蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

ディナイ不要とサッカー① ~サッカー的解釈~

はじめに

 どうも、僕です、今回は、バスケから学ぶサッカー戦術です。すでに、Footballhackで取り上げられていますが、自分の血肉にするために解釈していきます。要点だけ確認したい方は、以下の記事とディナイ不要の各記事を読んでください。では、レッツゴー。

footballhack.jp

 

目次

 

ディナイ不要とサッカー

ディナイの有効性とサッカー

nbanotdankudake.com

 

 まずディナイとは何か。以下が記事からの引用です。また、ネットで画像を拾ってきました。これで視覚的なイメージがかなりつかめます。

ボールマンとマークマンを結んだ直線状に手もしくは体を入れて、マークマンに簡単にパスを渡さないようにするためのディフェンスです。「deny」という英単語は「否定する」という意味があるため、パスが通らないように、通ったとしてももらいたい場所でもらわせないようにする守り方です。一般的にボールを持っていない選手の守り方として最初に教わるのがディナイだと思います。

 

 

 ようするに、オフボールプレイヤー(パスレシーバー)をマークすることで、パスが来た時にパスカットできるようディフェンスしていることになります。サッカーにおいては、いわゆる「人につくマーク」のように考えた方が分かりやすいかもしれません。ハーフライン付近でブロックを作りながら、マンツーマンのような形で守るやり方。あるいは、相手陣内でのビルドアップ妨害などが想定しやすいでしょうか。

 さらに突っ込んで言えば、「ボールホルダーにも、ホルダー以外のオフボールプレイヤーにもマークやプレッシングをかけるディフェンス」がディナイディフェンスと定義できそうです。一時期サッカー界隈をにぎわした、「トランジション」、「インテンシティ」や「デュエル」と言った、相手ボールになるかならないかの局面での「球際の守備」と「守備で相手のポゼッションを妨害してカウンター攻撃へ繋げる」のが、いわばディナイディフェンスの理想型だと考えます。2019年後半のベガルタ仙台は、このディナイディフェンスで勝ち点をもぎ取っていったのではと考えます。

 「ディナイ不要」を語るのですから、「ディナイ必要」をまずは語る必要があって、ディナイの有効性について掘り下げています。サッカーにおける個人vs個人の局面を勝っていくことは、決して否定されるべきでは無いですし、本来サッカーの醍醐味であるどちらにボールが転がるか分からない不確定さの神髄でもあります。

 

ディナイをするなんてもったいない!とサッカー

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 まずは記事内の引用から。手段と目的が変わってしまっているという現象は、サッカーやバスケにかかわらず発生している現象ですね…

これは単純な話で、ディナイをしているとヘルプに行けなくなります。だから、ボールマンがドライブをしたとき、一番守らないといけないゴールを守らずに、人を守っていることになってしまいます。だから、ディナイをする必要はないのです。ディナイをすること自体が目的ではなく、ディナイをすることで相手のシュート率を落とさせることが目的のはずです。そのためには人よりも優先させるのは、ボールマン。ゴールに向かっていく相手プレイヤーを守るべきです。

 たとえば、イビチャ・オシムが良く言っていたのは、「日本人は責任を回避する。自分の仕事が終われば後は関係ない。上司が責任を取ってくれると考えている」といった趣旨の話をしていました(すみません、ディティールは違うかもしれませんが概ねこう言ったことを話していました)。ディナイ、つまりは、自分のマーク担当の相手選手に「プレッシングをかけている」「マークしている」で完結しているシーンをサッカーでもよく見ますよね。アリバイ守備だなんて揶揄されたりもしています。また、確かにマーク担当の相手選手にパスが渡ることを防いだとしても、その裏のスペースを使われてシュートチャンスを作られるなんてもことも、まあまあ良く見ます。相手に前進させない、ゴールさせないためのディナイが必要であって、「ディナイをしたから今日は定時で帰ります」は少し考える必要があります。

 また、相手はカラーコーンではないので、ディナイしていたとしても、それを「外す」動きを必ずかけてきます。風間八宏さんが指導した川崎フロンターレ名古屋グランパスなど、相手の背中を取る動きや、相手DFの視界に入ったり消えたりしてマークを外そうとします。ただ、現実的にはそういう動きをできる選手やチーム単位でできるチームはなかなかなく、結局は「個人vs個人のプレスで慌てさせてボールを持てなくしてやる」のが特にJリーグでは有効だったりします。要するに、オフボールの動きが無い、外す動きが無いので、駆け引きで守ることも必要ないと言うロジックです。

 Jリーグにおいて、よく「ゾーンディフェンス(ゾーナルディフェンス)が無い」という言説を見かけますが、これと非常に繋がっていると感じます。なぜなら、必要に迫られないからです。ゾーンディフェンスの要諦が、「チーム全体で帯状の守備陣形を整え、相手の選択肢を限定し、守りの優先順位付けをすること」であるなら、相手にオンボール、オフボール問わず選択肢を持っていることが前提になります。ただ、実態としては、フリーな状態(時間とスペースがある状態)ならボールを扱える選手も、ひとたびプレッシャーがかかると慌ててしまって全くボールを前に運べない選手がいます。今でこそかなり相手に接近されても(むしろ接近された方が得意だという大島僚太のような選手もいます)問題ない選手が出ていますが、全体としては、長い期間通していえばなかなかいなかったのが実情です。特に中盤のセントラルMFのポジションです。なら、「前でホルダーを潰せばいいじゃん?わざわざ待つ必要なくない?」というのが、Jリーグで良く見かけるイケイケドンドンプレスの正体だと思います。2012年躍進したベガルタ仙台も、こういった前線からのプレッシング戦術で2位になっています。同時にリトリートして相手に持たせても、勝手にミスするのを「待つ」やり方もあって、森保監督が率いたサンフレッチェ広島あたりが猛威を振るったと記憶しています。

 ただ、近年のJリーグの守備戦術を見ると、こういった守備が無くなりつつあります(正確には使い分けている)。記事にもあるように、「ディナイすることがもったいない」と気づき始めたチームが増えてきた印象です。先ほどの「待ち」戦術とも違ったエリアやポジションを守っていくやり方、ホルダーの選択肢を削るやり方で守るチームが増えたと思います。こういった守備戦術の進化の背景には、川崎フロンターレ、ミシャ広島・浦和、湘南ベルマーレ横浜Fマリノスなど、攻撃力のあるチームが増えたことがあると思います。選手個人の能力でも、チームとしても相手ブロックを崩してしまうような、「やみくもにプレスをかけてもかわされる」、「待っていてもミスしない」、「ミスしてもやり返す」ので守備側としても非常に難しい時代になったのだと考えます。

 

敵を味方に変える守り方とパックラインディフェンスとサッカー

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 では、ディナイをしない(人基準のプレスをしない)というのは、実践的にはどういったものになるのか。こちらも引用させていただきます。

ディナイをしない守り方とは、つまり、「相手のドライブをカバーすることを優先する守り方」ということです。形としては以下の図のようになります。名称は「オープンディナイ」「サギング(下がって守ること)」などがあります。

 ホルダーがゴールや自陣に向かって前進してくるのを防ぐ守備と言い換えられるでしょうか。記事内でも「優先順位」という言葉が使われている通り、ゾーンディフェンスにおいても、どこで何を守るのか?がチームとして統一されている必要があります。先ほどのディナイディフェンスのサッカー版では、「とにかくホルダーにプレスだ!」「人も守れ!ゴール前も守れ!」「走れ!気合を見せろ!」という言説が飛び交います。人間完璧ではないです。すべてを手に入れることも、まあ、不可能です。では、ここは守らないといけないってどれ?を日々のトレーニングで仕込む必要があって、それは状況やスコア、相手陣内なのか自陣内なのかでも変わってくると思います。

 そこで、「パックラインディフェンス」が出てきます。詳しくは記事や単語で調べてほしいですが、要するにホルダーに縦に前進させない(=ラインを超えさせな)、相手がドライブやパスで進入してくるのをカバーして守るがサッカー的な解釈だと思います。イメージしてほしいのは、サイドでの守備です。相手ウィンガーがフルバックとの1vs1を制して縦に突破したとします。そうすると、センターバックセントラルMFがカバーしてきますが、肝心の中央のエリア、ゴール前のエリアにスペースができます。また、本来中央で力を発揮してほしい守備的なセンターバックセントラルMFをサイドの広大なスペースに晒すことになり、チームとしての守備力も減衰してしまいます。ただ、ディナイを基本とするなら、人基準になりますから、ホルダーをとにかく潰せ!となってしまいます。そのうえゴール前の競り合いでも負けるな!と言われると、さすがに選手も嫌になってしまうのは想像しやすいですよね(スタンドからそう言った声が聞こえなくもないですが…)。

 また記事内の画像を引用させていただきます。

 

 〇で囲まれた1がホルダーで、x1がDFになります。矢印がドライブの進行方向になりますが、これを見て思い出したのは「外切りのプレッシング」です。サイドへのパスコースを切りながら、ホルダーへ中央に誘導するプレッシングですが、味方のカバーで囲い込んで守れる、また、守った場所がそのままカウンター開始地点になるなどメリットの多いプレッシング戦術として、クロップのドルトムントリバプールが実践して結果を残しています。

 なお、x1のプレス方法としては、Footballhackのブスケツ記事が一番分かりやすいと思います。6:4ボディバランスで、縦に行かれても4割守れるように、中央へのドライブに6割行けるように構えておくのが重要だと考えます。

silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com

 

 また、以下の引用文章で僕はハッとしました。

ディナイをしていると、オフェンスの心理としては「ボールをもらえないから動こう」といってディナイされていない側に動いてポジションチェンジをしたり、バックドアカットをしようとして動き回ります。その結果、自然とオフェンスに動きが生まれます。ディフェンスのおかげでオフェンスに動きが生まれる。

 ポステゴクルー監督が率いるマリノス相手に、ディナイ守備(人基準で前線からのプレス)をすると守備をズタズタにされてしまうのは、この「ボールをもらえないから動こう」の真理が働いているのではと思います。いわゆるポジショナル的思考に則れば、動かないいわば「ディナイ不要のオフェンス版」のような思考が是とされていますが、マリノスについては良く動き、ボールを交換し、ポジションを入れ替えてを実行して攻撃します。相手がそれについていけばついていくほど、マリノスの攻撃は活性化してゴールを奪います。一方、4-4-2などブロックを組んでゾーンディフェンスをするチームには不思議と分が悪くなるのは、何となくですが繋がってくる気がしています。サッカーには「ボールを速く蹴ると速く自分のところにボールが戻ってくる」という言葉があります。自分が速いと相手もあわせて速くなるので、対応が大変になるということですね。なお、現時点で、ディナイ不要的な思考の守備戦術を実践しているのは、ロティーナ監督が率いるセレッソ大阪が最有力ではないかと考えます。

 エースコンバットゼロというゲームで、「俺とお前は鏡のようなものだ」という台詞があって、正確にはここで言いたい意味とは違うのですが、何か勝負事で相手と対面する時、鏡映しの自分と戦っているのかなと考えます。激しく動けば、鏡のなかの自分も激しく動きます。一方、激しく動いても、相手が動かなければ、おかしいな?と感じるのが駆け引きであって、スポーツゲームの面白さでもあります。いずれにせよ、ディナイディフェンスでパスを出させない、ホルダーにプレスをかけると相手もそれに反発して外そうとしてきますから、相手の攻撃を誘発することになります。逆に、ディナイ不要的な攻撃(ポジショナル)vsディナイ不要的な守備(ゾーナル)で、達人の居合のような試合も増えてきているのも実態なので、すべてがそうだとはもちろん言うつもりはないです。

 

おわりに

 ということで、ディナイ不要①-③をサッカー目線で解釈してきました。骨太記事ですので、残りの記事についてはまた次回にまとめようと思います。すでに気づきと面白さ満点で頭が熱いですが、なんとか続けようと思います。ただやはり一番は「やっている選手が楽しくプレーできる」が大事であって、それをよく感じる記事でした。せっかく好きなスポーツをやっているのだから楽しんでほしいですよね。では、またどこかで。

 

 

 

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