蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

Jリーグ 第32節 サンフレッチェ広島vsベガルタ仙台(0-1)「Be happy, but never satisfied.」

■はじめに

 さあさあ!行きましょう広島戦のゲーム分析!勝った勝ちたかったんだ!敗北はひとを強くするが、勝利はひとを美しくする。今僕が考えました。勝った時、君は美しい。そんな冗談はさておいて、2位広島の撃破して盟友フロンターレの優勝に花を添える形になった今節。同時に残留も決定し、J1在籍10年選手になった。41歳のおじさんが51歳になるのだから時の流れの速さを感じる。僕の実年齢ではないのだけれど、今回も、ゲーゲンプレスで振り返っていきます。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、レンタルの都合野津田が欠場。フォーメーションも前輪駆動型3-1-4-2で臨んでいる。4-4-2殺しといこうか。トップにハモンが初先発。左WBに永戸、インテリオールに中野。永戸から2トップへクリーンなボールを送ることができれば勝利は近い。あとはアンカー椎橋。そう椎橋だ。あと、盟友の優勝に手を貸せる状況だ。

 一方の城福広島。4-4-2の堅固な守備からコレクティブなカウンターを繰り出し、優勝街道をひたむきに走っていたがいつのまにやらブーイングの嵐。勝ちに入るのか、育てに入るのか、いつの時代もどのチームも難しいものだ。ちなみにこの試合でフロンターレの優勝が決まった。ああ、城福や。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

 ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析とする。これは、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取って攻撃・守備をする」がプレー原則にあるためである。また、分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用する。

 

■前半

(1)攻撃:ポジショナルアタック / ビルドアップ:ポゼッションによるビルドアップ

 ベガルタのビルドアップは、3バック+アンカーによる菱形ビルドアップ。または、GKダンを含めた擬似4バック+アンカーによるトリプルトライアングルによる幾何学模様ビルドアップだ。広島は2トップ+SHによる3トップ前プレで3バックに対して同数プレスによるビルドアップ妨害を図って来た。ただ、4-4-2が3-1-4-2への対抗型になるのは難しいのではないか。4-3-3に可変したとしてもアンカーとGKは誰が見るんだ。アンカーにマークはつけたいが、それなら、4-4-2系列(4-4-1-1、4-2-3-1)でアンカー番をつけるのが定石だ。でもそうすると、3バックへの同数プレスがかけられない。

 しまった3-4-2-1じゃない。どうする広島。城福。時間だけが過ぎる。夜更け過ぎを待つ。

*概念図 (構造上フリーな選手をジョーカーとここでは呼んでます。ここだけ。)

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 序盤30分間はわりと同数できたが、28分のビルドアップあたりを境に、広島が自陣でラインを高くした4-4-2ブロックを形成し始める。おそらくは、ビルドアップだけの問題ではない。「ベガルタのWBは誰が見るんだ問題」があったからだと思う。思うだけ。おかげで、ベガルタはポゼッション型のポジショナルアタック時には、ファイナルサードまでボールを運べるシーンがあった。

*概念図

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 ただ、ベガルタのポジショナルアタックは、後方から2トップにあてるやり方大半を占めていた。ナベさんの狙いは、これで得点できたらラッキー。この一次攻撃で広島のラインを下げさせて、奥埜・中野の縦へのランニングと合わせてライン間を空ける。それを塞ぐために広島がハーフラインを下げるのであれば、3バックと椎橋がプレス地獄から解放され、ポゼッションが安定する。現に、30分以降はわりと安定してボールを持つことができた。特に41分のポジショナルアタックは、「ベガルタのWBは誰が見るんだ問題」とセットで良い位置に立って攻撃ができたと思う。

 ロングでラインを下げさせて、ポゼッション確保。かなりオーソドックスなやり方でのポゼッションを目指していた気がする。気がするだけ。

*概念図

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(2)ネガティブトランジション:リトリート

  ベガルタはいつも通り、奪われたらボール付近の選手が「とりあえずゲーゲン」。というより、リトリートの時間を稼いでいる間の「束の間ゲーゲン」だ。

 広島が速いタイミングで2トップ当てるので、青山の殺傷能力の高いパスと合わさると3バック脇を攻撃されるケースが多かった。でも、残念、そこは、ダン。 

 

(3)守備  プレッシング:攻撃的 / 組織的守備:ゾーンの中のマンツー

 ベガルタの守備は、攻撃的プレッシングとゾーンのなかのマンツーを組み合わせた5-3-2ブロックだ。4-4-2ビルドアップとすこぶる相性がいい。守備の基準点がはっきりする噛み合わせだった。広島のビルドアップが2-2ボックス型だったのに対して、2トップ+2CHでマーク。SBへ逃げたらWBが迎撃。そしてまたCBへ。今度は反対のSBに。そしてまたCBへ。ようこそ無間地獄へ。

 あとは、23分、セントラルレーンから右ウィングレーンまでの、右サイドに8人、9人をオーバーロードさせる守備も見せた。ボールに向かって選手が集団で向かっていく「イワシの群れディフェンス」だ。毎日これをやってくれないか。

ベガルタのビルドアップ妨害

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*概念図

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イワシの群れディフェンス」

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(4)ポジティブトランジション  ショート:石原、ハモン / ミドル:縦に早い

 ボールを奪ったらサイドのハモン、石原につける。そこらじわじわ前に進んでいく。あとはクイックにクロスを上げてしまうシーンが多かった。 

 

■後半

(1)攻撃:ポジショナルアタック / ビルドアップ:ポゼッションによるビルドアップ

 後半は広島のビルドアップ妨害が明確に4-4-2に。こうなると、ベガルタの菱形ビルドアップが炸裂する。後方で作った優位性、時間(スペース)、サポーターの思い、その他諸々を前線へと、ゴールへと運んでいく。前線と後方とをつなぐ蝶番。ヒンジ。椎橋。そう椎橋だ。ダンも意地でもつなぐ姿勢を見せて、援護射撃する。後方2人のジョーカーが持つ優位性を活かして、ビルドアップしていた気がする。気がするだけ。

 一方の城福広島。どうする。1人で2人を見る守備をしないとどう考えても見切れない。ティーラシンが椎橋へのコースを切りながらプレスをかけていた気がするが、それだけで解決できる問題でもない。でも4-4-2のまま。ハードワーク。これしかない。

*概念図

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 ポジショナルアタックについて、ゴールシーンは見事だったというしかない。スローインを受けた椎橋が4人を引き寄せて石原に開き、WBの中野に開き、石原をスキップしてハモンの落としに石原だ。ただ、ほかのポジショナルアタックについては、良いか悪いか判断できなかった。危険にボックスへ侵入できなかったからか。ちょっと分からなかった。

 例えば70分の中野のドリブルへの合わせ。椎橋が回り込み、矢島が近づいたのだけれど、肝心の離れる・バックドアがない。しかも矢島は近づいているとはいっても、中野がドリブルする方向に近づいている。スペーシングの原則の一つ、味方を邪魔しないに反するプレーだ。でも、世の中的に良いスペーシングができているチームはほとんどいない。できることを、そしてこれからできることをやっていこう。結果、良い動きが出来ていればなお良いではないか。

 

(2)ネガティブトランジション:リトリート

 51分のパトリックのカウンターアタック。永戸が軽率にスローインを取ろうとして相手に当てたがラインを割らず。技術的なミスと言えばミスなのだけれど、WBがリトリートするにはどこかで時間を稼ぐ必要がある。それが、ネガトラ時の束の間ゲーゲンなのだけれど、WBの後ろには誰もいない。そこで即時奪回するしかないが、人がいない。ボールの奪われ方に気を使いたい。表裏一体。

 

■考察

(1)優位性を巡る

 椎橋を中心にビルドアップ隊が作った貯金をきっちり前線に運べていたと思う。ただ、ゲームプランもあって、ロングキック、クイッククロスが多めの展開ではあった。そのなかでも、ミドルサードファイナルサードでもボールを持つ時間を多く確保できたのは、プレスラインを下げさせたこととビルドアップ貯金のおかげかなと思う。やっぱり、丹念に、丁寧に仕上げていくことが今のベガルタには必要なのだと感じる。

 

(2)動きの質・動作の質

 中野、永戸のレーンチェンジや奥埜のチャンネルラン、平岡の3オンラインからのサイとかとかとか、記号は良いのだけれど、どうも組み合わさっていない気がする。もっと何度も動く、動きなおす、受け直すをすれば自然と良い立ち位置が取れるようになってくるはず。そうすれば、ボールホルダーは正対する、ポーズ(小休止)するが可能になる。もっとボールを持つ時間を捻出できる。考える時間が増える。まだやれる。

 

(3)あと2つ

 泣いても笑っても残りリーグ戦は2試合。天皇杯含めればまだ試合もあるが、長い闘いの行く末をやはり良い形で終えたい。

 

■おわりに

 贅沢を言う機会が増えた。アグエロが欲しいとかスペーシングしてほしいとか、ロマンスがありあまって贅沢に怯えている。2、3年前ならあり得ない。5レーン。良い立ち位置。そして、躍動する選手たちと目が養われたそのサポーターたち。胎動するポジショナルプレー。西村無きあとのチームがついに動き出す。死に物狂いで生き急いでんだ。結果と成果があるこの世界において、その両方をひねり出すことは容易なことではない。少なくとも結果という意味ではここ何年もボトムハーフ。結果は出ていない。ならば成果はどうか。成果をどう規定するかにもよる。何を評価するかにもよる。ポゼッション率?パススピード?ポジショニング?スプリント回数?違う。生き急いでいる。なんてことをきちんと考えられる自分がいる。しかもベガルタを舞台に。ベガルタを通してサッカーを考えることができる。これだって立派な成果だ。だから何。その問についてはまだ答えられない。考えない人生より考える人生の方がずっと素敵でしょ的なことをオシムか誰かが言っていた気がする。気がするだけ。曖昧なことを思いついたんで、ちょっと無理してお洒落に文字に起こしてみた。

 

 「失敗を恐れるな。失敗することではなく、目標を低く掲げることが罪なのだ。大きな挑戦なら、失敗さえも栄光となる」こう言ったのは、ブルース・リーだ。

 

■参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html