蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【疾風】Jリーグ 第38節 ベガルタ仙台 vs 鹿島アントラーズ (0-1)

はじめに

 J2降格が決まった仙台の新時代へ向けた第2戦。原崎体制の継続も決まり、あとは選手がどれくらい残るか、新加入の選手がどれだけいるのか。気になることも多いが、まずは最終戦、ホームで勝利を目指すベガルタ仙台の姿があった。

 

ゲームレポート

どこでプレーするかを決める戦い

 ベガルタ仙台は、GK/クバ神、DF/真瀬、アピ、平岡、タカチョー、MF/吉野、上原力也、WG/氣田、関口、FW/富樫、赤﨑の≪4-4-2≫でスタメンを組んだ。FW/カルドーゾはリザーブに、ストイシッチ、福森、蜂須賀、富田、加藤千尋、皆川も入る。

 鹿島は、クォンスンテ、常本、関川、町田、安西、三竿、ピトゥカ、アラーノ、和泉、荒木、上田の≪4-4-2≫でアウェイ仙台に乗り込んできた。

 さて試合の方だが、仙台は前節福岡戦、前半飲水後の世界線をそのままに鹿島と対峙した。その世界線とは、MFがあらかじめドロップして3バック化し、FW横のスペースから相手サイドバック背後のスペースめがけて攻撃するスペースアタックだ。福岡同様、鹿島もセットDFは≪4-4-2≫のため、2FW横をどう守るか?がテーマになる。仙台は、MF/吉野のドロップを合図に、関口、氣田のウィングがインサイドレーンへのレーンチェンジをする。よって、仙台の攻撃陣形は、≪3-3-2-2≫となった。特徴は、サイドバックがワイドに低い位置にポジショニングし、自身の前方と後方のスペースを味方に使わせる狙いがうかがえた。

 その狙いは、前半開始とともに見えた。吉野が右CB/アピの横にドロップすると、インサイドからワイドレーンへ飛び出す右WG/関口へ向けてロングキックを蹴る。相手WGが吉野へのプレッシャーをかけずらいのは、前述したサイドバックのポジションによるもの。対面するタカチョー、真瀬をフリーにするわけにはいかない、というのが鹿島のDFだ。鹿島は、ホルダーへ極力プレッシャーをかけ続け、あるいはかけられるポジションにあらかじめ着いて、ホルダーのプレー時間を限定するDFが基本だった。当然、オリジナルポジションから動きがあれば、鹿島にとってはどこまで行くのか?の問が発生するわけで、ある程度、FW横のスペースについては許容していたように見えた。

 吉野のドロップ先が平岡、アピの間、CB間へと変わる。FW-FWラインに対して焦点プレーを続けるMF/上原力也と、縦軸で繋がろうという意図にも見えたが、後半途中からは平岡にもなっている。もしかしたら、平岡の方が、上原を使った誘き出しパスを出す意識が高かったためかもしれない。もっといえば、前方のロングを蹴るならやはり吉野の方がよかった、ということかもしれない。

 仙台は、右サイドは関口、左サイドは富樫が相手ファイナルラインの背後を取るウィング役。左ウィングの氣田は、ハーフスペースの番人。ゴールキック時のポジションが顕著。CBが大きく開き、サイドバックが低い位置、アンカーポジションに上原、ハーフスペースを氣田、吉野が使って、両ワイドは前述の通り。

 この試合、仙台にとって重要なスペースは、鹿島FW横のスペースだった。主にそのスペースを使うのは、吉野だったり平岡だったりしたのだけれど、右からの攻撃が多いこともあってCBのアピが使うシーンをよくみかけた。ただ、低い位置の真瀬へのパスだったり、アンカーの上原を使う意識、自らボールを持ちあがり相手WGへ正対するようなプレーが少なかった。少なかったと言うか、ほぼなかった。こうなると、当然鹿島レベルであれば、いや、J1レベルであれば仙台のパスラインを限定したようなもの。真瀬が相手を背負いながらプレーするシーンが増え、ボールが渡ればフリーで前を向けるはずの上原力也を見える機会が見られた。

 チームの攻撃として、前方のスペース、相手サイドバック背後へのスペースへの攻撃を考えた時には、シンプルにロングキックを蹴ること自体は問題ないと思う。ただ、それ一本槍となれば、それは話が変わってくる。来季の動向もあるが、彼のDF面での貢献は非常に高く、成長した選手のひとりと言える。今季ボールを主人公としたゲーム展開がなかなか無いなか、次のステップとしてはスペースと時間ができやすいFW横でのプレーについて、もっと強くなれる幅を感じた。

 話をこの試合に戻すと、いずれにせよ、仙台はFW横のスペースのプレー、サイドバック背後のプレーというものがニコイチで、うまくいかないと中間のサイドバックだったりMFのところでボールを持つ時間もあった。そこから速く攻めるのか、もう一度やり直すのかは今後の課題になると思う。仙台はボールを奪われると素早くボールを取り戻す、ポジションに戻るプレーを見せた。一方攻撃においても、素早く攻める展開だった。そういったプレーを今後も望んでいくのであれば、高いフィジカルが必要だし、ボールを奪われた後の1プレー目、奪った後の1本目のパスのプレー精度は高めないといけない。鹿島が非常に素早くボールホルダーに対してプレーしていたので、仙台も釣られた…という見方もできなくもない。

 

考察

 仙台は、スペースを有効に活用しよう!という意気込みを感じた。空いているスペースをはじめから使うのか、後から使うのかとか、誰が使うのかとか、3バックビルドや富樫や関口のライン背後へのランニングから読み取れる。スペースを使おうとすれば、相手は使わせないように素早く対応してくるので、展開的には速くなる。あとは自分たちがどのペースで戦いたいのか、もちろん相手との兼ね合いもあるが、ゲームを創っていく、コントロールしていく部分に繋がっていくと思う。来季も非常に難しい戦いが続くと思うが、もう一度、自分たちの戦い方を作り上げてほしいと思う。

 

おわりに

 ずっと走り続けてきたJ1での戦い。昇格に、優勝争い、天皇杯、そして降格。これですべてが無駄になることは決して無い。むしろ誇るべきだし、尊敬されるべき偉業を達成したとも言える。一方で、監督云々で、ポゼッションだのカウンターだのの戦い方云々で、良い選手を補強する云々で、切って貼ったでなんとかなるほどのリーグは、もはや日本にはないということだ。おそらく苦手な分野だと思う、クラブがフロントにたって、親分として子を守って、絵を描いて、言葉通りクラブを運営することについて、ベガルタ仙台に突きつけられた現実なんだと思う。仙台として、世に、社会に対して何を提示できるのか。仙台があることのうれしさって何なのか。仙台にサッカーがあること、ベガルタがあることの良さをもう一度向き合う必要があるのだと思う。新しい時代は、もう始まっている。あらゆる呪縛から解放された我々は、自由だ。

 

「ボス、あんたは言っていた。俺達に明日はない。だが未来を夢見ることはできると。けれど、俺達が今を必死に生きようとするほど、未来は遠くなっていった。もう生きているうちには無理だろう。だからこそ、今すぐに始めなければいけない。いつか俺達がいらなくなる。人を傷つける道具も、自分のなかの鬼を棄てて、今日より良い明日を創る。それが俺の、俺達の生きた証になる。そうだな、ボス」こう言ったのは、ビッグボス(ヴェノム・スネーク)だ。