蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【その船を漕いでゆけ】Jリーグ 第34節 サンフレッチェ広島vsベガルタ仙台 (1-0)

はじめに

 さあ、いきましょうか。リーグ最終戦アウェイ広島戦のゲーム分析。すべての終わり。戦い続けた者たちに訪れる休息。走り続けた先に辿り着いたひとつの未来。失ったものも手にしたものも、すべてはあなた達だけのもの。痛みも傷もなにもかもを抱えて、再び、走り出す。最後も、ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタ仙台は、4-4-2。両翼にリャン、ワタル。右SBには大岩が入る。

 広島は3-4-2-1。すごくベガルタっぽかった。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。(文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)
  • また、ボール保持時については、①相手守備陣形が整っている(セットオフェンス)、②相手守備陣形が整っていない(ポジティブトランジション)に分ける。ボール非保持時についても、①味方守備陣形が整っている(セットディフェンス)、②味方守備陣形が整っていない(ネガティブトランジション)場合に分けている。

ボール保持時

渾身のトムキャット可変4-4-2。両翼にはリャンとワタル

  ベガルタのボール保持攻撃におけるビルドアップは、椎橋がCB脇に降りて富田がアンカーポジションに入る逆丁字型ビルドアップ。広島のセット守備4-5-1に対して、2枚優位の状況を作る。広島も人基準で前プレを仕掛けてきたこともあり、CHが飛び出して5-3-2のようになる。永戸、蜂須賀はウィングロールとして、相手WBをピン留め。そうなると、椎橋目掛けてプレスをかけるとそのスペースを誰が見るんだい?問題が発生する。

 この試合、両ウィングに入ったのはリャンとワタルだった。2人とも、タッチラインには張らず、ワイドレーンからハーフレーンにレーンチェンジするトムキャット可変で広島ブロックを崩そうとした。特に、前述の広島前プレ後方のスペースを使ってボールを持とうとした。おかげで2トップは、2トップのポジションで役割を果たせることになるし、1人が降りてきても誰が見るんだと選択肢を迫ることができる。

図1

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「ハーフスペース」を攻略すること

 どんなにシステムが変わろうとも、選手が変わろうとも、やり方が変わろうとも、徹底的に狙ったのがハーフスペース(トレーラーゾーン)だった。いわゆる選手間の場所である。相手の守備にとって、焦点のプレーをしかけることができるので、ブロックを崩す小さなズレを生み出しやすい。ここを狙うのは、現代サッカーにおいて、非常に重要になっており、それをまさか仙台の地で見ることができるとは思わなかった。

 この試合でも、クラブのレジェンドとクラブの未来がそろってハーフスペースを攻略しようとする姿を見せた。タスキは、繋がっている。 

ボール非保持時

かつての自分たちである3-4-2-1への抵抗

 ベガルタのボール非保持時陣形は、4-4-2。相手の2センターに2トップが基準を置くやり方だ。3バックには時間とスペースを与えるが、その先では与えないやり方だ。広島は、3-4-2-1から3-2-5のような形になり、ベガルタの4-4-2ディフェンスに対してポジショナルアタックをしかけたきた。

 特にベガルタの右ハーフレーンは、散々に攻撃された。右ウィングのワタルがWBへのパスレーンを気にするところを狙って、背後に降りてくるシャドーにボールを刺した。富田が対応するのだけれど、今度は、シャドーが縦にランニングして富田をファイナルラインに吸収させる。  こうなると、シャドーが空けたスペースを誰かがカバーしなければいけないのだけれど、それが出来なかった。

図2

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 椎橋は、日曜の勾当台公園を散歩するみたいにセントラルレーンをジョグ。相手CHにスペースを使われ続けた。それでも、後半の深い時間までゼロだったのも、かつての自分たちが抱えていたように、広島がミドルサードからファイナルサードで相手を動かす、攻略法があまり明確ではなかったのもあった。

それでも直らなかった守備の立ち位置

 ただ、後半になると、自陣に張りつけられる時間が増える。また、広島もクロスを増やす、横と縦にポジションを入れ替えることを使って、守備陣形を崩してきた。特にサイドでローテーションされると、DFラインの縦迎撃とCHのマンマークが最悪の食べ合わせになって、2ラインがぐちゃぐちゃになった。失点シーンはそれを象徴するシーンだった。

 結局のところ、「迎撃」と「人につく」ぐらいしか守備のロジックが無いことに変わりはなかった。かわされると、もう一度ラインセットするのは至難の業。大体は、味方にディフェンスコース遮られたり、近くの相手にプレスかければいいのか、戻るべきなのか思考停止して、途中でフリーズしてしまう。だから、相手陣に押し込む、即時奪回する、が今季のテーマだった。相手を自陣に引き込むなら、ここを徹底的に鍛え直すほかない。これは、逃げられない。

考察

今季の、これまでの総仕上げ

 この試合は、形と試合への姿勢こそ、今季のほとんどを戦ってきたやり方だったのだけれど、ボールを持てばある程度相手を押し込んだり、ボールを動かしたりしていた。もちろん、必殺パスを持つ天才松下がいない以上、スペースに即ボール出しできるかと言われればそうではないと思う。でも、戦い方としては、これまで積み上げてきたものを少しでも表現しようとした90分間だった。

 ただ、守備については、もうこれ以上の何かは無いようにも見えた。時計の針を元の位置に戻すかのように、4バックでも縦迎撃で相手を迎え撃った。ただ、それだけだった。そこで散々にやられたのが、昨季であり、今季序盤であった。「時計の針は進めたものの元の止まった位置に戻っただけ」だった。いうなれば、その時に突きつけられた問題に対して、答えを出せずいる。これは攻撃時のゴールに迫るやり方もそう。たしかに時計の針は戻った。でも、元の位置に戻したからと言って、そこから進められる道筋も結局のところ分からなかった。あとは、残った人間で、解決するしかない。逃げるは恥だが役に立つが、逃げるだけでは解決しない問題もある。気がする。気がするだけ。

 

おわりに

 今季も終わりましたね。 みなさん、ありがとうございました。1シーズンを書ききるのは、自分にとっても初めての経験で、なんなら昨季の倍書くわけですから正直大丈夫なのかなと思うところもありました。春先、セレッソ戦あたりで少し心折れかけましたし、清水戦のあたりか、その前ぐらいでわりと暗黒面でした。それでも、チームが戦い続けるわけで、サポーターのみなさんも応援するわけですから、僕も負けてられないなと思い書き続けてきました。

 あと、これは個人的なことなので、ここに書きますが、ベガルタ仙台戦術藩が一過性のブームで終わらず、定着するかはある意味僕が書き続けられるかにかかっていると、昨年末にちょっとした呪いをかけられまして。僕は単純ですから、それを今年の使命にしたんですよね。絶対に書ききると。どんな時でも、どんな長文でも、感想文でも、読んでくれる多くの方々、感想を言ってくださる方々。とても、とても力になりました。好き勝手書いているものに、貴重な時間を使って読んでもらえて、とてつもなく背中を押されました。謹んで、感謝申し上げます。ありがとうございました。

 ベガルタ仙台というクラブは、間違いなく、大きな節目を迎えています。ひとつの組織が25年続いたという節目。10年間トップディビジョンにいるという節目。そして、監督が変わる節目。そんな、大きなうねりのなかで、サッカー戦術ブログを通して、ベガルタ仙台という価値にひと手間加えて、新しい価値を生み出す作業を僕や戦術藩藩士がやっていることなのだと思います。そして、またそこから新しい価値が生まれて、生まれてを続けて、ベガルタ仙台を母体として広く根強いネットワークが生まれていくと思っています。今後も、みなさんと一緒に、この小さな地方クラブの開花期を見届けていければいいなと思っています。では、またどこかで。フォルツァ

 

「それでも!!!!!」こう言ったのは、バナージ・リンクスだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html