はじめに
5節群馬戦、前半20分15秒の小出悠太が相手のクリアボールを回収した場面からの中島元彦のバックヘッドまでのシーンを振り返る。
相手陣内へボールを進める
仙台は、532からWBがワイドに高い位置を取り、アンカー松下とバック3で◇をつくる。
相手の2FWに対して、4人が3レーンにポジションをとることで、常にプラス2状態を維持するためだ。
そこから、WBへのパス。
相手FW-FWの1stプレッシャーラインを「切る」パスである。
後述するが、左WB内田に対して、左インサイドMF中島元彦は左ハーフスペースでボールを受けられるようポジションを取る。
相手のDFがそろっているため、バックパスでやり直し。
ボールは中央CB菅田を経由して、右CB小出悠太へ。
松下がポジションをキープすることで、相手FWのマーキングを受け、バック3に時間とスペースをもたらす。
ボールに触らなくても、ポゼッションに貢献するプレーだ。
ここでも、4人で◇を形成して、ボール保持を安定させる。
小出もWG化した右WB真瀬への「切る」パスラインを持っておく。
ちなみに郷家友太のポジションは、伏線である。
ボールは、再び再び中央から左サイドへ。
その際、黄色四角形で囲ったエリアに2人のインサイドMFがポジションをとる。
左CBテヒョンから、内田へ「切る」パス。
ここでも、内田と中島元彦は繋がっている。
斜めに刺せるパスライン、ポジションを確保。
サイドチェンジを2度繰り返したため、群馬のブロックがだんだん下がっていく。
仙台にとっては、ファイナルサードに押し込むフェーズへと移行しつつある。
左サイドは、群馬右WGのリトリート意識が高く、ポジションが崩れない。
なのでまたもやり直し。
でも、相手を押し込んでいるので、仙台が使えるエリアが広くなっている。
テヒョン→菅田を経由したところで、群馬のプレスが入る。
FWは、松下のマークを捨て、小出に寄せる。
同時に、左WGも小出に寄せる。
小出のキックが別格であったけれど、やはりハーフスペースにポジジョンをとる衝撃氣田にボールが入り、郷家へレイオフ。
「ホール」という単語を連呼したAKIRA。
黄色四角形のスペースを指す。
郷家がズレて、小出からのパスを受けられるポジションであり、衝撃氣田からのレイオフを受けられるポジションをとる。
CBからの縦に刺すパスに対して、衝撃氣田、郷家がボールと一緒に「待ち合わせる」。
相手WGがバックスにプレスをかけるなら、背後で郷家、あるいは衝撃氣田に時間とスペースができるダブルパンチ構造。
相手をファイナルサードに押し込む
そして、ファイナルに押し込むフェーズに。
郷家は、FWとなってボックス内へ侵入。
中島元彦も逆サイドからボール周辺に寄る。
そして、満を持して、アンカー松下が相手FW背後のエリアを使う。
ボールを包み込むようなポジションを取る仙台。
カウンタープレスのポジションをとりつつ、右ハーフスペースを攻撃する。
そして、密集地帯からの解放。
三度目の内田。
今度は、より内側のレーンに近いポジションで、しかも時間とスペースがある状態でボールを受ける。
群馬DFを完全にボックス内に押し込んだ。
こうなると、タッチラインでボールを受けた時と異なり、相手DFはゴールを守ることに意識づけられるため、内田のプレーの選択肢が広がる。
ここで左足を切ってきたDFを切り返し、右足でクロス。
中島元彦へのバックヘッドへと繋がった。
群馬の選手のほとんどが自陣あるいはボックス内にいるので、ここから攻撃に転じることは難易度が高く、仙台にとっては失点するリスクの少ない状態と言える。
仙台のボール保持攻撃において、理想に近い形だったように思える。
感想
WG化したWBへの切るパス、WBから斜めのパスを刺す意識、サイドチェンジを使った左右の揺さぶり、やり直し、「ホール」と呼ばれるハーフスペースの四角形へのポジション取り、押し込む、ゴール前でボールを包むようにカウンタープレスのポジションを取る、解放する、などなど。
ボール交換しながら、相手や状況に適合したポジションをとり、相手を寄せては突き放して前進し、押し込んで、カウンターを受けづらい状況を作ってフィニッシュへ持ち込む。
あと、これだけ押し込まれるとDF側が再び攻撃に転じても、マインドを切り替えないといけないので、ミスや速度が上がらないなどありそうだと思った。
実際、前半の群馬は、スローペースでの攻撃であった。(そういうプランだったかもしれないが)
WGからのボール出しやハーフスペースでインサイドMFがポジションを取ることなど、Xaviの考えに通ずるところが見られて面白かった。
ひとつのミスやポジションにつくタイミングが遅れると、全体のプレーが悪くなってしまう面倒くささがあるが、逆を言うと自分たちで解決できる問題であり向上の余地でもある。
まだまだ奥行きのあるサッカーを観ることができる。
そんな未来を見出したシーンでしたとさ。