蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【閉ざされたいまに風穴を開けよう】Jリーグ 第5節 ベガルタ仙台vsセレッソ大阪 (0-2)

■はじめに

  さて、いきましょうか。ホーム、セレッソ戦のゲーム分析。春とは思えない寒さのなかで、雪が降るなかで、まだ夜明けが見えない我らがベガルタ。冬があれば必ず春がやってくる。明けない夜はない。ということで、いつものように振り返っていきます。では、レッツゴー。

■目次

■オリジナルフォーメーション

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 さあ、我れらベガルタ。メンバーを大きく変更する。石原の欠場もあったなかで、5人の新加入選手をスターティングメンバーに起用。右WBには道渕がリーグ初スタメン。新加入ではないのだけれど、左CBにはジョンヤが入った。3CBと富田で底堅く、前線5人のベールクトとリンクマンの兵藤。左利きのシャドー。緻密に守るロティーセレッソに、剣を引き抜いた。

 一方のロティーセレッソ。ポジショナル対決だ。しかも本場の。WBに逆足を使っていたことで有名だったのだけれど、順足の松田、丸橋に落ち着いたようだ。シャドーも清武と柿谷、センターはソウザ、奥埜と現状のベストメンバーと言えるだろう。よりレーンを意識して、攻守に立ち位置を取る。アタッカーで迫る渡邉ベガルタに強固な城壁を築いた。

■概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

ボール保持時

ビルドアップ:ポゼッション

ポジショナルアタック:ポゼッション

 左利きの2シャドー。ハモンと吉尾。全く性格の異なる2人なのだけれど、前後半で立ち位置を変えた。特にハモン。前半は、サイドチェンジキックを受ける役でボールに競り、カットイン。後半は、WB背後を何度も突き、クロスマシーンに。

 吉尾はハーフレーンの出入口が彼の舞台。第2レイヤーに降りて、ボールを受けたり、ダンからの瞬間移動パス(第1レイヤーにいるGKから第3レイヤーへのスキップパス)を受けるなど、技術の高さを優位性として戦った。

 どちらが良いかどうかではないし、どっちのやり方が良いという話ではないと思う。相手があって、自分たちがあって。ただし少なくとも、自分たちが試合で何を表現できるか分からなければ、相手を超えることは難しい。けれどそれは、試合でしかできない逆説。難しい。

*概念図

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■ネガティブトランジション

プレッシング:ゲーゲンプレス(エリア制圧型)

 いつものようにリトリート時間を稼ぐものだったのだけれど、今回は敵陣でボールを奪う、あるいは下げさせて次にボールを奪う機会を狙うものだった。若く、そして走力があると可能なのかなと。若さは良い。失うものがない。失っても取り返せる。 

■ボール非保持時

プレッシング:攻撃的プレス

セットディフェンス:ゾーンのなかのマンツー

 ベガルタの狙いは、前線から、いわゆるビルドアップ(構築)局面から妨害をかけてボールを奪っていく狙い。これは、これまでのセレッソの失点シーンが自陣でボールを奪われるケースが見えたことから、セレッソのビルドアップが成熟しきっていないと判断からだと思う。実際にこの試合でも14分、17分と相手のビルドアップ局面からボールを奪ってシュートを撃っている。合わせ技で、WBとCBの縦横スライドが肝だった。WBが果敢に相手WB(CB)を迎撃。空いたスペースをCBがスライドして埋める。

 ただ、20分ごろから前から嵌められなくなる。ロティーナとその教え子たちが手を打ったからだ。奥埜、ソウザの2センターが3トップの間にポジションを取る。それまでのベガルタは、「3CBに対して3トップ」、「2センターに対して2センター」で嵌めていた。ロティーナは選択を迫った。続けるか、続けないか。答えは後者だった。

 吉尾、ハモンの2シャドーは降りてきた奥埜とソウザ、同時にWBにもプレスをかけられるポジションをとった。結果、セレッソの第1レイヤー、CBに時間を与えることになった。あとは、芋づる式で降りる清武、柿谷への対応の選択。ただ、一番の変化はレーンチェンジ。柿谷、清武だけでなく都倉、CBも実行してきた。3手詰めまでは対応できる。それ以上複雑に絡むとパンクする渡邉ベガルタディフェンス。先制点の場面も判断を多く要求されて、約束事の束が解けてしまった。

 3‐4‐2‐1は難しい。いや、サッカーが難しいのだけれど、5レーンを攻守で埋めるためのフォーメーションが結局のところ、レーンを空けたり、かぶったりしなければ相手を崩せない、守れない気がする。気がするだけ。

*概念図

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■考察

前から前へ

 狙った形は出た。あとは決めるだけ。言うのは簡単なのだけれど、なかなか難しい。ただ、メンバーも大きく変えたなかで、渡邉監督のひとつの決断、意思を見つけた気がする。相手の弱点を突く、そのために前に出なければいけないのであれば出る。結果は仕留められなかった。今度は必ず仕留めるだけだ。

■おわりに

 負けてしまった。負けたくない、負けるのは死ぬほど悔しいから。勝ってタイトルを取るんだ。最後まで勝利を信じて尽くした者が敗北を肯定できる。そして僕たちは勝つことができなかった。何も手に入れられなかった。大切なものを失った。ベガルタのサッカーをした。結果は負けてしまった。たとえそうだとしても、最後まで、その一瞬まで僕たちは勝ちにいくんだ。

 人間は誰しもいつか最後は死ぬ。どんなチームも敗北する。いま僕たちが考えなければいけないのは、目の前のサッカーだ。ベガルタだ。まだ、死なない。死ぬわけにはいかない。痛みを感じるのは、生きている証だ。

 

 「生きる」こう言ったのは、村山聖だ。

■参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html