【勇気をもって飛び込め】木山ベガルタ仙台 攻撃戦術分析-『ゾーン撃ち』編-
はじめに
どうも、僕です。今回は、戦術理論の話。2020年の木山監督率いるベガルタ仙台の攻撃戦術を取り上げます。4-3-3のフォーメーションから繰り出すウィングサッカーの魅力が随所に発揮されつつある木山ベガルタ。そのなかでも、チームとしてどこを狙っているのか、どんな意図をもって攻撃しているのかを3節終了時点と気が早いですが見ていこうと思います。では、レッツゴー。
選手と選手との間『ゾーン』とは
たとえば、4-4-2ですと、4-4の間を『ライン間』と呼んだりします。ラインとラインとの間ですからライン間。一方で、「4」のなかでも、SBとCBとの間、いわゆる選手間もありますが、これを僕は『ゾーン』と呼んでいます。
図1
図にするとこんなイメージです。最前列の選手間(2トップなのでサイドに選手がいないので2トップ横)、中盤列の選手間(サイドハーフとセントラルハーフ)、最後列の選手間(サイドバックとセンターバック)を一本で繋ぐスペースのことを言います。よって、選手は動きますから、この『ゾーン』も動いたり、変化します。
*ゾーンについて言及されている記事・書籍
silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com
図2
分かりやすいのは、4-4-2で「中央圧縮」と呼ばれるやり方で、中央のエリアを守るやり方です。極端に中央の『ゾーン』を狭くして、サイドの『ゾーン』を広くして守り、相手から中央へのパスを許さない、パスを出せれても選手同士の距離が近いのでプレッシャーをかけやすい利点があります。
図3
こちらは、サイドでの守備です。ゾーナル守備、いわゆるゾーンディフェンス時に、サイドバックやサイドハーフがサイドのボールホルダーへ「プレッシャーをかける→後方をカバーする」の守備をします。その時、中央の選手も繋がるように横に「スライド」し、中央のエリアを守ります。そうなると中央の『ゾーン』は変化せず、ボールサイドの『ゾーン』は狭く、逆サイドの『ゾーン』がとても広くなります。ボールサイドでプレーさせず、ゴールされる確率が低い逆サイドのエリアを空けておく意図です。
このように、『ゾーン』というものは、守る側にとって、狭くしたり広くしたりすることで、攻撃側のプレーを制限したり選択肢を限定することができます。そこで、木山ベガルタの狙いは、この『ゾーン』で選手がボールを受けたり、オフボールのランニングをしたりして、『ゾーン』を「撃つ」ことです。
ゾーン撃ち
攻撃の目標はもちろんゴールですが、木山ベガルタはその目標へ到達するための目標、準目標とでも呼ぶべきものがあります。それは、サイドバックとセンターバックの間およびその背後になります。
図4
ここを狙うために、フォワードやウィング、インサイドハーフが『ゾーン撃ち』を実行します。
図5
サイドバック-センターバック-サイドハーフ-セントラルハーフが作る四角形のエリアでボールを受ける、あるいは受けるためにランニングします。相手のDFラインがプレッシャーをかけてきたら、最も使いたい背後のエリアが空きます。
図6
また、ウィングやサイドバックがボールを持って、インサイドハーフがサイドバック-センターバック間に飛び出していくプレーです。相手センターバックをサイドへ引っ張り出せる効果があります。このプレーは、特に赤﨑が得意とするプレーですが、フォワードが飛び出すこともバリエーションとしてあります。2節湘南戦では、左サイドバックの石原(タカチョー)が、この『ゾーン撃ち』を担当しました。
図7
もちろん、ウィングも攻撃することがあります。木山ベガルタのキーマンはウィングのプレーヤーになるので、基本的にはタッチライン際で構えて、相手サイドバックと勝負することが求められています。ただし、サイドバックやインサイドハーフがサイドを担当するのなら、ウィングも『ゾーン撃ち』で相手サイドバックとセンターバックの間を飛び出していく、あるいはカットインからドリブルで侵入していくこともあります。
相手にとって、最終防衛ラインが引っ張り出され、ゴール前に居てほしいDFが居ないというのは最も危険な状態だと思います。当然、他の選手でカバーしますが、カバーした選手がもともと守っていたエリアも空いて来ます。加えて自陣に選手が多くなって、前線に人数が足りなくなってカウンターが決まりにくくなる「三重地獄」を味わわせることができます。「攻撃することで、守備をする」を木山監督は実現しようと考えているのではと思います。
おわりに
まだ3節終了時点ですが、非常に見どころのある戦いをしています。他にも、「3トップ攻撃」や「4-3-3ディフェンス」など、4-3-3の王道で、モダンなエッセンスがたくさんあるので、今後も試合を観て、機会をみてまとめたいと思います。おそらくまだまだ手の内や手札、仕込んでいることもあるでしょうし、クオリティを上げていきたいというコメントもあるようにさらに進化していくものと思います。楽しみなサッカーをしているのでこれからも期待して観ていきます。