蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

本当に自分のためのメモ

ボールを持つことの大切さ

相手の目を集める

・DFは、キックの瞬間およびその瞬間を見逃さないようDFするようになる。

・DFは、首振りタイミングを減らし、カバー対象を限定するようになる。

・特にホルダーが寄せられていないと、背後へのカバーを意識するため、↑の傾向は強くなる。

 

相手の状況理解を遅らせる

・DFも、ボール移動中、首を振ることでピッチの最新状況を確認し、マインドをアップデートする。

・5m以内のショートレンジでは意味がないけれど、7~8mほどの10m以内レンジであれば、反射的にパスライン*をカバーする。

・15mほどだと、DFとしては相手と味方のポジションやステータスを理解し、状況に適合しようと自分もポジションを取りはじめる。

・ボールホールド中は、↑の理解、行動が抑制され、断面的な状況理解になりやすい。

*パスコースは道、パスラインは轍

 

味方の再ポジショニングを促す

・味方のホルダーが目を集めている”隙”に、もう一度ポジションし直す。

・あるいは、高い位置から落ちて、ホルダーに繋がる。

・接続を切って、背後への抜けを狙う。(外流れ)

・繋がりながら、背後への抜けを狙う。(バックカット)

 

ボールリリースについて

・ホールドし続けると、目だけでなくプレッシャー、DFが物理的に寄ってくる。

・味方と目を合わせる。

・繋がる

・相手のプレッシャー背後へボールと目線を移動する。(解放する)

 

まとめ

・ボール保持とは、文字通り、いかにボールを持つかである。

・ペップバルサにおいても、Xavi、イニエスタ、メッシのホールド、目集めがある。

・味方のポジショニングを促し、相手には見える景色を変え、情報を断片的に与え、短く解放しつつ大きなサイドチェンジでフルリセットする。

・パスだけ保持しようとすると、相手に情報収集の時間を与え、構えたDFがより構えることを促し、強固なブロックがさらに強固になる。

 

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【迷子の足音きえた】Jリーグ/第25節 vs栃木SC【ベガルタ仙台】

はじめに

さて、25節。

さっそくゲーゲンプレスで振り返ります。

では、レッツゴー。

 

↓この試合について。 

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あらゆるものを削ぎ落したその先

山形、清水に連敗。

しかも、内容もスコアも完敗。

ホーム徳島戦を除くと、磐田、山口にも敗戦しておりまったく後が無い状況になってしまった仙台。

アウェイ栃木相手に、なりふり構わない姿勢を見せる。

まずは、自陣からのボール出しを4231から4222へ変更。

両SBがワイドに低い位置に構え、ウィングもインサイドへポジションをとったり落ちることで、栃木532を誘き出したい狙い。

その背後をシンプルにFWとトップ下で抜けを狙っていく。

これまで、MF横のホールポジションにポジションをとるFW山田寛人であったり、ウィング郷家だったりめがけてハイボールを送り、セカンド回収から相手プレスの裏返しを狙っていた。

この試合は、ウィングが相手CBを誘き出してその背後を攻撃していたので、攻撃の早さとしては早い方のポジション、プレーを選んでいた。

右ウィングに入ったフォギは、ハーフスペースにポジションをとりつつ、そのまま斜めに左サイド方向へDF背後へ抜けていた。

4222といいつつ、フォギのオフボールランで3FW化して相手DFに圧をかけたかったのだと思う。

後方の保持もまあまあに、左CBテヒョンからハーフスペースの衝撃氣田へ刺したり、左SB内田から同サイド縦方向へのロングがキーになるパスであった。

攻撃としてはシンプル。

ただ、これまで中盤を構成していた鎌田、エヴェでないネガティブも出ていた。

松下と中島元彦は、相手陣からファイナルでのキック、必殺パスについてはダントツレベル。

一方、後方の保持となるとポジションを相手より先に移すので、かなり早いタイミングで相手MFの管轄外、意識外へと移動することになる。

そうなると、ハーフスペースにポジションを取ろうとした衝撃氣田やフォギへのマーキング意識、ベクトルが強くなり、栃木3MF+左右CBのキルゾーンとなった。

もちろんその背後を狙って…がこの日の仙台ではあるけれど、これまで是とされていたポジションでプレーをしても、味方のポジションが違う、プレーが違うと、途端に良くないポジションになる。

チームプレーの難しさであり、月並みな表現だけれどポジショナルなプレーにおいては、味方の変化点や状況に適合していく必要がある。

そういう意味で、やはりまだまだだし、物足りない部分が多いのである。

前半は、そこを打開しようとトップ下郷家が落ちたり、MF松下がCB間に落ちたりしたが明確な解決にはならず、栃木の前方向のプレッシングをさらに誘発した。

後半からもっとシンプルに。

フォギをトップ下にして、郷家を右ウィングに。

郷家がいつも通りハーフスペースにポジションをとって相手CBを誘き出しつつ、フォギがタッチラインに向かって外流れする。

攻撃の線は細くても、1点を奪い、突き放されてもセットプレーで追いついたのは執念と言えるだろう。

 

感想

ポジションをオリジナルに近づけ、ボール保持をシンプルに、狙う攻撃地点もDF背後と、手間や構え、時間をかけない攻撃。

ロスト時のカウンター予防の観点もあるが、試合を観た感覚は、味方の迷いを断ち切り攻撃をより(自分たちにとって)分かりやすくした、という印象だ。

中盤でブロックを形成したDFだったり、前プレからの寄せだったりは、正直今までの課題はそのままに見えた。

おそらくそれが仙台のDFにおいては特色であり、個性の部分なのだと思う。

この試合は、そこでの迷いやエラーへの手入れではなく、やはり攻撃の部分に対して手を入れたのだと思う。

それでも、栃木のプレッシングで後方の保持を妨害され続けたり、532でハーフスペースを潰されたり、これまで積み上げてきたプレーを続ける選手とそうでない選手との違いなどなどなど。

言えることはたくさんあるが、攻撃をシンプルにしたところで、ボール保持の手順や攻撃のプロセスが清流化したわけではなかった、ということだ。

どこでスタックしていて、エラーを起こしているのかもまだ、暗中模索しているのだと思う。

そんななか、代わりに祈りのチャントを唄うサポーター。

ゴールを決めたフォギは、まっさきにサポのもとへ向かう。

同点ゴールを決めた菅田も続く。

そういうひとつのゴールが、振る舞いが、続く者の灯となる。

 

「全てに於いて意味があり 凡てに於いて忌みが明ける」こう言ったのは、無名の書だ。

 

次戦、天皇杯名古屋戦後、AKIRAこと伊藤彰監督退任が発表された。

社長が契約解除とコメントしているので、実質解任である。

コーチの堀さんが後任だが、先行きは不透明だ。

なにより、今季のチャレンジすらも始まっていないというのが率直な感想で、その良し悪しを判断する前に終わってしまった。

僕個人の感情だが、キックの質、ポジショニングの質の向上を通して、プレーの質を上げていってほしいと思っている。

結果はコントロールできないが、ボールはコントロールできるはずだ。

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【ぼくたちの仙台が見たい】Jリーグ/第24節 vs清水エスパルス【ベガルタ仙台】

はじめに

さて、24節。

さっそくゲーゲンプレスで振り返ります。

では、レッツゴー。

 

↓この試合について。 

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先細りしていく攻撃。無抵抗のままゲームエンド。

完敗だったな。(3日ぶり2回目)

明らかに前節の敗戦を引きずったかのようなマインドと、連戦でフィジカルに限界があったなかで、時間経過とスコアとともに攻撃が先細りしていった。

仙台は、バックスからFWヨンジュンへロングを主体としていた。

ヨンジュンは、ハイボールのコントロールがうまく、ボールを収めてからの落としを山田、フォギが集まって打開を図っていた。

その過程にもひと手間があって。

FW山田寛人は左サイドへ外流れ。

代わりに衝撃氣田がハーフスペースにポジションをとったりしていた。

清水4231の31が仙台の3-2に前線からプレッシングをかけてきたことで、その背後を裏返したい意図だと思う。

仙台の攻撃思想は、基本的な部分がこのプレッシングの裏返しである。

この日は、前線からスピードとパワーで押し切るような清水相手に、後方の保持で裏返すよりは、そこを飛ばして裏返すことが主であった。

仮にロングセカンドを読まれていても、山田の外流れを使って前進するパターンも残しており、二段、三段構えで攻撃するのも、やはりAKIRA仙台の特徴である。

おかげで、肝心のファイナルの打開で、ポジション適性の問題が発生。

外流れの山田はゴールが遠いワイドのポジションをとることになった。

この移動時の疲労と展開もあって、時間経過とともにプレーの効果が薄れ、ゴール前で強引にシュートするシーンも増えた。

効果が薄れの部分でいえば、リードされると一本目のパスからDF背後を狙うようないわゆる縦一本を狙うようになる悪癖も加わっているので、山田寛人だけの問題ともいえない。

言えないあたりが根が深いのだけれど。

また、仙台は343のような形で攻撃陣形で、前線左から山田、ヨンジュン、フォギだったけれど、ヨンジュン→山田で集めて、逆サイドのフォギでフィニッシュの形。

ただ、フォギのファイナルでの攻撃は言わずものがなで、本来は右から左の方がファイナルでの打開においては良かったように思える。

右サイドに逆足のウィングがいれば、右からカットインして逆サイドの浮いた味方と繋がれるのだけれど。

ここは、新加入の松崎に期待したいところ。

なので、仙台は左からの縦への攻撃ルートが多く、清水としてもDFしやすいのではと感じた。

清水は、縦に激しく速いイメージだけれど逆展開の意識が強く、ワイドに張るウィングや外流れするトップ下乾を使って前進していたので、同じ一本でも仙台のDFはポジションがズレたりしていた。

本来仙台もそこを目指しているはずなのだけれど、リードされると精神的に追い込まれて焦るのか、相手にバレてるボールの進め方で攻撃しようとする。

2失点目の小出のミスは、完全に北川にパスラインを読まれているのだけれど、それでもパスを出してカットされていて、まるでチーム全体のミスを表しているかのようだった。

 

感想

なぜこうなった…という感想しか湧かない。

天皇杯藤枝戦では、さらなるオプションを増やそうと、SB加藤千尋を試したりMF松下のサリーダを許容したり、相手の対策への対策を少しずつ試していた。

磐田戦で不運とも言うべき2失点をし、新監督が就任した山口に敗戦するなど、ショッキングな出来事は多く、マインドとして下降線になってもおかしくはない。

ただ、徳島戦で非常に強度の高いプレーを見せ、課題はありつつチームを繋ぐ紐はまだ固く結ばれているように見えた。

それだけダービーでの敗戦が強烈だったのだろうか。

正直、山形戦ですでに、できていたはずのことができなくなっているので、山形戦の敗北も結果にしかすぎない気がする。気がするだけ。

そういえば、自陣で保持して逆展開でボールを解放して、一気呵成に打開を仕掛けるようなプレーはほとんど見られなくなった。

前掛かりでマーキングする相手MFの背後を使って、ミドルセカンドでファストブレイクを仕掛けるようなプレーも。

いろんなステータスの選手がいる時期なので、最も理解度の進捗に差が出ているでは、とも思う。

ただそれ以上に、彼らのマインドが自分のプレーに出ている気がしてならない。

技術が向上すればもっとうまくなれる、いま取り組んでいることで失敗しても次の糧になる。

まあそんな勝敗以外にも動機づけがあると、少し顔も上げられるのだけれど。

選手たちも、どこに手応え感を感じてプレーしていくのか悩んでいるように感じる。

分からない、暗中模索とはこのことかもしれない。

けれど、選手として、チームとしてこれだけは絶対に譲れないもの、がこんな時だからこそ顔をのぞかせるはず。

それがこのチームの原点だと思うし、それが見えないのであれば、それがチームの原点なのだと思う。

何で強みを出すのか、何なら相手を上回れるのか。

清水は、無敵のチームだ。

たとえ負けても、超攻撃的な姿勢、超アグレッシブな精神が足りなかったとできる。

良し悪しとは別に、負けても、内容がダメでも、精神性や姿勢に改善の余地を求められる。

AKIRAは、みんなに何を求めるのか。

精神性なのか、技術なのか、戦術的なプレーなのか、勝利なのか。

見せてほしい。

このチームの可能性を。

 

若狭「流れがなかなかできなかった試合でした」

試合後、1-4で敗戦した試合を若狭はこう振り返った。

前半は特に、いつもできるプレーができないことが多く、ミスをしても切り替えて奪い取りたかったのでできず、流れがなかなかできなかった試合でした。

「いつもできるプレー」と言いつつ、この試合、若狭は直近のCBとは異なるタスクを任されていた。

MFエヴェルトンと同列まで上がってMF化していた。

ワイドへのサポートだったり、中央CB菅田とパス交換することで、山形FWからのプレッシャーをかわすような役割だった。

その役割は、わりとできていたと思う。

早々に失点したものの、前掛かりにプレッシングをかけてきた山形は、仙台のボール出しの形を様子見するような時間帯があった。

相手の山形さんのホームでプレッシャーがかかってくることはわかっていましたし、逆にそれをしっかりはがせることによってチャンスが生まれると思っていました。

今日の我々は右サイドのところをちょっと変えながら入っていったので、今日はそういうところでは、私自身が選んだ戦術がもしかしたらうまくいかなかったのかなと思います。

AKIRAも語ったように、山形の前線からのプレッシングを右サイドの形を変えながら裏返したかった、裏返してファストブレイクまで持ち込みたかったのだと。

山形も、バックスがスライドして、後方の保持を3-2-2-3あるいは3-1-3-3で臨んできた。

そしてウィングの速さと強さを使っていく。

仙台としては、そのウィングの背後を使いつつ、ファストブレイクを仕掛けることで、MF横やバック3を攻撃していきたかったのだと思う。

ただ、若狭の言うように、結果としては「いつものプレーができず」、AKIRAの言うように「うまくいかなかった」だった。

若狭は、中盤でボールを受けるも、ターンの技術やファーストコントロールの技術が、エヴェや鎌田、中島元彦に比べると低く、少しコントロールがズレたところで山形の素早いプレッシングにボールを狩りとられていった。(決して技術が低いのではなく、それだけ中盤のポジションでボールをコントロールするのは技術とメンタルが必要ということ)

それを取り返そうとしたり、1度ミスしても逃げずに何度もトライしたこと自体は悪いことではない。

一方で、さらにミスを重ねて、精神的に自分たちを追い込んでしまった。

これは完全な個人的な妄想だけれど、GK小畑のミスもあって、全体的にミスにナイーブになっていてたように感じる。

「ミスしても大丈夫だ」という姿を見せようとして、結果として自分も追い込んでしまった。

チームスポーツの難しさでもある。

味方のミスを帳消しにするために、自分はミスできない精神的な追い込みがあるなか、ビハインドを跳ね返さないといけない。

これが「いつもできるプレー」ができなかった背景かなと感じている。

技術的には、まったく問題ない選手たちでも、少しのズレやミスの積み重ねで、本来の力をほとんど発揮せずに試合が終わってしまう場合がある。

これは、どんなサッカーをしていてもつきもので、仙台としてはまだ成熟したチームになっていない証拠でもあるなと思う。

それは、昨季の大失速で痛感したことで、実績のある選手や監督がいても、浸透していくには時間と経験が必要なんだと感じる。

逆に言うと、少しのきっかけで好循環を生み出していくと思うので、少しでもいつも以上のプレーができるよう、日常から突き詰めていってほしいと思う。

次節に向けて)まずはメンタルです。いつもできていることをやるだけです。しっかり回復して、次の試合に向けて準備するだけです。今日は見に来てくれたサポーターをあのような気持ちにさせてしまったので、早いうちにしっかり挽回しなければいけません。

若狭の言うように、しっかりメンタル面を回復してほしいところだ。

 

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【仙台勝たなきゃつまんねぇだろ】Jリーグ/第23節 vsモンテディオ山形【ベガルタ仙台】

はじめに

さて、23節。

さっそくゲーゲンプレスで振り返ります。

では、レッツゴー。

 

↓この試合について。

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ダービーを戦う以前に自分たちに勝てなかった仙台

完敗だった。

最序盤にGK小畑のミスで失点して、メンタル的な緊張関係をなるべく長い時間保つことができなかった。

とはいえ、ほぼ90分あるなかで、リバウンドメンタリティを発揮してスコアを取り戻すには十分すぎる時間があったはずだ。

それなのに、仙台のボールは、山形陣内へと進んでいかなかった。

仙台は、いつものように4231から3223でボール出ししたが、後方3-2のポジションを変更する。

およそ10分くらいから、若狭がエヴェと同列でポジションをとりMF化。

今まで苦手にしていたウィングタスクから右CBでポジションをとった小出。

これだけでも大きな変化といえる。

AKIRA仙台は、春先に中央CBである菅田をこの試合と同様MFラインまで上げ、後方で保持し、ボール出ししていた。

ただ、選手のポジションをとる手順だったり、理解が追いつかず、SBを横スライドさせてバック3を形成させる『簡易版』で手打ちとしていた。

ここにきて、このダービーで、再び仙台はCBのMF化がピッチに現れたわけだ。

呼応して、ウィングタスクはポジションのまま郷家が、これまで郷家が担っていた外流れでボール保持を維持する役割は、MFの鎌田大夢が担当。

保持の記号である『ウィング』、『インサイドMFの外流れ』を骨格的にも維持したやり方だ。

これはある程度理解ができて、やはり小出をそのまま真瀬のようにウィング化させるには無理があった。

同時に、中央、ハーフスペースのホールのポジションに前線の『2』がポジションをとっていて、それが郷家と中島元彦だったり、山田寛人だった。

バックスやGK林彰洋からのミドルパスを相手MF背後で彼らがレシーブ。

そこから一気呵成に攻撃を仕掛けるファストブレイクが、仙台の好調さを維持していた。(たとえばジェフ、ヴェルディ戦)

J2のMFは、前線のアタッカーの前がかかりに引っ張られて、仙台MFエヴェ、鎌田に誘き出され、背後に大きなスペースを生んでいたところに、山田寛人や郷家のような空中戦でも問題ないタイプが立つのは非常に脅威であった。

この試合においても、山田寛人は落ちて、前線はヨンジュンに任せていた。

ヨンジュンも、機を見て落ちることができるので、必殺技を内蔵した形だったかもしれない。

若狭がMF化した10分から幾分かの間、山形にとっても少し様子見の時間ができたので、ある程度、効果があったと言えるだろう。

 

仙台のマジックアワーは、ここまでだった。

 

まず、若狭のMF化はやりすぎだった。

若狭は、バックラインにおいては高いボールコントロール技術やポジションを見せるが、中央でFWのプレスバックを背中で受けながら対面するMF藤田や南を相手にすると、途端にコントロールを失った。

若狭がボールを持ってもロストする回数が増え、攻撃を受ける回数も増えるようになると、仙台は『いつもの』形へと変えていった。

これがだいたい35分くらいだったはず。

あとは、鎌田への藤田のアラートさも大きい。

どんなにウィング背後へ外流れしてもマーキングしてくる。

鎌田も中央でポジションをとってからではなく、かなり早いタイミングで外流れするので、動きがバレていたというのはあるかもしれないが。

また、GK小畑のミドルキックも、おそらく、展開的に仕方ないとはいえ1、2本ほどで、狙いの相手を誘き出してファストブレイクを仕掛ける形まで持ち込めなかった。

後方でのボール交換、サイドで味方がレシーブできるようなパスは得意であるものの、トランジションを起こすようなミドルセカンド、ロングセカンドを狙うようなパスではないのが、少し小畑の立場を厳しくしていると感じる。

余談だが林彰洋のキックは、わりとタッチラインを切るが、それでいいと割り切ってる節がある。

相手のスローインから自分たちがプレッシングを開始できる。

ある程度相手にも競ってもらうことでDFのポジションを崩してもらう意図を感じる。

 

まあそんなこんなで、仙台は山形が前がかかりにプレッシングをかけてくることを予想して準備していて。

そして、その準備はキレイに決まったのだけれど、やはりもともといないメンバーの補填込みなので、さすがにAKIRAさんの戦術だけでカバーしきれなかった印象だ。

仙台は、前半に2失点。

後半開始直後にCKからヨンジュンが巻き返すゴールを決めるが、その後立て続けに2失点。

ゲームエンドまで持ち込まれた。

 

感想

バランスよく勝てるチームの例として、個人的には代表チームのサッカーを思い浮かべる。

相手や状況によってはボール保持して、相手が格上だとDFラインを整えてカウンターやプレッシングの機会を伺う。

最近の仙台にも同じような印象を抱く。

なので、若狭のポジション移動は、最近の仙台にしては相当チャレンジなことをしたな、というのが率直な感想だ。

ただ、選手たちがそこまでの戦術負荷に耐えられなかったというか、相手を観察してとか準備の段階で得た手応えを試合に持ち込むまでに至れなかったのが、この試合のすべてだったと思う。

これまでの取り組みの延長だとは思うのだけれど、正直、唐突な印象が強く、この試合欠場した中島元彦を組み込んだゲームの進め方を急遽変更することが強いられたのでは?ともうかがえる。

いずれにせよ、ある程度、これまでのボール保持の延長というか再来のように感じる一方で、あちこち空いてしまった穴をふさぐ手立てをして、すべて決壊してしまったとも感じる。

書いてはいないのだけれど、郷家はプレスバックが希薄で全体がリトリートしても追従しないシーンが多いし、エヴェも鎌田も、ホルダーへの意識が強すぎて、本来守るべき中央へのパスラインを管理しきれていない。

全体を観ても、押し込まれるならそれはそれでボックス内に4-4のラインで守るとか、ボールを奪われたあとのカウンタープレスが不足しているとかとか。

この試合「も」、失点すると明らかに強度が鈍り、手っ取り早いプレーを選択して、摩耗してミスをして立て続けに失点している。

申し訳ないのだけれど、日常ですでに差がついている。

徳島の日常、山形の日常が仙台の日常と違うのは当たり前だ。

でも、彼らより上の順位にいたいのなら、彼らとは違う、彼らより高い視座と具体的な行動で日常を創っていくしかない。

仙台が積み上げているものなんなんだろう?

4231から3223へポジション移動の仕方?ハーフスペースでのボールの受け方?プレッシングのやり方?

本当にそれだけ?

まだ、全然、物足りない。

 

西谷和希の『味方に向かうドリブル』につききれなかった仙台DF

ほぼマンツーマーキングで挑んだ徳島戦。

仙台のマーキングは、ざっくりこんな感じでした。

 

 

特徴は、左インサイドMF杉本にはエヴェがマンツーマーキング。

ここはべったりでした。

一方、逆サイドの玄に対して、松下がマンツーかと思えばそうでもなく、やや浮いたように中盤をカバー。

代わりに左SBテヒョンのアラートの高さが目立ちました。

ウィングのプレスターゲットも異なり、右ウィング郷家は左CB安部へのプレッシャーを強めます。

いずれにせよ、ある程度はっきりと、誰が誰をマーキングするのかは明確だったと思います。

 

後半は、柿谷が落ちるプレーを頻繁に見せて、バックスからのボールを預かるようなプレーを見せます。

SB-CBの間にポジションをとるのも絶妙で、マーク番の若狭がついていきますが、そこへ、徳島左ウィング西谷が斜行するように柿谷へ向かってドリブルを開始。

瞬間的には、徳島の選手2人が重なりますが、同時に仙台のDFもつき切るのか、マークを渡すのか迷っているようでした。

 

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ここまで仙台は、前線からのプレッシングでボールをタッチラインへ寄せて、その間に次のホルダーへのマークを準備します。

ボール進行ルートを限定して、マークする相手を明確にすることで、プレッシングに明確な目標を持たせていました。

これが仙台の復調の要因だったと思います。

ボール保持をテーマに掲げていましたが、同時にプレッシングにも注力していました。

4月ごろからようやく寄せ方がハマりだし、全体のプレッシングも安定していきました。

ただ、徳島の選手たちは、仙台のマンマーキングをあまり苦にしている様子は見受けられませんでした。

そもそもボールコントロールの技術が高く、たとえば右ウィング西野は何度もロングボールを正確にコントロールしていました。

少し仙台が寄せてスペースを制約しても、プレーできる時間とタイミングがあったように感じます。

そのうえ、西谷のようにマークに捕まっている味方を認識して、あえてそこへ突っ込むようなドリブルを仕掛けられると、仙台としては対応が難しかったのだと思います。

いずれは、マンマーキングで『寄せる』フェーズから『奪う』フェーズに切り替えてDFする必要がありますが、仙台は『少し寄せてすぐ奪う』イメージがあります。

もっと寄せて、相手の攻撃を先細りさせてもいいのではとも思います。

今のホルダーから奪おうとしないまでも、次のホルダーで奪って、すぐに攻撃に移りたい様子が見て取れます。

それもまた攻撃の早さに繋がっているのですが……

相手の攻撃が広いなかでDFするのも難易度が高いでしょうし、もう一度立ち帰って、前線からのプレッシングでボールをタッチラインへと寄せて、自分たちが奪いやすい形にもっていくといいかなと感じます。

あとは、割り切って自陣へリトリートしてしまう準備もできたらいいのかなと。

とはいえ、全部が全部できることもないので、できることを増やしているなかなので、今取り組んでいることを積み上げてほしいです。

徳島は、本当にいい相手だったと思います。

 

総立ちのカントリーロード

週末、仙台スタジアムは、総立ちで選手を迎え入れることになった。

360度総立ちで、選手を鼓舞する。

いつからか、バックもメインも、座って試合を眺める席になった。

当然、跳ねる必要も、大声を出す必要もない席であるのは承知している。

ただ、いいプレーへの拍手や、気持ちが昂ってチャントを口ずさんでしまうような、実は内に秘めた熱量は高いエリアなのである。

それすらも鎮めてしまった。

この3年間という時間と、それまでにクラブとサポーターが経験したことの物量と質量は計り知れない。

選手たちがピッチサイドに出て入場の準備を整える。

本来は、試合直前のチームコールからだったが、みんな自然と立ちあがる。

 

ひとりで来たひとも、カップルで来たひとも、夫婦できたひとも、僕もみんなが立って、カントリーロードを口ずさむ。

タオルを目の前に掲げるが、当然、夫婦やカップルは2人でタオルの端と端をもって掲げる。

僕は、その光景がとても尊く、そしてどれだけかけがえのないもので、儚く、そして大切にしなければならない光景に思えた。

バック自由やゴル裏自由のような熱狂的な応援というわけでもないのだけれど、それでも目の前の選手たちを、チームを応援したい気持ちには変わらない。

一人一人の力は弱くても、大切なひとと一緒に強く、ベガルタ仙台を応援しようとする、そんな姿に見えた。

静かに、滾る、青く気高い炎のように。

 

僕は、少し泣きそうになりながら、このスタンドの風景を見ていた。

そして、カントリーロードを口ずさんでいた。

夕方の沈みかけた太陽は、スタンドを金色に輝かせ、幾千もの星たちが輝く夜へと誘う。

そんな黄昏時に、僕たちのカントリーロードが滲んでいく。

 

仙台は、ベガルタ仙台は、ひとりじゃないって、そんなふうに思えた。

応援するひと達が必ずいる。

青い炎は、チームコールとともに、大きな炎へとその姿を大きくしていく。

試合開始の笛が、吹かれた。