蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

「君が広く攻めるなら、私はもっと広く攻めましょう。」と微笑む君。2

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冬。

勾当台公園。寒い。とにかく寒い。

「そもそもの話をしてもいいですか?」

「なにかしら?どうして私たちが出会ったのか、それとも、出会ってしまったのかを話そうと言うのかしら。いいわ。あなたがそれを望むというのなら、いくらでも相手してあげる。でも、残念ね。これが世界の選択だということを骨の髄まで知ることになるわ。」

「なんでそんなに壮大な話になっちゃうんですか…」

大げさ。癖。

「なによ違ったの?。それは残念ね。」

「残念って…いや、中央からサイドへのカットアウト戦術は分かりました。でも、ハーフスペースに移動したウィングがそのままハーフスペースを使うやり方もありますよね。というか、攻撃側としてはそっちの方がメインというか…」

不用意。スイッチ。オン。

「そう…そうよね…?

「詩さん…?」

そう!ウィングのハーフスペース攻撃こそ、4-4-2攻撃の要諦っ!(2カメ)花形っ!(3カメ)相手のセンターバック-サイドバック-セントラルハーフ-サイドハーフの四角形の中心で受ける『焦点のプレー』!1人で4人の相手に選択を迫ることで、守備陣形を崩壊させる一手になる…。なんて恐ろしいのかしら…。あと、セントラルハーフとサイドハーフの背中で受けられたらもうたまらないわ。あッ、セントラルハーフとサイドハーフもだけれど、観ている私もね…フフッ!ああでもでも、あえて前で受けてからバックステップで視野から消えるようにして相手を引き連れれば、ボールホルダーに時間とスペースを与えることができる。ポゼッションっていうのは、『ボールを持っていなくてもポゼッションできる』のよ…ふふふ…でも、そのまま目の覚めるような楔パスをいとも簡単にターンで前を向く時なんて…ああ…私こんなに贅沢していいのかしら!」

圧倒。圧縮。圧勝。

「(完全にスイッチ入っちゃったよ…)」

「それからそれから…あーでもそれは私のなかでも結論が出ていなくて…ふふふ…」

一時停止。幽体離脱解除。

「ストップ!ストップ!分かりました、分かりましたから、ひとつずつ説明をお願いします!」

「…!…ごめんなさい。それで、なんだったかしら?」

「(完全にオタクモード全開だったな…)ウィングのハーフスペース活用術を教えてください…」

 4-4-2ウィングのハーフスペース活用術

「順を追って話していきましょう…」

「そうね。何事も順序というものがあるわ。朗君みたいにいきなり迫っても、こちらとしては対処に困ってしまうわ。まずはお友達から始めましょう。でも、そういうやり方、私嫌いじゃなくってよ…」

「ち、ちょ、待てよぉ!(CV:木村拓哉)最終的に僕のせいになる理論に名前をつけてもらえませんかね!」

新理論提唱。アインシュタイン

「まずは何から話せばいいのかしら?ゲームメイカータイプがウィングに入った時の素晴らしさについていかがかしら。動ける司令塔なんて激萌えよ。ダビド・シルバ?それとも、トマーシュ・ロシツキーのほうが好みかしら?私はどちらでも…いえ、決められないわ…!」

恍惚。予防。

「はいストップ。えーと、『ウィングがハーフスペースを使う』って、具体的にどんな良さがあるんです?」

「そんなの、大体分かるでしょう。」

投げやり。ほかに話したい萌えポイントがある。

「いやいや、そんな分からないですよ…」

「まったく…こんなものを読む読者は大体変わり者か変態のどれかと決まっているのだから分かってるはずよ。」

「詩さん、あんまりメタメタしいこと言わないでください!読者ってなに!!僕分かりません!!みなさん好きですよ!!」

本当にやめてほしい。ドキッとする。作者が。

「まあいいわ。とても簡単に言えば、2人以上の選手間に立つことで、どう対応するのか相手を迷わせることができる。」

「たとえば、ウィングならサイドバックが見るのが基本ですけど、サイドバックセンターバックの間に立つと、どっちがついていくか判断しないといけないってことですよね?」

「そうね。もちろん、そのままサイドバックがついていくこともあるわ。でも、本当に守らなければいけない所ってどこかしら。」

「あ…それは…」

「ねえ朗君。私だって守ってほしい時ぐらいあるわ。これでも一応、白馬の王子様の登場を待ちわびるような純真無垢な乙女心を持ち合わせる大事なお年頃なのよ。そうやって恥ずかしげもなく全部言わせようというのなら、デリカシーをミキサーにかけて毎日飲むことをおススメするわ。」

翻弄。でも、やっぱり壮大。

「だから!変な方向にもっていくのやめてって!DFラインの背後!裏のスペースのことでしょ!」

動揺。そろそろ、慣れろ。

「……冗談通じないわね、その通りよ。」

「もっと冗談っぽく言ってくださいって…」

ウィングの焦点のプレー

サイドバックがついていけば、『本当に守らなければいけないDFラインの裏=ゴール前』が空くことになるわ。センターバックやセントラルハーフがカバーに入るけど、本当はゴール前中央を守ってほしいわよね。」

「そうですね。一番大事なゴール正面を守る選手がいなくなる…」

「でもどうかしら。いつも朗君が私へするように、無視して放置プレイで快感を感じるのなら別だと思うのだけれど、ことサッカーに関していえば、そのままハーフスペースで前を向かれることがどれほど危険で、恐ろしいほどに傲慢か。」

特殊な性癖の持ち主。十人十色。

「放置プレイもしないし、快感も感じてないから!!いや、無視するわけにはいかないと思いますよ。だって、DFラインとの勝負になるじゃないですか。それで突破されたらGKしか守る選手がいないですし。」

違ったらしい。冷たい風が吹く。

「そうね。相手選手間でボールを受ける『焦点のプレー』は、守備側にとってとても厄介なプレーになるわ。誰がついていくのか、いかないのか。瞬時に複数人に判断させることになる。」

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「それでさっきのカットアウトに繋がるんですね。守備側は、中央にボールが入って『焦点のプレー』を防ぎたいと考えるから、サイドが、ワイドレーンが空くんですね。」

「そう。でも、少しでもサイドに張ってる選手が気になるようなものなら、ロンギヌスなのかカシウスなのかは分からないのだけれど、槍のように『焦点のプレー』のウィングに楔のパスが突き刺さるわ。」

「そういう駆け引きというか、攻防って、こういうのが分かって観るとすごく面白くなりますね!」

帰路

寒い。午後の勾当台公園

「そうね。ただ、私の個人的な感情を言わせてもらえれば、朗君だって、私を突き刺してもらって構わないのよ。そちらのほうが張り合いがあるってものよ。私はいつでも突き刺される用意があるわ。さあ…」

スルー。冷める120円。

「……あの、コーヒー飲まないんです…?」

「あらごめんさい。話に熱中してしまったわね。でも私、こう見えて猫舌だから丁度いいかもしれないわね。ありがたくいただくことにするわ。」

「どう見たら猫舌って分かるんですか。とういか暖かいものがほしいって言ったのは詩さんでしょ!せっかく買ってきたのに!」

お開き。またどこかで。

「あら?そうだったかしら?」

「もう!!帰る!!」

「そうね帰りましょう。こんな激寒な公園でサカオタ歓喜の会話しかできないなんて、健全な男女2人の高校生がするべきことではないのだから。」

「もういい!!!帰って移籍ネタ漁るもん!!!」 

人物紹介

宮城野原 詩 (みやぎのはら うた)

 17歳。仙台市内の学校に通う高校生。朗とは同級生。

 サッカーオタクなのは隠している。見る将。サッカーの話になる(朗との話になると?)と冗談多め、饒舌(毒舌)多め。隠しスイッチがある。

国府多賀城 朗 (こくふたがじょう あきら)

 17歳。仙台市内の学校に通う高校生。詩とは同級生。

 やっぱりサッカーオタク。見る将。 サッカーの見方を勉強中。からかわれ上手?ツッコミ能力だけは日々向上。