そういえば
「というか。」
「何よ八乙女さん。」
「そんなの、3バックになれば、簡単にかわせるんじゃないの?」
「李七、そんな『パンが無ければケーキ食えばええやろ』みたいなノリに簡単にいく訳ないだろ。」
「…あんたの中のマリー・アントワネットは関西人なの?」
「珍しいわね八乙女さん。あなたがわりとまともなことを言うなんて。1000ギル上げちゃうわ。」
「そんな最後の物語でしか使えない通貨なんていらないわよ!それに、別にあんたのために言ったわけじゃないんだから!」
「うわー、ベッタベタのツンデレ。」
「うっさいわね!!!ツンデレとか言ってジャンル分けしないでほしいわね!!!」
「いやだって完全にそうじゃん。金髪だし。あれ?そういえばお前、いつの間にかポニーテールにしてんじゃん。」
「は?いまさら気づいたわけ?もう最低最低最低!朝からそうだっつーの!それを放課後に気づくなんて最低!」
「まあ、そんなに髪型とかよく見てないというか…」
「ちぇっ何よ…いつだったか、あんたがポニーテール好きだって言うから、やってみただけなのに…」
「なんだよ?マルキーニョスの髪型?」
「違うわよ!!もう知らない!!なんでもないわよ!!」
ダン!(シュミット・ダニエルじゃないよ)
テーブルを叩く拳。
重力4倍(べぇ)だ。
「その金髪幼馴染ツンデレキャラとのイチャラブイベントは、いつ終わるのかしら朗?」
「ひーーーーーー!!!!」
「オワコンドサンピン金髪のポニーテールが好きなんですって?私もしてあげようかしら?」
「大丈夫です!!!大丈夫ですから!!!」
「前も聞いたわよね?どんな髪型が好きかって。どうしてその時言ってくれないのよ…どうして私にだけ言ってくれないのよ…私だけが、私だけが、私だけが、朗の好きな髪型にできるんだから…!私の私の私の私の私の私の王子様…!」
「スーパーヤンデレヒロインになってるから!!!」
「さりげなくディスられてるけど、これは完全に朗が悪いわね。」
攻撃側の対応について
「そうね。八乙女さんの言う通り、サイドバックやセントラルハーフがセンターバックと近いポジションを取って、相手の2トップに対して、3人でビルドアップする対応もあるわ。」
「そうなると…もう一人のセントラルハーフもいるし、2トップだけじゃプレッシャーかけるの難しくなるんじゃ…」
「だから、フォワードは、背中でパスコースを切りながらプレッシャーをかけたりするの。」
「なんか大変そうね。フォワードなんて、ゴールを決めてこその役割だと思うのだけれど。」
「まああながち間違いではないわね八乙女さん。でも、フォワードがパスコースを限定したり、ボールを持っている選手にプレッシャーをかけたりすることで、ディフェンスが助かるのよ。」
「そうよね…私も試合観てて、『どうしてもう一度追いかけないのよ…!』って思うシーンあるし。」
「あとはサイドハーフが加勢して数を合わせることもあるわね。」
「サイドハーフですか?」
「もちろん、相手のビルドアップを破壊するために。前線からのプレスを成立させるためにね。相手と同数でプレッシャーをかけるのよ。」
「そうするとまた、守る側の状況が変わってきそうですね…」
「ええ。もともとサイドハーフが担当していたサイドバックが浮く。彼を誰が見るのか、あるいは、サイドハーフがさっきも言った背中でパスコースを切るのか。前で奪えればそれでOKなのか。これは、チームのスタイルやゲームプランにかかわるところよね。」
「でもそれ、どうせボールが自陣に向かってくるんだったら、センターバックなんて無視すればいいじゃない?ゴール前とかサイドではね返せれば。」
「驚いたわね、あなたの口から核心めいた言葉が出てくるとは八乙女さん。どうしたの?今日は、八乙女ではなくて九乙女なのかしら?」
「人の苗字を調子のバロメーター表示みたいに言うんじゃないわよ宮城野原詩!」
「あら?この前は、三乙女だったわよ。」
「な、なんですって…!!」
「いや、素直に信じるなよ。」
「まあこれも、スタイルやプランにもよるのだけれど、自分たちのストロング、つまりはゴール前だったりサイドの攻防にあえて持ち込ませてもいいわね。それは、センターバックのキャラや自分たちの狙いにもよる。実際、センターバックがボールを持ってもあまりプレスをかけず、ボールが出た先で奪うのを狙うこともあるわね。」
帰路で出会う
「じゃ、あんた達も真っすぐ帰りなさいよ!公園とかプリクラとか下着コーナーでお泊りセット揃えたりしないでよ。模試も近いんだから。」
「さりげなく混ぜた最後のやつは怒ってもいいですよね李七さん。」
帰る金髪。
「さ、私たちも帰りましょう朗。悔しいのだけれど、あの跳ね返り金髪の言うように、模試も近いのだから。」
「えーっと、今日は深夜にチャンピオンズリーグを…いでででででで!」
つねる。
頬。
ーーーグラビティハンド
「大人しくしなさい朗。あなたが大学合格しないと私が困るんだから。」
「ふぁいふぁかりぃましふぁふぁらふぉのふぇふぉふぁふぁふぃふぇふふぁふぁふぁい!」
離してから話して。
「おや?」
現れた。
「これは、随分と珍しいペアですね。朗さん、宮城野原さん。」
「げげ…」
「…」
高身長から、ショートヘアの不敵が現れた。
「?ああ、大丈夫ですよ、決してあなた達を張ってたとか、パパラッチしようとなんてほんの一ミリでも考えたことはないですから。僕も、一応家に帰るって行為を毎日しているわけで。その一環ですよ。」
そりゃそうだ。
「……帰るわよ朗。」
足早に立ち去ろうとする。
止める。
「そんなつれないですね宮城野原さん。僕とあなたの仲じゃないですか。」
「別に、あなたとそこまで仲良くしていた記憶は無いのだけれど。あなたの一方的な愛情なんじゃないかしら。」
「そうですか?まあ、それはそれでもいいですけれど。」
「い、いや……二人とも…」
「僕があなたをよく知っているように、あなたも僕のことをよく知っているはずですよ宮城野原さん。」
「ただ中学が同じだったというだけで、そんなに親近感を持たれても困るのだけれど。まあ、あなたは学校のエースだったから、逆に言えば私なんて眼中になかったはずでしょう。」
刺す。
「ええ、僕は、あなたには興味がない。」
不敵に、嗤う。
「あなたからの期待には応えられないですし。いえ、答えられないというべきか。」
「……詩…」
沈黙の重力。
「違いますね。あなたが僕に興味がないのですね。これは失礼しました。」
「…」
「ではこれで。お邪魔虫は消えることにしましょう。この現象を言語化するのなら『邪魔者抹消理論』ですね。」
いつもの笑えない口上。
ジャマモノハダレ。
「……あなた、それで本当にいいのかしら。」
「それは、僕が決めることじゃないですよ宮城野原さん。」
立ち去る不敵。
「…おい!東照宮!」
「……」
「ちょっと僕、あいつに注意してきますよ。いくらなんでも失礼すぎる。こんな挑発するような…。」
「いいのよ朗。私は、少しも気にしていない。むしろ、久しぶりにあの子と対面して、少し懐かしさも感じたところよ。」
「で、でも…」
「いいの。でもありがとうね。」
「あの口ぶり、東照宮とは中学で一緒だったんですか?」
「ええ、そうね…そう。でも、私は彼女を知らない。」
「知らない?でもああやって喋ってたじゃないですか。」
「違うのよ。正確には、今の彼女がどんな人なのか、私は知らない。きっと、彼女自身も知らない。」
「それってどういう…」
「知りたい?彼女の過去を。」
陽はまだ沈まない。
これは、たったひとりの、
少女の物語。
人物紹介
宮城野原 詩 (みやぎのはら うた)
仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。
サッカーオタクなのは隠している。観る将。
黒髪、肩ぐらいまで伸びた髪は変わらず。
八乙女・ヴィクトリア・李七 (やおとめ・ヴィクトリア・りな)
仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。
サッカーオタク。見る将。
今は金髪ポニーテール。 赤いリボンは変わらず。
東照宮 つかさ (とうしょうぐう つかさ)
仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。2年生
サッカーオタク?観る将?
高身長にショートヘアで一人称が僕。男女問わずの人気がある。不敵な女。
国府多賀城 朗 (こくふたがじょう あきら)
仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。
サッカーオタク。観る将。 サッカーの見方を勉強中。