蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

Jリーグ 第25節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス(2-1)「そうだここが出発点、ここが滑走路。」

■はじめに

 ではいきましょうか清水戦のゲーム分析!試合前に色んなことが起きて、気合入りまくりの我らベガルタ。正月とクリスマスと卒業式がいっしょくたに来た気分だ。少し違うか。さてブログを始めて1か月が経過したが、分析、文章能力のインテンシティは一向に改善されない。レッドブルでも飲もうか。毎回のごとく鬼の形相でゲーゲンプレスをかけてますがとりあえず質より量で。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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  ベガルタは、4-4-2に対して、久々の3-4-2-1。野津田が帰ってきたことが影響するのか、立ち位置サッカーが一番出る形で挑むことに。これがほぼベストメンバーかもしれない。

 対する清水は、ヨンソン式4-4-2。中2日、アウェイ戦とこれ以上にない罰ゲームを受けている。なぜこんなディレクションになった。トップに長谷川が入り、おそらくリトリート狙い。0-0の時間を長くして、隙を見て質で殴る狙いと思われる。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

 ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析とする。これは、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取って攻撃・守備をする」がプレー原則にあるためである。また、分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用する。

 また、スペーシング理論における「渦の理論」を援用し、攻撃時のプレー分析としている。

■前半

(1)攻撃 -血の巡るベガルタ式ポジショナルアタック-

 ベガルタのビルドアップ、ポジショナルな攻撃に焦点をあてると、前者はダン、後者は野津田が中心になって構築されていた。対する清水は、4-4-2ブロック。実際的には、4-4+2のブロックだった。4-4間は、厳しく圧縮し、奪ったら2トップへがプランだったのだと思う。逆に2トップ前後のスペースは空いており、ベガルタのCB、CHは、ボールを持つことができた。また、4-4間でも野津田、アベタクを中心にライン間攻撃を繰り返していた。

 5分、早速、ダンのゴールキックからアベタクのシュートに繋がる。

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 *ダンからのゴールキック、平岡がボールを受ける。ベガルタは3バック+2センターでビルドアップ。対する清水は、4-4-2リトリートを選択。

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 *平岡から右ウィングレーンの蜂須賀へ。ベガルタは、ライン間に石原、野津田が立つ。

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*ここで清水にボールを奪われてしまうが、ベガルタは即時奪回する。平岡、富田、奥埜がハーフスペース、セントラルレーンに立ち、ネガトラに備える。ネガトラ時の立ち位置は、攻撃時の立ち位置が良いので、非常に安定していた。デュエルマスターの力を十二分に引き出す舞台になっていたと思うし、富田の攻守を繋ぐポジションを取れていた。

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*見事回収に成功。清水の2トップ裏にスペースがあったことも関係するが、ポジショニングで奪回した。富田は、そのまま清水の右SHがポジショニングをサボったのを見逃さないアベタクにボールをつける。

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*セントラルレーンで受けるアベタク。清水の守備は、4-4がペナ幅で守るが、ベガルタがそれを囲むように立ち位置を取っている。最後はアベタクのシュートで終わる。開始5分で早速、ゴールキックからシュートまで繋げている。 

 8分、ベガルタの3バックビルドアップに対して、清水は4-4ブロック+2トップで防壁を築いた。実質4-4-2-0か。これでベガルタの攻撃に対する清水の守備の回答がはっきりした。

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 今度は13分、ダンのゴールキックから椎橋、大岩、奥埜でスクエアビルドアップ。右ウィングレーンに平岡がレーンチェンジするいつもの形だが、2トップ相手にはそこまで必要ないようだった。 

 19分、野津田のポジショナルアタック。野津田は右に左にとピッチ各所に顔出していた。

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*野津田プレー集攻撃編。初手、アベタクが4-4-2の痛点、2の脇でボールを受ける。野津田は中央のボックス4に、関口は左ウィングレーン、石原は4バックをピン留めだ。

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*関口にボールをつけるアベタク、中央に目をやる。スペースの確認、あるいは野津田とのアイコンタクトか。清水のチャンネルは空いている。アベタクなら走りこむ、間違いない。ボックス4の中心に立つ野津田は、誰にも捕まえられていない。

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*走り出すアベタク。追従するCH白崎。SH金子が必死にカバーするよう指示しているが、SB飯田は守るべき対象がいない。動き出す野津田。交差するベクトル。目指すはアベタクが立っていた場所だ。

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*アベタクについてたCH白崎、マークを止め、アベタクから離れる判断。野津田を警戒してか。代わりにファンソッコがチャンネルを埋めるが、CB間の距離が空いた。相変わらず野津田は、誰が捕まえるんだ。その間に椎橋、奥埜が前進し、スクエア形成。

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*ボールは椎橋へ。野津田にマークはついたものの、ボールを奪われない。アベタクがCB間のスペースを見つけた。ランニング準備。清水は、守備が大混乱。ボールサイドに4枚が集まっているがボールホルダーがフリーになるという緊急事態だ。しかもゴール前はCB1枚とSB1枚だ。長谷川もヘルプに来たが明らかに人数が足りない。

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*あっちこっちそっちってどっちしてるうちに、今度はアベタクが降りてきてローテ。CH白崎、CBファンソッコを無力化した。

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*前を向くアベタク。ライン間の廊下を走りだす野津田。最後はシュートにつながらなかったが、左サイドのアベタク、関口、椎橋、奥埜にプラスして野津田が入ることで清水の守備の約束の束をバラバラにした。野津田が立つことで、ボールが回り、味方は良い立ち位置を取ることができた(奥埜はカウンター予防のポジションを取れている)。

 27分、失点後は清水も前プレでビルドアップ妨害を図ってきた。そこは椎橋、ダン、大岩の立ち位置で回避。同時間帯で、野津田のコーナーから大岩のゴールで先制。

 36分、清水の前プレが激しくなるなか、息を吐くように椎橋、ダン、大岩、平岡で擬似4バックビルドアップで対応。最終的には、関口までボールを逃がすことに成功している。

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*失点後同数プレスに変更してきた清水。このシーン2トップ+左SHデュークの3枚でビルドアップを妨害している。ベガルタ陣にはフィールドプレーヤー5人に対して、6枚を送り込んでいるため、+1プレスになっている。でも、残念そこはクォーターバックのダンがいる。おおよそGKには見えないキックモーションで椎橋へボールを展開。

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*椎橋からのリターンを受けたダン。これでドウグラスの体の向きをいじった。長谷川はカバーのポジションを取ろうとしない。おかげで2トップの門が空いている。門の先で待つ富田に綺麗なキックモーションでボールをつける。

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*さあ今度は富田。清水の前プレ隊の裏に降りてきた石原に楔パスを打ち込む。これで、前プレ隊の5人を無力化した。パス2本で1stライン、2ndラインを突破した見事なビルドアップだった。

 

(2)ネガティブトランジション -攻守一体へ-

 ベガルタのネガティブトランジションは、帰って来た即時奪回。攻撃時に良い立ち位置を取っているおかげで、ネガトラも安定していた。 ここはほぼ、攻撃と守備と一体化していた。

 

(3)守備 -ボールが無くても立ち位置を整える野津田-

 ベガルタの守備陣形は、5-2-3のような形。ような形というのは、野津田の守備時の取り扱いだ。実際的には、5-2-2+1で+1が野津田のように見えた。ケガ明け最初の試合で、コンディションも考慮してだと予想される。基本タスクはコース限定で、自陣まで戻って守備せず前残り役になっていた。当然、清水の攻撃時間が長くなれば、自陣に戻ってはいたが、守備というよりポジトラのスイッチ役として戻っていたように思える。

 ベガルタは、SBに誘導し、WBとシャドー、CHが連携してボールを奪うエリアを設定していた。対する清水は、FWのサイド流れでCBを釣りだし、そこの突破を図っていた。

 13分、清水の攻撃の形が見える。このシーンから二次攻撃まで繋げている。

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ベガルタの守備時の狙いであるSBにボールを持たせる。ただ、SH金子がハーフスペースでボールを受けるために降りる動き。2センター脇を狙われた。

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*少しシーンが飛んでしまったが、金子に釣りだされた椎橋、関口の裏をFWに突かれた。大岩が対応。平岡、蜂須賀がスライドするが、中央は逆SHデュークが入ってきて2対2の危険な状態に。この攻撃で清水の攻撃に深さが出た。ベガルタはスペース埋めに2センター、WBが入るため、バイタル付近でセカンドボールを取られ続けた。そこからツインタワーに放り込んで殴り続けるというのがヨンソンのゲームプランだったのだと思う。疲労を考慮したうえで、最も効率的で攻撃能力が発揮できるプランで挑んできたということだ。

 40分、野津田のコース限定からボールをSBに持たせるよう誘導している。

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*野津田のプレー集守備編。清水が右サイドでつまり、左に展開するシーン。野津田は、中央のボランチを警戒しつつCBに対してパスコースを切りながらプレッシャーをかける。カバーシャドウだ。

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* CBのトラップが内側になるや軽いステップでプレッシャーコースを変更。サイドに展開されることはないと一瞬で判断。石原もコース限定されているため、ファンソッコに狙いを定めてランニング開始。富田もボランチをマークしにやってきた。

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*サイドは完全に切った。ベガルタもパスカット準備で選手につく。こうなるとSBに戻すか前線へのロングボールしかない。結果はロングボールだったが、野津田が清水のボール回し、ポジショニングを咎めたシーンだ。野津田のカバーシャドウでコースと時間を限定させ、味方が守備の正しい位置につくまでの時間を稼いだ。何もポジショナルプレーは、攻撃に限った話ではない。ベガルタのプレー原則に最も即した選手だと思う。

 

(4)ポジティブトランジション

 ベガルタのポジティブトランジションは、ポゼッション確保でもありカウンターでもあったと思える。関係しているのは、やはり野津田。ケースごとにポゼッションを確保するためにボールを意図的に下げたり、オープンスペースに蹴るシーンがあった。清水のリトリート策もあったので、どちらかといえばポゼッション確保寄りだったか。

 

■後半

(1)攻撃

 ベガルタは、失点後から70分ごろまで、清水の猛プレスを受け続けた。回避手段として、ロングボールもあったが、試合経過とともにコンディションが上がって来た野津田がいたためか、良い立ち位置を取り続けた。特に、左サイドのWBにつけてペナルティエリア角から攻めるシーンが多かった。時々、右から蜂須賀、平岡コンビがクロスの機会を伺う。左利きの野津田が影響したのか、それとも、清水が左の大外を見失うケースが多く、左に引き付けておいて視野をリセットして右からのクロスで仕留める狙いだったのか。これは監督、選手に聞いてみないと分からない。ここでは、「狙ってやった」ことを前提に分析している。

  清水は、ベガルタのビルドアップに対して、前半開始~失点、失点~70分ごろ、終了間際で選手の位置を変えている。具体的には、4-4-2-0から4-3-3、最後は5-4-1で実際的には攻撃を防いできた。過密日程、アウェイ、勝ち点1は黄金の価値がある。 

 73分、椎橋のドライブから最後に野津田のシュートにつながる。

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*ようやく解放された左ハーフスペースを椎橋が駆け上がる。ドライブだ。清水は大人しくなって、ブロックもローブロックになっている。連戦で疲れもある。我らだってそうなることがこの連戦で見られた。

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*椎橋から関口に。清水は、SHとSBで挟み込む。空いたチャンネルは、CHが埋める。アベタクが後半早々に交代した理由のひとつに、この埋める動きが関係していると思う。思うだけ。

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*関口がクロス。清水にはね返されるが、セカンド回収地点にはデュエルマスター奥埜。奥埜は、野津田にボックス内に位置取りしてもらっているおかげで、ファイナルサードではハーフスペース付近の場所にポジショニングできている。長かった。ようやく奥埜がいるべき場所にいる。奥埜はここに居ていいんだ!

 しかも野津田もフリー。奥埜は野津田に預けて、最後は野津田がシュートして終わっている。野津田と奥埜。組織の中の個。我々にとって欠かせないピースに成長した。

 81分、怒涛のポジショナルアタック。

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*左ハーフスペースでボールを持つ椎橋。清水は4-4-1-1ディフェンスだ。73分のシーンよりブロックラインが高い。奥埜を中心に椎橋、奥埜、中野、ジャメのセット、椎橋、大岩、富田、奥埜のセットでダブルスクエア形成。美しいポジショニングだ。

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*椎橋は中野へのパスを選択。動き出すジャメ。空いたスペースを狙う石原。そして、CBとSBのギャップを狙う帰って来た野津田。中野の選択は。

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*ジャメが空けたスペースに入って来た石原への斜めのパス。食いついたCBの裏にいる野津田にフリックするが、ボールが体とは逆方向へ。惜しい。

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*ならばと二次攻撃開始。野津田が中央の富田にボールを預けると、富田は、迷わず石原に楔パスを打ち込む。この時の清水、ペナ幅で守るが右CHと右SHの戻りが遅い。

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*楔を受けた石原は、ボールをキープ。さらに攻撃をやり直す。

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*サイドで2対2の同数を作る清水。ボックス内、ジャメ1人に対して、3枚のディフェンスにバイタルは逆サイドSHとCHが埋めている。万全だ。でも左でアイソレーションの中野が気になる。いや、気になるだけだ。

 あと細かいが右ウィングレーンでドリブルの角度が変わったタイミングでジャメには裏抜けを狙ってほしい。ヘディングで勝つ狙いなら話は別だけれど。 

 94分、ついに石原のゴールが決まり逆転する。ポジショナルアタック、ここに完結する。

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*左ウィングレーンで中野がボールを持っていたが塞がれ、椎橋、大岩へ。このシーン、渦の理論を用いて分析とする。

 渦の理論とは、ボールホルダーがドリブルした際、オフボールの選手がどのように動くのかを具体化した理論だ。渦の理論の包括概念として、スペーシング理論があるが、これは要するに「ボールを持っていない選手の動き」として概念的に捉えてもらって構わない。もともとはバスケの理論を援用している。

*概念図

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 この中の「裏を取る」プレーをバックドアと呼ぶ。このバックドアをボールホルダーがドリブルをした瞬間、あるいは、ドリブルしながら角度を変えた瞬間に合わせることを「ドリブルアット」と呼ぶ。この蜂須賀-中野-石原の逆転ゴールは、このドリブルアットでのゴールだった。 

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*ボールホルダーは、大岩。椎橋がフォロー(近寄る)、平岡がプルアウェイ(離れる)。蜂須賀は、元から高い位置にいるが、一応位置取りを高くしている。選手が判別できないが、バイタルで楔パスを待つ選手がいる。

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*大岩から平岡へ。大岩は足を止めることなく、平岡へフォロー(近寄る)、椎橋は大岩に近寄る近寄る。蜂須賀が高い位置。富田が空いたバイタルに降りて楔パス待機。見切れているが、左の画面端、中野がバックドア待機。

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*蜂須賀につける平岡、追い越していく。ボールホルダーが蜂須賀に変わった。ボックス内は4対5、クロスでもかなり厳しい。いや、5対5だ。大外、左ハーフスペースに中野だ。

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*蜂須賀がドリブルを開始する。でも縦ではない。蜂須賀が得意とするアングルを変える、進行方向、角度を変えるドリブルだ。蜂須賀に見えるのは、あのレーン。中野がいる左ハーフスペース。中野も見えた、蜂須賀が角度を変えたのを。右足に重心を乗せる。

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*ちなみにボールウォッチャーになる条件として、①ドリブルでつっかける、②キックする瞬間がある。今、蜂須賀は、そのどちらも満たしている。清水の選手の注目を一気に引き付けた。中野、中野は。中野は左画面端見切れている。でもかすかに残る右足は、地面から離れている。間違いない、バックドアだ。ドリブルアットの完成だ。

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*ボールは中野へ。慌ててマークにつくSH。今度は中野に注目があるまる。間髪入れずに中央に折り返す中野。石原がアディショナルタイムにダイビングヘッドで逆転ゴールを挙げた。

 かなりエモーショナルなゴールになったが後半から左を攻撃しつづけ、右からのアングルに慣れさせなかったところに、WBからWBへ攻撃。渦の理論におけるドリブルアットも含めて、非常にロジカルなゴールだったとも言える。

 

(2)ネガティブトランジション

 ネガティブトランジションの分析は、攻撃時に奥埜が良い立ち位置にいて、そのままネガトラで優位なポジションになっているので、攻撃とセットとし割愛。

 

■考察

(1)立ち位置サッカー、ここに極まる

 野津田が帰って来たことで、立ち位置サッカーの血の巡りが良くなった。ボールを持っていても、いなくても、味方の位置を調整できる、相手の位置を動かせることで、野津田がベガルタが帰ってきた。

(2)ペースを渡してしまう

 せっかくの立ち位置サッカーだったが、失点後は、清水のプレスに苦しんだ。もちろん、ボールを走らせて回避できれば一番いいが、それを極めるのと並行して、ロングボールの使用やビルドアップを工夫して回避手段としてた。日程的に厳しかった清水に攻撃的なプレッシングでペースを渡してしまうのは課題なのだと思う。

(3)どこまで進化できるのか

 役者はそろった。あとはどこまでこのサッカーを突き詰めらるのか。また、川崎から学んだのは、突き詰めたうえで、勝つための引き出しをより多く持つことだったはずだ。そうなると、優勝争い、トップ5はまだまだ遠い気もする。でも、だからこそ、どこまで進化できるか楽しみであるし、もっともっと上のサッカーができるはずだ。今、そう、思い込んでおこう。

 

■移籍する西村へ -おわりにかえて-

 日本のエース。CL出場クラブ、ロシアの強豪への移籍。今季11得点を上げる活躍。湘南戦でのファンタスティックなゴール。ルヴァン杯での躍進とニューヒーロー賞。とにかく外す。ゴールシーンが決定機に変わるFW。富山第一の高校生。それが、西村拓真というストライカーだった。

 何を言われてもどこ吹く風な感じは、本田圭佑というより久保裕也を思い起こさせた。20歳でスイスに渡った久保。21歳の西村。ボールを持った瞬間、ゴールを奪うことに夢中になる眼は、メッシやクリロナが持つ眼と同じだ。そう、ただのサッカー小僧なんだ。ちょっと他人よりゴールを奪うのが上手いだけの、ただのサッカー小僧だ。いつまでも小僧でいてくれ。それがサッカー選手として上手くなる秘訣かもしれない。多分。

 まあ僕たちにとっては、西村がいくつになっても小僧だ。あの子どもっぽさが残る表情でゴールシーンを決定機にしてしまい、数多くの信じられないゴールを残すんだ。今もそしてこれからも。

 

■参考文献

 「モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー」

footballistaRenato Baldi,片野道郎著(2018)

www.footballista.jp

 「怒鳴るだけのざんねんなコーチにならないためのオランダ式サッカー分析」

footballista, 白井裕之(2017)

www.footballista.jp

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2

footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html

 「バルサのセットディフェンスに見るシャビのPG化」

footballhack(2010)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2010/12/pg.html

 「サッカー版『渦の理論』」

footballhack(2018)

footballhack.jp

 「ドライブに対する合わせ~『渦の理論』~」

NBAで凄いのはダンクだけ!?(2016)

nbanotdankudake.com

 「サッカー戦術分析 鳥の眼 カバーシャドウ?レイオフ?あまり知られていない戦術用語紹介」 とんとん(2018)

birdseyefc.com

 「Counter- or Gegenpressing」 Rene Maric(2014)

spielverlagerung.com