蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【もう呪縛は解いて】Jリーグ/第15節 vsモンテディオ山形【ベガルタ仙台】

はじめに

さて、15節。

ひさしぶりの更新です。

山形とのダービー。

ナベの凱旋試合でもあります。

激闘の果てに辿りついた答えとは。

この試合もゲーゲンプレスで振り返ります。

では、レッツゴー。

 

メンバー

ベガルタ仙台【4231】

モンテディオ山形【4231】

スコア 2-1

 

www.vegalta.co.jp

 

自陣からのボール出しを制したのは仙台

この試合においては、仙台も山形も、進めたいゲームが似通っていたかもしれない。

GKを使ったポゼッションで、自陣からボール出しをして、相手のプレッシャーを引き出し裏返したい。

ファストブレイクできなくても、相手のリトリート速度が上回ったとしても、敵陣へのボール前進、ファイナルへの押し込みへとフェーズを進め攻撃回数を増やす、といったところが目論見のひとつだっただろう。

なので、両チームとも、自陣からのボール出しに対して、どのように前線からのプレッシングでそれを妨害、あるいは誘導してDF側にとって有利な状況を作るかが至上命題となった。

いわば、ポゼッションとプレッシングの表裏を繋ぎとめたチームが、有利な盤面を形成するゲームとなった。

そんな最序盤戦の様子だった。

山形は、4231の形をあまり崩さず、4213でGKから攻撃スタート。

仙台のプレッシングをトップ下に入った田中渉で裏返して、攻撃を加速したい狙い。

あるいは、イサカ、加藤の両ウィングを使って、仙台のSB背後を狙う撃ちする意図も感じる。

仙台としては、プレッシングをミスれば、自分たちの背後で即ピンチを招く。

その返しとして、一段下がってミディアムブロックを作ってスペースを圧縮する、またはよりハイプレッシングで後方の選手が縦迎撃していく形がある。

仙台が選んだのは、―ユアテックスタジアム仙台で選んだのは―、ハイプレッシングでの迎撃だった。

山田、衝撃氣田の2FWがGKorCB→MFへのパスラインをカバーしつつ、中央からサイドへのボールを寄せていく。

寄せた先には、郷家、相良の両WGがさらに限定。

パスラインをタッチラインとペンチして、山形の攻撃を縦に細くしてく。

真瀬、内田が縦のボールを奪取。

ここが、仙台のボール回収地点であり、攻撃スタート地点ともなった。

山形は、エヴェ、鎌田のMFの守備力を警戒して、あまりMFを経由させず、WGとトップ下のより高い位置にいる味方へのパスを優先させていた。

仙台は、前線からのプレッシングで山形の攻撃を寄せて、次のDF、次の次のDFでボールを奪っていくようなDFを見せた。

寄せて、限定して、奪う。

セオリーであり、理想的ともいえるゾーナル守備だったと思う。

真瀬、内田の復帰、エヴェ、鎌田の守備力の向上、あとは菅田のコンディションがよかった。

思い切り前線のプレスでボールを奪う姿勢に、自分の背後を警戒して中途半端なポジションをとる姿は見られなかった。

おかげで小出も、トップ下田中渉への迎撃もしやすくなり、彼本来の高い位置への迎撃守備が本領を発揮した。

 

さて、仙台のボール出しである。

仙台は、4231から3223でのボール出しを選択した。

山形より、2-2で中盤を創りやすく、後方の保持力を維持しつつ両ワイドへの解放パスの必殺技も内蔵した構成だ。

特に、左SB内田のポジションが固定的でなかったのが、実はこの日の仙台が披露したジョーカーだった。

常に、小出、菅田の同ラインでポジションをとっていると、当然なのだけれど山形3FWのプレッシングを顔面から受けかねなかった。

内田は、ハーフラインまで高い位置をとったり、菅田-鎌田ラインに繋がるように低い位置をとるなど、味方とボールのポジション、相手に与える影響、相手に見える景色を意識したプレーだった。

おかげ、この日はトップ下に入った衝撃氣田が、ハーフスペース、山形MF藤田の横、サイドへの外流れで菅田、内田と繋がり再三パスを受けた。

サイドへの外流れで、MF藤田は衝撃氣田へのマンマーキングしていくので、中盤に大きなスペースを創る。

両WGが高い位置でのプレッシングを志向する山形にとって、前輪駆動的なポジションになりがちなのだけれど、MFまでサイドをカバーするとなると、いよいよピッチに中央は誰もいない脆弱性が露見される。

仙台と違って、とかくホルダーの時間とスペースとタイミングを制限しようとるのが山形。

プレー強度が保たれているうち、または、自分たちの狙いがカチッとハマっている時なならまだしも、この日の仙台のように、個々の選手の能力にポジションが相乗されるとどこかで誰かが無理をしないといけなくなる。

なんというか、「ナベ」山形らしいな、と感じる。

そんなこんなで、仙台は、後方の保持と中盤でポイントを積み上げ、ゲームの優位性を高めていった。

両ワイドには、真瀬、相良が構え、山形のDFが縦迎撃して中盤をカバーしようものなら、いつでも背後狙える態勢を取っていたのも、仙台の攻撃を下支えした。

先制点は、山形が自陣からのボール出しを少し変えて、変えたというか現場レベルで解決しようとして、MFがサイドに流れ、FWチアゴもサイドに流れて、左からボールを逃がそうとしていたところを回収し、超ショートカウンターで仕留めた。

 

戦術家がただではころばない試合の劇的な幕切れ

さすがに動く渡邉晋

MFにテクニカルな小西を投入。

代わりに藤田が右SBになり、チアゴが左ウィングにポジションをとる。

小西は、仙台FWの横、あるいはFW-FW間の前でCBからボールを引きとる。

最序盤から、バックスへのプレッシングで攻勢を強めていた仙台だったが、小西のポジションでFWのハイプレッシングがやや落ち着いた印象だ。

山形のCBに時間とスペース、タイミングができると、今度はインバートしてハーフスペースにポジションをとる藤田、ウィングへのパスラインを使ってボール前進する。

また、左ウィングに入ったチアゴへの対応が必要になった真瀬。

前半より、前へのパワーが落ちてしまったような感じであった。

後方の保持、ワイドに高い位置をとったウィングを使った前進で、ゲームの形成を少しずつ戻した山形。

仙台は、前線からのプレッシングをかけていく姿勢を見せつつ、ミディアムブロックも組む時間帯が増え守るようになる。

リードしていたこともあるだろう。

内田が交代し、前線のメンバーが変わったあたりから、仙台左サイドを突破されるようになる。

CBから小西へのパスが増え、ワイドからインバートする藤田が意識内にいても、外にいても対応が後手に。

最終的には、失点という形へと繋がっていった。

それでも仙台は、前へ進むことを止めなかった。

右WGに入ったフォギは、再三、相手SB背後へ外流れでボールを受けファイナルへと侵入していく。

やはり仙台は、高い位置で攻撃をスタートすると、後方からのフォローアップも強くなる。

真瀬が再び高い位置をとるようになる。

 

嵐のような試合は、中島元彦のゴールで、決着がついた。

ユアスタは、仙台は、嵐のような歓喜に包まれながら。

 

感想

AKIRAvsナベという、戦術的なゲームの進め方を得意とする監督同士、非常に狙いも分かりやすく、ありがたいことに書きやすい展開でもあった。

ただ、ベースである強度であったり、シンプルな走力の部分であるとか、そういったところも出た試合で、そんな部分も両監督が大事にするディシプリンだった。

前半から優位を築いた仙台が、逆転したとはいえ、最終的には逃げきったゲームだったと言えるだろう。

山形は、劣勢を弾き返すだけ、パワーがかかる展開だった。

後方の保持、選手個々の能力とポジションで安定的なものにした仙台。

小西の投入とポジション変更でなんとか保持力を高めようとした山形。

変化を求めた山形とは対照的に、積み上げを選んだ仙台にとっては、投げ出さず、逃げ出さず、半歩でも前に歩みを進めてきた成果が表現されたのだと思う。

とはいえ、菅田や小出のコンディションもよく、SBタイプがそのままSBが入ったことで、前線から後方までコンパクトさを維持しハイプレッシングを継続できたとも言える。

この後の連戦でどう折り合いをつけるのか、そのまま突き進むのか。

この日必要だったのは勝利で、次への一歩になる試合だったと思う。

 

悲劇的な前節を乗り超え、この大事な試合で劇的な勝利をしたチームへ、目一杯の、

 

祝福を。

 

「逃げたらひとつ、進めばふたつ」こう言ったのは、スレッタ・マーキュリーだ。