ポテトサラダ
01
「何頼む?」
「えー、ポテサラいいですか」
「ポテサラね。すみませーん!」
「ポテサラひとつと、スモークサーモンください」
「つーかおかしくないですか」
「何が?」
「あんなに納期調整したのに、結局元の納期で間に合うって、最初から言えって話ですよ」
「そういうものよ」
「まあいいんすけどね。最後うまくいくならなんでも」
「そうね。目的優先で動けるならそれに越したことないから」
「あ、そういや先輩あれ見ました?」
「何よ。あれって」
「『鬼殺の刀』っすよ。映画です、映画」
「いえまだ見てないわ」
「アニメは見てるんすか」
「アニメも見てないのよ。ヤバいかしら」
「まあいいんじゃないっすか。小中学生は必見らしいんすけど」
「正直もう新しいアニメを追いかけるとか体力が持たないのよ」
「分かる。結局、アメプラとかで見てるのって昔見てたやつとかですもん」
「何見てるの?」
「ポチャモン……とかですかね」
「懐かしいわね」
「え、先輩は何見てるんですか」
「なんだろ…『孤立のグルメ』とか?」
「しっぶ(笑)」
02
「とりあえずサッカー観ようかなってドゾーンつけるんだけれど、だんだんながら見になって、あんまり集中して見なくなって、結局90分間『サッカー音』を垂れ流してるわ……」
「分かる」
「じゃあと思って気合入れて見ようとするのだけれど、なんというか、応援してないチームだと気合入らない…っていう」
「分かりみ」
「ねえ、その『分かりみ』って流行っているのかしら」
「え、わりと使いません?『分かりみ』」
「使わないけれど、誰かが使ってるところは見たことあるわ」
「なんか、俺も聞いた話なんすけど、『~み』って度合いみたいないイメージあるじゃないっすか。あれです」
「あれですって。まあ言いたいことは分かる気がする。気がするだけなのだけれど」
「俺たちも老人っすよ。老人」
「あ、飲み物頼むわよ」
「あーじゃあ俺ビールで」
03
「なんかあれじゃないっすか。ブログとかやれば観れるんじゃないっすか」
「ブログ?」
「なんていうか、Twitterでいつだかに見たんですけど、試合を観た内容をブログに『書かないと!』って思うと集中できるらしいっす」
「面倒くさ……」
「それっす。観るだけでもこっちは頑張ってるのに、そのうえ書くとかありえんでしょ」
「しかもどうせどこの馬の骨かも分からない有象無象たちからアンチコメもらうのがオチよ」
「たしかに。気が狂ってんなブロガー」
「あ、私串盛頼んでいいかしら。何か頼む?」
「じゃあ俺、レバカツ…いっていいっすか?」
「レバカツね。すみませーん!」
04
「レバカツめっちゃうまいっすよ」
「私レバー苦手なのよね……」
「え、そんなにレバー感ないっすよ。俺もどっちかっていうとレバー単体はきついし」
「そう?……あーわりといけるかも」
「結構このソースがビールと合うんすよ」
「へー、食べ合わせとか考えているのね」
「先輩。ビールとポテサラが至高なんすわ」
「急にどうしたのよ」
「あの芋とマヨの調和がいいんすわ」
「あらそうなの」
「先輩ポテサラ食わないんすか」
「別に家で作れるからお店では頼まないだけよ」
「なるほど!自炊とか面倒くないっすか」
「そう?簡単なものなら誰でもできるわよ」
「えー、ぜってー無理っす。まず調理器具揃えるところかっすね」
「ラーメンぐらいは作るんじゃないの?違うの?」
「まあ…時々ですね。大体なんか買って来たり食いに行ったりしてます」
「料理男子の方がモテると思うのだけれど」
「別にモテなくていいっす」
「え?そうなの?」
「別にいいっすよ。面倒だし、そういうの。先輩と飲んでる方が楽しいっす」
「あ…そう……」
「先輩」
「何?」
「何頼みます?」
「……じゃあレモンサワーで」