蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【銀の弾丸】Jリーグ 第9節 ベガルタ仙台vsガンバ大阪 (2-1)

はじめに

 さて!いきましょうかホーム、ガンバ大阪戦のゲーム分析!元号が変わったり、GWだったりでいろいろとありますけれど、サッカーは変わらずJリーグも試合が9節まできました。勝利によって快進撃のきっかけをつかめるか我らベガルタ。今回も振り返っていきましょう。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

f:id:sendaisiro:20190430220308p:plain

 ベガルタは、4-4-2を採用。それにともない、左SBには永戸が入っている。5-3-2もできそうなメンバーだが、ルヴァンでの実践投入からリーグ戦でも採用にいたったようだ。後述するのだけれどあくまで初期立ち位置だ。

 ガンバも4-4-2。5-4-1の可能性もあったが、SHに小野瀬と倉田をおくこで、ボール非保持時にもサイドに蓋をしつつ、攻撃では2トップを活かす形だ。こうなると確かに遠藤の居場所が難しくなる気がする。昨年、ベガルタ所属の矢島は2センターの一角に。Jリーグきってのイケメンショナルプレー対決の好カードだ。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 ボール保持時

ユアスタに出現した4-4-2 

 この試合、ベガルタは3バックではなかった。3-4-2-1でも、3-1-4-2でもセットできそうなメンバーではあったのだけれど、答えは4-4-2。ルヴァン杯のホーム鳥栖戦で採用したフォーメーションできた。常田やジョンヤなど、ルヴァン杯でハイパフォーマンスを見せた選手の起用はあったのだけれど、陣形そのまま採用した形だ。

 一方のガンバ。同じく4-4-2系。4-2-3-1、5-4-1も採用例があるよう。ベガルタの3-5-2系(3-1-4-2、3-4-2-1)への対抗型として、5-4-1を採用する気がしていたのだけれど、試合後に宮本監督が仰っているようにルヴァン杯の4-4-2でくると予想。4-4-2のミラーを採用した形だ。

図1

f:id:sendaisiro:20190430220925p:plain

 この手の話は、所詮テレフォンナンバーなのだけれど、試合を読み解く、両者の意図を解読するきっかけ、糸口、切り口になるから無視することはできない。電話番号が会話するわけではないが、番号が分からなければ、そもそも会話ができない、ということだ。

3-1-4-2への「変身」。鍵はCH、SH、SBの立ち位置

 とはいっても、そのまま4-4-2で戦う時間はそう長くなかった。6分には早速、永戸、常田、ジョンヤの左SB・2CB+松下、富田の2CHでビルドアップ開始。17分あたりからは、松下がCB常田の脇に降りて3バックを形成。富田をアンカー役にすることで、逆丁字型ビルドアップでセットアップした。それによって、タカチョー、永戸の両SBがウィングロール、SHがハーフレーンにレーンチェンジすることでボール保持時の形が3-1-4-2へと変形、いや変身した。

図2

f:id:sendaisiro:20190430221009p:plain

図3

f:id:sendaisiro:20190430221039p:plain

 ガンバは混乱した。特に2トップへの戦術的負荷は過負荷状態だったように思える。もともと、ボールを持っていない時のタスクは多いように見えなかった2トップ。初めから、3バックあるいは、2バックであれば、SHと協力して前プレで窒息させる狙いもあったように思える。ただ、ベガルタのビルドアップが変遷していくなかで、なかなかピッチのなかで整理できなかったように見えた。結論は、アンカーロールの富田へのチェック。しかしこれも、ジョンヤから富田へのおびき出しパスでおびき出された形で、ジョンヤや常田周辺エリアにプレッシャーをかけ続けられなかった。

ビルドアップのタスキを繋げ

 それでも27分ごろからベガルタのビルドアップも簡単にいかなくなる。3バックビルドに対してSHをぶつける擬似3トップで、3バック撲滅委員会を開いてきた。31分の失点もあわさって、それまで気分よく攻撃していたのが削がれたように見えた。それでも、ベクトルが後ろ向きにされたとしても、GKダンも使ってボールを保持、立ち位置を整理してボールを前進させた。44分、ダンから富田、常田と展開してガンバビルドアップ妨害隊を引き寄せて、右CBのジョンヤに開き、ジョンヤから吉尾へのスキップパスのシーンが象徴的だ。(最後は、永戸の同点ゴールまでつながっている)

 ガンバの4-4-2セットディフェンスが自陣リトリートから2トップへのカウンター狙いもあり、比較的前に運ぶことができた。また、リトリートといっても、撤退慣れしていない2センターがさらに基準点でもある対面するはずのベガルタの2センターがいないとなると、どこを守るの?誰を守るの?何を守るの?が曖昧になっていた。

ボール非保持時

4-4-2ディフェンス。決闘に勝利せよ

 ベガルタのセットディフェンスは、4-4-2。攻撃的プレスが特徴的だった。前線のFWとSHが4人で相手SBとCBにプレスをかけていった。ミラーゲームの基本として、対面する相手に負けないがあるのだけれど、それを地で行く形だ。もちろん、ひとに着くこれまでの形を踏襲していて、それがより明確になった。5-3-2にくらべてより選手それぞれの担当や判断が重要になるのだけれど、大枠ではうまくいったと思う。

 ただしまだ、SHとSBの連携の部分、SBがサイドに引っ張り出された時にSB-CB間のチャンネルが開門されること、埋めるためにCHとCBが埋めにくることでスペースを空けるなど色々ある。ただしそこははっきりと分かる部分であって、あとは、誰がカバーするのか、チャレンジするのかを整理すれば良いと思う。 

ポジティブトランジション

ハモン、ジャメの縦志向

  奪ったらハモン、ジャメがSB裏を狙いにランニング。そこへのボール出しが基本線だ。これは、3-1-4-2時と大きくは変わらない。ただ、いままではサイド担当がWB1人だったのが、SBとSHもいる。一手目で2トップによる攻撃完結も狙いつつ、決まらなければ(というより決まらないシーンの方が多い)、SBとSHに任せて自分はボックスに近い場所での勝負に専念できる。

ジャメが境界線を超える日

 ポジトラの起点としてのジャメは、この試合でも光っていた。地上戦のボールを収める、あるいはスルッと抜けていくおかげで、ロングトランジション(自陣からのカウンターアタック)が成立していた。ここで潰されると殴り続けられるのだけに、チームにとって助けられるプレーだった。

 一方で、34分にGKからのボールをカットしてジャメが1対1になったシーンがあった。全体的にミスが目立ったガンバに対して、得点に直結する致命的なミスをシュートまで繋げたシーンだったがジャメは外している。厳しいことを言えばこれは決めなければいけない。

 たとえば長沢の逆転ゴールは、やはり彼がストライカーであることを証明するかのようなゴールだった。あそこで決めなければ居る意味がないと言われても仕方ない状況で、長沢は決めた。途中出場で。ワンタッチで。もちろん、前述のカウンター起点としての役割を考えると貢献度は、プラスマイナスゼロか、少しプラスぐらいかもしれない。けれど、彼のポジションは?登録ポジションは?そのポジションに必要とされる役割は?当然、僕なんかより彼がよく理解しているはずだ。でなければ、あんなにゴールに向かってなんていけない。

 いつか、彼は、ストライカーへの境界線を超える。その日が待ち遠しくて仕方がないのだ。

考察

答えは4-4-2

 手倉森時代とは全く別物の4-4-2だけれど、何周も回った結果辿り着いた世界の果て。それが4-4-2とは。変身後の違和感もなく、相手の基準をズラすのに効果的だ。初めから3-1-4-2なのと、4-4-2からの変身では、同じ現象でも過程が違う。3-1-4-2への変身後にまた4-4-2にして惑わせてもいい。可能性は無限大にある。よくこの答えに辿り着いた。渡邉監督、選手、チーム関係者の努力の成果だ。

今日もそして明日からも

 答えを見つけたからと言って、まだこれがゴールではない。ルヴァンでの好調をリーグに落とし込めた循環を活かしながら、今度はリーグでの成果をルヴァンに還元するなどして、より高い部分を目指してほしい。次節は、王者フロンターレ。難しい試合にはなると思うのだけれど、挑戦する相手としては丁度いいかもしれない。せっかくだ。どこまで通じるか、試してみようぜ。 

おわりに

  ユアスタには、「爆裂!ゴール裏 叫び続けろ!5400秒」という横断幕が掲げられている。正直なところ、ゴール裏だろうが、メインスタンドだろうが、叫ぼうが静かに手をたたこうが、テレビで応援してようが、ベガルタを応援するスタンスというのは、ひとそれぞれにあると思う。強制されるものではないし、自分で選択して自分のペースで応援すれば良いと思う。

 でも、あの日、あの日は誰もが叫び続けていた。チームバスが到着する時。試合が始まる前。選手が見えた時。笛が吹かれた時。ゴールが決まったとき時。試合が終わった時。チャントを歌う叫び。手をたたく叫び。ガッツポーズをとる叫び。「叫び」にも色々な形がある。決して、「大きな声を出す」ことだけではない。自分の応援するチームを信じて尽くす行為が「叫び」だと思っている。勝利が遠ざかれば、それは、勝利への「渇望」になる。誰もがベガルタを信じ、尽くし、続けて、そして勝った。彼らの挑戦を後押して、挫けそうでも決して諦めず。最後まで。

 試合が終わる。鳴り止まない拍手の渦。スタジアムに反響し続ける。5400秒では足りないくらいの「叫び」だった。

 

 「望みを捨てなかった者にのみ、道は拓ける」こう言ったのは真田幸村(真田丸)だ。

<<こちらも合わせて読みたい>>

sendaisiro.hatenablog.com

参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html