蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【鬼さんこちら、手の鳴る方へ】Jリーグ 第20節 川崎フロンターレ vs ベガルタ仙台 (2-2)

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ川崎フロンターレ戦のゲーム分析。関東連戦二日目。次の鬼門は、等々力だ。リーグ独走状態を続ける川崎。過密日程でメンバーを入れ替えたとしても、スタメンと相違ない力を発揮する。そんな相手に、ベガルタ仙台も総がかりで挑む。5月。ユアスタで逆襲の狼煙を上げた。少しずつ回帰する姿。この連戦には何かがある。今日も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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ゲームレポート

どれだけの時間、相手の嫌なことを続けられるか

  川崎フロンターレは、現在首位を独走している。この試合で引き分け、無敗記録継続を達成。仙台としては、大宮アルディージャ以来の無敗記録保持の相手ということになる。川崎は、その高いボール操作技術、風間八宏以来の止める・蹴るの精緻化によって、ボール保持局面で圧倒的な力を発揮してきたチームだ。ただ、今の鬼木フロンターレになってからは、いわゆるボール保持での圧倒というより、もっと別の局面での支配を望んでいる。それが、カウンタープレスからの即時奪回である。

 相手陣内で攻撃中に5秒から6秒以内にボールを奪い返すこのプレッシングは、ボールを奪った相手に呼吸をつかせる暇を与えない。川崎も例に漏れず、相手ファイナルサードでボールをそのボールを外に出させない。即時奪回からの超ショートカウンター川崎フロンターレの強みだ。ある意味ファイナルサード特化型。ボール保持攻撃で相手を陣内に押し込んでというよりは、さっさとファイナルサードへボールを運んで奪われたらカウンタープレス開始、即時奪回から攻撃継続、といった具合だ。

 前節の浦和とも対照的で、浦和はビルドアップ型を変えたり、担当する人を変えることで相手に最もダメージを与えられ自分たちが有利になる形を90分かけて追い求める。一方川崎は、CB谷口、車屋にアンカー田中碧の三角形が基本だ。非常にシンプルである。それでボールを持てるのだから、CBの能力が高いというべきか。そこからルートはサイドを経由する。川崎の主役は、フルバックだ。ここから攻撃が始まる。

 ワイドにアンカー高さで構えるフルバックから、同レーンのWG、あるいはハーフレーンへレーンチェンジしたWG、インサイドMFへボールが入っていく。入っていくなかで、仙台センターバックフルバック間を抜けていく。ワイドからインサイドレーン(中央3レーン)へボールが入っていく、ホルダーも進行していくのが川崎の攻撃ルートになる。もちろん、左WG三笘は縦にも抜けられるタイプではあるが、ボックス角まで進行してから縦に抜いていくプレーになる。山根、登里のフルバックもハーフスペースを攻撃するので、初めから縦にドーン!よりは、ワイドから斜めに入ってそこから縦なのか横なのか何なのかといった感じだ。

 長々と川崎のターンで書いてしまったが、ボール保持率的にはこんな具合だろう。いや違うか。さて、そんな川崎に抗うのは、我らがベガルタ仙台。川崎のカウンタープレスからの即時奪回、フルバックを起点としたワイドから斜めにインサイドレーン(中央3レーン)へ入っていく攻撃ルートをチェック、対策を主眼とした。カウンタープレス対策に関しては、同点ゴールのシーンはゴールキックだったけれど、長いボールをセンターFW皆川に当てるなどできる限り相手陣にボールを運ぶようにしていた気がする。気がするだけ。

 仙台陣内、ファイナルサード特化タイプの川崎相手に、川崎陣内での攻撃を増やしたいというのは、かなり理に叶っているが言うは易しのミッションインポッシブルである。センターFW皆川が相手アンカーだったり、CBとのバトルに勝てていたが仙台に、ベガルタに、一筋の希望の光を示したのである。

 川崎のワイドから斜めに入る攻撃には、仙台は「縦を許容し横と中央のカバーを優先した」DFで対抗。エデン・アザールと化している三笘には、真瀬が正対しこの日右WGに入った中原が横切りの特別対応をしたけれど、逆サイドでもフルバック、ウィングにボールが入れば、そこから横方向、斜め方向への攻撃を封じるように、仙台のフルバックとウィングが立つ。基本は、ウィングが横切りしながら、フルバック、CB、セントラルMFがワイドからゴールを結ぶライン上をカバーする。CB横を抜けていくオフボールランには、CBのQちゃんとテルがついていくし、代わったシマオでも同様。あくまでボールを受けた先で横方向をカバーする。

 だからこそ、最初の失点シーンでテグがブチギレたというのは、狙い通り縦への誘導を図ったうえでの失点だったのでそこは防いでくれよと言ったところなんだと思う。氣田のドリブルから中原のゴール、マルティノスの起死回生同点ゴールはいずれもスーペルであった。ディフェンスは基本に忠実。オフェンスはスーパーに。展開は劇的に華撃的に。なんともテグらしいチームになっている。

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考察

 この試合でのDFを成立させたのは、ウィングに入った中原と4-4-1-1の1.5列目を担当した匠ではないだろうか。ワイド深くまで三笘の選択肢を限定し続けた中原に、特にアンカー経由の攻撃をする川崎ではないけれど、それでもオンボール・オフボールで絶大な力を発揮するアンカー田中碧を警戒しサイドを限定し続けた匠は、陰ながら称賛されるべきだろうと思う。中原はご褒美があったけれど。仙台も川崎もターンオーバー的であったし、憎むべき日程だったし、この結果でザッツオーライになるとは言えないだろう。毎回、マルティノスが芝生のうえで猫ローリングしているのを微笑ましい目で見ながらスーペルゴールを待つほど、まだ僕の心が整っていない。というより、このゴールと試合展開は30何試合やって何試合かあるか無いか、なんなら100試合やって数試合あるのかどうかだと思う。だから美味しそうなところをずっと待っているのではなく、人事を尽くして天命を待つように、やるべきことをやっていければ良いのだと思う。

 

おわりに

 劇的。まるで勝ったような気分だけれど、勝ち点は1だ。首位の覇道を突き進むチームからとった貴重な勝ち点だ。エンタメ的でもある。サッカーで勝つとかそういうの以外で笑うのはなかなかなかった気がする。それが日常であれば微笑ましくなり、今はそれがなんとも、とても貴重なことのようにも見える。まあ、そんなところだ。

 

「自分を信頼しはじめたその瞬間に、どう生きたらいいのかがわかる」こう言ったのは、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテだ。