蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

日本vsオーストラリア【AFC U17 ASIAN CUP】

Embed from Getty Images

試合について

www.the-afc.com

内容について

日本の組織的守備

 試合開始からの両チームのキック&ラッシュが落ち着くと、オーストラリアは3421でボール保持攻撃、日本は442でミディアムブロックの構図になる。オーストラリアは、自陣からのボール出しで、バック3を維持するので、日本の2FWとは数の不一致を起こしている。そのため、右ウィング佐藤が加勢して、左CBに対して外切りでプレッシャーをかけていく。2人のFWと4人のMFが中央へのパスラインを狭くするよう守るので、オーストラリアのバック3は中央から左サイド方向へボールを進められず、右サイドからの一点突破に偏っていった。日本は、オーストラリアの攻撃を自分たちの左サイドへと制限し、次のホルダーを予測。マンマーキングでボール奪取を試みた。特に、キャプテンマークを巻いた左SB小杉、MF山本と中島のコンビ、左CB永野の予測と集中は見事で、彼らのボール奪取で日本の組織的なDFを成立させていた。

"偽装"ポゼッションからのファストブレイク

 実は、日本もオーストラリア同様、GKを含め4-2で自陣からボール出しをしている。加えて、FW名和田、右ウィング佐藤がハーフスペースを降りることで、オーストラリアのバック3を誘き出そうとする。ラインにギャップができれば、左ウィング吉永、FW道脇がライン背後への抜けをトライする。日本は、相手が日本陣内でプレッシングモードに切り替わっているのを見ると、迷わず前線で抜けを狙う味方へロングを蹴り込んでいった。自陣で相手のプレッシングを剥がして、ボール出しを狙うのではなく、まずはボールの「ポジション」を相手陣内にポジション取りさせ、そのポジションに対して選手が殺到する、ポジションをとっていくボール出しであった。攻撃としてはファストブレイク(ボールもひとも速くして素早く相手DFを打開していく)だ。オーストラリアの3421は、オーソドックスに541でDFをセットするため、相手陣でボール保持して打開をかけようとすると、人数差や体格差で負けてしまう可能性が高まる。そうなる前に、自陣でのポゼッションを疑似餌に相手を誘き出し、ポジションをバラバラにして素早く攻撃していった。特に、2点目はその象徴で、パス2本でFW道脇がゲットしている。

オーストラリアの修正と統率を欠かない日本

 前半25分ごろの飲水タイムで、オーストラリアは修正をかける。これまで3421の21は、日本のバック4に圧をかけるようなポジションをとり、CB-SB間へのアタックを重視していた。おかげで、後方の保持が制限されているにも関わらず、全体が間延びしていて、ボールは持っても前進できずにいた。飲水タイムで、日本の右ウィングが前掛かりなのを利用し、その背後をとるようになる。左MFが日本のFW‐WG間にポジションを取り、CBからボール供給を受け、日本の4-2のプレッシャーラインを超えるようなトライを始めた。呼応して、左インサイドMFDi Pizioが降りて、佐藤の背後にポジションをとる。そうなると、WBとあわせてサイドにオーストラリアの選手が浮くことになり、日本はSBの縦迎撃を強化するか、MF中島の横カバーが必要になっていく。これは、両サイドで同様の状況で、オーストラリアのインサイドMFが降りるようになり、日本はサイドを限定できていた序盤の状況からピッチ全体を守らないといけない状況に陥っていった。それでも、日本の選手たちに動揺はない。スコアリードの精神的優位性を少しずつ活用し、攻撃機会が少なくてもDFにパワーを注いだ。1点差になっても崩れることなく、逆に精神的に摩耗していくオーストラリアに対して、スローインから追加点を挙げる。試合の最終盤は、むしろ日本のチャンスも多く、余力を見せながら試合終了のホイッスルを聞いた。

感想

 やっていることは、シンプルだった。442のミディアムブロックを軸に、相手の攻撃を中央に分散させずサイドへ制限をかけ、自分たちのストロングであるマンマーキングのボール奪取に持ち込んでいった。攻撃もファストブレイクを軸に、自分たちより前にボールのポジションを置くことで、リスクのある時間帯や状況を予防しつつ攻撃していた。オーストラリアは、飲水タイムの正前に2点リードされたこと、局面でのボールコントロール技術は日本の方が高かったことから、選手にとってかなり劣勢な状態だったように感じる。日本はうまく嵌めたとも言え、相手の修正が早かったり、同じスタイルのサッカーで個人の質の勝負になると、ここまでの統率を維持できるかは様子を見ないといけないと思う。いずれにせよ、物理的にも精神的にも安定して、序盤からリードを積み上げるのは勝者であり強者の証だ。