蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【首都攻略戦】Jリーグ 第22節 FC東京vsベガルタ仙台 (1-0)

はじめに

 さて、いきましょうか。アウェイFC東京戦のゲーム分析。立ちはだかった首位の壁。灼熱の夜の決戦は、首都のチームに弾かれてしまう。届かなかった熱意の先に、何を見出し明日へと歩き出すのか。熱戦冷めやらぬなかで、絶対王者との戦いがすぐそこに迫っている。その時、彼らが見つけ出す決断とは。今回もゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタはいつもの4-4-2。リザーブに新加入の中原が入っている。札幌時代に天皇杯出場のため天皇杯には出られない。リーグ戦フル稼働のために入ったと思われる。

 東京も4-4-2。右SHに神戸から加入の三田が早速スタメン。旧友とこんな形で出会うとは。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を援用して分析とする。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。(文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)
  • また、ボール保持時については、①相手守備陣形が整っている(セットオフェンス)、②相手守備陣形が整っていない(ポジティブトランジション)に分ける。ボール非保持時についても、①味方守備陣形が整っている(セットディフェンス)、②味方守備陣形が整っていない(ネガティブトランジション)場合に分けている。

ボール保持時

少し違った試合の文脈

 ベガルタの攻撃の狙いとして、まず第一優先が相手の守備陣形が整っていないポジティブトランジション時に相手CB脇、SB裏にFWが走り込みボールを供給するといった形をとる。また、ボールを持った時でも、シンプルにFWへのボールが多い。これは、ボールを持っていない時に関係するのだけれど、ある程度守備陣形を維持したまま、あるいは陣形が崩れた状態でも即時奪回できる状態を作るためにある。最近は、ほぼ維持のため、および1秒でも早く陣形を復帰するためのリトリートが優先事項になっている。だから、ポジション交換は最小限に、2人称での崩しが多くなっている。

 ただ、この試合。FC東京ホームであるにも関わらず、東京がローブロックを敷き明確なカウンター狙い、あるいは後半の決戦に持ち込む形で対抗してきたことが少し想定外だったのかもしれない。ある程度ボールを持つ時間というのは、もらえるものと踏んでいたのだと思うのだけれど、 より持てる時間が多かった。持てるなら持てるで、よろしい、ならばポジショナルだ。

ハーフレーン攻略

 ビルドアップは、ボックス型と富田がCB列に降りる逆丁字型。狙うのはハーフレーン。4-4-2の泣き所であるハーフレーンをダイレクトに攻略する形を採用。両翼のトムキャット可変との合わせ技で、東京守備陣形に負荷をかける。松下が左ハーフレーン・第2レイヤーに立つので左サイドからの攻撃が多かった。永戸と関口が中間のポジションを取るので、東京のSH、SBを誘き出すことに成功。ギャップをハモンや石原が狙う形に持ち込む。縦に一本といっても、配置によるものなので、言語化による単純化は嫌だなと思ったり思わなかったり。

図1

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図2

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図3

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 ただ、その先が無かった。ファイナルサードへの進入はうまくいった印象だったのだけれど(東京が前プレで嵌めこまずリトリートを取ったためとも言える)、ではその先にボックス内に進出するとか、ハーフレーン突撃とか、ローポスト襲撃とかとかとかとか、あまりというかほぼ見られなかった。ファイナルサードに到着したらクロス。クロス。クロスだ。永戸と関口のランニングが見られたり、執拗にハモンがサイドに流れる、逆サイドの蜂須賀のアイソレーションなど、記号としては良いものが見られているなか、「で、どうする?」の部分が分からなかった。もちろん、東京がピッチ縦半分に圧縮してリトリートしているし、人数をかけられて息継ぎできなかったこともある。ただ、もう少し何かが見たいなと思った。今のチームの優先順位からすると、もしかしたら低いのかもしれないのだけれど、結局のところ、その課題を解決しないといけないような。多分。 

ボール非保持時

東京のゲーゲン+リトリートへの対抗型

 どちらも4-4-2なのは前述通り。東京が敵陣では人数をかけたゲーゲンプレス。かわされると光速リトリート。ベガルタボールから始まるなら、ローブロックを組んで4-6-0のような形で待ち構える。攻撃ではこの形でベガルタ攻撃を苦しめた。磐田戦のようなカウンター対策と最後の崩しのもろさを逆手に取った。対するベガルタも激しいゲーゲンプレスはないものの、リトリートブロックでカウンター機会を伺っていた。ただ、東京も2トップ脇を利用して、ボールを前進させようとしていた。東京も永井とオリヴェイラの裏抜け攻撃が優先にしつつ、ボールを持てば、組織的に崩す形で迫って来た。ベガルタとしても、4バックを維持しながら構えることで裏へのスペースを消し込みつつ、全体的にボールを持っていない時の守備意識を持つことで、3バック化するビルドアップ隊への前プレはないが、最終的には自陣で回収する戦い方とした。

図4

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 あとは、陣形が崩れた際に、2CB脇にロングキックを蹴られるのをシマオと平岡が対応することは変わらず。ただ、結果的にはシマオのPKを誘発してしまったといえばそうだし、では他に戦い方があったかと言われると何とも言えない。ストッパーとしてのシマオ。重要なピースとして欠かせない存在。ある意味、マックス値を出しているなかで、今後これが縛りとなってこないか。心配するのはタダなのでしてしまうのだけれど、なんともなければよい。

考察

ファイナルサード攻略の長い長い課題

 首位東京にうまくやられた。勝ちを持ってかれたと言える。ただ、その結果に飛びつく前に見ておきたいのがベガルタの攻撃。特にファイナルサードの攻略に関しては、選手で解決するのか、戦術面を見直すのか。それともどちらもなのか。交代で入ったリャンがヒントになるように、両ウィングの選手カラーを変えるのも手だ。そうなると、ボールを持っていない時や長いスプリントに耐えられるか。守備構造の見直しをするくらいなら現状維持は、別に悪い選択ではないし、むしろ当然とも言える。ただ、あえて戦い方を限定したことによる咎を受けなければいけない。戦い方として、そこは耐えるのか、少しずつリミッターを外すのか。いずれにせよ、いつかは向き合わないといけない課題だと思う。昨年の西村退団以降、「西村がいなくても点数取れるやり方すれば西村が生まれる」はその前の点数を取るところで躓いてしまった。最後の問題だと思っていた守備についてではなくて、じゃあどうやって点数を取るの?が僕たちに与えられた最後の問題なのかもしれない。 

おわりに

 勝つこと、勝ち点を積み上げること、並大抵なことではない。その並大抵なことではないことを東京はやっているし、それを見せつけられた。格の差を戦う舞台の差を見せられた形なのだけれど、何度も挑戦するべきだし、そのたびにテーマを持って狙いを持って戦えば、道は自ずと拓ける気がする。気がするだけ。次は川崎戦。勝つために何ができるか、それをぶつけようじゃないか。あとはいつものように、大好きなサッカーを思いっきり楽しんでほしい。トライ。トライ。トライだよ。

 

 「死にに行くわけじゃない。俺が本当に生きてるかどうか確かめにいくんだ」こう言ったのは、スパイク・スピーゲルだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html