蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

「君が広く攻めるなら、私はもっと広く攻めましょう。」と微笑む君。21

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「最後の問題」

僕は、少し急いでいた。

詩や李七、東照宮たちが、楽しい楽しいサッカー話をしていると言うのに。

もう少しで、僕たちの高校生活が終わる。

この道も、風景も、いつか昔の思い出となっていましまう。

 

僕、国府多賀城 朗は、無事に大学受験を合格という形で終え、何の憂いもなく卒業式に臨むのだけれど、3月9日の卒業式前に少し、感傷に浸ってしまった。

悔いはない。

けれど、この機会が唯一の悔いになるかもしれない。

詩はともかく、李七や東照宮にも用事があるのだろうしこの時間を大事にしたい。

 

その時、僕は二度、その人を見てしまった。

紅い鮮やかな髪。

紅い眼。

僕は、その人に見覚えがあった。

 

「あ……」

つい、声が出る。

 

その人が僕に近づいて来るのだから。

 

そして、僕の前で止まる。

 

「あ、あ、あの…」

 

「お……」

 

「お……?」

 

「お前が国府多賀城 朗か?」

 

どうして、僕の名前を知っているんだ。

どうして、僕だと分かった?

「ええ、そうですけれど。」

僕は、この人を知っている。

だから、答えた。

 

「お前を探していた。」

 

探していた?僕を?なぜ?

「あ、あの、もしかして、人違いでしたらすみません。」

確信があった。

榴ケ岡 神奈子さん、ですよね?Foot Lab副編集長の。」

だって、雑誌の対談を読んだから。

 

「ああ、そうだ。」

 

「ああやっぱり!あの、Foot Lab毎月読んでます!まさか、こんな形で出会えるとは!」

まさかこんなところで本人に会えるなんて。

「あ、えーっと、どうして僕を探していたんです?何か用事でも…」

思い当たることはない。

「もしかして、紙面オファーですか!なんかのきっかけで僕のブログが読まれてそれで…。」

 

宮城野原 詩を探している。どこだ。案内しろ。」

 

え?

この人は、今、詩の名前を。

 

「お前、同級生なんだろ?連絡先ぐらい知らないのか?じゃなきゃ知ってる奴を教えろ。私は、あいつに用がある。」

 

榴ケ岡さんが詩に用がある…

どうして?

 

「いや、あの、知っていますけれど…。」

「なんだあ?知らない大人には、教えられないってのか?これだから最近の高校生ってやつは…。」

「ああ、いや、そういうわけじゃあ…。」

名刺。

大人と大人とが交わす、挨拶。

「ほら名刺だ。それでいいだろ。それを宮城野原に渡しておけ。」

分からない。

名刺を出すほどに探す理由が。

「あの…どうして、詩に何の用が…。」

 

「お前は、聞かない方が身のためだと思うけどな。」

 

どういうことだ。

どうして、榴ケ岡さんが詩を探している理由を聞かないことが、僕のためになるというんだ。

「いえ、一応理由を聞かせてください。本人の連絡も、本人への案内もそれで決めたいですし。」

「チッ…しょうがねえなあ…。」

僕は、その後の会話をあまりよく覚えてはいない。

ただひとつ、特段覚えていることと言えば、その話は僕にとって悔いが残る話だったことだ。

  

神との戦い

「じゃあ、また卒業式で会いましょう。」

「それまで風邪引くんじゃないわよ!」

宮城野原先輩、今日はありがとうございました。」

別れ。

スマホに通知。

「(朗から…学校の正門で待ってて…?)」

 

数分後。

紅い神とともに現れる。ひとりの少年。

「朗……!」

喋らない。

どうしてか、彼は一言も発しない。

近づく、紅い神。

「あの…どちら様でしょうか。」

 

「私は、Foot Lab副編集長の榴ケ岡 神奈子だ。宮城野原 詩だな?」

 

「ええ、そうですけれど…。」

 

「単刀直入に言う。お前、ライターになれ。じゃなきゃ何でもいい。物書きやれ。」

 

人物紹介

宮城野原 詩 (みやぎのはら うた)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタクなのは隠している。観る将。重力少女。

 黒髪、肩ぐらいまで伸びた髪は変わらず。

八乙女・ヴィクトリア・李七 (やおとめ・ヴィクトリア・りな)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタク。見る将。マンチェスター・ユナイテッドファン。金色少女。

 金髪ツインテール。 赤いリボンは変わらず。

東照宮 つかさ (とうしょうぐう つかさ)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。2年生

 サッカーオタク。観る将。不敵少女。

 高身長。一人称が僕。髪は肩ぐらいまで伸び始める。

国府多賀城 朗 (こくふたがじょう あきら)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタク。観る将。 サッカーの見方を勉強中。

榴ケ岡 神奈子 (つつじがおか かなこ)

 Foot Lab副編集長。

 紅い髪の女。