蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

Jリーグ 第31節 コンサドーレ札幌vsベガルタ仙台(1-0)「人は自分が考えた通りの人間になっていく」

■はじめに

 さあいくぞ!札幌戦のゲーム分析!長かったJリーグも片手で余裕で数えられる試合しか残っていない。しかも未だに混戦模様で、誰がACLに行けて、来年沖縄にサッカーを見に行くのか分からないから恐ろしい。恐ろしすぎてケツの肉がとれる夢を見てしまう。まあサイコロじゃ勝敗は決まらないので、最後までベガルタのサッカーを追い続けて、そして最後は勝って帰ってきてほしい。今日も小さなサッカー脳で、プレスバックしていきます。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは3-4-2-1。CHに矢島、左WBに中野が入っている。あとはイツメンだ。矢島、椎橋コンビが攻守で舵取りできるか、中野が質的優位性を発揮できるかが注目だ。ただやはり、レーンや立ち位置で優位に立てるかがこのチームのプレー原則なので、そこはメンバーが変わっても表現できているのかは見ていきたい。

 そして、ミシャ札幌も3-4-2-1。まあミシャのチームは説明不要でしょう。攻撃、守備時時にフォーメーションをそのまま維持することは無い。そうミシャ式である。あとは、前線のジェイは困った時の出口役としている。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

 ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析とする。これは、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取って攻撃・守備をする」がプレー原則にあるためである。また、分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用する。

 

■前半

(1)攻撃

 アクチュアルフォーメーションは3-2-5。そこに矢島と椎橋が縦関係になったりするが、基本は前に矢島、後ろの椎橋といったところだ。ビルドアップは久々のダンを交えたビルドアップを見せる。ダンとCBを中心にそこにCHが加わってビルドアップなんて、見慣れた型なのになぜか懐かしい匂いがする。ただ、この試合は少し違っていて、ハーフラインから前線に張っていたWBやらシャドーやらも、ビルドアップに加わるので自陣に6人、7人がビルドアップに関与していた。

 おかげで札幌もビルドアップ妨害隊を同数か、1枚少ない人数を送り込んできた。そこを回避して、素早く前線に、あるいは逆サイドに展開が狙いだったか。それでもパスミスだったり、即時奪回されたりして、狙い通り本当にうまくいったのは41分の1度だけだった気がする。

 そしてベガルタのポジショナルアタックは密集成分が多く、レーンや立ち位置云々ではなかったように思える。唯一、41分の右ウィングレーンでのロンド回避からの左アイソレーション板倉への展開からのポジショナルアタック移行に可能性を感じた。主役は椎橋。そう椎橋だ。

*概念図

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*上記のビルドアップ図から、ここまで前進。ボールは椎橋。ターゲットは前線の石原、アベタクだ。手を広げている。札幌の2センター、横並びだ。門は空いている。楔が撃ち込まれた。連続フリックで矢島のシュート。

 自陣で相手を引き寄せて開いて前進。相手をゴール前に張りつけてのポジショナルアタックはここ数試合でも質の高いものだった。中心は椎橋。そう椎橋だ。

 

(2)ネガティブトランジション

 ベガルタのネガトラはことごとくカウンターにつなげられた。恐らく守備時のポジションが関係している。ライン間、レーン間でボールを受けられ、即時奪回も食らう展開のため、ボールを奪われた時点ですでに不利な状態だったと思われる。攻守の循環が良くないということか。

 

(3)守備

 ベガルタは、相手のビルドアップに対して、4人、ある時には同数プレスでビルドアップ妨害。いわゆる前プレでハメるというやつだ。例えば、13分は3トップ+矢島で4人で妨害、22分には敵陣に8人を送り込み、相手ゴール前で3vs3の状況を作り出す。ミシャ札幌が自陣から繋いでくる特長は誰もが知っていることで、そこではめ込んでしまおうという狙いだったか。

 一方の札幌もそれは分かっていることで、ロングでジェイ、あるいはサイドにボールを回避することでプレス回避からラインを下げさせて、ミドルゾーンでのポゼッション確保といった具合でゲームを進めていった。ベガルタが前プレを外された後、どうするのかはちょっと見えなかった気がする。気がするだけ。

 また、セットディフェンスは、人への意識が強いゾーン。というより、ゾーン成分は薄めだった。アクチュアルは5-2-3。そこから、相手CH、シャドーの位置に応じて、CHとハーフディフェンダーが一列上がって、5-1-4、4-2-4のような形で対応した。ただ、この守備方法だと無条件で背中のスペースを順繰りに空けることになるので、最後はキーパーとの1vs1状態を作り出しかねない。理想は中央の強度を上げて、サイドにプレーエリアを限定させるやり方か。この試合、3トップ間をバシバシ楔パスを通されていたのを見ているとなおさら思う。

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*5-2-3ブロックから、5-1-4、4-2-4へと変形していく瞬間。というより、なんで石原と野津田は棒立ちなんだ。あっさりとその間を通されて、平岡の迎撃、矢島の囲い込み発動。ただ、反動で、バイタルと裏のスペースを空けることに。こうなるなら、前線でしっかり封鎖した方がリスクが少ない気がする。多分。

 

(4)ポジティブトランジション

 基本はショートトランジション、いわゆる速いカウンターだ。ただ、札幌の即時奪回に苦しみ、石原のビックリシュートポストくらいしかチャンスは無かった。

 

■後半

(1)攻撃

 何となくだが、ベガルタは1タッチ、2タッチ多めで速い展開だったと思う。しかも、ランニングしながらのパス交換だったので、見ている分にはテンポがいいように思えたが奪われるとその速さ分のカウンターを受けることになる。攻撃は水だ。水はコップに入ればコップの形になるし、ポットに入れればポットの形になる。勢いよく流せば、勢いよく跳ね返ってくる。それを許容できないと、コントロールできないと話は難しくなる。今日のベガルタは攻撃が全てを難しくしていた。そしてその難易度を設定できる実力を持っているはずだ。多分。

 それでも65分のポジショナルアタックは、野津田と椎橋がカウンター予防ポジションを取っていて、攻守表裏一体だった。2本の縦パスを出しながらカウンターを許さなかったのがその証拠だと思う。

*概念図

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(2)ネガティブトランジション

 攻撃速度が速いので、ネガトラも速くしなければいけないのだけれど、乗ってこない。カウンターを何度も受けて、3バックor4バックor5バック+1CHの状態でカウンターを受けるシーンが多かった。

 

(3)守備

 人に意識が強いためか、シャドーがサイド気味に構えるとついていき、肝心のバイタルの門を開けるケースがあった。最後は5バックが迎撃すればの守備なのだとは思うのだけれど、リスクが高くはないかと思う。

 65分、CH裏をチャナティップにとられシュートシーンを作られている。

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*結局のところ、守備において、どこは譲れなくて、どこで回収するのかを整理することが大事だと思う。人につくのは良いとしても、どうしてバイタルが空くのは考えなければいけない。平岡が中途半端な位置にいるのは、裏抜けも対応できるポジションにいるから。であるならやはり、中は締めたいし、ボールホルダーにはもっとプレッシャーをかけたい。まあ相手はミシャ式なのでというのも関係してそうな気がする。

 

■考察

(1)ポジショナルアタックは死なない。

 蘇らせたのは椎橋。密集成分多めの攻撃のなかで、立ち位置だけで、ボールポゼッションを上げたのは見事としか言いようがない。あとは周りの「大人たち」がフォローする、オフボールのランニングをする、アイソレーションするなど、合わせることができるかがキーになる。大丈夫。富田がいる。奥埜がいる。まだ死んでいない。

 

(2)どこからでもどうぞ守備

 様々チャレンジしているなかでの5-2-3ブロック。今回強度不足で、間は通されるは、トランジションは安定しないわでてんやわんやだった。ここは突き詰めてほしい。残り試合で詰めるところまで詰めてほしい。相手とか、自分がではなくて、未来の自分たちに必要なことだとして突き詰めてほしい。そう僕たちは、ルヴァン杯決勝で学んだはずだ。

 

(3)境遇が何だっていうんだ。チャンスは自らが作り出す。

 当然、負けてしまったわけだし、残留できるかどうかも気になる状況だ。まだまだ予断は許さない状況だが、だからと言ってリスクを過大評価して消極姿勢にならず、困った時こそイノベーションの姿勢でナベさんならびに選手には邁進してほしい。

 

■おわりに

 果たして僕たちは開幕戦の柏戦から思い描いていた自分になれているのだろうか。大きく逸れていないだろうか。そもそも達成できるようなものだったのだろうか。でも、僕たちの現在地はここで、今日も負けてしまって、ボトムハーフになって、トップ5が狙える位置にいる。思い描いていたものを捨ててでも、トップ5入れたら、残留できたら良いのだろうか。答えはイエスだ。理想のサッカーをして降格、それはノーだ。なぜなら、負けるのは死ぬほど悔しいからだ。ならば、美しく勝利することは可能だろうか。イエスともノーとも言えない。解と結果との狭間で我らが渡邉ベガルタはもがき続けている。僕たちサポーターももがいている。フロンターレベルマーレも、そしてマリノスがこれから歩いていく道を僕たちは歩いている。ヴィッセルだって、これから歩いていくことになるだろう。結果が過程を正当化する。そう思う。ただ今は、目指している解が必ず、目に見える結果となって現れると信じていこうと思う。

 

 「なりたいように、なれるさ」こう言ったのは、ブルース・リーだ。

 

■参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html