蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【似ているようで似ていない】セリエA 第11節 ローマvsナポリ(2-1)

はじめに

 どうも、僕です。今回は、久しぶりの高速レビューチャレンジ。というよりは、ハーフタイム15分、試合終了後15分でまとめるチャレンジです。試合は、セリエAのローマvsナポリ。では、レッツゴー。

前半

 ローマのオリジナルフォーメーションは、4-2-3-1。ボール保持時には、2CB+2CHに片側のSBが加わる形で、自陣(ゾーン1)からボールを繋ぐ形でビルドアップ開始。CB間にCHが1人降りるアンカー落としで、3CBでビルドアップを安定させていいた。一方のボール非保持時には、4-4-2でセット。2人のウィングがハーフレーン入口に立つことで、ナポリの楔パスを警戒。2トップも、相手CHに基準を置き、CBへのプレッシャーは厳しく与えず、時間とスペースを与えた。

 対するナポリ。オリジナルは、4-4-2でボール非保持時も同じ形。ボール保持時も同様の形に近いのだけれど、ビルドアップは、ローマと似ていて2CB+2CHに片側SBをCBに加える左右非対称のビルドアップ。ローマにハーフレーンを警戒されるものの、ウィングのインシーニェ、カジェホンは、SH-CH間の隙間を狙ってポジションを取った。よって、陣形としては4-2-2-2に近い形になる。また、ナポリのハーフレーン攻略は、インシーニェだけでなく、2トップの一角に入ったメルテンスも実行。インシーニェがワイドレーンに張っているのであれば、メルテンスがハーフレーンに立つことで、ローマのコンパクトな4-4-2ブロックを少しでも開ける作業と大きく開かなくても隙間で受けられるよう準備をしていた。サッリ時代を思い出させるようにナポリのボール保持攻撃は、左サイドを中心に攻撃されていた。

 一方で、ボール非保持時については、ビルドアップ妨害時にローマの選手と1対1が作れるようにポジションを取る。降りるCHにはCHがついていき、2トップ+トップ下のような形になる。ウィングも片側に残るSB、高い位置を取るSBにそれぞれをマークすることで、左右非対称なローマのビルドアップに合わせる形で左右非対称にビルドアップ妨害を実行。ただし、18分の先制シーンはそのほころびを突かれることになる。DFラインは、ゾーン意識が高く、ハーフライン以降がローマの選手が基準になることで、ビルドアップ妨害を外され、トランジション局面のようないわゆる擬似カウンターでナポリ左サイドを突破されゴールへと繋がった。

 ローマもゴール後は、ナポリの攻撃を受ける時間が続き、PKストップ、ポストやバーに救われるシーンがあったものの無失点で前半を終える。4-4-2で中央3レーンを守っているのだけれど、空いているワイドレーンも使ってくるナポリに対して、我慢してハーフレーンを守り続けることができるか。あるいは、サイドですり潰す、クロスをはね返すといった守備ができるのかが鍵になる気がする。ナポリは、左からの攻撃での一点突破と圧縮守備への定石であるサイドチェンジを有効に使いたい。

 ローマが1-0でナポリをリードして前半終了。

 後半

 開始から、ローマが前プレの姿勢を見せる。4-4-2圧縮の痛点である大外からの攻撃への対応は、つまるところ、ボールを奪うエリアを一段上げたことになる。こうなると、ナポリ同様、外された後にカウンターを受けることになるのだけれど、前で取り切ってしまう策なのだと思う。対するナポリも、サッリ時代から散々ビルドアップ妨害への回避はやってきているので、当時ほどではないのだけれど、ロンド回避でボールを前線に運んでいく。そのなかで、58分のPKによるローマの追加点は、ナポリにとっても痛いものだった。

 ただ、ナポリも、上記の狙いとは少し違うのだけれど、中盤でのトランジション斬り合いでボールを奪い、DFラインをさらして右サイドを突破。最後は、ローポストからのセグンドクロス、ファー詰めで追撃に成功している。ナポリとしては、前線のミリク、メルテンス、インシーニェ、カジェホンの4人のアタッカーが攻撃の核になるだけあって、ボール非保持時のリトリートディフェンスにリソースを割きたくない思いがあるのかもしれない。むしろ、ビルドアップ妨害の前プレで、ショートトランジションによるカウンターからの形の方が合っているのかもしれない。

 一方のローマは、4-4-2で中央3レーンを守りつつ、サイドに誘導して奪っていくやり方が基本型なのだけれど、前線からのプレッシャーも標準装備しているところを表現した。ただやはり、2センター脇、ハーフレーンで受けようとする選手にはボールが通るので、ナポリ同様、ボールが出る元を潰し込むか、出た先で消し込むかを落とし込む必要がある。特にナポリは、CBにクリバリがいて、前線が人基準でボールを誘導して楔パスを出させるのもクリバリのところで回収できる算段があるからかもしれない。

 そんなこんなで、最終スコアは、ローマが2-1でナポリを下している。同じ4-4-2でボール非保持に構える両者でも、自チームや相手との都合、状況によって、ボールの奪うポイントが設計されているように見えた。

おわりに

 とても面白い試合でした。自分たちのボール回収ポイントの設定イコール攻撃の開始地点になることをはっきりと教えてもらえる試合でした。ナイフを突きつけても、その先にあるナイフが自分の方を向いている。そんな試合でした。逆に言うと自分たちのロストポイントが分かっていないと、なかなか守っているのも大変なのだと改めて痛感しました。ぜひお時間ある時にでも見てみてください。では、また。