「中盤からの押し上げ局面における、フォワードによる1stプレッシャーラインについてなのだけれど」
「急に来たな」
「相手のMFを警戒しながら、センターバックへプレッシャーをかける方法について考えたことがあるの」
「いわゆる『背中で消す』ってやつだな」
「そう」
「アンカーでも2人のセントラルMFでも?」
「そうね。フォーカスを当てるのは、ボールサイドのMFを背中で消しながら、ボールホルダーであるセンターバックへプレッシャーをかけるやり方についてね」
「長いな」
「こうでも言わないと、前提がどうとか、条件がどうとかなるから」
「まあね」
「これには2種類あると考えているわ」
「2種類も?」
「ひとつは、ボールホルダー側のFWがボールホルダーへプレッシャーをかけたら、もう片方がMFをカバーする『つるべの動き』タイプ」
「よく見るな」
「もうひとつは、ボールサイド側のFWがMFへのパスコースをカバーするタイプよ」
「それはボールホルダーがフリーになるのでは?」
「別に良いわ。だって、その先にディフェンスの網を張っているから」
「なるほど。それで片方のFWは何をするの?」
「『ひとつ飛ばしパス』のパスコースをカバーする」
「『ひとつ飛ばしパス』?」
「文字そのままよ。ホルダーの隣の選手を飛ばした先にいる選手へパスすることよ」
「この場合だと、逆サイドのサイドバックが低い位置にいて、3バックっぽくなっていることがあるよね。たとえば、そのサイドバックへのパスってこと?」
「そうよ。ひとつ飛ばされると物理的にプレッシングをかけにくくなる」
「距離が延びるからか」
「ええ。人間よりボールの方が速いってのは、よく言われることよね」
「それを防がないと、せっかくのプレッシングが無駄走りに変わるってことか。『つるべの動き』タイプは、ボールが動いている間に追いかけるのか」
「そうなるわね。でも一人で追いかけるわけじゃなくて、2人で役割分担しているから、ひとつ飛ばされても成り立つ」
「そうしてボールホルダーの選択肢を制限しながら、ボールの進行ルートを限定するってことか。誘導も兼ねている」
「だからどちらのタイプも、ホルダーに時間はあっても選択肢が少ない状況を作り出そうとしている。『つるべの動き』タイプは、そもそもホルダーの時間も削りにいっているのだけれど」
「時間があっても選択肢がなければ意味がない。プレーできなければ、時間があってもしょうがないってことだな」
「どちらが良いということではもちろん無くて、相手ボールホルダーのビルドアップ能力だったり、あとはプレッシャーをかける開始地点が自陣か敵陣かでも分けるものだと思う」