蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【スペーシングが】もしもバスケを一ミリも知らない人間がプリンストンオフェンスを観たら【世界を救う】

はじめに

 どうも、僕です。最近は、密集大好き飛沫が跳梁跋扈する世界になって、自粛大合唱状態でまともにサッカーの試合を観ていないです。早くあの有象無象の悪鬼羅刹の百鬼夜行どもが渦巻く天上天下のスタジアムに行きたいです。

 さて今回は、バスケからサッカー戦術を探ります。テーマは、プリンストンオフェンスです。プリン?何それ?というサッカーにはおおよそ馴染みのない単語ですが、僕も全く馴染みがないです。きっかけは、バスケの「スペーシング」という「味方を孤立させず、邪魔せず、相手1人に2人守らせない動作」をサッカーにも当てはめてみているところからです。詳細は、僕もよく参考にさせてもらっている記事を参照ください。

footballhack.jp

goldstandardlabo.com

 

サッカーファンが語るプリンストンオフェンス

 そして、今日の題材はこちら。1時間の長めのプレー集ですので、お時間あればぜひ。僕は、3周ぐらいですが、すぐに見ることができると思います。バスケのことは一ミリも知らないですが、さすがに「安田にボールを集めて一本じっくりいく」ぐらいは知っています。冗談はさておいて、本当に分からないのですが、サッカー的な目線で見ても十分に面白いですし、なにより色んな発見があります。

 今回の主旨は、僕が面白いと思ったあるプレーを取り上げて、それを解説していく感じの記事です。バスケについて語るには知識も経験も無くて(高校の体育で死ぬほど疲れたのと摩擦で足がアレした思い出しかない)、ただただ失礼にあたるので、動作というか人間の動き的な部分に注目してサッカーでも共通項や類似性があれば面白いなと思っています。前置きがモウリーニョのカウンター並みに長くなりましたが、では、レッツゴー。

www.youtube.com

 

チームで連動する。それがスペーシング。

 動画の時間で、39分51秒。今回の分析の主役は、「白の4番」。4番という背番号に、サッカーファン的には何か胸熱なものを感じる。

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 状況的には、白の7番にボールが渡り、もともとボールを持っていた選手が青の6番後方にあるスペースにオフボールランを繰り出そうとしている。この時、白の4番は青の6番にマークされているがスペースに走り込まず停止している。スペースに走ればマーカーを引き連れることになってスペースを潰すためである。スペーシング三原則のひとつ「味方の邪魔をしない」だ。止まることで、味方を助けるのである。この時点で、白の4番には並々ならぬスペーシング能力があるように見える。

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ここで白の4番がスクリーン?プレーで、味方をマークするマーカーの進路を妨害する。青の6番がマーク役を引き継ぐ形に。そうなると、白の4番に少しだけ空白の時間が生まれる。

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 味方のバックドアカット。青の6番後方のスペースへのオフボールランへは、マンマーキングで対応。青の6番は、そのまま白の4番へのマーク役を継続。白の4番は、止まったまま相手と2対1を作った形になる。恐ろしい。そして、自らは、「相手が作った」スペースを使う。大外のホルダーを助けるために。スペーシング三原則「味方を孤立させない」だ。

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 青の6番のチェックも速かったが、白の4番がボールをホールドすることに成功。合わせ技で、白の7番は白の4番方向にオフボールランする。マーカは、マークするとなると進行方向に障害物(白の4番と青の6番)がある。さらに、青の6番に「白の4番か7番をマークするか」を迫ることになる。スペーシング三原則「1人で2人を守らせない」、つまり「2人で1人を攻める」形に。捕捉で、バックドアでスペースに走り込んだ白の9番(手前)は、そのまま円を描くように白の7番の背後のスペースへ。これでまた、フリーになれる予備準備に入る。

 結果的には、白の4番、7番、9番の3人が円を描くようにローテーションして、相手DFのマークを引っぺがしているのと、常にどこかで誰かが2対1になるように仕向けているのが印象的だ。サッカーにおいても、ミドルサードファイナルサードでの攻撃で、サッリやペップ、ビエルサオシムのアタッキングに近しいものを感じた。マーカーを引き連れたまま、味方のマーカーへ仕掛けて瞬間的に2対1を作りつつ、相手の守備の約束事の束を解く作業だ。かなりの戦術負荷を守っている側としては受けるように思える。

 また、補足的に言うのであれば、画面左の大外で構える白の選手2人は、サッカーで言うところの逆サイドで構えるウィングとサイドバックのようにも見える。あの2人がホルダーに寄ってしまったり、空いているスペースに先に立ってしまうと、このチャンスシーンも作れていない。サッカーでも、ゴール前やスペースに入るタイミングが重要だと聞くが、バスケにおいてもそうかもしれない。特にスペーシングにおいては、味方の邪魔をしないことが重要になる。

ベクトルの根っこへドライブ

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 さてここから、白の4番の独壇場。マーカーである青の6番がどうプレーするのかを観察する。

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 白の4番のマーカーである青の6番に注目。スペーシング三原則に反する「1人で2人を守っている」状態に。もともとのマーカーだった青の9番は追いつかない。このまま、白の4番と対面することに。まさに、正対。

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 青の9番の右足に注目。重心が右足にかかりベクトル、すなわち、重心の矢印が左方向に流れている。これを見逃さなかったのが、白の4番である。すかさずドライブで進撃開始。

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 今回は、重心側の右足を僕は「ベクトルの根っこ」と呼んでいる。呼んでいるだけ。普通に重心でもいいし、矢印の根本でもいい。正対で観察し、相手重心を見抜く柔道でいえば「後の先」。先に動くと負けるやつだ。ギリギリまで正対で見極め、相手ベクトルの根っこに向かってドライブする。そうすると、写真のように、相手が勝手に空けたスペースを使うことができる。

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 さっきの写真とこの写真で、今度は青の13番と正対。瞬間的に、いや感覚的にだろうが、ベクトルの根っこを確認。左足だ。大外で構える白の9番が気になるのだと思う。

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 青の13番のベクトルは完全に右方向に伸びている。これも根っこに向かってドライブ。

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 青の13番は一連のプレーで、右方向に吹き飛んでしまっている。白の4番がボールを持ってドライブを開始してから、抜き去るまでわずか2秒弱。まるで、モーゼの十戒のように、青の守備がドライブコースを空けてくれたようにも見えるが、このわずかな瞬間にもチームとしてのスペーシングと白の4番の正対、ベクトルの見極めと根っこへのドライブが詰まっている。個人的な感覚を言わせてもらえれば、まるでイニエスタのドリブルのようにも見えた。相手DFの重心を突いて逆をとり、スルスルと間をドリブルで抜けていくプレーに見えてきたのだ。

 もちろん、瞬間的な正対プレーも非常にレベルが高いと見えるし、ドライブ技術も恐らく高いのだろう(ここは未経験なのであまりピックアップできない)。サッカーにおけるゾーナル守備、いわゆるゾーンディフェンスの鉄則においても、先に守備者が動かないことがあげられる。ユベントスでの教えでもあるようで、ギリギリまでボールホルダーのプレーを見極めて守備をする。でないと、相手に逆を突かれると、後の守備がどうしても後手後手になったり、守備者が戻るまでの時間を稼ぐ守備になる。バスケの場合は、コートも小さくゴールも近い。大外からの3ポイントシュートもルール上存在する。サッカーだと人数勝ちしてしまうシーンもあるが、だからこそ、メッシやアザールイニエスタのようなドリブルを仕掛ける選手が非常に強力になるのだと思う。(もちろん技術レベルが段違い)

おわりに

 オフボール分析やプレー分析のような感じになりました。というか、動画に対してただ感想を書いているだけなような気もします…。なかなかバスケのすべてを引き出せたとは言えないですが、サッカーにあてはめて観た時に、非常に多くの発見がある動画でした。白の4番。何度でも言いますが、白の4番という響きがかなりエモーショナルに聞こえるぐらいには、白の4番のファンになりました。何度も書きますが、本当にイニエスタを観ているようでした。スペーシングというボールを動かしたり、立ち位置や数的優位性を維持するための「良い」動作だと思っているので、サッカーシーンでも見られると面白いです。こうやって、スポーツの違いではなく、類似性だったり共通点を探す方が、人間存在の探求に繋がる気もするしそうじゃない気もするような気がする。気がするだけ。それでは、またどこかで。