蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

「君が広く攻めるなら、私はもっと広く攻めましょう。」と微笑む君。6

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新・3年生

春。

まだ少し寒い。

登校。

道を歩く女子生徒に声をかける男子。一人。

「おはようございます。詩さん」

国府多賀城朗。ただのサカオタ。

「おはよう。朗」

宮城野原詩。ただの重い女。

「少し待っててもらえれば、一緒に行けたんですけど…」

「あら、ごめんなさい。でも、そういうのは、本来幼馴染キャラがやるものだと思うのだけれど。」

「いやべつにキャラとか関係ないでしょ…」

「それに…」

「それに?」

「昨日の夜はあんなに激しかったのに、よくもまあそんなぬけぬけと朝の登校の話ができるわね朗。そういうデリカシーが一ミリも感じられない発言、私だからいいものの、ほかの女だったらあっという間に破局よ。私が聖母マリアのような寛容さを持っていたことに、もっと感謝をしてほしいものね。」

「ちょっと!!昨日というか深夜ですけど、スカ○プ繋ぎながら試合観ただけすよね!!!激しいのもプレミア特有の試合展開ってだけですよね!!!」

相変わらず。仲がいいようで。

「ああやってボールを追いかけまわしたり、ゴール前になるとシュートを撃つことしか考えられなくなるのどうにかならないのかしらね。」

「いやそれが醍醐味だったりするからね!!!」

英国からの花嫁

着席。

もろもろのおしらせ。

受験。大事な時期。大事じゃない時期なんてあるのか。

そしてひとつおしらせ。

「みなさんにひとつおしらせです。去年の9月から日本を離れるのでお休みされていた八乙女さんが3年生から復帰することになりました。」

戦慄。

戦闘態勢を取る。宮城野原詩。

「入って。」

扉が開く。

金色の髪をなびかせ。赤いリボンで結んだ「今日は」ツインテール

帰ってきた。

「あらためて、八乙女李七さんもこのクラスの一員だから、大丈夫だと思うけど、みんな仲良くお願いね。」

チャイム。休み時間。

金色の周りにできる壁。人垣。

「はは、すげーな李七。人気者だもんなー。」

「朗も行かなくていいのかしら。せっかく幼馴染が半年ぶりに帰って来たというのに。少し冷たいんじゃないかしら。」

「ああ、まあ僕は別にいいですよ。どうせ家も近いし、そのうち話すことになるでしょ。」

やばい。朗。それは悪手だ。

「……そう…『俺は李七のことをいつでも好きにできるからお前たちの後にたっぷり楽しんでやるよ(イケボ)』って言いたいのね。そういうことなのね……」

「違う違う!近所だし別に今じゃなくてもいつでもいいっていうか!」

「まるでレアル・マドリーのような強者の余裕みたいなの一体なんなのかしらね…そんなの『今日家に両親がいないから、一緒にご飯食べようよ(イケボ)』みたいなイベントが発生するに決まってるじゃない…私とは朝一緒に登校してくれないけど、八乙女さんとはいつでもできるってわけじゃないの朗…」

浮かび上がる黒いオーラ。セカンドインパクトの続き。世界の終わり。

「そんなアニメ展開ないですって!!!あと、やっぱり朝一緒に登校したいんじゃないですか!!!なんで言ってくれないんですか!!!」

黒い空気に、襲来する、金色。

「久しぶり、朗!」

「お、おう李七。元気だったか?」

「なによ心配してくれてるの?もちろん元気だったに決まってるでしょ?まあでも、ずっとママの実家にいてさすがに疲れたかも…」

「そ、そうか、まあよかったな…」

「なに?もしかして寂しかったの?それなら私もよ朗。早く日本に帰りたくて仕方なかったわ。ああ、でもそれなりに向こうも楽しかったんだけどねー」

「いいよなーイギリスだもんな。で、プレミアは?現地観戦できた?」

「ええ当たり前よ!と言いたいけど、実際スタジアムで観れたのは1試合だけだったわ…なかなか行けなくて。」

「まあピアノの練習と発表が本業だもんな。でも、1試合は観れたんだな!すげえよ、憧れるぜ!」

「何言ってるのよ朗。結婚したあとなんていつでも観に行けるじゃないの。今年で3年生になったんだし、そろそろ卒業後について具体的に話を詰めないといけないわね!」

「え!ああ、いや、それはだな…」

圧倒的輝き。黒さ爆発。

「………おかえりなさい八乙女さん。」

「ん?ああ、いたの宮城野原詩。相変わらず彼氏も作らずマイナスオーラ全開のオタクサッカー人生まっしぐらって感じのようね。」

「少しはイギリスの曇天で頭も心も曇っているかと期待していたのだけれど、あなたの方こそ相変わらず能『天気』のようでむしろ感心してしまったわ。」

日英戦争。

「言ってくれるじゃないの宮城野原詩!あんたみたいな根暗性悪グラビティ女がいまだに地上を闊歩していることに私の方が驚いているわよ!」

「あなただって、もう少しイギリスに居た方がよかったのじゃないのかしら?あなたみたいな頭すっからかん能天気バカがいた方がもう少し晴れの日に貢献できた気がするのだけれど!気がするだけかしら!」

止まらない悪口のプレス合戦。

「はいちょっとストップ!!休み時間終わるから!!」

ハモる。二人。

「「続きは放課後ね!!!!!!」」

「あの、僕の精神が持たないのでもうやめてください…」

新しい攻め合いのはじまり。はじまり。 

人物紹介

宮城野原 詩 (みやぎのはら うた)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタクなのは隠している。見る将。李七とはあらゆる面でライバル。

八乙女・ヴィクトリア・李七 (やおとめ・ヴィクトリア・りな)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタク。見る将。父親が日本人で外交官、母親がイギリス人で作家でハーフ。

 名前の「七」は、エリック・カントナの背番号から。

国府多賀城 朗 (こくふたがじょう あきら)

 仙台市内の学校(神杉高校)に通う高校生。

 サッカーオタク。見る将。 サッカーの見方を勉強中。

 李七とは幼馴染。子どものころに李七をお嫁さんにすると約束したらしい。