蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【Shooting Star】Jリーグ 第27節 ガンバ大阪 vs ベガルタ仙台 (0-4)

はじめに

 さあ、いきましょうか。 未勝利の闇の中にいるベガルタ仙台の姿は、吹田にあった。青と黒で埋め尽くされたスタンドに、わずかに駆けつけた仙台サポーター。この日、白いアウェイユニを纏った11人とで、100万人の大軍勢となってリーグ2位を走るチームを撃墜するとは、スタジアムの道中で想像できただろうか。今回も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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ゲームレポート

蘇生した4-3-3と椎橋という「舟の錨」

 仙台のオリジナルは、椎橋をアンカーに、山田とクエンカを両ウィングとした4-3-3を採用。日立台でズタズタにされた両翼と錨が帰ってきた。ホームで川崎相手に徹底抗戦で追い詰めた7月22日に戻れるのか、それとも新しい形なのかが注目ポイントだった。ボール非保持時には、匠、椎橋、浜崎の3センターが近距離でインサイドレーンを監視し、両翼が低めに位置する4-5-1ディフェンスを敷く。

 この4-3-3。ただ戻しただけの4-3-3ではなく、これまで散々な目にあってきた4-4-2とのハイブリッドなのが、ゲーム開始から読み取れていく。ガンバは、4-4-2からビルドアップでセンターバックセントラルMFとでボックス型でビルドアップの下敷きを敷き、両サイドハーフインサイドにレーンチェンジするトムキャット、両フルバックは低めの位置を取った。連戦もありメンバーを変えてきたガンバは、CMFに奥野、山本を起用。昌子、菅沼のCBコンビと合わせて、仙台がリトリートする想定か、中央でポゼッションするビルドアップを軸にする。このガンバのビルドアップへの対抗型として、仙台は、3センターと長沢で、中央にダイアモンドを形作る。長沢がCBやバックラインにドロップするCMFのホルダーへ継続サポートを妨害するよう横切りする。縦へ誘導されたホルダーに、浜崎、匠のインサイドMFが挟み込む。2枚の横壁でホルダーの選択肢を制限し、縦に刺す楔パスを出させた。そこにいるのは、アンカーに入った椎橋だ。

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 これまで4-4-2のセントラルMFとして精彩を欠いてきたが、この日はまるで別人のよう。前線5人が誘導した先に出る縦パスをことごとくカットする。仙台の右サイドは、山田が対面する藤春が攻撃的な選手であることからかかなり低い位置までカバー。代わりにホルダーへ、ボールサイドの制限をかけたのがインサイドMF匠なのだけれど、椎橋はガンバの左サイドに寄るFWやレーンチェンジする左SH倉田を首振りで確認。縦パスを予測しカットする。仙台の左サイドはクエンカが高い位置で、ホルダーになるCBへサイドへのコースを切るようにボールサイドをカバー。こちらのサイドも、中央で出て来る縦パスを誘発させて、浜崎と椎橋で狩り込んだ。

 リーグ再開後の躍動した姿を取り戻す出だしを見せるベガルタ仙台。宇佐美、井手口と主力を欠くガンバではあったけれど、仙台がピッチ中央で作る「仙台迷宮」のせいで中盤をコントロールできない。これまでの4-3-3は、ウィングやインサイドMFがプレッシングにいく背後にできるスペースを使われてしまって、そのスペースを埋めるために人を割いたり形を変えたりで、「カイゼン」の泥沼にはまってしまっていた。この日は、ウィングのプレスバックも速く、インサイドMFが前に出たスペースをカバーするなどの微調整も見られた。バックラインも4人をペナルティ幅に維持し、インサイドに絞るSHへはそのままフルバックが担当した形だ。左サイドだけは、クエンカがハーフレーン、パラ(柳)がワイドレーンで担当している。選手それぞれの特徴も考慮しながら、チーム骨格を作っている印象だ。

 こうして、開始早々からガンバの攻撃に自由を与えず、時間とスペースと選択肢を制限し続けたのは、「両翼の復活」、「みんなで守る」で一枚岩になれたこと、そしてアンカー椎橋がコンダクターになったことだと思う。試合途中から、中央に築かれた4人のダイアモンドを避けるよう、山本がバックラインにドロップしたり、SH倉田が落ちてきたあたりで勝負あり。ベガルタ仙台陣のストレスが一気に減っていった。やはり、どんなサッカーであれ、束になった我々は強い。

 

勇気をもって敵陣へと飛び込む攻撃

 攻撃の主役は、浜崎、匠のインサイドMF。パラ、飯尾がボールを持つ機会が多いベガルタの攻撃で、彼らがボールを持つと迷わず、相手フルバックの背後へとカットアウトランを繰り出していく。こうなると、ガンバはセントラルMFがそのままマーク担当としてフルバック背後をカバーしにサイドへ出張する。この形、見覚えがあるのだけれど、仙台4-4-2ディフェンスとやっていることは変わらない。スーパープレーヤーの井手口がいればまた話は変わってくるだろうし、倉田、小野瀬の走れるサイドハーフがフルコンディションならなんとかしてしまうのだと思うけれど、体力面でもポジショニング面でも穴が目立ってくる。

 本来中央のエリアを守ってほしいCMFがサイドにいるのだから、仙台としてはそのスペースを使っていく。飯尾やパラはウィングとパス交換しながら時間を作り、スペースに入る椎橋やセンターFW長沢へと繋いでいく。中央へボール出しができなければ、CBのジョンヤ、平岡を使って時間を使ったり、サイドチェンジで攻撃をリセットした。ガンバは、仙台のようにFWがホルダーを横切りできていないため、継続サポート、つまりはボールの高さ維持を許した。また、サイドチェンジできる状態でもあった。

 この辺りの切り方は、ガンバのFWと言うより、「一人飛ばしパス」のコースを切っている長沢が上手いと言うべきかもしれない。ジョンヤ、平岡は、身近にいる相方を飛ばしてパラ、飯尾のフルバックへ一人飛ばしパスを出せている。そんなこんなで、先制点も右サイドを攻めながらパラへサイドチェンジとクエンカの突破で生まれている。右ウィング山田もそうだけれど、前線5人の相手ファイナルライン背後を突く裏抜けランがよく見られた。バックラインはアンカー椎橋も含めてキック上手がいるので、その辺りも信じて走れるのかもしれない。

 この日の仙台は、ボールを持っていない時の守備が嵌っていることもあって、カウンター開始地点も良かった。中央3レーンのインサイドレーンでのガンバの攻撃が多かったのも関係するけれど、それでも中央でボールを奪ってカウンターのシーンが作れている。匠のクロスに長沢が合わせて決定的な3点目が入る。トリプレッタを決めた20番は、リザーブメンバーと抱き合い、静かに、しかし力強く、左胸のエンブレムを叩いた。アウェイ仙台サポーター席から見える、センターサークルへと戻っていく背番号20番は、とても、とても大きい。僕にはこのゴールが、これまで支え続けたベガルタ仙台サポーターへの「恩返し」に見えた。

 

考察

Good!

 ・挑戦している4-3-3とそのネガを修正した形で勝利できたこと。

 ・54分にCKの戻りで、匠がフルスプリントで自陣ゴール前まで帰ってきたこと。

 ・椎橋の首振り認知

 

Bad…

インサイドMFがカットアウトするので中盤に人がいなくなる。前線に蹴れればいいが、バックパスになると相手のプレススイッチを踏む。
・パトリック投入後、パトリックがパラや飯尾とマッチアップするようなポジションを取った。中盤で繋がず、シンプルにバックラインにボールを入れられた時に全体が下がり目で受けないか。

 

Next

 ・継続。この形を継続あるのみ。挑戦し続けよう。

 

おわりに

 あれだけの苦しい状況で、よくやった。よくやったよ。まあしばらくは、この安堵と余韻に浸ろうじゃないか。何回だって試合を見返したっていい。この先また苦しい道が続こうと、ここにまた帰る場所ができたのだから。再び、挑戦の歩みが始まる。歩いているこの道の先に何が待っていても、帰れば、また来れるから。

 

「たとえどんな現実が突きつけられようと、『それでも』と言い続けろ」こう言ったのは、マリーダ・クルスだ。