蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

ラバイエン徳島について

はじめに

この試合の感想である。

週末、徳島は仙台と対戦するし、山形は監督が渡邉晋でもありで個人的に注目ゲーム。

ラバイエンの徳島は、シーズン序盤観ていたころからどれだけ進歩したのかも関心があった。

 

www.vortis.jp

 

内容

徳島は、3142を基本として、攻撃時もわりとそのまま、守備時が532のような形でセット。

保持の手順に忠実で、ボールサイドのウィングが落ちてホルダーである左右バックと繋がって、カウンター予防しつつ保持する。

特に左の西谷の繋がり方がうまい。

ワイドに高い位置からの攻撃に関しては、言うまでもないのだけれど、こういった保持の手順に組み込まれてもプレーできる。

山形右ウィングがイサカであることも大きい。

イサカのホルダーへの意識が強く、彼の背後で西谷がプレーできたというのもある。

山形が背後を埋めるというか、「イサカのプレッシングをキーに全体が前掛かりになる」ことで、ホルダー周辺の密集度を上げる。

徳島の状況適合としては、2つ。

ひとつは、ボールサイドの西谷が落ちないで、ワイドに高い位置をとる。

その背後に、左インサイドMF杉本が外流れでバックスと繋がる。

山形の前掛かりを西谷のポジションで押し返して、さらに杉本がワイドに加勢することでウィングのイサカも押し返す。

結果として、ホルダーである左CB安部の周辺のプレッシャー密度が下がり、時間を捻出することができた。

もうひとつは、逆展開。

バックスとアンカーを経由しつつ、ボールサイドとは逆サイドへ展開し、インサイドMFのSB背後への抜けを使ってプレス脱出を図る。

左→右でよく見られ、右インサイドMF玄理吾の抜けで、やはり山形のDFを押し返す。

左サイドはFW森。

徳島といえば勝手に3142のクラブだと思っている。

ウィングの高さ調整が絶妙で、ワイドに高い位置をとってバック4に対してアタッカー4人でファストブレイクを狙ったり、あえて低く構えて相手のSBの迎撃を誘ったり。

呼応して、インサイドMFが落ちて保持したり、DF背後へ抜けていったり。

ポジションに忠実なバック3とアンカーとも連動して、その機能美にはビエルサビルバオのアタックを思い出す。

ラバイエンになっても受け継がれ、より速いアタックを見せている。

JリーグインサイドMFを観たければ、徳島に行け。」

だな。

逆に山形は、4231から433のような形で攻撃をスタート。

後方はバック2だが、SBがワイドに低く繋がるので実質バック4、あるいはボールサイドに限っていえば、変則的なバック3でのボール出しとも言える。

徳島が532でセットするので、わりとタッチライン付近でボールを持てる。

ただ、徳島としてもある程度想定していた形で、インサイドMFが寄せつつ、アンカーに対してはそのままアンカー、あるいは逆サイド側のFWがプレスバックすることで、中央でペンチしようとする思想がうかがえる。

インサイドMFがワイドをカバーするので、かなりのフィジカルが要求されるのだけれど、そこで奪うより中央のDFとあわせて、縦方向に攻撃を細くしていこうとする。

バック5の縦迎撃は強く、速い。

ほぼマンマーキングで、左ウィングのチアゴだったりFW加藤をDFする。

532である以上、ある程度ワイドのエリアでボールを持たれることは想定される。

なので、そこから中央への刺すパスを警戒しつつ、縦への攻撃を縦に押し返して、バックパスして攻撃が下がれば、そのまま前掛かりにプレッシングしていくのが狙いだろう。

ラバイエンは、前回、仙台と対戦した際も、ウィングを高い位置にポジションをとらせて仙台のプレッシングを押し返した実績がある。

Jリーグにおいては、プレッシングされるままにボールを移動させて蹴っ飛ばし祈るように耐えて、相手が焦れたりミスしたり疲労するのを待つような状況適合が多い。

縦への攻撃に対しては、縦に攻撃し返して、相手の攻撃を弱体化させるのは、ラバイエンの思想なのだと思う。

 

感想

シーズン序盤に比べて、より早くなり、攻撃開始地点も高い位置になっているのが印象に残った。

エラーが起きるとすれば、一時的に全体のコンパクトさが失われるので、そこでミスるとオープンな展開に持ち込まれやすくなる。

徳島としても、それを許容している節も見受けられるが、相手に1人、2人でカウンターを完結させるようなタイプがいると不利に陥る可能性がある。

西谷、西野の両ワイドがボールポジションをかなり意識して、自分の高さを調整していたので、おそらくエラーへのアンサーなのだと思う。

後方で保持しつつ、縦方向への攻撃、プレッシングは変わらずで、ラバイエンも少しずつ日本の土地にアジャストしてきた感がある。

 

チームとして一歩前進できたという感触があります。もちろん全員が勝ちたかったのも事実ですが、90分を通してこのレベルのゲームを見たいと思える内容だったと思います。ボールを持ち、主導権を握って前進することもそうですし、ボールを受ける側の選手が隠れることなく良いポジショニングをすることやスペースへアタックする攻撃がありました。また、ボールを持っていない時は高い位置からプレッシングし、相手ゾーンで何度もボールを奪う場面がありました。そしてそこを剥がされた時は全員が素早くプレスバックしていました。攻守において、本当にアグレッシブに戦ってくれたと思います。このようなゲームができると勝利は近づいてきますが、今日のような結果になることもサッカーの一部です。自分やチームの目標としては、今日のようなプレーを毎試合発揮できるようにしていくことです。

 

試合後コメントにもあるように、ゲームの進め方についても手ごたえを感じているようだし、ダービー後破竹の勢いだった山形相手によく闘ったということなのだろう。

いずれにせよ、シーズン序盤の苦しみを少しずつ成果に繋げている。