せんだいしろーによるサッカー分析ブログ

戦術を通してサッカーを考える。分析は我らがベガルタ仙台中心。知恵の墓場。

Jリーグ 第28節 横浜F・マリノスvsベガルタ仙台(5-2)「ここいらで一つ踊ってみようぜ。夜が明けるまで転がってこうぜ」

■はじめに

 さ、いきましょうか横浜戦のゲーム分析。完敗だったな、言葉は不要か。こういう日はさっと振り返って、ビールでも飲んでマインドチェンジするに限ります。早速、欧州最速のカウンターで分析していきます。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、野津田復帰以来の3-4-2-1を継続。ここまでくると、相手がどんなチームだろうが必殺フォーメーションで仕留めるつもりなのか、電話番号として扱っているのか確認したくなる。3バック、3センター、2トップは、もうやらないのか。それとも、相手の立ち位置でこちらの位置を変えるまでの椅子にすぎないのか。狙いは、天皇杯で機能したショートトランジションによるカウンター攻撃だ。

 一方、横浜はポステコ式ポジショナルアタック隊を送り込んできた。トップの和製アンリ伊藤がケガで離脱しウーゴがスタメンに。スーパーサブがスタメンになった形だが、やることはあまり変わらなそう。ウィングのいない偽SBなぞ怖くないと思っていたが、ホームで2-8でボコボコにされるわ、仲川、遠藤は強力なウィンガーになるわですっかり怖いチームに。そして長崎同様、なぜボトムハーフにいるんだ。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

 ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析とする。これは、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取って攻撃・守備をする」がプレー原則にあるためである。また、分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用する。

 

■前半

(1)攻撃

 ベガルタの大方針は、ミドルゾーン、ローゾーンに引き込んでポジティブトランジション時のショートトランジションで決着をつけるため、ビルドアップ、ポジショナルな攻撃によるチャンスクリエイトはあまり多くなかった。また、横浜のウーゴを中心としたカバーシャドウでボールホルダーへのプレッシャー、パスコース限定でロングを「蹴らせられる」展開となり、セカンド回収、ポゼッション維持でボール保持が難しかった。

 横浜は、ポステコグルー監督が「ヴィエイラが最初の守備のスイッチを入れてくれて、そこから皆がしっかり連動したプレスをかけてくれた」と試合後コメントしているように、連動してビルドアップ妨害を図ることで、ボール非保持時も攻撃をかけていたような状態だった。

 4分、左サイド、前プレを受けているがロンドで回避。1stラインを突破。

 11分、ダン+板倉、大岩、平岡でビルドアップ。ただ、横浜のプレッシャーを受け、結果としてはボールロストしている。

 21分、OGによる同点ゴールのシーン。アンカー脇を狙ったアベタク、チャンネルランの野津田によるポジショナルアタックの結果だった。

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*失点直後のベガルタ。早速セットオフェンスに。横浜は4-5-1ディフェンス。エントレ(ライン間)で奥埜、アベタク。

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*野津田にボールがつく。横浜はアンカーがライン間埋め、センターが野津田、右WGがアベタクへのパスコース封じと平岡へのプレス準備。

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*再び平岡へ。走る野津田。待ち構えるアベタク。開くチャンネル。さあ、用意はいいか。

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*アベタクに縦パスがつく。横浜の2枚を無力化した。追い越す野津田、チャンネルランだ。右SBはなぜか関口のマークにベッタリだ。そのアングルから関口に出るとでも思っているのか。出たとしてもどんなリスクがあるのか。チャンネルはがら空きだ。ちなみに、右ウィングレーンでアイソレーション待機している蜂須賀もいる。

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*アベタクカットイン。走り続ける野津田とゴール前への走り込む奥埜。向こうには蜂須賀。アベタクの選択は。

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*相手にとって最も危険な選択、ゴール前の奥埜へ。それでも締まらないチャンネル。かえってこない左WG。チャンスだ!

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*すんでのところでスライディングで防がれたが、走り続けたご褒美を野津田へ。結果、オウンゴールになったが、同点となる。

 25分、今度も前プレをロンドで回避。準備期間にこれを徹底しておけば結果も変わったのかもしれない。

 30分、ダンから、大岩、平岡、富田でトライアングルビルドアップ。ただ、ポゼッション確立より縦志向が強い。

 40分、ダンからのグラウンダーパスでプレス包囲網を突破。

 

(2)守備

 ベガルタの守備は、ゾーンのなかにも人につく意識が強かったように思える。特に平岡は、ハーフスペースに入ってくる、山中、天野を警戒、迎撃していた。となると平岡が空けた場所が空くが本当はゾーンディフェンスにおける鎖理論でスライドなり、カバーなりをしなければならない。それができていたかと言われれば、ちょっと分からない。

 横浜は天野がレーンチェンジしたり、WGがフロントドアのような形でオフボールでハーフスペースに侵入したりで対応。それ以上の対抗型がベガルタから見られないこともあり、一方的に殴り続ける展開に。常に先手先手を取り続けた。

*概念図

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 14分、松原が右ウィングレーンに。仲川がハーフスペースへチャンネルラン。結果、ブロックを下げられる展開に。

 17分、マリノスの右ハーフスペースでのスクエア形成に対して、平岡迎撃、奥埜・富田のスライドで、砂時計のような形でブロッキング。ハーフスペースへの侵入を阻止。

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 19分、天野のシュートシーン。アベタクが大外の松原を警戒しているため、最終的な局面で6バック状態に。バイタル付近を空けミドルシュートを許している。

 20分、山中のスーパーゴール。

 35分、ダンからのゴールキック。今日は珍しくロングを蹴る展開に。ただ、回収できず前掛かりのところを仲川に中央をドリブル突破を許し2点目。ゴールキックからの攻撃を準備していたのか、分からなかった。

 

(3)ポジティブトランジション

 狙いはポジトラ。天皇杯の再現だ。ただ、そもそもカウンターの予防ポジションである偽SBを採用するチームに対して、カウンター攻撃とは、よほどの準備をしないといけない。でもこのゲームでは、蜂須賀がコメントしているように、準備していたけれど「出てこなかった」ようだ。なぜ。なぜやらなかったのか。ひとつは、今日の横浜は4-3-3だったし、ベガルタのスタメンもポジショナルなメンバーが選ばれている。あとは本当に狙ってやっていたのか、あまりそこは明確に読み取れなかった。

*概念図(=というより理想図)

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 12分、狙い通り、カウンターからアベタクのクロスまで。ただ形になっていたのはこのくらいか。

 

■後半

(1)攻撃

 雨、ピッチ、前プレの影響か、ダンはゴールキック時、かなりの頻度でロングキックを蹴っていた。ただ、タッチラインを切ったり、ボールを回収できなかったりで、有効かといえばそうではなさそうだった。おそらく狙ってやっているのだと思うが、4失点目のミスより、ボディブローのように痛かった。

 49分、ダン、タッチライン際へのフィードキックだがミス。 

 58分、バイタルのアベタクにボールがつく。この辺りの時間帯ではかなりポジショナルな攻撃ができていた。ここで1点取っておきたかった。

 74分、アベタク、ボックス内に侵入。その前に奥埜から蜂須賀への展開、スクエア形成など、ポジショナルアタックを表現。

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*右から左、左から中央の奥埜へとボールが回って来たシーン。横浜の陣形もちょっとく崩れている。

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*セントラルレーンの奥埜から、右ウィングレーンの蜂須賀へ。

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*山中と一対一に。ジャメがフォロー。ドリブル方向を変える蜂須賀。

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*右ハーフスペースを上がって来た平岡へ。アベタク、ジャメ、蜂須賀でスクエア。アベタク、野津田、奥埜、平岡でスクエア。ハーフスペース付近を立ち位置支配している。

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*ゴールに最も近いアベタクへ。マーカーを背負い、前からはプレッシャーを受ける。でも呼応してジャメが背後へ走り出す。

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*デュエル開始。横浜もアベタクを中心にエリア支配。デュエルの行方は。

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*見事勝利。そのままの勢いでチャンネルアタック。

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*2枚を引き付けてクロス。でも時間と点差から、ボックス内は石原とジャメだけ。でも横浜も2枚だ。どういうことなの。ただ、アベタクが強引にいっただけで、ほかの選手と共通理解が図られていないのかもしれない。簡単に言えば、あいつが一人でがんばっただけ。エゴとみるか、秩序のなかのカオスと見るか。こういう強引さも必要なのだけれど。

 

(2)守備

 明確に、ハーフディフェンダーは、ハーフスペース迎撃が狙いだった。85分の5失点目のシーンは、平岡、永戸が同時迎撃したにもかかわらず、WBが絞らなかったことで生まれた。この形、WBがきちんと絞って、2枚のハーフディフェンダーがそのまま2センターになって攻撃に移行できれば、ビルドアップの新機軸になりそうな予感がした。

*概念図

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 50分、仲川のゴール。関口が松原を気にしてどっちつかずマークになった結果フリーでシュートを許した。個人の判断もあるが、ボックス内へのクロスは中締め!が徹底されていれば防げた失点。

 53分、前線3-2が五角形になる五稜郭ディフェンスだが、中央の山中に簡単にパスが通る。しかも圧縮できない。5バック+2と3で守るチームとしては、かなり痛い形。

 65分、蜂須賀の縦スライドによる迎撃守備で、相手ボールを自陣に帰すことに成功。この形は継続されていてよかった。

 77分、ダンの痛恨のミスで4失点目。

 85分、上記図の通り、永戸、平岡がダブル迎撃した結果、大岩一人に。5失点目。

 

(3)ポジティブトランジション

 後半、なかなかスピードアップできなかったが、ポジトラで左に展開してから、右ウィングレーンでアイソレーションの蜂須賀につくシーンが増えていった。再現性もあった。せめて前半から表現したかった。

 58分、左サイドにボールがつき、横浜のガラガラの中盤を経由して右ウィングレーンの蜂須賀へ。最後は蜂須賀のクロス。

 65分、蜂須賀のカットインシュート。これも左につけて、アイソレーションの蜂須賀への展開だ。

 

■考察

(1)ロンド、そして新型ディフェンス

 4分、25分のロンドによる前プレ回避は見事だった。できるなら試合を通じて、これを対抗策として採用してほしかった。これなら、ロングキックも映えるというものだ。また、平岡のハーフスペース迎撃は新鮮さがあった。前で潰せばラインなんてあってないようなものだと言ったのは奇人ビエルサだけれど、後ろのカバーを精緻化すれば標準装備にできそうだ。そこから、攻撃時のビルドアップに移行もできる。

 

(2)メタゲームでの勝負

 2-8、2-5。これはサッカーのスコアであって、3ラン、3ポイントが入る野球やバスケではない。明らかに何かがおかしいのであって、横浜に対しては、特別の対策が必要になるということだ。それがストップ・ザ・バスなのか、オールコートマンツーマンなのかは分からないけれど、少なくとも、「引き込んでカウンター」レベルの対策ではポステコ軍団にボコボコにされるということだ。彼らの前提を崩す策を見出さないと厳しい。そこまでやる必要があるか?ここまでやられたのだ。やる必要はある。

 

(3)どうせだったら遠吠えだっていいだろう

 ちょっとトップ5、トップ4の背中から離れかかってしまっている。でも、ハモンもいる、ディフェンスの迎撃守備もある、ロンドもある。まだ挑戦権だってあるはずだ。スコア?そう、2-5だ。でもやれる、やれる力を持ってる。あとは表現していくだけだ。

 

■おわりに

 残念な結果に終わってしまったベガルタ。結果を求めた策がハマらず、結果も成長も手放してしまった。-絶望だ、何もかも終わりだ-とはいかない。それでもサッカーは続いていく。試合は残されている。リベンジできなかった、何も出来なかったと悲観的になるのはオフシーズンにもできることだ。勝つためにどうするか、それを考えなければいけない。怒りも、悔しさも、雨の日の三ツ沢に置いてきた。ビールも苦かった。勝つ阿呆がいれば、負ける阿呆がいて、それを端から見て一喜一憂する阿呆もいる。なら、最後まで踊ってみようじゃないか。まだ、負けていない。

 

 「絶望をはね返す勇気を持て」こう言ったのは、ブライト・ノアだ。

 

■参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html