蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

「流れよ僕の涙」と、少女は微笑んだ。3

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この素晴らしいサッカーに祝福を

「それではさらに進めてみましょう。フォワードが空けたスペースに、セントラルハーフが入る。これでどうでしょう」

「もう誰が誰についていった方がいいのか……」

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「そして、これが守備側にとって最悪型です」

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「うわ…DFラインを突破されちゃった……」

「こうやって、フォワード、ウィング、セントラルハーフによるダブルパンチで配置転換して、守備側が判断を間違えたら突破できる仕組みなんです」

「これどうやって守るのよ……」

「それが今回の問題というわけなんです。御前さん」

つとめて笑顔に。

でなければ釣り合わない問題。

気に食わない問題。

「そんな笑顔で言われても…実際に突破される可能性があるってことでしょ?どこを防いだら……」

「では、最初の盤面まで戻しましょうか」

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「この場面、注目は左サイドハーフの位置です」

「位置?ここじゃダメだってこと?」

「いえ、そういうわけではないのですが、もっと内側に絞り込むべきでしょう」

「内側に?外にいるウィングはどうするの?」

「まあ落ち着いて聞いてください。サッカーにおいて、中央3レーンは非常に重要なエリアです。特に、ハーフスペースの攻防は、さらに厳しくなっています。そのハーフスペースを守るんです」

「ほ、ほう……」

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「こうして、フォワードへの縦パスを防ぐ位置を取るんです」

フォワードが降りた時は?セントラルハーフとの、その、『ダブルパンチ』ってやつが発動した時は?」

「そう焦らないでください御前さん。フォワードは、サイドハーフの目の前ですし、ゴールから遠くなったのですから、ボールが入ってからの対応でもいいです。セントラルハーフにこそ、縦にボールが入らないよう警戒するんです」

「な、なるほど。そうなると攻撃側としては、無理やりロングボール入れるのもどうかと思うし…空いてるウィングを使うのかな……?」

「ご明察です!御前さんにもまともな頭があることに、激しい感動を覚えていますよ!」

「アンタさらっとディすってんじゃないわよ!!」

 

つかさの刃

「ウィングにボールが出ることは織り込み済みです。今度こそ、サイドハーフがスライドして対応します。連動して、ライン全体は、後ろに下がることになりますが」

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「なるほど!これで後ろを守れるのか!サイドバックが引っ張り出されることもなくなる!」

「ええ。だから僕は、この問題が気に食わないんです」

「え…?それってどういうこと?」

気に食わない。

答えも、証明も。

いやこれを問題と呼ぶべきなのか。

 

これは、いわば処刑台。

僕に負けを強いるための。

こんなことをよく考えつくものだ。

 

「答えは……」

戦術ボードにペンを走らせる。

想像はできていたが、本当にこんな答えになるとは。

書き終えると御前さんの顔は、青ざめていた。 

 

『僕の負け。』

 

僕がこう書いたからだ。

 

人物紹介

 東照宮 つかさ (とうしょうぐう つかさ)

 神杉高校3年生。

 サッカーオタク。観る将。

 高身長。肩ぐらいまで伸びた髪をバレッタで束ねるスタイルに。

 一人称は僕、一人の時と朗と話す時は私になる不敵少女。 

佳景山 御前 (かけやま みさき)

 神杉高校3年生。東照宮つかさの同級生。

 自称永遠の宿敵<エターナルライバル>。

 東照宮への対抗心、闘争心で勝負し超越したいと考える普通の宿敵少女。