蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【15-16アトレティコ・マドリー】vsバルサを観て感じたことなど

アトレティコ・マドリーのDFシステム

 どうも僕です。昔の試合を観た観戦日記になる。「流行りの服は嫌いですか?」と聞かれたら「うっせえわ」と答えるくらいに、自分はポップさからかけ離れた行為をしているなと感じなど。ベガルタ仙台に、クロップのドルトムントだったり、シメオネアトレティコを感じるなどしているので、少し温故知新。面白いゲームだった。

観戦した試合↓

Atlético de Madrid vs FC Barcelona (1-2) J03 2015/2016 - FULL MATCH - YouTube

 

 アトレティコは、4-4-2。アンカーブスケツの高さに応じて、ライン設定がされている。1stプレッシャーラインを形成するトーレスグリーズマンの2FWがブスケツを背中で感じながらホルダーに圧をかける。バルサは、ラインを高くボールを保持するチーム。その場合は、2FWはブスケツへのボールを警戒。ホルダーがドライブすれば、ブスケツへのパスコースを管理するにとどめる。ワイドに低い位置を取るフルバック、落ちてくるラキティッチイニエスタインサイドMFにはセントラルMFの2がマンツーマーキングする。こうなるとバルサ。ボールサイド2レーン、あるいは3レーンに4-4-2を集めるアトレティコに対して、サイドチェンジで応戦。空いているところを攻めろ。普通のチームならセオリーだけれど、バルサがやると新鮮。監督はエンリケ。納得はいく。ボールを受けるのはもっぱら左フルバックジョルディ・アルバネイマールもいるが、彼は中央から逆サイドに出張することもあり、サイドチェンジしてから彼にボールが入る。これを横スライドの根性で解決するアトレティコオリベル・トーレスが鬼の形相でアルバにプレッシャーをかける。バルサもここからクロスか、ネイマールのカットインかだから、斬るか斬られるかの勝負になる。

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図1

 

 次は、少し高い位置からのプレッシング。フルバックにボールが渡っても、その先にボールが進められなければ、バルサセンターバックにボールを返す。そうなるとラインは少し深くなる。当然、ブスケツもボールの引力に引かれてポジションを下げる。FWのひとりがホルダーの横を切りながら、プレッシャーをかけ、限定誘導の引き金を引く。もう一人は、ブスケツ番。例えばグリーズマンがホルダーに行き、トーレスブスケツを監視する。その先は、さっきと変わらない。ただ、イニエスタラキティッチフルバックの前=アトレティコのWG背後のスペースにレーンチェンジしてプレッシャーを外そうとする。そこに地の果てまで追いかけるアトレティコMF。アトレティコの横スライドは、鬼根性だ。こうやって、ボールサイドを限定誘導しつつ、マンツーマーキングの網を張る。ハーフレーンに移動してさらには列降ろしまでするバルサWGに対しては、ルイス、ファンフランがこれもマンツーマーキング。こうしてアトレティコは、中盤からの押し上げ、サイドチェンジ対応、前線からのプレッシングで少しずつ形を変えながら、でも大事なマンツーマーキング、スライド、根性は変わらず表現しているのが面白い。

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図2

 前半終盤で4-5-1に変えたアトレティコ。さすがに根性が続かないからかと思いきや、実際は、イニエスタラキティッチのレーンチェンジについていきやすいように3センターにした説が濃厚。やっぱり根性だった。センターバックに、前方から圧をかけるのもインサイドMFの役割。トーレスブスケツにつきっきりだ。バルサは、アルバが低い位置で3バックっぽい形でビルドアップを落ち着かせようとしているが、ポジション移動のリスクは無い分、アトレティコのプレッシャーにかかりやすくなった。エンリケバルサは基本ポジションを変えず、移動したとしてもサイドへの移動で、非常にリスクを予防した形のビルドアップだ。でも彼らには、それでも打開できるスーペルな選手が揃っている。それで良いのだろう。当時、レアルマドリーみたいだと揶揄された象徴的なシーンだと思う。

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図3

考察

 この試合、トーレスの先制ゴールに、メッシの逆転ゴール。両チームのエースが決める劇的な展開に。信じる者は救われるじゃないけれど、両チームが信じるものが機能していた試合だったと思う。アトレティコなら、中盤からの押し上げ、前線からのプレッシングに横スライドなどなど。これを90分間やらせるんだから、まさにシメオネ教。バルサの方が宗教じみていると言われていたが、戦争は変わった。リスクを減らし、スーペルな選手が短時間で最大の成果を発揮するシステムを構築したエンリケは、いわゆる名将のひとりなのかもしれない。メッシの神通力をそのままに。けれど、悪には悪の救世主が必要なんだって具合に、シメオネアトレティコもまた、彼らのボールが無い時のふるまいがすべてだった。後半中盤からオープンでオールコートマンツーな雰囲気が漂っていたが、それがどちらにとって有利だったかはよく分からない。自分たちは自分たちの土俵にいると信じ込ませていたのかもしれない。少しだけ仙台の話をすれば、図2の形はよく仙台でも見る形かもしれない。そうなると相手アンカーがFW-MFの距離が大きく空いているスペースを使いそうだけれど、あまりアンカーがJリーグにいないのと、片側のFWでなんとかするんだろう。あと4-5-1を観てみたい気持ちもまた高まった。今日はこの辺で。またどこかで。