蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【Passion】カタールW杯/準々決勝 アルゼンチンvsオランダ【#ワールドカップアーカイブ化計画】

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はじめに

 どうも僕です。今回は、この企画から、アルゼンチン目線で書きます。

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 アルゼンチンといえば、ジャルジャルのネタが真っ先に思い浮かぶ僕ですが、ベスト8でオランダと対戦するシビアなゲームを振り返って書いていこうと思います。ベガルタ仙台に在籍したレアンドロ・デサーバトの母国でもあり、奇妙な縁も感じます。メッシ物語の読者のひとりになった気分でもあります。そんなこんなで振り返ります。では、レッツゴー。

 

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時間を与えるところと与えないところ

 アルゼンチンは532。オランダは3412。開始からアルゼンチンの3人のMFは、オランダの3人とがっちりと噛みあう形。オランダのビルドアップは、距離が広い3バックにボールサイドのWBがワイドに低い位置にポジションをとるので、4バックのようにも見える。ウィングポジションに選手を置かず、ペナルティ幅3レーンに、FW3人がポジションをとる。

 一方のアルゼンチンは、532のブロックから、ボールサイドのWBにボールがつくと、WBが早いタイミングでポジションを上げて高いポジションからプレッシャーをかける。呼応して、噛みあってる中盤の3人MF、左右CBがオランダのFWに近い距離でマーキング。マンマーキングによるハイプレッシングで対応。右サイドのDFは、メッシvsアケの構図。アケには時間とスペースが存在する。なので、右WBモリーナが早いタイミングで高いポジションをとってプレッシングを開始した。お互い、システム的に嚙み合っているため、オランダはアケのポジション、列降りのポジション移動で、マンマーキングのアルゼンチンに対して混乱を起こしたい意図を感じた。

 この日のアルゼンチンは、試合開始から勇敢だった。WBは高い位置からプレッシングをかけていくし、ロメロとマルティネスの左右CBは降りていくオランダFWを徹底的にマーキング。地の果てまで追いかけた。あえて、メッシ方向に向かってプレッシングするアルゼンチン。アルバレスが右からティンバー、ファンダイクにプレッシャーをかける。メッシはファンダイクとアケの間に立つだけ。結果、アケはボールを持つ。ただ、アルゼンチンがマンマーキングで対応しているため、ボールの出し先が無い。アルゼンチンはそのまま押し込むか、パスをカットしてカウンターしていく。DF面でのプレーが難しいメッシサイドにボールを限定していくのは見事。あえて空ける、持たせると意識したDFだった。

 後半になると、ハーフタイムで投入されたコープマイネルスのサリーダが発動。ファンダイクとアケの間に降りて、ボールの出口を探す。左右CBがワイドに、WBはワイドに高い位置をキープ。サイドが厚くなったオランダ。中央の形は変わらないのでアルゼンチンは組みやすいが、サイドから押し込まれる状況が増える。次第に自陣にリトリートする時間が増えた。疲労もあって前線からのプレッシングが効かないアルゼンチン。オランダが442に変えて来たことでマンマーキングも曖昧になっている。ファイナルライン1本になったところにクロス。1点を返されたシーンは、クロスの時点で勝負ありだった。

 

MF横を攻撃するAlbicelestes

 アルゼンチンのボール保持攻撃は、3バックとアンカーの4人に、メッシとマックアリスターが中盤を創る形。WBはワイドにやや高い位置をとっている。序盤、アルゼンチンは右サイドの密集でボール交換をして、左サイドへ解放させてボール前進させた。攻撃時は、ロメロとメッシがポジション交換。WBモリーナとオランダの右サイドを攻撃。オランダは、FWのプレスバックやサイドをカバーする意識が低く、MF2人で中盤をカバー。左インサイドMFのマックアリスターをカバーしきれず、解放を許す結果に。

 先制したシーンでもパスカットから、MF2人を引きつけて、左CBアケも引っ張り出したのはメッシ。モリーナのゴールを生み出した。後半もオランダ523ブロックからの前線からのプレッシングに対しては、右CBロメロがワイドにポジションをとって、プレッシャーを分散。マックアリスターとフェルナンデスで中盤を創って、中央は2-2でポジションをとってプレッシャーを右サイドから回避していった。

 一方のオランダは、らしくないパスカットが要因とはいえ、攻撃ポジションにつく前に、ボールを早く、前に運ぼうとした結果、ボールを奪われ崩れた陣形でのDFを強いられた。前線3人のサイドや中盤カバー意識が乏しいこと、全盛期を過ぎたとはいえ、メッシ相手にデヨングとデローンでDFしようとしたのはさすがに厳しかったか。

 いずれにせよポゼッションして、右サイドからボール前進させようとした、させたアルゼンチンに対して、5バックと2人のMF、メンフィスのプレスバック(小)の形を崩さないオランダ。攻撃時も、一時的に4バックになる、あるいはデヨングを左にサリーダさせるなどの小細工も無し。あくまで自分たちのポジションを意識し、維持し、相手に打ち勝つ姿勢を変えない。オランダらしいといえばそうかもしれないし、ルイ・ファン・ハールらしいといえばそうかもしれない。ただ、相手にボールを渡さず、ゲームを主導し続ける姿とは少し違った。

 

 

おわりに

 試合開始からファイトしていたアルゼンチン。マンマーキングで次のホルダーを守るやり方と、中盤とメッシでファイナルサードを攻撃していくボールの出し方は、字面だけ見ればクラシカルさを感じる。でも、メッシ方向への限定プレス、オランダMF横を攻撃する姿は非常にロジカルで、熱闘の下に燃える青い炎のようだった。激しいDFの代償は、2点リードしながらPK戦にまで勝負がもつれ込んだことだが、悲壮感を感じさせず最後は勝利を取り切った姿勢は、試合序盤からの姿勢と変わらずファイトし続けた結果だったと思う。W杯のメッシ物語は続く。その物語に相応しい語り部たちが、ピッチにはたしかに存在していた。

 

「運命とは受け入れるべきものではない。それは自ら選び創り出すものだ」こう言ったのは、バールーフ・デ・スピノザだ。