンカーに入ることの多いサンペールとRCBのダンクレー、逆サイドのWBのみになる。こうなると困るからか、神戸の横スライドはかなり早かった気がするし、縦迎撃に呼応して横のスペースを埋める動きは、5バック系のディフェスの定石型だ。一方の仙台も、右サイドの一点突破だけでなく、相手が右サイドに寄っているならと、アンカー椎橋を経由して、逆サイドの守備が薄い地点からの攻撃へ切り替えていた。2、3度、左サイドでアウトナンバーを作って数的優位にオフェンス出来ていたのは、偶然ではない気がする。気がするだけ。

 5バック系、特に5-4-1の痛点は、「まあファイナルラインに5人いるし、ハーフラインも4人いるから足りるでしょ」という心理的『優位性』にある。実際、縦にも横にも同サイドにDFを割けば、当然逆サイドでは足りなくなってくるし、そもそも自分を「シャドー(FW)」だと思っているサイドハーフ役のプレスバックやファイナルラインをカバーする意識は総じて低い。これは、選手どうこうより、攻撃系の選手を採用しているのだから、不思議なことでは無い。神戸としても、もっと押し込む展開を望んでいたのだと予想されるのだけれど、右サイドエリア全体をコントロールされるとは思っていなかったのかもしれない。そういう文脈において、「右フルバック」ができる真瀬、柳、浜崎を起用したのは、もちろんコンディション面もあると思うのだけれど、非常に戦術的な意図を感じる起用になる。前後のポジションが変わっても苦にしない、ボールを奪われた瞬間にオリジナルポジションを離れていても対応できるなど、攻守表裏一体の策だと思える。

 

ボール非保持時

前線4人のボール非保持守備

  ベガルタのボール非保持守備は、4-4-1-1ブロックを組んだ。対する神戸は、3-4-2-1。2セントラルMFのうち、山口は深い位置、イニエスタが高い位置を取る。ベガルタは、アタッキングMFの関口が深い位置の山口をカバー。センターFWの長沢と協力してアンカーロールをカバーする形。その長沢は、相手CBへプレッシャーをかけ、サイド限定と設定を行うプレッシング一番槍になるいつもの形。両ウィングは、前線からプレッシングをかけず、ブロックを維持したまま「奪わず奪う守備」の構えを見せる。特に、RWに入った真瀬は、WBへのパスコースを残しつつ(といってもパスカットに入れる立ち位置)、中央へボールを入れさせるような立ち位置で守備。左利きのヴェルマーレンの左足側をカバーして、彼から良いボールが出ないようカバーする形。中央へのパスを怖がってサイドに出させれば大成功。ボールがサイドへ移動している間に動いてプレッシャーをかければ真瀬としては良い。ボールを持たず、真瀬がヴェルマーレンに、駆け引きを仕掛けた。

 一方のLW西村は、真瀬と少し異なり相手CBの正面、右利きダンクレーの右足正面に立って、まずはハーフレーンに縦パスを入れさせない守備を取る。サイドに出れば、自分の走力でカバーできると踏んでの立ち位置のようにも見える。真瀬が駆け引きを仕掛けて、ベガルタが守備網を張る中央へのパスを誘導する立ち位置だとすれば、西村の中央へのパスを完全拒否。「サイド?出たら潰しに行くわ」と言わんばかりの立ち位置で面白かった。ボールを奪えばカウンターの急先鋒にもなるし、西村としてもなるべく中央に近いエリアで立ってたいという狙いもあるのかもしれない。多分。

図2

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 全体の守り方としては、WBへのプレッシングを両フルバックも実行していた。その背後のカバーを左ならCMF椎橋、右ならCB吉野が担当。ただ、右サイドは、真瀬がカバーしたりプレスバックすることで、柳がその間を埋めたりもしていた。なるべくCBには中央で守っていてほしいという意思かもしれない。

 

神戸の対応手と4-4-2中央封鎖型守備

 神戸の攻撃にも変化点がある。前半の飲水後に、3バックの中央CBであるサンペールが一列上がってアンカーになるフォアリベロ、バルトラロールで対抗してきた。ベガルタの2FWのプレッシャーを分散させる狙いだと思う。また、ヴェルマーレンも逆サイドへのサイドチェンジキックを増やして、ブロックの大外から攻撃するように変化をつけてきた。ただ、そのどちらの対応手にもベガルタは対応手を用意していた。ひとつは、サンペールのフォアリベロに対して、関口と長沢で対応すること。特に関口がサンペールの利き足をディフェスし、外されても長沢が同じようにディフェスに入るのでアンカー経由での攻撃は不発に終わった。もうひとつのヴェルマーレンのサイドチェンジキックも、受け手はWBの西だけれど、この日LBに入ったのが蜂須賀。簡単にはやられなかった。こうして、自分たちの狙いと相手の狙いをきちんと整理して、その対応についても読んで準備してきた痕がよく見られた前半だった。

 ただし、ひとつの懸念だったのが、時折通るセントラルMF背後に刺される縦パスをベガルタとしては気にしていた。縦パスとサイドへの展開(インサイドアウト)のパス2本で、プレッシャーを無効化される危険性があった。後半、先制したベガルタはそこに手を入れる。4-4-2の守備をよりぺナ幅中央3レーン(インサイドレーン)重視の守備へとシフトした。よって、相手WBに時間とスペースを使われることを許容。その代わりに、神戸が最終的に使いたいエリアであるインサイドレーンを封鎖した。こうなると神戸としても崩すのが難しくなり、サイドを変えるがなかなか守備の束が解けなかった。サイドチェンジされるとブロックは下がるので、必然的にベガルタのブロックラインはローブロックを強いられることに。おそらくこの日はそれを○としていた可能性が高い。最低でも1-0で勝利することを目標としていた可能性は十分に考えられる。マリノス戦以上に、相手に合わせる、試合をクローズさせる意思を感じた。

 神戸としても、ブロック外からのバックドアカット(裏抜け)があれば、ベガルタにとっても慌てる状況になっていたかもしれない。失点シーンは、蜂須賀の上空を通されバックドアカットが決まっている。古橋がいたら……と考えたら恐ろしい。向かいのホーム、ノエスタのピッチ、こんなところにいるはずもないのに。最後は、5-3-2で逃げ切ったベガルタ仙台。やはり、とにかく勝ちをもぎ取ろうとした試合、判断だったのだと思う。やっていることは正しいとはいえ、選手の士気に関わるような敗戦続きだったので、木山さんとしてもチーム全体の士気低下を危惧していたのかもしれない。その辺りの危機察知はさすがだなと思う。 

 

考察

4-2-3-1の攻守について

 最大の武器であるジャメがいない、中盤やファイナルラインのメンバーも変わるなかで、いわゆる相手の中盤をカバーする対抗策として4-2-3-1というのはひとつの最適解なのかもしれない。攻撃となれば、ウィングというよりボールを持つという意識も高いように見える。守備については言わずもがなだけれど、片方が守備意識の高い選手が入れば、高いレベルで機能していきそうにも感じる。いずれにせよ、あまりフォーメーションそのものに意味は無さそうだし、どちらかというと、ウィングの守備の方が肝な気がする。気がするだけ。ウィングがどういう守備をするかで、4-3-3なのか4-2-3-1なのかが変わってくるのだと思う。

 

ゴール前で何度か失点していたはず

 ドウグラスがまだフィットしていない感を抜きしても、何本か決定機を外してもらえたのも事実。フィンク監督が言うように、今日「は」ベガルタがチャンスをものにして、相手のミスに助けられたとも言える。これまで各チームのストライカーにことごとく得点を許しているが、この試合も古橋がいなかったから助かったという節はあるのだと思う。思うけれど、それでいいのか?というのはまた別の話である。やはり、4-4ブロックだと、大外が空いて来る。空いたエリアをどうカバーするのか、クロスを上げられてもどう対応するのかは、まだま詰めないといけない。いけないし、これで得点が決まらず失点していれば、「両ゴール前」が弱いチームになってしまう。せめてどちらかは確実に強いチームになってほしいし、これまでは相手ゴール前でのアプローチだったのだから、自ゴール前もできると思う。もちろん、いろんな手札や引き出しがある木山さんだから、こうして書けるのである。(恐れるな!全力で!は最後の魔法にしましょう笑)

 

おわりに

 敗北は人を強くするが、勝利は人を美しくする。まあこれは僕の持論でしかないのだけれど、強さも美しさも、そのどちらも欠けてもいけない。強くなければ守れない、美しくなければ惹かれない。シンプルだ。だから何度も敗けて、何度も勝っていくことが大切で、この試合の勝利でまた一歩、ベガルタ仙台のサッカーは美しくなった。これまでの敗北を糧に。強く、美しく。そうやって、魅力的なサッカーと呼ばれるものは、出来上がっていくんだろうと、醜くも美しい世界の端っこから、応援しています。最高に、強く美しい君たちへ。 報われて、救われてよかった。

 

「ひとにできて、きみだけにできないなんてこと、あるもんか」こう言ったのは、ドラえもんだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

www.footballista.jp

www.amazon.co.jp

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silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com

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