蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

Jリーグ 第29節 ベガルタ仙台vs浦和レッズ(1-1)「そして僕は微かに左脳の片隅でベガルタを待ってる」

■はじめに

 ささ行きましょうか浦和戦!Jリーグも終盤中の終盤で、いまだに残留するのか優勝するのか分からない魔境リーグになっている。1試合1試合が非常に重要な一戦になるということだ。さあ、俺を楽しませてくれ!なんて、口が裂けても言えないので、今日は淡々と振り返っていきます。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、野津田復帰以来始めての前輪駆動型3-1-4-2を採用。ただし今回は、相手との噛み合わせを重視した意味合いのほうが大きい。野津田を3センターの一角にいれて守備の強度を保てるのか気になるところ。

 一方浦和はオズワルド・オリヴェイラ卿、大槻組長のもと新たなサッカースタイルを身に着けようとしている。このチームの強さは、誰が監督であっても勝利を掴むを地で行くところだ。そんな浦和も3-1-4-2。怖いメンバーがそろっている。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

 ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析とする。これは、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取って攻撃・守備をする」がプレー原則にあるためである。また、分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用する。

 

■前半

(1)攻撃

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 ベガルタのポジショナルアタックは、20分過ぎあたりから、ハーフスペースからウィングレーン付近で明確にボールを動かすようになっていく。加えて、石原、アベタクも降りてきて、ボールホルダー付近に代わる代わる選手が集まる形に。ただ、ブロックへの侵入経路を見つけられず、ぐるぐると迷宮入りしていたように思える。5-2-3、5-3-2、5-4-1とブロックを敷いてくる相手に対して、答えをもってアタッキングできたのか。疑問だ。システムなぞ電話番号にすぎないが、割とポピュラーな変形に対して解を持っていないのはちょっと厳しい。

 6分、3-1-4-2で攻撃するベガルタ。ゾーン毎にブロックを変形させる浦和。

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*ボールは右ハーフディフェンダーの平岡。浦和のブロックは、相手陣にボールがある時は5-3-2ブロック。

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*3バック+椎橋でダイアモンドビルドアップ。柏木が平岡をチェック。5-2-3に変形。

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*相手陣に侵入した平岡。浦和は5-4-1に変形。ちなみにセントラルレーンから、右ウィングレーンまでに7人を送り込んでいるベガルタオーバーロード状態。逆サイドでアイソレーションの関口に展開できれば面白かったかもしれない。

 10分、この辺から安定してポジショナルアタックを繰り出していた。ただ、もっとゴールに近い手があるなか、別の手を指したため攻撃が停滞した。

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*右ウィングレーンにレーンチェンジしていた野津田から、右ハーフスペースのアベタクへ。ここでスクエア形成。

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*アベタクから蜂須賀へ。蜂須賀は、ハーフスペースでフリーの椎橋へ。ちなみに右ハーフスペースから左ウィングレーンへのパスは、サイドチェンジキックの理想形と呼ばれている。なぜなら、2レーンスキップパスが相手のスライドが間に合わないギリギリのロングパスと呼ばれているからだ。

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*椎橋式高射砲、発射準備完了。

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*大岩に下げる椎橋。ブロックを整える浦和。

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*ヘルプに来たのは平岡。この形のビルドアップを見たかった。けれど、状況はどうだ。浦和が4枚でハーフスペース、セントラルレーンを塞いでいる。

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*今度は左サイドで。左ウィングレーンから左ハーフスペースで6人集めて攻略開始。

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*そして椎橋へ。浦和の右サイドに人を集めていたせいか、中央の隙間が。行け、椎橋。楔を打ち込むんだ。

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*けれど椎橋、チェックをかけられ平岡へ。この一連の攻撃の出発点である平岡に到着することになる。悲しい。

 結局この後、平岡が無理に降りてきた石原につけようとして奪われ、カウンターを浴びている。正解の選択肢はないが、よりよい選択はあったはずだ。

 34分、リャンが石原と入れ替わるようにディフェンスラインの背中に走り込む。こうすることで、浦和のラインが下がり、ハーフラインとの間にスペースができる。そこを使ってライン間攻撃もできれば、スペースを埋めてくれば平岡、板倉が前進しやすくなる。

 

(2)ネガティブトランジション

 何度か即時奪回を目指したが、ロンドで回避されていた。27分、32分に似たような形でロンドされかわされていた。かといって明確にリトリートに変えたかというとちょっと分からなかった。

 

(3)守備

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 ベガルタの守備は、5-3-2から、5-2-3への変形で対応。3センターの一角が飛び出してサイド誘導、2センター脇で迎撃が狙いなのだけれど、それにしては密集できていない、平岡、板倉が強く当たりにいっていないなど、本当に狙っていたの?と思わせるシーンが多かった。だったら3トップにして、U字パスを誘発させるとかとかとかあったはずなのだけれど、前半ではできなかった。一方の浦和の攻撃はシンプル。その2センター脇をつかって、空いたスペースにドンドン人が入っていく形だ。

 8分、野津田がCBにプレスをかけ、5-2-3に変形。ボールがサイドに流れ蜂須賀が迎撃し4-3-3に変形。

 12分、板倉のナイスセーブじゃなくてブロック。蜂須賀が迎撃した裏を柏木に利用された形。こうなるとスライドの関係でボックス内が手薄になる。

 23分、失点。12分のシーンが顕在化した。関口が戻り切れなかった形だけれど、そもそも5バックに関口を組み込む時点でこうなることは分かっているはず。

 

(4)ポジティブトランジション

 ベガルタのポジトラで可能性があったのは、42分のリャンからのクロスに蜂須賀が合わせたシーン。板倉が迎撃した裏を関口が絞って、ショートトランジション発動。この形がなんだかんだいって一番可能性があったのでは。ただ、こればっかり狙っていたかと言われればちょっと違かった。

 

■後半

(1)攻撃

 ベガルタは、後半開始からビルドアップをテンポアップ。椎橋がシンプルにスペースに入り込み、そこにシンプルにつける。椎橋もシンプルにはたく。これで、浦和が守備を整えるまえに、ディフェンスラインにナイフを突きつけることができた。

 ただ、セットディフェンスされてしまうと話は変わってくる。何度もポジショナルアタックを繰り出していたが、結局のところ、5-3-2の3-2の脇、5-4-1の4-1の脇でボールと人が動いていただけで、ボックス内への危険な侵入を繰り出せなかったように思える。リャンは精力的にディフェンス裏にランニングするシーンが見られ、オーバーロードを引き立てていた。ただ、ハーフスペースに5人も6人も集めながら、バックドア等の裏抜けがないと厳しい。最終解を持たないまま、攻撃を完了できなかった。

 53分、浦和の3-2の間で椎橋が受ける。2トップと3センターの一角はポジションに戻り切れていない。

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 73分、六角形ポジショナルアタック。

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*ハーフスペースに3枚集める形。ただこれ、最初からハーフスペースに居ていいものなのか。浦和が最初から立っているのだから、別のレーンに動かす必要がある。一緒にいていいものなのか。

 75分、今度は五角形。ただ最後は奪われてカウンターを受けている。ネガトラの予防ポジションでもなさそう。

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*浦和4枚に対して、ベガルタ5枚。オーバーロード1点突破か、逆サイドのアイソレーションで打開したかった。

 

(2)守備

 後半からは、明確に5-2-3として、3トップでハーフスペース入口を監視するいつもの形に。攻撃時には、3-1-4-2、守備時は5-2-3が現実解なのだろうか。本当は、守備時に4-4-2に変形してほしいが、それは夢のまた夢。できることで理想に近づこう。

 

■考察

(1)板倉が見せた勝ちへの道筋

 板倉が吠えるとは思わなかった。前節マリノス戦で完敗した後のコメントやこの試合の姿を見ると、チームで一番勝利が欲しい選手ではないかと思う。本人も代表で活躍していたこともある。今度は勝って、一緒に吠えたい。大きい声出されるとビックリしちゃうけれど。

 

(2)答えなきポジショナルアタック

 結局、正解を持って、立ち位置を取ってボールを回せていたか。最後まで僕にはわからなかった。最終目標地点、到達地点に向けて、みんな一緒に向かっていくのがベガルタのサッカー。その到達地点が西村だったのなら、話は大きくなる。西村を探さなきゃいけない。そうじゃなくて、相手次第なら、浦和が強かったことになるし、これからも「相手が強かった」で終わる試合を見ることになる。そのどちらでも僕は嫌だ。僕だけなのだろうか。こんなにも不安でいっぱいなのは。

 

(3)そして5試合を残す

 終わりゆくJリーグのなかで、僕たちはまだ勝てるし、伸びていくと思う。多分正念場。多分。セレッソ戦以来、幾多の試練にもまれたり、大切な仲間との別れたりしながらも、ケガをしていた仲間の復活、かつての仲間も結集し、最後の決戦へと挑む。まだまだ僕たちは強くなれる。映画や漫画の筋書きにしては、王道中の王道だ。

 

■おわりに

 レーンを埋める相手に対して、立ち位置で対抗する。これが今年のテーマだった。簡単にいえば人海戦術には、ポジショニングで対抗するだった。ケガ人が出ても、西村がいなくなっても、それでもそれでも立ち位置をとり続けた。まだ崩れない。やはりモウリーニョは偉大だ。ぷよぷよをやり続けてもう秋になった。連鎖が足りないのか。監督が変わった浦和に、成熟度が一味も二味も違うところを表現したかった。やはり浦和は偉大だ。誰が監督だろうと、選手だろうと、ゲームを構築する。強い。強いよ、浦和レッズ。だからベガルタが崩せなくても…ダメだダメだ。まだ僕たちが弱いだけなんだ。目標はトップ5なんだから。でも…本当に…

 いや、これ以上はやめておこう。残り5試合。僕なんかより、語るに相応しい人間がピッチにいるのだから。

 

 「まだだ、まだ終わらんよ!」こう言ったのは、クワトロ・バジーナだ。

 

■参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html