蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【会心の一撃】Jリーグ 第11節 ベガルタ仙台vsサンフレッチェ広島 (2-1)

はじめに

 さて、いきましょうか!ホーム広島戦のゲーム分析!帰って来た我らのユアスタ劇場。シアターオブドリーム。しかも、見直すほどに狙い通りに強敵広島を最後に追い詰めたのかなと。ということで、今節もいつものように光速ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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  ベガルタは、すっかりおなじみの戦型になった可変4-4-2。前節との変更は、CHに椎橋が帰って来た。満を持してスターティングメンバーに入った。

 さて、広島。城福監督のムービングフットボールというよりは、甲府時代の強化といったところか。正直、あまり見れていないのでめったなことは言えないのだけれど、ハードワークするのはどのメンバー、フォーメーションでも変わらないような気がする。気がするだけ。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く) 

ポジティブトランジション

縦に「速く強く」

 今回は、先にポジティブトランジションから見ていく。なぜなら、この試合のベガルタの狙いは、ポジトラ時の縦に速く強いカウンター(ミドルトランジション)だった。自陣でボールを奪うと目指すはハモンとジャメの2トップ。17分~20分の時間帯、試合の入りに特に目立った。挨拶代わり、というやつだ。これがベガルタの1手目。25分ごろから、だんだんと広島が後方にブロックを作るのが目立ってくる。

5バックの宿命とかつての自分たち

 3バック系の宿命というか、5バック系のチームは、構造的に後方重心になりがちだ。3バックの脇、間をスピードのある選手に出入りされるのは、あまり気分がよくない。というより不安になる。ぞろぞろと前線の選手がスペースを埋めるべく実家に帰省してくる。スペースの管理という意味とは違った文脈でのスペース埋めな気がする。気がするだけ。

図1

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 自陣で強固にブロックを築くことを選んだ広島。先制もされている。大体これで塩漬けされてしまうのだけれど、ここからベガルタ型ポジショナルアタックを披露する。

ボール保持時

5-4-1の城壁とポジショナルアタックの攻防

  ポジトラで押し込んだあと、ベガルタはポジショナルアタックに移行。いつものようにSHがハーフレーンにレーンチェンジ、SBがウィングロール、2トップがWBとCBの間を狙う形だ。ただ、この試合で特徴的だったのが椎橋、松下の2センター。ポジションを離れるリスクを冒して、前線にスプリントするようなシーンはあまり見られず。まるで何かに備えているようだった。もちろん、プレス回避のためにウィングレーンに移動することもあるが、目的はもっと別なとこにあるような。それは後述するネガティブトランジションと関係していると思う。

 加えて広島の5-4-1ブロック。特に2センターがきちんとスライドすることで、2トップへの楔パスを打ち込むパスレーンを消し込んでいた。中央3レーンに多くひとを割いて狭く守る型のため、ベガルタとしてもひとを割く必要があった。定石といえば定石だ。ただし、セオリーとは異なる。攻撃のセオリーは、「広く攻める」だ。ピッチを幅広く使って攻めて、相手の守備の束を広げることが狙いだ。ただし、そこには裏の側面もあって、ボールを奪われると相手にも広い攻撃を許すことになる。しかもこちらの守備の束も広がっている。そこでビエルサはこう言ったそうだ。

君が狭く守るなら私は狭く攻めよう

 この言葉の意味は、まさにトランジションのことを指していると思われる。相手に攻撃でピッチを広く使わせない、狭く守るならこっちだって狭く攻めてやるといった具合だ。ベガルタも、中央3レーンとボールサイドのSBと協働して攻撃している。ちなみに相手のポジティブトランジションの唯一の出口であるD・ヴィエイラも常田とジョンヤが封殺している。攻守表裏一体。攻撃は守備から。守備は攻撃から。いや、ピッチには、「ボールを持つ者」と「ボールを持たない者」しかいない。奮い立つか?ならば、俺からボールを奪って見せろ。 

図2

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図3

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ネガティブトランジション

ベガルタの電撃ゲーゲンプレッシング

 ということで、ベガルタの3本目の剣。ネガトラ時のエリア制圧型ゲーゲンプレスだ。ポジトラで敵陣に押し込み、狭く攻めることでボールとひとを閉じ込め、エリア制圧型ゲーゲンで窒息させる。これがこの試合のベガルタのプランだった気がする。相手がいずれ自陣でブロック作ることは、ある程度予想できていて、おそらくボールを持つ時間が長くなるだろうと。ただし、そこで崩せなくても、敵陣でトランジション勝負に持ち込めば、瞬間的に立ち位置で優位に立てると。58分とか当然かわされる場面もあったのだけれど、①相手を張りつけたこと、②狭いエリアでの勝負を受け入れたこと、③ジョンヤと常田の2CBのカウンター予防でゲームをコントロールした。

図4

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 考察

1試合を通じたゲームプランの遂行

 これまでベガルタは、ある狙いをもってプラン立てて試合に臨んでいたのだけれど、結局自分たちの問題や相手に対応された後の次の手が無かったりで、その狙いを上手く実行できていたか難しくなっていた。実行できていても結果が伴わなかったりして、さらに難しくなっていた。この試合は、シンプルに相手のブロックが低い特徴をついて、よりそれが顕在化するような縦に速く攻めて、ボールを握り、奪い返し続けた。広島も、70分ごろになると守備ポジションの乱れやパワーが無くなってきたのも、ベガルタの連続攻撃の効果だったのかなと思う(だからこそパトリックでパワーダウンを補った)。不用意な失点はあったのだけれど、前後半通じて、狙いをもってゲームを進めたのかなと思う。

連戦と夏場

  どのチームも心配な点なので、ベガルタだけの課題ではないのだけれど、この攻守表裏一体の束をバラバラにする一つの要因としては、選手の疲労になるでしょう。「メンバーが変わっても」が理想なのだけれど、ここがひとつ正念場になりそうだ。まあ、まだまだ、これから。 

おわりに

 何が起きたか分からなかった。気づいたときには、椅子から飛び上がり、何回したか忘れたぐらいガッツポーズした。10分間。10分間だ。たった10分間で、結末が変わる。勝者と敗者も変わる。久しく忘れていた感覚。敗北をはね返す感覚。無色、無臭の世界が一気に輝く感覚。圧倒的で、感動的で、奇跡的超えて幸福な未来。追加タイム4分、同点、不敵な笑み8番、1トラップ左足振りぬく、逆転ゴールな未来。

 信じて、信じて信じつくした先にあった未来。僕たちにだって、何度も諦める機会はあったし、声援をブーイングに変えるタイミングもあったはずだ。それでも信じた。それは彼らなら必ずはね返すと知っているから。「サポーターがサポートするチームを信じなければ、一体、誰が彼らを信じるんだ」言葉にするのは簡単だ。誰にだって、どんな方法でチームと関わるのか選ぶ自由がある。

 でも、僕たちは、それを実行した。ただ、それだけだ。そう、たったそれだけのことだ。そして、逆転した。いろんな世界線、未来があったなかで辿り着いたひとつの未来。だからこそ、この一瞬を精一杯生きるんだ。さあ、逆襲を楽しむ用意はできたかい?

 

 「さあ、諸君、派手にいこう」こう言ったのは、マクシミリアン・テルミドールだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html