蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【518日のカントリー・ロード】Jリーグ 第12節 ベガルタ仙台 vs 柏レイソル (1-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。ホーム柏レイソル戦のゲーム分析。何度も何度も何度も待ち望んだ日が、僕たちの目の前にやってきた。すべてを飲み込む時代と降格。後戻りもやり直しも、時計の針も戻せない。逆境的で、逆襲的なユアテックスタジアム仙台がそこにはあった。エンブレムを叩く主将、ボールを叩く15番、そして、手拍子を叩くサポーター。叩き続けた扉が、今、開かれる。今日も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

 

目次

オリジナルフォーメーション

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ゲームレポート

マンツー寄り4-4-2に神様仏様関口様

  仙台は、この日ももちろん4-4-2でセットアップ。左ウィングには、怪我から大黒柱の関口が復帰。開始序盤から、サイドでのプレッシングに、赤﨑の怪我交代でフォワードに入ると、柏セントラルMFの椎橋、仲間を警戒役に回る。この日の仙台は、4-4-2でありながら、マンツーマンDFに近い型を採用。完全なゾーナルディフェンスが無いように、完全なマンツーマンも無い。よりマンツーマンに近いマンツーマン。何を言っているか分からないと思うが、そういうことだ。特に、セントラルMF松下、上原のコンビは、柏が攻撃陣形として採用してきた3-4-2-1のシャドーストライカーを捕まえるタスクを徹底。シャドー江坂、神谷は、WBがボールを持つと平行サポートの動きを見せるが、そこにマンツーマーキングで警戒を怠らない。

 こうなると、3-4-2-1の特性上、どこかで縦に抜ける動きをしてダブルパンチ現象を起こさないとDFが崩れない。ということで、その役をセントラルMFの椎橋、仲間が実行。江坂と神谷が空けたポジションへオフボールラン。仙台は、真瀬、タカチョーの両フルバックがWBをマーキングターゲットとしているため、その背後へのランニングはよく効く。だけれど、そのカバーリング、フォローアップをなんとFWに入る関口が実行。それはそうだ。マンツー寄りマンツーマンなのだから。何を言っているか分からないと思うが……とにかく、関口はそれをやり遂げる選手だ。だから、交代で入った氣田をそのままFWではなく、関口にしたのはこうやって自分の仕事を徹底できるからな気がする。気がするだけ。

 カバーには、センターバックの平岡、吉野も参戦。セントラルMFのランニングは、物理的に距離が長いし、カウンターを受けると自分のポジションに穴を空けるリスクの高い行為。そのプレーもだんだんと影をひそめるようになる。先に書いた、松下、上原が柏シャドーと徹底抗戦していることもあり、柏は少し作戦を変える。

 

シャドーをサイドへ。中央での実効支配を強める仙台

 柏は、飲水後あたりから、シャドーの江坂、神谷が仙台両フルバックの背後を狙うようなカットアウトランを繰り出し始める。仙台のファーストプレッシャーラインは高く、普段の中盤からの押し上げより、前線からのプレッシングで柏バックラインに圧力を強めつつあった。ウィング加藤千尋、氣田亮真が急先鋒となり、2FWとの連携で柏3バックに対して3フォワードの同数プレッシングで噛みあわせる。そうなると、ワイドに展開しているWBへの対応は、真瀬、タカチョーのタスクになる。この2人の出足は速く鋭かった。迷いなく縦迎撃を実行する。そんな仙台の前傾姿勢を利用したいのがネルシーニョ柏。仙台がプレッシングで空ける背後のスペースを前述の江坂、神谷が使う。

 やはり負けられない闘いを極める松下、上原の両セントラルMF。まさに闘将だ。さも当たり前のようにフルバックの背後までカバーリングする。柏としては、江坂、神谷のいわば飛び道具であり、ゴール前で特異な才能を発揮するテクニカルな選手を『門を開けるひと』に任命して、仙台のDFを攻略しにかかった。それはそれでリスクのある行動で、本来ならインサイドレーン、中央3レーンを中心としたピッチ中央で力を発揮してほしいタイプの選手だ。それがどんどんとサイドへ行ってしまうのは、仙台としては中央での脅威を削ぐことを意味した。

 ただし、3-4-2-1を経験したチームとして、その気持ちが凄く分かるのである。もともと相手の間に立てるよう設計されている3-4-2-1。じゃあそのまま立ってれば良いのかというと実際には違くて、この日の柏のように、セントラルMFシャドーストライカーがサイドに流れたり、相手の背後にランニングするなど「静」より「動」を求めらる。柏のマンツーマンDFなのは、そんな攻撃プロセスから、いったん「静」となる守備陣形を整えるのには、非常に大量な時間と労力が必要になる。高速化するジャパンフットボールにおいても、世界においてもそれは難しい行いな気がする。気がするだけ。

 まあ、そんなこんなで、蜂須賀の投入と真瀬のWG化。フォギ―ニョ投入に上原のアタッキングMFへの列上げで、より強靭さを増す仙台。25番がボックス内で潰れる。右サイドから閃光が光る。タフな戦いを先行するゴール。次の瞬間には、西村拓真が芝生のうえを滑っていた。

 

考察

 518日ぶりの勝利を掴んだベガルタ仙台。人人の意識が強い柏相手に、負けてられないとばかりに人人で挑んだこの日の仙台。FW+WGの3フォワードプレッシングで、ボールをサイドへ誘導して自分たちの土俵であるサイドと中盤での攻防に持ち込んだのが勝利を引き込んだか。もちろん、そこで勝てる勝てないがあるわけで、勝つためにやるべきことを実行した選手たちを褒める、と言った試合かもしれない。柏がGKやWBを使ったビルドアップ、シャドーのWG化などで仙台に手を渡すようなプレーが出てきたら、少し膠着状態になりそうな気もした。今のJリーグは、そのあたりが標準装備のチームばかりなので、今後の戦いが気になる。ただし仙台としては、戦略的な狙い、戦術的な実行が伴った、そしてそれが勝利に繋がった試合として、積み上げるべき大事な試合内容と結果になったと思う。

 

おわりに

 ベガルタ仙台が、ユアスタに帰ってきた。ユアスタが、仙台に帰ってきた。どこか何かが足りない、欠けている日常に、何かが戻ってきた。まああまり多くを語っても野暮である。おかえりなさい。すべてのひとへ勇気を与える一撃を加えたのはまた、背番号15番だった。でもこの日のユアスタは、とても晴れていた。

 

「曇りなき心の月を先だてて浮世の闇を照してぞ行く」こう残したのは、独眼竜、伊達政宗だ。