蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【Passion】カタールW杯/準々決勝 アルゼンチンvsオランダ【#ワールドカップアーカイブ化計画】

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はじめに

 どうも僕です。今回は、この企画から、アルゼンチン目線で書きます。

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 アルゼンチンといえば、ジャルジャルのネタが真っ先に思い浮かぶ僕ですが、ベスト8でオランダと対戦するシビアなゲームを振り返って書いていこうと思います。ベガルタ仙台に在籍したレアンドロ・デサーバトの母国でもあり、奇妙な縁も感じます。メッシ物語の読者のひとりになった気分でもあります。そんなこんなで振り返ります。では、レッツゴー。

 

youtu.be

 

フォーメーション

Original

 

時間を与えるところと与えないところ

 アルゼンチンは532。オランダは3412。開始からアルゼンチンの3人のMFは、オランダの3人とがっちりと噛みあう形。オランダのビルドアップは、距離が広い3バックにボールサイドのWBがワイドに低い位置にポジションをとるので、4バックのようにも見える。ウィングポジションに選手を置かず、ペナルティ幅3レーンに、FW3人がポジションをとる。

 一方のアルゼンチンは、532のブロックから、ボールサイドのWBにボールがつくと、WBが早いタイミングでポジションを上げて高いポジションからプレッシャーをかける。呼応して、噛みあってる中盤の3人MF、左右CBがオランダのFWに近い距離でマーキング。マンマーキングによるハイプレッシングで対応。右サイドのDFは、メッシvsアケの構図。アケには時間とスペースが存在する。なので、右WBモリーナが早いタイミングで高いポジションをとってプレッシングを開始した。お互い、システム的に嚙み合っているため、オランダはアケのポジション、列降りのポジション移動で、マンマーキングのアルゼンチンに対して混乱を起こしたい意図を感じた。

 この日のアルゼンチンは、試合開始から勇敢だった。WBは高い位置からプレッシングをかけていくし、ロメロとマルティネスの左右CBは降りていくオランダFWを徹底的にマーキング。地の果てまで追いかけた。あえて、メッシ方向に向かってプレッシングするアルゼンチン。アルバレスが右からティンバー、ファンダイクにプレッシャーをかける。メッシはファンダイクとアケの間に立つだけ。結果、アケはボールを持つ。ただ、アルゼンチンがマンマーキングで対応しているため、ボールの出し先が無い。アルゼンチンはそのまま押し込むか、パスをカットしてカウンターしていく。DF面でのプレーが難しいメッシサイドにボールを限定していくのは見事。あえて空ける、持たせると意識したDFだった。

 後半になると、ハーフタイムで投入されたコープマイネルスのサリーダが発動。ファンダイクとアケの間に降りて、ボールの出口を探す。左右CBがワイドに、WBはワイドに高い位置をキープ。サイドが厚くなったオランダ。中央の形は変わらないのでアルゼンチンは組みやすいが、サイドから押し込まれる状況が増える。次第に自陣にリトリートする時間が増えた。疲労もあって前線からのプレッシングが効かないアルゼンチン。オランダが442に変えて来たことでマンマーキングも曖昧になっている。ファイナルライン1本になったところにクロス。1点を返されたシーンは、クロスの時点で勝負ありだった。

 

MF横を攻撃するAlbicelestes

 アルゼンチンのボール保持攻撃は、3バックとアンカーの4人に、メッシとマックアリスターが中盤を創る形。WBはワイドにやや高い位置をとっている。序盤、アルゼンチンは右サイドの密集でボール交換をして、左サイドへ解放させてボール前進させた。攻撃時は、ロメロとメッシがポジション交換。WBモリーナとオランダの右サイドを攻撃。オランダは、FWのプレスバックやサイドをカバーする意識が低く、MF2人で中盤をカバー。左インサイドMFのマックアリスターをカバーしきれず、解放を許す結果に。

 先制したシーンでもパスカットから、MF2人を引きつけて、左CBアケも引っ張り出したのはメッシ。モリーナのゴールを生み出した。後半もオランダ523ブロックからの前線からのプレッシングに対しては、右CBロメロがワイドにポジションをとって、プレッシャーを分散。マックアリスターとフェルナンデスで中盤を創って、中央は2-2でポジションをとってプレッシャーを右サイドから回避していった。

 一方のオランダは、らしくないパスカットが要因とはいえ、攻撃ポジションにつく前に、ボールを早く、前に運ぼうとした結果、ボールを奪われ崩れた陣形でのDFを強いられた。前線3人のサイドや中盤カバー意識が乏しいこと、全盛期を過ぎたとはいえ、メッシ相手にデヨングとデローンでDFしようとしたのはさすがに厳しかったか。

 いずれにせよポゼッションして、右サイドからボール前進させようとした、させたアルゼンチンに対して、5バックと2人のMF、メンフィスのプレスバック(小)の形を崩さないオランダ。攻撃時も、一時的に4バックになる、あるいはデヨングを左にサリーダさせるなどの小細工も無し。あくまで自分たちのポジションを意識し、維持し、相手に打ち勝つ姿勢を変えない。オランダらしいといえばそうかもしれないし、ルイ・ファン・ハールらしいといえばそうかもしれない。ただ、相手にボールを渡さず、ゲームを主導し続ける姿とは少し違った。

 

 

おわりに

 試合開始からファイトしていたアルゼンチン。マンマーキングで次のホルダーを守るやり方と、中盤とメッシでファイナルサードを攻撃していくボールの出し方は、字面だけ見ればクラシカルさを感じる。でも、メッシ方向への限定プレス、オランダMF横を攻撃する姿は非常にロジカルで、熱闘の下に燃える青い炎のようだった。激しいDFの代償は、2点リードしながらPK戦にまで勝負がもつれ込んだことだが、悲壮感を感じさせず最後は勝利を取り切った姿勢は、試合序盤からの姿勢と変わらずファイトし続けた結果だったと思う。W杯のメッシ物語は続く。その物語に相応しい語り部たちが、ピッチにはたしかに存在していた。

 

「運命とは受け入れるべきものではない。それは自ら選び創り出すものだ」こう言ったのは、バールーフ・デ・スピノザだ。

 

 

中島元彦、お前とならどこまでも【Now Loading#4】

The Demon Lord of the round table 

ついに発表された中島元彦の育成型期限付き移籍期間延長の報せ。全ベガルタ仙台サポーターが待ち望んだ瞬間がやってきた。もうこれ実質完全移籍みたいなもんだろ。セレッソに戻る選択肢もあったなかで、今季に対する悔しさや責任を感じ、もう一度J1昇格に向けた戦いへ身を投じる覚悟を示してくれた。書いていて嗚咽が止まらない。立派な子やほんま。おおきにな。

さて、中島元彦の大ファンである僕だが、簡単に彼の仙台のプレーについて振り返ろうと思う。今季途中から仙台に加入した中島元彦。春先からいろいろあって手薄なポジションになったセントラルMFで即仙台デビューを果たす。その時FWもまあまあ火の車だった記憶でFW登録されていたが、中盤の重要なポジションを任せられた。これが見事な起用だった。相手FWの背後にポジションをとりながら、CBとボール交換。SBには並行サポートでカバーしつつ、逆サイドへサイドチェンジキックで相手プレッシャーからの『解放』もできる。DFが間合いを詰めて、ボールを持った中島元彦にプレスをかけてきても、ボールをまたぎ、三角形を作った『懐』を使ってボールを奪われない。そのまま懐ドリブルで前進していく彼を誰も止められない。中盤でボールを奪い、キープし、前進させ、味方のプレーを助ける様は、まさにセンターサークル(円卓)の鬼だった。

もともとキック上手なので、FKからゴールも決め、ミドルレンジからの弾丸シュートも健在。仙台の攻撃を完全に支えた。劣勢でもあきらめずにドリブルで前進したり、ゴール前に何度も飛び出していく姿勢は、僕たち仙台サポーター達の魂を焦がした。来季もそんなプレーが見られると思うと心が躍る。なにより期限付きで、大阪出身の彼が仙台でファイトする姿勢を見せるたびに、僕自身もファイトしなければいけないと何度思ったことか。仙台のために戦うと誓った者同士、少しでも長くともに戦えたらいいと思う。この幸運な時間を黄金とするために。

中島元彦。上座も下座も無いピッチで、鬼神になる。

 

 

 

3-4-2-1よ再び【Now Loading#3】

結局”妄想”してしまうシステム論

さて、このNow Loadingも3回目を迎えた。日記であれば3日坊主がうろうろする時期だが、週一で上げているのでそんなものは存在しない。そもそも3日坊主が前提という画期的な更新間隔。加えて、さっきのさっきまで記事を書くのをすっかり忘れている始末。いい感じに仕上がっている。

仕上がっているといえば、我らが新生・ベガルタ仙台の動向も気になるところ。AKIRAが毎朝バイクで横滑りしながら紫山までやってくる姿が新しい仙台の名物になって久しいが、オフが早かったとはいえ、流出・流入する選手もいるなか戦術の落とし込みはなかなか難しい匙加減である。どんな形でやるのかは、あくまで形であってゲームの進め方、自陣からのボールの出し方が重要だ。重要だが、「きっと4‐3-3だな」とか「いやいや3-4‐2-1だ」とか、どのシステムでやるのかを妄想するのだって楽しい。男の子だからね。修学旅行で木刀買ってしまうだろうて。

個人的には、AKIRA就任直後に披露した3-4-2-1がベースかなと。可変無で4-3-3もありかなと思うけれど、大分から右CBをやっていた小出を獲得。AKIRAさんが甲府時代に獲得した選手であり、当時は3バックの中央をやっていた。CBというポジションは、そのチームを象徴する存在だ。J1後期を支えた闘将・平岡が退団。原崎さん肝入りのテヒョン、ヨータはレンタル組。若狭とコンビを組むうえで、AKIRAさんのサッカーを表現するうえでも非常に重要な存在だと思う。そんなこんなで、彼の獲得をきっかけに、AKIRAさんの3-4-2-1が再びピッチに登場するかなと思っている。3-4-2-1から3-2-5へベールクト可変。イヌワシがピッチを滑空する――

*ベールクトはSu-47戦闘機の愛称。3-2-5陣形はその姿を彷彿とさせるのは僕だけです

 

どうオフを過ごすか【Now Loading#2】

ただただ完全移籍を祈祷する

ベガルタ仙台がオフシーズンに入って3週間。いまだに土日の過ごし方に正解が見つけられていない。試合があれば、昼飯はどうするかとか、帰りはどこに寄るとか、試合のない方の休日は家で英気を養おうとかいろいろ考えるものだけれど、「とりあえず『スプラトゥーン』するか」となって「はいクソー」と言って投げるを繰り返している。現実は非情だ。仙台の契約更改も、最序盤のオラオラッシュを過ぎると3日間の沈黙。複数年の更新と外国籍選手の満了は、ある程度既定路線で、単年契約や期限付きの選手たちの更新はこれから本格的になっていくだろう。J1も全日程を終え、入れ替え戦も消化された。ワールドカップの前までに波がきて、終わったあたりからもうひと波来そうだ。毎年のことだけれど、選手の入れ替わりは楽しみな部分と感傷的な部分が入り交ざる。

そんな僕は、毎日のように中島元彦の完全移籍を祈願している。詳しくは、Twitterで僕のプロフから中島元彦で検索してみてほしい。気狂いピエロかと思うような光景が広がっている。まったくおススメしない。イーロン・マスクも眉を顰めるだろう。なにかにつけて、まるで語尾のように完全移籍を懇願しているが現実はどうか。大阪出身者にとって、やはり東北の地というのはサッカー面以外で様々なギャップがあると思う。ただ、クラブ、スポンサー、サポーター、地元の囲い込みも攻勢を強めているし同僚に大阪出身もいる。「もう一回一からやろう」とは、中島元彦チャントの原曲である『NEW FIRST STEP』の歌詞である。もう一回と言わず、もう100000000000000000000000回やろう。そんなくだらないことをやってる、僕のオフシーズンである。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

 

AKIRAさんの支持者を求む【Now Loading】

サックスブルーの秋空

ついついジュビロ磐田のオフシーズンに目が行ってしまう。オフにありがちな、「実はあの時チーム内は○○だった」や「チーム関係者は○○と口にした」など、本当に言ったのか筆者の感想が漏れているのか定かではないのだけれど、AKIRAさん関連の記事となるとつい読んでしまう。磐田は、選手編成に対して制限がかけられる可能性が高い。選手の流出入も不透明ではあるけれど、僕の個人的な興味は、AKIRAさんの腹心コーチである渋谷さんの動向だった。契約満了という形でフリーな状態になったが果たして、仙台入りしてくれるのか。今季の仙台は、ヘッドコーチを置かずにフルシーズンを戦ってきた。ヘッドの原崎さんがそのまま監督になったので、ある意味やむなしの面もある。ただ上位陣にことごとくやられてしまったり、勝負所で4連敗してしまった点、結果に引っ張られて選手のメンタルに浮き沈みがあったところなど、シーズンを通した戦略の部分でのテコ入れも必要だ。

理想でいえば、監督はデンと構えてもらって、コーチには汗水流してもらいたい。今時は、監督もコーチも一緒になっている風もあるけれど、監督が一段高いところから俯瞰で見れた方がいいし、分業できるならそれに越したことはない。特に、AKIRAさんには明確なメソッドとノウハウ、実績をもったサッカーがある。そのサッカーを伝承していく、うまくいかない時の反発を中和する意味でも、ひとりでも多くの支持者が欲しいところ。本人の監督志望もありそうだが(特に甲府方面)、杜の都からAKIRAさんと再出発してほしい。

逆・蹴球仙術メソッド

スペインとかドイツとかポルトガルとかブラジルとかイングランドとかオランダとか、いろんなところからサッカーに関する考え方や用語が入ってくる。

それぞれがそれぞれの立場において、何に対してその言葉を使うのか、それですみ分けできていればいいと思う。

僕は自分自身のために自分がさっと理解できるための言葉まとめとして、蹴球仙術メソッドを書いた。

今回はそのアップデート。

使いたいけれど、言いなれない言葉より自分「だけ」が分かる方言にしたいと思ってこれを書いた。

今回もそう。

それでもいいならどうぞ、ご一読ください。

すぐ使わなくなるかもしれない。

別にそれでいいと思っている。

前回まとめた言葉も使ってない言葉ばっかりだし……

 

falso Lateral Inverted full-back 逆さまのサイドバック(偽者のサイドバック)

タッチライン際、中盤に対して、側面にポジションをとるサイドバックが内面にポジションをとるプレーを表す。側面にいるサイドバックを三角形の頂点とすると、内面に移動することで逆三角形になる、反転することからinverted、逆さまのサイドバックとする。本来いるタッチライン際、側面のポジションに対しての逆さ。

 

salida lavolpiana lavolpian exit ラボルピアン出口(ラボルペの出口)

リカルド・ラボルペさんが発案したボールを前進させるためのきっかけ作りのこと。実際的には、MFがCBの横にポジションをとってボール前進させる。高い位置の選手が低い位置に降りる際にも使うが、ボールを前進させるためのきっかけ作り、小さなズレを生み出すプレーであることが重要。salidaとは出口。ちなみに「サリー」と略されがちだが、日本語に置き換えると「出」なのか「口」なのか気になるところ。

 

salida de balón ball output ボール出力(ボールの出し方)

ボールを前進させて相手ゴールまで運んでいく仕組みのこと。salidaは出口、deは「の」、balónはボール。ボールの出口。ボールの出し方、と捉えていい。ポゼッション主体であったり、ロングボールを使ったロングセカンドはあくまで方法論である。

 

control orientado control oriented 指向制御

パスを受ける際、ボールを上から切るようにトラップして逆回転をかけて止め、ボールと一緒に前を向くプレー。基本的には向きたい場所に向けて切る。指向を制御する。

 

gegen presse against press(vs press) プレスに対するプレス(対プレス)

相手のプレスによって奪われたボールをプレスですぐに奪い返すプレー。gegenは「対する」。カウンタープレスによる即時奪回とも言う。ただカウンターが何に対するカウンターなのかが重要なので、プレスに対するプレスの方が分かりやすいなと思ったところ。

 

halb raum half space ハーフスペース

ピッチを縦5分割した際、左右2本目、中央両隣に位置するスペース。ちなみに半角スペースとも翻訳できたが、PC教室っぽいので止めておこうと思う。かなり普及したサッカー用語。

 

focus 焦点のプレー

逆輸入。2人以上の相手選手からプレッシャーを受けるようなポジションをとること。どちらからもマークされている状態。逆を言えば、相手はどちらでもマークできるため、どちらがマークするかの意思疎通が必要になる。footballhackによる将棋における焦点の歩から。focusを浴びるポジション。意識集め、ヘイト買いなどなど。

 

 

【Put your camera down】Jリーグ/第41節 vsロアッソ熊本【ベガルタ仙台】

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はじめに

 久しぶりです。やはりマンスリーレポートになっているブログだけれど、今回はいつもツイートしてた分をブログに書いているスタイルでいく。なので、非常に見にくいし醜い。ただ流れをダラダラと書き連ねているだけなので、特にそれっぽいアレは書いてないアレである。ただせっかくのホーム最終戦なので、こうして形に残そうと思って筆を叩いている。余韻に浸りすぎて見直せるか心配だったかそんなことはない。何度でも見直せる。だってユアスタ劇場だったのだから。そんなこんなで振り返ります。では、レッツゴー。

 

光の速さで

仙台は532。右CBにハチ。デサーバトをアンカーに、中島元彦とフォギがインサイドMF。FWにはCaymanが先発に戻ってきた。熊本はおそらく3331。

電光石火。閃光。

熊本のバック3横をCBからのロングで狙う仙台。福森から2回すでにロングが入る。Caymanが流れたり、先制の場面は中山大観音が。FWの外流れからのロングセカンド狙い。

原崎ベガルタの主攻撃のひとつ。ロングセカンド。

とくにFWの外流れからサイドで密集を作って、逆サイドへ解放する形を得意としていた原崎ベガルタ。逆サイドまでではないけれど、中央のオープンスペースを上がるハチにボールは解放されていった。

仙台としてはやりなれていた2FW、CBからのロングを復活させ、攻撃の形を作りたかったか。AKIRAさん的には、もっとCBとMFとで8mリターンパスを交換して相手を誘きだしてから縦に刺すバーチカルなポゼッション速攻が主体。

インサイドMFに入ったフォギ、中島元彦はサイドに供給されるボール回収に走れるし、FWのプレスバックも強力だった。ポジションをとることでセカンド回収を成立させていた原崎ベガルタと違うのは、電撃カウンタープレッシングからの即時奪回を目指していたところか。

いずれにせよ、熊本が仙台の布陣を確認する前に先制できたのは大きかった。まさに奇襲攻撃。先手必勝。電光石火。

ワイドがボール持つとFWは寄るのも解禁。WB内田に寄るCaymanと大観音。

2FW+ボールサイドのインサイドMFでバック3を、アンカーとMFを残りの2人のMFでフォアチェック。ホルダーの供給先を予め監視しておいて、次のホルダーで捕まえるDF。

中央からサイドにボールが出ると真瀬、内田のWBが一気に迎撃。ここで奪って前にが、この日の仙台。

CB間が広い熊本。真瀬とバックカット、フォギのパラで攻撃。

真瀬もフォギもデコイでフリーランできるから、中央3レーンが広く空いてくる。プラスでFWの外流れ。ポジションをとって攻守を一体化させるコンセプトのはずのAKIRAさんのサッカーにしては非常に攻撃的なゲームの進め方。

戦術的というより、攻撃的とみるべきだろう。

選手のキャラ的にもCaymanと中山大観音の2FWとか、フォギと中島元彦のインサイドMFとか、福森の左CBとか、攻撃時には右SBになるハチとかとかとかとかとか。

キャラを見極めてキャラにあった布陣で攻撃的な基調…攻撃の部分はいまのチームに蓄積されているものでやっていく判断なのかもしれない。

メッセージ性も強い。

一方で、AKIRAさんはわりと追い詰められている、いや相当に時間がなくて、勝ち点取るならDF強化が早くて攻撃は後回しにしている、というのはある気がする。気がするだけ。

右にハチが入ると若狭と異なるのは、真瀬の背後をオーバーラップできること。これまでCBが上がるのは禁忌とされていたなかで、まあ攻撃時はSBだけれど、あれだけ攻めあがれるとWGが2人いるような感じがする。

両ゴール前の芝が結構すごかったよね。ヒロイン小畑のキックミスが目立った。

そういえば、2019年ホーム川崎戦でも、442のメンバーでフェイク入れて532マンツーマーキングで試合に入ったな。あの時も開始すぐにゲームが止まって相手に整理される時間ができたんだっけな。

福森の目線は高い。必ず一番奥のスペースを見ている。そして必ずフォギが走っている。あとCaymanも。

熊本は、仙台2FW+インサイドMFがセンターバックを監視するなか、たとえば中島元彦と中山大観音の間に、MFが降りて焦点してラボルピアン出口(サリーダ・ラボルピアーナを無理くり日本語にした)になる。仙台はハチが相手陣まで迎撃する。攻撃的。

坂本の正対からの懐縦。

真瀬とハチを右サイドに2人置いたのも、坂本の懐ドリをカバーするためかもしれない。1人は縦に限定、もう1人がドリブルの目的地をカバーする。

さっきの続きで仙台は左右CBが熊本陣まで迎撃するんだけれど、その背後をトップ下平川が使えたら前進できそうな感じであった。後半65分すぎにその形。ちょっと遅すぎたのかね。

笛吹いて聞こえなかったタカチョーに「石原さん!石原さん!」と声かける上田主審。それでも聞こえないタカチョーにもう一度笛を吹く。笛だけでもいいはずだけれど、名前で声掛け。いいコミュニケーション。

79分の熊本。これは危険で美しい攻撃。

GKからの一本でプレスを引っぺがし、ひとつ飛ばしからのスルーで逆サイドまで展開からの高速クロス。仙台は追いつき切れなかった。

中島元彦の一撃。

ボールが左サイドにあれば、中島元彦のポジションは中央になる。そうなるとこういうミドルシュートの機会が増える。

レッツゴーの雨。声と拍手が降るユアテックスタジアム仙台遠藤康。フォギのヘッド。

これが、ベガルタ仙台

試合終了。

 

仙台は、相手陣での同数プレッシングからボールをサイドに寄せてそこから5バックと前線のプレスバックでボールを奪い切る形。攻撃はCBからのロングに、外流れのFW、ハーフスペース突撃を繰り返すフォギがボールを受けてセカンドを回収していく。

とにかくカウンタープレスからの即時奪回が速く、そして持続していた。

チームに残っているもの、選手のキャラにあわせて最適化させたてきた印象もあって、いわゆるAKIRAさんの攻撃らしさみたいなのは難しいかもしれない。ただDFシステムの構築、カウンタープレスのマインドをここまで注入したのはさすがだと思う。

相手の良さを予め消し込んだり、予防的なポジションをとって戦術的にゲームを進めてきたこれまでの試合からは一転、非常に攻撃的なゲームを表現。ある意味これが一番熊本に効くと判断した、戦術的なゲームだったとも捉えられる。プレッシングにはプレッシングを。

 

おわりに

 劇的な最後といい、非常に見ごたえあるゲームだったぜ。劇場。誰がやろうと、仙台のサッカーは「電光石火」なんだ。それがプレッシングであれ、カウンターであれ、パスであれ、そんな些細なことはどうでもいい。まるで閃光の如くプレーすること。これが、ベガルタ仙台なんだ。タイトルは、椎名林檎で「閃光少女」から。その一瞬をカメラではなく、その眼に、その魂に焼き焦がせ。

 

「ロックであるとかないとか言ってるアンタが一番ロックじゃねえんだよ」こう言ったのは、椎名林檎だ。