せんだいしろーによるサッカー分析ブログ

サッカーを通して色々考えたいです。分析は我らがベガルタ仙台中心。知恵の墓場。

Jリーグ 第27節 V・ファーレン長崎vsベガルタ仙台(1-0)「敗戦を飛び越えた先にある未来」

■はじめに

 さて今回もゲーム分析いきましょうか!長崎戦!最近のJリーグは、ほんのついさっきまで残留争いしていたチームがもう抜け出していたり、上位もそうであって、少しも油断できないの。そんな意味で我らベガルタも長崎も、重要な一戦になりそうだ。僕はというと、リアルな暮らしがリアルガチでリアルリアルしているせいで、DAZNを止めたりスロー再生したり、記事を切って書いてがてんやわんやに。必死でゲーゲンプレスをかけていきました。ちょっと読みづらいかもです。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、長崎も同じフォーメーションが予想されるなか3-4-2-1を採用。質的優位性で優位に立つのか、はたまた立ち位置で回避するのか、少なくとも渡邉ベガルタは、何かを仕込んでいるはず。ミラーだからこそ、小さなズレから大きなズレを生み出したい。

 対するジャパネット長崎。ゼイワン残留を目の前の一勝をひたむきに目指すスタイルは、3-4-2-1によるハードワーク。そこに高木監督が策を授け、ロジックでも漏れはない。あとは信じて戦う。迷いがないひとは強い。 

 

■概念・理論、分析フレームワーク

 ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析とする。これは、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取って攻撃・守備をする」がプレー原則にあるためである。また、分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用する。

 

■前半

(1)攻撃

 ベガルタの攻撃は、ビルドアップで長崎の同数前プレスをどう回避するか意図をもって準備されていた。具体的には、富田がディフェンスラインに入り4バックに変形し、長崎3トップの守備の基準点を外してきた。同時に、奥埜-野津田でアンカーポジションを担う、アベタク、石原でハーフスペースを狙うことで、ポジショナルな攻撃へと移行していった。30分ごろからは、長崎がミドルゾーン、ローゾーンのリトリートに変えてきたため、よりポジショナルアタック映えな展開になった。

 長崎は、前節ベガルタが東京にそうしたように、5-2-3でハーフスペースの入口を封鎖する狙いだった。それが4バックによってズラされ、ちょっとどうしようか考える時間があった。ただ、30分ごろから5-3-2、5-4-1への変形で前プレを止めることで落ち着きを取り戻していった。「台本と違うじゃないか!」とか「相手は関係ない。自分たちのサッカーをするだけ」とかとかとかにならず、相手を観察して、自分たちに少しでも有利な方にもっていこうとした長崎。なぜ、最下位なんだ。

*概念図

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  3分、3バックビルドアップのベガルタに対して、3トップの同数プレスでビルドアップ妨害を図った長崎。平岡が息を吐くようにレーンチェンジ+ラダーアップで自ら出口役となる。

 8分、長崎の初手を確認したベガルタ。すぐさま板倉、大岩、富田、平岡で4バックに変形しビルドアップ。やはり対抗型を仕込んできた。

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*ちなみにアンカーポジションには野津田。野津田は、奥埜と頻繁にポジションを入れ替えていた。

  今度は、12分。4バックビルドアップ部隊+アンカー奥埜の形。ここから文字通り、人とボールを動かして、一度、ネガトラを挟んで板倉のシュートまで繋げている。

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*初手、ディフェンスラインの富田から。アンカーには奥埜。長崎はちょっと誰が見るのか分からなくなっている。

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*ドライブした富田、右ウィングレーンの平岡へ展開。ちなみに、長崎の5-4ブロック間には、左ハーフスペースから右ハーフスペースまで野津田、アベタク、石原がいる。石原は偽9番?

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*リターンをもらった富田。前方で突っ立っている石原。石原が空けたスペースに走り込む奥埜。奥埜が空けたスペースに野津田が降りてくる。アベタクはDF裏を取るランニング。ここまでベクトルが異なると守備側は大混乱だ。受け渡しだ!違うスペースを埋めろ!そうじゃないケアしろ!とかとかとか。ちなみに富田はノープレッシャーだ。

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*そんな中、石原にボールがつく。釘づく視線。ボールウォッチャーというやつか。石原は富田にそのままリターン。ベガルタの各選手も適切な配置につく準備をする。

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*富田は平岡へ。そうこうしているうちに、蜂須賀がハーフスペースに。アベタクと2トップのような形に。石原、奥埜、野津田でトライアングル。富田、野津田、石原、平岡でスクエア、奥埜、アベタク、蜂須賀、石原でスクエア。これを右ハーフスペースから右ウィングレーンで展開。オーバーロード発動。対をなすように関口、板倉、アイソレーション幾何学的で美しい。

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*で、結局富田にボールが戻る。両者、ポジションリセット。

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*さて今度は大岩から。関口にはぴったりマーカーが。奥埜は5-4-1の痛点、シャドーとCHの間に。板倉はウィングレーンでフリーな状態だ。

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*ボールは板倉へ。長崎は若干、3-2がペンタゴンというか、五稜郭というか、五角形のような形。WBも関口にプレッシャーをかけるべく関口に追従。

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*板倉はそのままドライブ。関口は入れ替わるように板倉のポジションへ。そうなると長崎の右WBも困る。関口につくか、板倉からボールを奪いにいくか、背後にチャンネルランしている奥埜をケアするか。ベガルタ、この瞬間にスクエア形成。

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*止まらない板倉。3人を引き付けた。長崎はバイタルが丸裸になる結果に。ゴールハンター石原がそこに陣取る。さらには野津田がスペアポジションを取って、板倉の逃げ道、ネガティブトランジション時のカウンター予防のポジションを取っている。

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*その野津田へ。野津田から関口に。アベタク、奥埜、関口、野津田で今度はスクエアだ。その間、長崎は4-4をハーフスペースに密集させている。5バック系なのにボールサイドに密集させるから固いのなんのって。

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*関口から奥埜、奥埜から関口へリターン。瞬間、野津田が縦にランニング。空いたスペースにアベタクが降りる準備。それとも関口のカットイン?

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*もう一回板倉へ戻す。試合を通してこんなシーンが多かった気がする。何度も何度もやり直してはトライしてを繰り返していた気がする。気がするだけか。さあ、左ハーフスペースに皆集まって来た。全員集合。

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*丁寧に今度は大岩に。サイドチェンジキックを混ぜても面白かったかなと思った。まあ、選択肢のひとつなので。

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*そして板倉。長崎は、5-2-3か5-3-2のような形でブロッキング。やっぱり五稜郭か。

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*背後を狙っていた野津田に楔パスがつく。長崎、すかさず2枚でプレスをかける。ボールロスト。ここからネガトラで即時奪回。

 17分、4バック+奥埜・石原の2センター、アベタク・野津田の2トップ、両WBは、ベガルタのビルドアップの新機軸になる予感。

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 22分、4バック+アンカー奥埜ビルドアップ。この辺りから、長崎が対応し始める。5-3-2ブロックとし、3-2の五稜郭の中心に奥埜を捕えようとし始める。

 28分、ベガルタは変わらず4バックビルドアップ。長崎は慣れてきて5-4-1と併用でビルドアップを寸断。パスを入れさせない。

 40分のポジショナルな攻撃。やはり、シャドー脇、2センター脇のスペースは狙い目だ。ここではアベタクが狙う。

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*これからの試合、アベタクがキーマンになりそうだ。石原が空けたスペース、野津田が空けたスペース、敵が空けたスペースに入って、ビルドアップを助けたり得点に直結するプレーが西村抜けたベガルタに必要なのかもしれない。かもしれない。

 

(2)ネガティブトランジション

 ベガルタは、攻撃時に良い位置取りをしていたおかげで、即時奪回もスムーズだった。きちんと相手を押し込んだ状態で奪われても、すぐ奪い返せることを証明してみせた。

 13分、攻撃時にボールロストしたが、ボールホルダー近辺に密集。

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*野津田への縦パスをロスト。ボールホルダーに近い2枚がマークを捨ててプレッシング。奥埜は近くのシャドーによる。関口、板倉でエリア圧縮準備。

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*シャドーにボールが入った。エリア密集型ゲーゲンプレス、発動。4人でボール付近のエリアを握りつぶす。

f:id:sendaisiro:20180927005206p:plain*即時奪回、完了。

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*ボールは野津田から、右ウィングレーンの蜂須賀へのレーンスキップパス(サイドチェンジパス)だ。

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*警戒されてか2枚がケアしてきた。蜂須賀の得意の形、カットインドリブル。バックドアを狙い選手は無く、ドリブルアットならず。

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*セントラルレーンまで思いっきりマーカーを引っ張っていった。そして、左ウィングレーンで待つアベタクへ。ラグビーだったらトライできてそうな展開。

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*アベタクにも2枚。長崎は9人がボックス内に戻って守備。自陣では、ボールサイドに密集、相手陣では同数プレス、ボックス内では9人埋め、これが高木式カテナチオか。本当に固い。

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*そりゃ板倉がここまで上がれるわけで、がっちり守る相手にミドルシュートも鉄則だ。

 

(3)守備

 ベガルタは5-2-3ブロック。長崎のように3トップでハーフスペース入口封鎖。WBの迎撃守備が基本。

 

(4)ポジティブトランジション

 長崎はベガルタ陣で奪われたあと、ファウルでポジトラ時のカウンター、ポゼッション確保を妨害することで、自陣にきっちり戻った状態でリスタートさせられた。よって、ポジトラでの再現性ある攻撃というのはあまり見つけられなかった。きちんとカウンターリスクを防ぐよう設計されている高木長崎だ。

 

■後半

(1)攻撃

 ポジショナルな攻撃で攻撃を続行。ただ、細かいミスが目立った。パスミス、トラップミス、シュートミスとかとかとか。渡邉監督が試合後、「決めるべきところで決めないとこうなる」とコメントしていたが、仕留めるとこで仕留めないと、手痛い仕返しが来るということだ。位置的優位を保ち、相手を動かし、最終的にいい形を作るシーンもあったが、ゴールシーンに昇華させることができなかった。最後はもう、選手たちの才能を信じるより他ない。

 48分、板倉、奥埜、大岩、平岡+アンカー富田で4バックビルドアップ

 53分、降りてきたアベタクと富田、奥埜、平岡でプレス回避し、左ハーフスペースの板倉に。ドライブで前進し関口につけるが、タッチラインを割ってしまう。

 57分、板倉から中野。フォローに野津田が入り、野津田が空けたスペースに奥埜が入る。中野が左ハーフスペースにレーンチェンジ。野津田が左ウィングレーンに。レーン交換だ。そして、石原、奥埜、中野、野津田でスクエア形成。

 63分、この試合の行く末を決めるシーン。アベタクのシュートは無常にもバーを超えていった。

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 *平岡から右ウィングレーンの蜂須賀へ。長崎左WBが浮く。石原が偽9番の動きで右ハーフスペースでボールをもらいに降りてくる。左CBが浮く。奥埜が、走った。

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*蜂須賀に2枚、石原に2枚。左CBは石原にボールが出ると予測したのか猛チャージをかける。蜂須賀だって、そこまでプレービジョンが狭いプレーヤーでは、もう、無い。引き付けたら、離す。右ハーフスペースの出口に走り出す奥埜へ。届け。

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*パラレラで受けた奥埜。中央CBを引っ張り出すことに成功。不安になったのか、中央の右CBは後方のスペースを確認。何が見えた。青いユニフォーム1枚、白いユニフォーム2枚。自分のマーカーはアベタク。ボックス内、3対2だ。

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*奥埜がややマイナス気味にグラウンダークロス。誰もが重心がゴール方向に向かった。加えて、一人飛ばしパス。中野が思いっきり踏ん張った。

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*ポストマンになる中野。CBは完全に逆方向に重心がいっている。アベタク、キックモーションに入る。長崎は誰もつけていない。CHなのか、なぜ傍観しているんだ。

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*すべてが後手に回った長崎。先手を取ったベガルタ。そしてキックモーションに入ったアベタクと慌ててブロックをかけようとする長崎の選手たち。多くのひとの思いを乗せ、放たれたシュートは、むなしくもバーを超えていった。

 間違いなく勝敗を分けたシーン。ハズレを引いてしまった。ウィングバックというより、ハーフウィンガーのような立ち位置で相手WBを引っ張りだした蜂須賀。偽9番で1列下がり、ハーフスペースで受けようとした石原。この2人の立ち位置が生み出したチャンスだった。奥埜のパラレラランニングも見事だった。中野のポストも素晴らしい。アベタクや。ああ。アベタクや。アベタクや。でもFWはゴールでしか仕返しできない。

 

(2)ネガティブトランジション

 ベガルタは即時奪回を基本とする。攻撃でスクエアを形成して攻撃していたこともあり、奪回するためのポジショニングも整理されていた。57分の攻撃もスクエアアタックだったため、奪われたあとも、即時奪回へスムーズに移行。

 

(3)守備

 基本は、5-2-3でブロックを形成。ただ、相対的にセットディフェンスの時間が少なかったため、特に注目する点は無かったように思える。

 失点シーンについては、戦術兵器ファンマを意識しすぎたとも言えるし、ダンの無謀なチャレンジだったとも言える。あの状況で飛び出して何を得て、何を失う覚悟があったのか、これはシュミット・ダニエルにしか分からない。そして、それをどの方向に導くかは監督、チームスタッフはもちろん、僕たちサポーターの拍手やブーイングで決まるのだと思う。多分。

 

(4)ポジティブトランジション

 長崎がファールも利用して、カウンターを予防。じゃあポゼッション確保しようにも、同じ様にそれもうまくいかなかった。ポジトラが安定しないため、完全にセットオフェンスでしか攻撃手段が無くなっていった気がする。選択肢を削られたというか。長崎のセットディフェンスに招かれた感もある。

 60分、カウンター一番槍の石原にボールがつくがパスカット。このようなロストとファール利用での予防が徹底されていた。

 

■考察

(1)しかし!そちらがそうするなら、こちらもこうしよう!

 3トップでハーフスペース入口を封鎖してくることはある程度予想していた我らベガルタ。4バックへの変形を仕込み対応したのは見事だった。さらに、アンカーポジションをローテしたり、石原が偽9番やったり、瞬間的に4-2-4のような形でビルドアップしたりなど、これでもかと言うぐらい立ち位置を変えていった。まるで水のように形を変えていった。

 

(2)最後の一撃は切ない

 立ち位置を変えたり、型を変形させるのも最後はゴールを奪うためだ。そこにいくまでにパワーを使い切ったり、辿り着いてもフイにしてしまったりしては、それは永遠の淑女もそっぽ向くということだ。ミスはミスとしてそこはある程度仕方がない面はあるが、そこを突き詰めるのも今年のテーマだ。西村がいなくなったからとは、周りに言わせたくない。

 

(3)アベタク!トップをねらえ!

 残り試合のキーマンは、アベタクだと勝手に思っている。石原が空けたスペースに飛び込んだり、野津田が空けたスペースに入って来たり、ライン間で受ける、降りてビルドアップ出口になる、チャンネルを襲撃するとかとかとか、マルチファンクションな選手になれるはずだ。というより、そうなってもらわないと回らない気もする。そのポテンシャルもあるはず。ついに現れた3人目の適合者。覚醒する新たな野津田。アベタクの中の可能性が目を覚ます。多分。

 

■おわりに

 新しい形も見せながら、つまらないミスで敗れ、最下位相手に勝ち点3を献上した、というのがこのゲームをシンプルにまとめた時にちょうど良いフレーズになりそうだ。時として、勝ち点3を生贄に捧げ、チームが成長することが必要な時もある。一方で、どんな形でもいいから勝ち点3を死に物狂いで手にする必要がある時もある。僕たちがトップ5に残り続けるには、必ず勝たなければいけない試合がそう遠くない未来やってくるはずだ。その時、僕たちは必ず勝てるだろうか。その時、僕たちは死ぬ気で勝ちにもっていけるだろうか。負けたくない。だって負けるのは死ぬほど悔しいから。遠い長崎の地で、J1で最も勝ちに飢えるチームから、僕が感じとったことだ。

 

 「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」こう言ったのは、野村克也だ。

 

■参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html