■はじめに
どうも僕です。今回は、Jリーグオフ企画、「突然上がる海外ゲーム分析シリーズ」の第4弾です。舞台は、イタリア。僕らのサッスオーロです。前回、リーグ戦でゲーム分析したナポリが対戦相手。カップ戦ということもあって、メンバー変更もあるなか、どんなゲームになったかみていきましょう。では、レッツゴー。
■オリジナルフォーメーション
サッスオーロは、4-3-3採用。いつも見てるわけではないので、このメンバーがどんな意味づけがされているのかよく分かってはいないのだけれど、168㎝の若きアンカーのセンシ、いつメンのボアテング、ベラルディが採用されいているあたり、カップ戦らしさが出ている。一応、ベスト16の舞台だ。しかも相手はナポリ。アンチェロッティだ。
さてそのナポリ。ミリクにクリバリ、インシーニェ、カジェホンとわりと力入れてきたのではと思わせるメンバー。ただ、このチームは、サッリボールとアンチェロッティの整える力で手ごわい。リーグ戦も2位につけている。この試合は、4-4-2。ゾーンディフェンスの権化だ。
■概念・理論、分析フレームワーク
- ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析。
- ピッチ横のエリアは、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
- 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
- なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。
(文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)
■ボール保持時
ビルドアップ: ポゼッションの確立
ポジショナルアタック: ポゼッション
サッスオーロのビルドアップは、GK+CB2人+アンカーの菱形ビルドアップ。SBは、高い位置を取り、2人のインテリオールとともにフラットに並んだ。これによって、ナポリのビルドアップ妨害の争点を設定するのが狙いだ。もっと言うと、①ナポリの2ndラインを無策に自陣に寄せつけて窒息しないようにする、②サッスオーロの選手が動くことで相手を動かすいわゆる「調律」することが意図だ。
試合を通して、この戦型が維持されていた。つまり、死んでもMFがDFラインに落ちないということだ。近づけば敵も寄ってくる。寄るな。繋げ。これは、ボール非保持時の原則でもあって、おそらくはデゼルビのポリシー、プレー原則な気がする。気がするだけ。
*概念図
後方で菱形を形成することで、ウィングレーンの第2レイヤーをあえて空ける。相手がビルドアップ妨害を図ってくると、空けていたスペースにSBが降りる、降りて空けたスペースにウィングが降りることでハーフスペースとウィングレーンでスクエアを形成。GK+2人CB+アンカーで菱形とあわせて、ロンドでビルドアップ妨害を回避して、逆サイドへと展開していった。
*概念図
サッスオーロのポジショナルアタックは、基本筋が最初-第3レイヤーへのスキップパスであったり、第3レイヤーの中間で受けるボアテングへのパス、レイオフが狙いになる。ただ、この試合においては、技術的なミスやクリバリを中心とした、ナポリのCB+CHの中央3レーンのボックスに防がれていた印象だ。そこからゲーゲンプレスにつなげればよかったのだけれど…それは、別項で。それを抜きにしても、どこから攻めるのか、小さなズレを見つけるのかは、ちょっと出来ていなかった。それがなぜかは、ちょっとしたトラップの悪さやパスミスによるボールロストで自分で首を絞めた感はある。ナポリがそう強いたというのもある。
■ネガティブトランジション
プレッシング: ゲーゲンプレス(エリア制圧型)
悪い。非常に悪かった。サッスオーロのネガティブトランジションの話だ。いつか、どこかで、デゼルビがまだ整備しきれていないところとして、ネガティブトランジションが挙げられていた記憶がある。まあ、その記憶がなくても悪かった。何が悪かったというと、マークを捨ててエリアを制圧する判断の部分だ。
例えば、3センターはボールを奪われると相手ボールホルダー付近のエリアを圧縮していく。呼応して、ウィングもプレスバックする。ここまでは悪くない。ただ、SBがマークを捨てて、プレッシングに行かない、逆サイドが絞れていない等で結果水漏れする。メンバーもカップ戦メンバーで難しい面あったのだろうと予想はするのだけれど、ネガトラがコンパクトになることで、攻撃もコンパクトになる。攻守表裏一体。
■ボール非保持時
ビルドアップ妨害: 同数プレス
セットディフェンス: 攻撃的プレス
サッスオーロのビルドアップ妨害は、同数プレス。ただし、チームとしてカバーシャドウプレスかと言われると微妙なところだ。何より、1人で2人を守っているようには、ちょっと見えなかった。あくまで、ビルドアップ隊に対して、同数の妨害部隊を送り込んだという形だ。
一方のセットディフェンス。4-3-3系によく見られる4-5-1フラットディフェンスではあるのだけれど、少し、いびつな形をしていた。2人のインテリオールがナポリの2センターに積極的にプレスをかけにいくので、動いた後のハーフスペースが空く。そこをセンシ1人でカバーするのは土台無理なので、ウィングが埋める。う、ウィング!?といったところなのだけれど、事実そうだった。よって、形は、クリスマスツリー型4-3-2-1ぽく見えた。
*概念図
ちなみに、全体としては、中央3レーンを圧縮密度を上げて封鎖する意図が見えた。スライド時も逆サイドのSBがよく絞っていた。そのため、ウィングがDFラインに降りてSBロールをこなすこともあった。右はその意識が希薄なのか、あまり見られなかった気がする。
*概念図
ここでも、デゼルビポリシー。MFは意地でもDFラインに降りない原則が見えた。SBがサイドに出て行ってチェックしにいくが、CBが絞らずチャンネルを空けるシーンが多く見られた。よくアンカーが降りて対応する場合があるが、それはなかった。ただ、インテリオールが元気よく前線にプレスをかけるので、アンカーのセンシまでいなくなると流石にまずいと言ったところなのだろうか。
センシのネタでいえば、ウィングがハーフスペースからサイドへプレスをかけるとそのカバーに入るが、もともといたポジションを空けることになる。逆サイドのウィングがSB化していることもあり、中央を空けてしまうこともあった。インテリオールのプレスバック次第なのだろうけれど、ちょっとどういう原則でボール非保持時を過ごそうとしているのか。これで守り切れると踏んだのだろうか。分からない。レシャックの言葉を借りれば、ソファ幅は守れるが部屋全体は守れない。それをセンシに強いていた気がする。カンテが欲しくなる。
*概念図
■ポジティブトランジション
ショートトランジション: 前の選手にボールをつける
ミドル/ロングトランジション: ポゼッションの確立
特に後半から顕著だったのだけれど、第2レイヤーでボールを奪って、第3レイヤーの選手に素早く縦に着けていくシーンが見えた。それがボアテングだったりもしたが、CB陣に潰されていたなか、中々見えなかった形だったが、同レイヤーでのボール移動ではなく、レイヤーアップさせていくことでシュートシーンまで繋げていった。
■考察
(1)サッリロンドの片鱗を見せる
本家ナポリに対して、ボールサイドでロンドする構造をもっているのは強みのひとつだと思う。しかも、きちんとボールをつないで、相手を寄せて、オープンスペースに運んでいくのはサッスオーロの強さだ。スペースにつけて、テンポアップ、スピードアップしていけば、より攻撃の精度が上がっていくと思う。
(2)ボール非保持時の立ち振る舞いを見直したい
決して良いとは言えないゲーゲンプレス、リスクリターンの勘定がどうなっているのか分からないセットディフェンスについてだが、いまさら、デゼルビが曲げるとは思えない。やるのはひとつ。ボール保持時に優位な立ち位置をとって、それがボール非保持時にも優位に立てる形にもっていくことだ。基本だがそこだと思う。多分。
■おわりに
2試合しか見ていないサッスオーロを偉そうに語ってみた。ベガルタ以外のチームを見るのも面白い。ネガトラの課題だったり、ボールを持った時のゴールを奪う解の設定など、イタリアだろうが、仙台だろうが同質性、普遍性があって面白い。ピッチは繋がっている。地面は繋がっていはいないのだけれど。あと、センシ。センシは、いいぞ。すっかりセンシおじさんになってしまうところも、サッカーの面白いところで、国も、人種も関係ないのだ。それでは、チャオ、チャオチャオ。
■参考文献
東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう
「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)
http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html