蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【血の混ざった泥を舐めてでも】Jリーグ 第13節 浦和レッズ vs ベガルタ仙台 (2-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。アウェイ浦和レッズ戦のゲーム分析。勝利の束の間、ベガルタは関東連戦へと赴く。2つの鬼門。浦和美園と等々力。そしてまた、彼らを引き裂くような連戦。ベガルタ仙台の戦いは、まだ始まったばかり。今日も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

f:id:sendaisiro:20210511224922p:plain

 

ゲームレポート

どこまでついていけるかディフェンス

  ベガルタ仙台は、フォワード赤﨑が前節の負傷の影響でリザーブスタート。代わりに、杜の都の魂たる存在、関口訓充が西村拓真と2FWを組む。また、右フルバックにはキャプテン蜂須賀。4-4-2でセットアップした。

 4-4-2のフォーメーションから、バックラインにMFがドロップするなど、ビルドアップの形を変える浦和。特に前半飲水前までは、仙台が前線からのプレッシングを敢行し攻勢にでたことで、落ち着くまでに時間がかかった印象だ。仙台は、ホルダーに対してFWが、もう一人がアンカーロールのMFを監視することでサイドを限定。限定したサイドで、ウィング、セントラルMFフルバックで奪いきってしまおうという狙いだ。西村拓真の絶好機など、シュートチャンスを作るが決められないベガルタ仙台。無情にも、飲水タイムという名の修正タイムを迎えてしまう。

 浦和は、CMF伊藤のドロップに呼応して、左WG小泉がMF化。MF阿部勇樹の横で受けることで、バックラインからボールを引き出そうとする。ただ、仙台は阿部勇樹を警戒しながらバックラインにプレッシングをかけるため、飲水後は、阿部勇樹がひとりで仙台のFW-FWライン上に立ってマークを引き受けているシーンを見かけた。これで、バックラインへのプレッシャーを軽減しようとする狙いだ。

 かつてのリカルド徳島での名アンカー岩尾現象である。「我々は岩尾を観測していないが、たしかに岩尾はそこに存在する」のである。しかしこれも、ターゲットになるMFが1人という点においては同様で、仙台がマンツー寄りゾーナル、いやマンツーマンDFである以上、「1人はMF、1人はCB」へのプレッシャーが成立する。ただし仙台としては、序盤の優勢をどんどんと削がれるような策を相手が打ってくるのに対して、ファーストセットのやり方をやり切るしかない。時間の問題のようにも思えた。

 そして勝負の後半戦。浦和は、右フルバック西大伍をバックラインに組み込んだバック3に、CMF阿部勇樹、伊藤の2CMFでよりオリジナルポジションに近い形のM字型ビルドアップを組んだ。仙台としては、ターゲットとなるMFが2人のうえに、制限するべきバックスが3人いる。そもそも、3CB+2MFのM字型に同数プレッシングをかけるのは実現不可能に近いレベルで難しい。しかもややこしいことに、西は仙台FW-WGライン上を意識した立ち位置を取る。対面したWG氣田も、ボール非保持でのポジションだったり切り方がJ1仕様になってきたといはいえ、このハイレベルな応用問題を解かされるのは難儀だったと思う。なにせ後方では、ポジションを入れ替えて右WGに入った武藤雄樹がハーフスペースに顔を出し、仙台のWGとCMFの間を狙っているのである。

 この日の仙台は、非常に人への意識が強くFWがコースを限定してからは、マンツー寄りに相手を封じ込めようとした。特にハーフスペースに入る選手に対しては、CB平岡、吉野が出張してでもマーキングを続けた。サイドへも出張する平岡の姿を何度も見かけたと思う。逆に浦和は、FWユンカーが中央にいるので、彼の周りにスペースができる。そのスペースを後方の選手が飛び込んでいくのがこの日の浦和の攻撃型だった。そんな文脈のなかで、武藤と小泉のポジションチェンジは、阿部勇樹西大伍のポジショニングと同じぐらい決定的だった。仙台の松下、平岡が武藤への警戒を強めてマーキングすれば、そこを外して仙台のマーキング後方にできたスペースを使っていくのである。

 サイドでの人数不利、ポジションチェンジにはついていかずエリア迎撃、ただしマンツーマーキングで対処しようとした仙台。アンカーや、中途半端な位置に立つフルバックへの構造的な対処をこの日だけでやれといっても土台無理な話で、前節柏戦である程度の手ごたえを得たマンツーに近いゾーナル、いや、これはマンツーマーキングだ。このマンツーマーキングで対応したのだけれど、相手に接近してボールを取り上げようと素早く動けば、相手だって素早く対処する。

 そうなると局面局面が高速化する。高速化すると、ボールと人と頭の速さ勝負になる。そんなことを思い返させるような、赤い7番のゴールだった。

 

 

考察

 非常に富田がほしくなる戦い方であった。それより、この最終決戦のような人狩りディフェンスを序盤から採用しないといけないあたりが、今のベガルタ仙台の難しさを表しているのかもしれない。だったら西への対応をどうすればよかったのか?という問いは、そんなもの知らん死なばもろともだ!で氣田がプレッシング攻撃するか、いいよ持たせてあげるよとハーフレーンを埋めるかくらいだったか。どちらかといえば、後者っぽかったが、西が氣田のプレッシングを切るパスを中央からワイドに開く小泉に出していたので、言うより難しかったのだと思う。きちんとアンカーとフルバックがいれば、ビルドアップはできるんだぜと言わんばかりに。耳が痛い。とはいえ、仙台の最序盤の決定機を決め切っていれば、そう事は難しい方向に転がっていなかったかもしれん。特に浦和のネガティブトランジションに、浦和美園の民は満足しているのだろうか。そんな出来だった。25分間、シンデレラの鐘が鳴るまでが、やはり勝負である。ここで後手を踏み続けた春先、決めきれない今、じゃあ次は?そのための今日にしたい。

 

おわりに

 鬼門なんて、この前の柏戦で払拭したじゃないか。恥ずかしいけれど、仙台、ユアテックスタジアム以上の鬼門を僕は知らない。今は。浦和の赤い壁は、どことなく寂しさを感じたし、きっと次節の等々力でも今のこのクソったれな状況を恨めしく思うのだろうと思う。この前、ユアスタが復活したけれど、アウェイが輝くからホームも輝くのだとなんとなく思う。そんな関東連戦だけれど、相手は絶対王者。強い相手と当たると、嘘も、誤魔化しも、ズルも、すべて見透かされ晒され破壊される。いいじゃないか。やるべきことを正面からぶつけるしかない。追い上げる立場なんだから、全開でアタックをかけるべきだ。でなければ、等身大の自分たちなんていつまで経っても分からない。自分が何者かを知るために、戦いにいくんだ。

 

「どんな楽器でも演奏するのは簡単である。正しい音を正しい時に触れば楽器が勝手に演奏してくれる。」こう言ったのは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハだ。