蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【Dr.トゥヘル研究所】PSGの攻撃戦術。鍵は3つのトライアングル。

はじめに

 どうも、僕です。今回は、監督トーマス・トゥヘルのPSG攻撃戦術について取り上げます。もともと、好きな監督なのと、PSGでの物語も無事?2年目に入ったので、戦術的な成熟もしているだろうという予測のもと開幕戦を見ました。シーズン最初の試合ですし、まだまだこれからだと思いますが、予想以上に印象良かったので今回記事にしました。研究熱心な監督に選手と札束が渡されたらどうなるのか。個人的な興味もありますが、彼らしい機能美あふれる攻撃が今シーズン見られそうです。では、レッツゴー。

トゥヘルPSGと三角形

アンカーとセンターバックでビルドアップの土台を作る

 オリジナルフォーメーションは、ウィングとCF、アンカーを置くスタンダードな4-3-3。そこから、左WGのムバッペがハーフレーンに移動するのに呼応して、左SBがウィング化するウィングロール。逆サイドの右SBのケーラはアンカー高さぐらいでステイ。ただし肝はハーフレーンとウィングレーンの継ぎ目ぐらいにポジショニングする。

 前線が動的にポジションが変わるのに対して、アンカーと2CBはポジション維持。昨今の流行型は、ビルドアップ隊がゾロゾロ変わるのが流行っているのだけれど、大きく動かさず。開幕戦の相手ニームが4-5-1、押し込まれると5-4-1のような、つまりは1トップの相手に対してプラス1の2CBとアンカーを加えることでビルドアップを安定化させた。前線の選手が無理に降りて来たりして、相手を引き連れてしまって、ボール保持者付近がサポートしているのに、クリーンにならない現象は、世界各地であっちこっちそっちで起こっているのだけれど、そういったデメリットを回避できる。もちろん、ボール持った時に強力なCBがいる前提なのだけれど、居るなら使わない手はない、ということだ。

 そんなこんなで、相手が「これはまずいな」とCBやアンカーにプレッシャーをかけに出てくるのであれば、今度は、前線のトライアングルが躍動する設計だ。

図1

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 4-3-3からの可変。あえて、電話番号をたたくなら、2-3-5といったところか。ビルドアップ型は、W字型。トゥヘルドルトムントでもよく見られた型。PSGでは担当者が異なり、左インテリオールのヴェラッティと右SBのケーラーがW字に入る。ただ、アンカーとCBのトライアングルが軸になるのは変わらない。

図2

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 状況によっては、2-4-4のような形もある。よく分かるのは、ヴェラッティとドラクスラーの役割は、同じインテリオールでも異なるということだ。ドラクスラーの方がより、ファイナルサードで力を発揮するように、ヴェラッティはビルドアップを助けるように役割を与えられている。個と組織。この辺りの配分は、トゥヘルがPSGに来てうまくなったのかなと。

ウィング、インテリオール、サイドバックのポジション交換でローポスト狙い撃ち

 さて、前線のトライアングルについて。この3人の動きでファイナルサードを攻略していく。まずはインテリオールのローポスト襲撃。左はムバッペがレーンチェンジしているのでムバッペが。右はドラクスラーがそのまま縦のランニング、あるいはボールを受けると進出していく。ローポストは、サッカーのルールが変わらない以上、ここからのマイナスクロスとセグンド(ファー詰め)クロスがゴールを上げるうえで最も得点確率の高いプレーになる。ここをまずダイレクトに狙う。当然相手もCBやCHがついてくるので、簡単にクリーンな状態にはなれない。

図3

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 右サイドは、ウィングのサラビアがカットインして、ドラクスラーが空けたスペースを使う合わせを行う。第2手は、そのままSBケーラーがウィング化するか、ドラクスラーが外流れでウィング化して三角形を循環させる。

図4

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図5

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方の左サイド。エース級のムバッペがいる。彼がハーフレーンの第3レイヤーに立つことで、相手SB-CB-CH-SHに対してまずはシンプルに、焦点プレーで守備の選択を迫る。 合わせで、ウィングレーンにベルナト、ハーフレーンの第2レイヤーにヴェラッティが立つことでその焦点が絞られるのを緩める。そこに緩みがでれば、そのままムバッペがハーフレーンを駆け上がり、ローポストを強襲する。単純だが、これが一番強力だ。ポジショナルプレーの考え方である、「味方の負荷を出来る限り下げて、相手の負荷を上げて優位性を作る」に則った極めてポジショナルな攻撃だ。また、ベルナトの攻撃も強力でまさにウィングロールでサイドからローポストを襲撃することもあれば、サイドチェンジキックを受け取ることもある。また、サラビアが流れてきて、ムバッペがサイドから突撃する形も見られる。

図6

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図7

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図8

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 いずれにせよ、①ウィングロールで幅取りがいること、②ハーフレーン/第3レイヤーに立つこと、③ハーフレーン/第2レイヤーに立つことの3点でトライアングルを形成して、ローポストへの進入を狙う。

図9

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ネイマール退団濃厚と言われているが…

 2019年8月12日時点で彼にはいろんな噂があるが、ほぼ間違いないとされているのがPSGを去るということ。その代わりに誰が来るとか、来ないとか言われているのだけれど、現時点でもPSG攻撃としての完成度も高く、ビッグクラブ特有の悩みにトゥヘルも挑戦することになりそうだ。ネイマールにしても、この攻撃戦術のなかに織り込むのであれば、ムバッペのポジションになりそうだし、サラビアのようにタッチライン際に張って裏へのランニングのようなプレーを求めるなら、それこそネイマールである必要ではなくなる。居ても居なくなっても悩ましい存在。いずれにせよ今後の編成に注目することにしたい。 

おわりに

  簡単ではあったのだけれど、トゥヘルの攻撃戦術を読み解いた。個人的にトゥヘルは、研究者、実験好きで敬意をこめてドクターと呼びたくなるサッカーオタクなのだけれど、PSGというビッグクラブを率いること、過去のドルトムントでの教訓から学んだことで選手の個性を最大化させるような組織化を目指しているように見えた。選手の入れ替わりとか難しい部分もあるとは思うのだけれど、コレクティブなチームで欧州サッカー戦線に挑んでほしい。

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