蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【会心の一撃】Jリーグ 第11節 ベガルタ仙台vsサンフレッチェ広島 (2-1)

はじめに

 さて、いきましょうか!ホーム広島戦のゲーム分析!帰って来た我らのユアスタ劇場。シアターオブドリーム。しかも、見直すほどに狙い通りに強敵広島を最後に追い詰めたのかなと。ということで、今節もいつものように光速ゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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  ベガルタは、すっかりおなじみの戦型になった可変4-4-2。前節との変更は、CHに椎橋が帰って来た。満を持してスターティングメンバーに入った。

 さて、広島。城福監督のムービングフットボールというよりは、甲府時代の強化といったところか。正直、あまり見れていないのでめったなことは言えないのだけれど、ハードワークするのはどのメンバー、フォーメーションでも変わらないような気がする。気がするだけ。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く) 

ポジティブトランジション

縦に「速く強く」

 今回は、先にポジティブトランジションから見ていく。なぜなら、この試合のベガルタの狙いは、ポジトラ時の縦に速く強いカウンター(ミドルトランジション)だった。自陣でボールを奪うと目指すはハモンとジャメの2トップ。17分~20分の時間帯、試合の入りに特に目立った。挨拶代わり、というやつだ。これがベガルタの1手目。25分ごろから、だんだんと広島が後方にブロックを作るのが目立ってくる。

5バックの宿命とかつての自分たち

 3バック系の宿命というか、5バック系のチームは、構造的に後方重心になりがちだ。3バックの脇、間をスピードのある選手に出入りされるのは、あまり気分がよくない。というより不安になる。ぞろぞろと前線の選手がスペースを埋めるべく実家に帰省してくる。スペースの管理という意味とは違った文脈でのスペース埋めな気がする。気がするだけ。

図1

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 自陣で強固にブロックを築くことを選んだ広島。先制もされている。大体これで塩漬けされてしまうのだけれど、ここからベガルタ型ポジショナルアタックを披露する。

ボール保持時

5-4-1の城壁とポジショナルアタックの攻防

  ポジトラで押し込んだあと、ベガルタはポジショナルアタックに移行。いつものようにSHがハーフレーンにレーンチェンジ、SBがウィングロール、2トップがWBとCBの間を狙う形だ。ただ、この試合で特徴的だったのが椎橋、松下の2センター。ポジションを離れるリスクを冒して、前線にスプリントするようなシーンはあまり見られず。まるで何かに備えているようだった。もちろん、プレス回避のためにウィングレーンに移動することもあるが、目的はもっと別なとこにあるような。それは後述するネガティブトランジションと関係していると思う。

 加えて広島の5-4-1ブロック。特に2センターがきちんとスライドすることで、2トップへの楔パスを打ち込むパスレーンを消し込んでいた。中央3レーンに多くひとを割いて狭く守る型のため、ベガルタとしてもひとを割く必要があった。定石といえば定石だ。ただし、セオリーとは異なる。攻撃のセオリーは、「広く攻める」だ。ピッチを幅広く使って攻めて、相手の守備の束を広げることが狙いだ。ただし、そこには裏の側面もあって、ボールを奪われると相手にも広い攻撃を許すことになる。しかもこちらの守備の束も広がっている。そこでビエルサはこう言ったそうだ。

君が狭く守るなら私は狭く攻めよう

 この言葉の意味は、まさにトランジションのことを指していると思われる。相手に攻撃でピッチを広く使わせない、狭く守るならこっちだって狭く攻めてやるといった具合だ。ベガルタも、中央3レーンとボールサイドのSBと協働して攻撃している。ちなみに相手のポジティブトランジションの唯一の出口であるD・ヴィエイラも常田とジョンヤが封殺している。攻守表裏一体。攻撃は守備から。守備は攻撃から。いや、ピッチには、「ボールを持つ者」と「ボールを持たない者」しかいない。奮い立つか?ならば、俺からボールを奪って見せろ。 

図2

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図3

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ネガティブトランジション

ベガルタの電撃ゲーゲンプレッシング

 ということで、ベガルタの3本目の剣。ネガトラ時のエリア制圧型ゲーゲンプレスだ。ポジトラで敵陣に押し込み、狭く攻めることでボールとひとを閉じ込め、エリア制圧型ゲーゲンで窒息させる。これがこの試合のベガルタのプランだった気がする。相手がいずれ自陣でブロック作ることは、ある程度予想できていて、おそらくボールを持つ時間が長くなるだろうと。ただし、そこで崩せなくても、敵陣でトランジション勝負に持ち込めば、瞬間的に立ち位置で優位に立てると。58分とか当然かわされる場面もあったのだけれど、①相手を張りつけたこと、②狭いエリアでの勝負を受け入れたこと、③ジョンヤと常田の2CBのカウンター予防でゲームをコントロールした。

図4

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 考察

1試合を通じたゲームプランの遂行

 これまでベガルタは、ある狙いをもってプラン立てて試合に臨んでいたのだけれど、結局自分たちの問題や相手に対応された後の次の手が無かったりで、その狙いを上手く実行できていたか難しくなっていた。実行できていても結果が伴わなかったりして、さらに難しくなっていた。この試合は、シンプルに相手のブロックが低い特徴をついて、よりそれが顕在化するような縦に速く攻めて、ボールを握り、奪い返し続けた。広島も、70分ごろになると守備ポジションの乱れやパワーが無くなってきたのも、ベガルタの連続攻撃の効果だったのかなと思う(だからこそパトリックでパワーダウンを補った)。不用意な失点はあったのだけれど、前後半通じて、狙いをもってゲームを進めたのかなと思う。

連戦と夏場

  どのチームも心配な点なので、ベガルタだけの課題ではないのだけれど、この攻守表裏一体の束をバラバラにする一つの要因としては、選手の疲労になるでしょう。「メンバーが変わっても」が理想なのだけれど、ここがひとつ正念場になりそうだ。まあ、まだまだ、これから。 

おわりに

 何が起きたか分からなかった。気づいたときには、椅子から飛び上がり、何回したか忘れたぐらいガッツポーズした。10分間。10分間だ。たった10分間で、結末が変わる。勝者と敗者も変わる。久しく忘れていた感覚。敗北をはね返す感覚。無色、無臭の世界が一気に輝く感覚。圧倒的で、感動的で、奇跡的超えて幸福な未来。追加タイム4分、同点、不敵な笑み8番、1トラップ左足振りぬく、逆転ゴールな未来。

 信じて、信じて信じつくした先にあった未来。僕たちにだって、何度も諦める機会はあったし、声援をブーイングに変えるタイミングもあったはずだ。それでも信じた。それは彼らなら必ずはね返すと知っているから。「サポーターがサポートするチームを信じなければ、一体、誰が彼らを信じるんだ」言葉にするのは簡単だ。誰にだって、どんな方法でチームと関わるのか選ぶ自由がある。

 でも、僕たちは、それを実行した。ただ、それだけだ。そう、たったそれだけのことだ。そして、逆転した。いろんな世界線、未来があったなかで辿り着いたひとつの未来。だからこそ、この一瞬を精一杯生きるんだ。さあ、逆襲を楽しむ用意はできたかい?

 

 「さあ、諸君、派手にいこう」こう言ったのは、マクシミリアン・テルミドールだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

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birdseyefc.com

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【Against】Jリーグ 第10節 川崎フロンターレvsベガルタ仙台 (3-1)

はじめに

 さて、いきましょうかアウェイ川崎戦のゲーム分析。連休ど真ん中のサッカー日和に行われた試合。新元号にもなって、ゴールもたくさん入って川崎としては、これ以上ない試合だったのかなと。我らベガルタは?ということで今節も振り返っていきます。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは前節と同じ4-4-2。メンバーも変えず。

 川崎は、ガラッと変わって注目はCBジェジエル、トップ下に脇坂が入っている。2CHは守田と田中のコンビ。今年も王者として、きっちり試合をものにしている印象。それは、メンバーが変わっても相手が変わっても対応できますよと言った具合だ。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

ボール保持時

BOX型ビルドアップ

 前節と同様の4-4-2を採用したベガルタ。ビルドアップは、CBとCHが中心になる。彼らがポジションを移動しながら、洗濯機のように動きながらビルドアップするので、厳密には分ける必要はないのかもしれないのだけれど、この試合においてはBOX型ビルドアップが非常に強く出ていた。ガンバ戦でもM字型、逆丁字型と合わせながらBOX型を採用している。

 おそらく、アンカー潰しを警戒していたためと思う。前節も、2トップがアンカーロールの富田を消し込んできたので、2CB+松下は、比較的時間とスペースがあった。川崎の対抗型のひとつの見どころとして、①同数プレスで嵌めこむのか、②嵌めないにしてもホルダーにはプレッシャーをかけるのか、 ③放置して後方撤退を取るのか(アンカーには自由にさせない)が注目ポイントであった。正解は、③だった。要因は、川崎のメンバー構成だと思う。プレスをかけるのに極上のうまさを発揮する、中村、阿部が不在。であれば、ハーフレーンをきっちりうめ、もたつくようであればSHがプレッシャーをかけるスタイルだった。

図1

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時間とスペースに潜む「落とし穴」

 さてベガルタは、そんな川崎相手にBOX型を採用しているのだけれど、2トップがプレッシャーをかけにこないのであれば、それほど後ろに人数をかける必要もない。もちろん、富田と松下が降りたりして逆丁字型だったりもあったけれど(その時はSHをおびき出すこともできた)、2トップが2CHに食いついているなら、2CBでなんとかすればよいといった感じ。あるいは、2CHが降りることでの混乱も起こしやすいといったところか。そんなこんなで、ジョンヤと常田が後ろで持つシーンが多かった。でも、ここに落とし穴があった。

 常田はボールを持つとルックアップ後にすぐ前線目掛けて、自慢のロングキックを蹴り込んだ。当然、精度は抜群。彼の才能が発揮されている瞬間。ただ、36分の永戸へのパスは、永戸がバックステップでポジションに着こうとしている中、パス出ししてカットされ、様々なご意見が飛び交う2失点目を食らう原因となった。また、66分にタカチョーに楔パスを付けているがこれもタカチョーがポジションについているなか出している。結果は、タカチョーがフリックしているが、近くの永戸もハモンも用意できていない。加えて、大岩のゴール時も、大岩へのキックは、サイドにポジションつく間に出ている。

受け手、出し手問題へのヒント

 当然、受け手の状態を考えて出してほしいのだけれど、常田のせいにすればいいほど物事も、人生も、サッカーだって簡単ではない。そもそも、チームの狙いとしては、裏のスペース、速い攻撃が第一優先である。そこに常田のフィードがセットで考えられている。チーム戦術と個人戦術が噛み合っている理想型だ。常田だって、その狙いでキックを蹴り込む。時間があればなおさら。

 であれば、受け手の準備不足が問題か。そうとは言えない。チームの狙いといっても、選手よりボールの方が圧倒的に速い。できないものはできない。俯瞰で見るのが大事だからって、重力に逆らって飛べといったってできないものはできない。もちろん、常田が持ってもジャメが走るわけでも、スペースで受けるわけでもないシーンもあったし、ジョンヤのボールを特にお洒落でもないヒールキックで受けたりしている。ただ、どっちが良い悪いではなくて、チームとしての速さをきっちり合わせることだと思う。川崎から学ぶことはここにある。速度をアジャストさせる。完成度の違いといってしまえば、簡単なのだけれど、カチッとハマることだと思う。

4-4-2ポジショナルアタックを会得せよ!

 さて、試合を通して、ボール保持機会が少なかったのだけれど、4-4-2のポジショナルアタックといえば、前線への縦のボールがメインだった。それ以外ではSBにボールを持たせるシーンが多かった。川崎の守備がSBがハーフレーンを埋め、SHがSBにプレッシャーをかける構造だった。そもそも、SHもCBがボールを持っている時はハーフレーンを埋めているのでサイドにスライドすることになる。SBを中心として狙いたかった攻撃は以下だ。

  • 外流れのFW(ハモン、ジャメ)にボールをつける。
  • ハーフレーンにレーンチェンジしたSH(吉尾、タカチョー)にボールをつける。
  • 埋められたら、CH(あるいはCB)にボールを渡して、空いているウィングレーンを上がる

 ただ、ボールを受けてからタッチ数が増えてコースを塞がれてしまったり、SHに預けてもクロスボールになってしまうなど、まだまだ4-4-2のポジショナルな攻撃、速攻に慣れてないなと思うシーンがあった。この部分は、これから詰めていく部分かなと思っている。  

図2

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図3

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図4

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ポジティブトランジション

制圧された2トップ

  ベガルタのポジティブトランジションは、2トップに預け、そこのキープから始まる。この試合は、いきなりそこが潰された。誰。CBジェジエルだ。裏抜け、ポスト、エアバトル、全てに圧倒的で2トップが無効化されてしまった。12分の先制を許したシーンでは、ハモンが潰され、そのあとジャメも守田、登里につぶされている。

 谷口とのマッチアップであれば、何度かゴール前に迫るシーンもあったのだけれど、最後まで攻略できなかった。いまのベガルタにおいて、2CBと2FWの強さが生命線だ。ここを抑え込まれてしまうとなかなかどうして、難しくなってしまう。ベガルタが前進できなかった要因で、渡邉監督もそこはある程度やられてしまうことを織り込んで、前から奪っていきたいと考えていたかもしれないし、考えていないかもしれない。いずれにせよやられた。

考察

細部に宿る神に祈るしかほかないのか

 川崎とのコントラストで、4-4-2の細かな詰めの部分が出たと思う。いろんな選択肢があるなか、選択した未来、進んだ世界線。ワンタッチ、タイミングで変わる世界だということを痛いほど教わった。細部に神は宿るとは言うのだけれど、もうボールを持ってる持っていない関係なく、選手個人として積み上げる部分なのかなと思っている。

僕らは変わらなきゃいけない。永遠なんか信じるな!

 あとは、いかにボールを持ち続けるかにこだわりたいなと。そのためには、前にも言ったタイミングの部分、ひとりひとりの速度を合わせる作業だったりが必要のだけれど、鳥栖戦の勝利以降、ひとつの成功を収めてる速い攻撃についても考えていく必要があると思う。もちろん、戦い方のベースだし、基本型だ。そこについては、全く否定しないのだけれど、せっかくある時間を使って攻撃する場面があっていいはずだし、通勤電車に乗るわけではないのだから、同じ攻撃をどんな状況でもどんな時でも繰り出す必要はないのかなと。4-4-2だって、速攻もあれば、遅攻もある。これが最終型ではないことは常に考えておきたい。ただまあ、現実の方の時間は待ってくれないというのも忘れず。

おわりに

  圧倒的なスコアというより、「大枠ヨシ。もっとできる」が悔しかったのかもしれない。試合全体を見れば、王者相手にやれていたかもしれない。ただ、目指すゴールはまだ先にある。永戸は、試合終了の笛が吹かれるとピッチに倒れて、天を仰いだ。悔しいのは、彼らだってそうだ。できたうえで、王者に挑戦したかったし、挑戦権はあったはずだ。大岩が思い切りボールを蹴り込んだ。ポジションを奪われた悔しさ、試合に負けている悔しさを込めたかのように。それでも前に進むし、それでもゴールを奪いにいくんだ。

 悔しさと手応えとの狭間で、現実時計と睨み合いながら、チームを調律させる。さあ、準備はいいか。

 

 「死にに行く訳じゃない。俺が本当に生きてるかどうか、確かめに行くんだ。」こう言ったのは、スパイク・スピーゲルだ。 

参考文献

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【銀の弾丸】Jリーグ 第9節 ベガルタ仙台vsガンバ大阪 (2-1)

はじめに

 さて!いきましょうかホーム、ガンバ大阪戦のゲーム分析!元号が変わったり、GWだったりでいろいろとありますけれど、サッカーは変わらずJリーグも試合が9節まできました。勝利によって快進撃のきっかけをつかめるか我らベガルタ。今回も振り返っていきましょう。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、4-4-2を採用。それにともない、左SBには永戸が入っている。5-3-2もできそうなメンバーだが、ルヴァンでの実践投入からリーグ戦でも採用にいたったようだ。後述するのだけれどあくまで初期立ち位置だ。

 ガンバも4-4-2。5-4-1の可能性もあったが、SHに小野瀬と倉田をおくこで、ボール非保持時にもサイドに蓋をしつつ、攻撃では2トップを活かす形だ。こうなると確かに遠藤の居場所が難しくなる気がする。昨年、ベガルタ所属の矢島は2センターの一角に。Jリーグきってのイケメンショナルプレー対決の好カードだ。

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 ボール保持時

ユアスタに出現した4-4-2 

 この試合、ベガルタは3バックではなかった。3-4-2-1でも、3-1-4-2でもセットできそうなメンバーではあったのだけれど、答えは4-4-2。ルヴァン杯のホーム鳥栖戦で採用したフォーメーションできた。常田やジョンヤなど、ルヴァン杯でハイパフォーマンスを見せた選手の起用はあったのだけれど、陣形そのまま採用した形だ。

 一方のガンバ。同じく4-4-2系。4-2-3-1、5-4-1も採用例があるよう。ベガルタの3-5-2系(3-1-4-2、3-4-2-1)への対抗型として、5-4-1を採用する気がしていたのだけれど、試合後に宮本監督が仰っているようにルヴァン杯の4-4-2でくると予想。4-4-2のミラーを採用した形だ。

図1

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 この手の話は、所詮テレフォンナンバーなのだけれど、試合を読み解く、両者の意図を解読するきっかけ、糸口、切り口になるから無視することはできない。電話番号が会話するわけではないが、番号が分からなければ、そもそも会話ができない、ということだ。

3-1-4-2への「変身」。鍵はCH、SH、SBの立ち位置

 とはいっても、そのまま4-4-2で戦う時間はそう長くなかった。6分には早速、永戸、常田、ジョンヤの左SB・2CB+松下、富田の2CHでビルドアップ開始。17分あたりからは、松下がCB常田の脇に降りて3バックを形成。富田をアンカー役にすることで、逆丁字型ビルドアップでセットアップした。それによって、タカチョー、永戸の両SBがウィングロール、SHがハーフレーンにレーンチェンジすることでボール保持時の形が3-1-4-2へと変形、いや変身した。

図2

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図3

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 ガンバは混乱した。特に2トップへの戦術的負荷は過負荷状態だったように思える。もともと、ボールを持っていない時のタスクは多いように見えなかった2トップ。初めから、3バックあるいは、2バックであれば、SHと協力して前プレで窒息させる狙いもあったように思える。ただ、ベガルタのビルドアップが変遷していくなかで、なかなかピッチのなかで整理できなかったように見えた。結論は、アンカーロールの富田へのチェック。しかしこれも、ジョンヤから富田へのおびき出しパスでおびき出された形で、ジョンヤや常田周辺エリアにプレッシャーをかけ続けられなかった。

ビルドアップのタスキを繋げ

 それでも27分ごろからベガルタのビルドアップも簡単にいかなくなる。3バックビルドに対してSHをぶつける擬似3トップで、3バック撲滅委員会を開いてきた。31分の失点もあわさって、それまで気分よく攻撃していたのが削がれたように見えた。それでも、ベクトルが後ろ向きにされたとしても、GKダンも使ってボールを保持、立ち位置を整理してボールを前進させた。44分、ダンから富田、常田と展開してガンバビルドアップ妨害隊を引き寄せて、右CBのジョンヤに開き、ジョンヤから吉尾へのスキップパスのシーンが象徴的だ。(最後は、永戸の同点ゴールまでつながっている)

 ガンバの4-4-2セットディフェンスが自陣リトリートから2トップへのカウンター狙いもあり、比較的前に運ぶことができた。また、リトリートといっても、撤退慣れしていない2センターがさらに基準点でもある対面するはずのベガルタの2センターがいないとなると、どこを守るの?誰を守るの?何を守るの?が曖昧になっていた。

ボール非保持時

4-4-2ディフェンス。決闘に勝利せよ

 ベガルタのセットディフェンスは、4-4-2。攻撃的プレスが特徴的だった。前線のFWとSHが4人で相手SBとCBにプレスをかけていった。ミラーゲームの基本として、対面する相手に負けないがあるのだけれど、それを地で行く形だ。もちろん、ひとに着くこれまでの形を踏襲していて、それがより明確になった。5-3-2にくらべてより選手それぞれの担当や判断が重要になるのだけれど、大枠ではうまくいったと思う。

 ただしまだ、SHとSBの連携の部分、SBがサイドに引っ張り出された時にSB-CB間のチャンネルが開門されること、埋めるためにCHとCBが埋めにくることでスペースを空けるなど色々ある。ただしそこははっきりと分かる部分であって、あとは、誰がカバーするのか、チャレンジするのかを整理すれば良いと思う。 

ポジティブトランジション

ハモン、ジャメの縦志向

  奪ったらハモン、ジャメがSB裏を狙いにランニング。そこへのボール出しが基本線だ。これは、3-1-4-2時と大きくは変わらない。ただ、いままではサイド担当がWB1人だったのが、SBとSHもいる。一手目で2トップによる攻撃完結も狙いつつ、決まらなければ(というより決まらないシーンの方が多い)、SBとSHに任せて自分はボックスに近い場所での勝負に専念できる。

ジャメが境界線を超える日

 ポジトラの起点としてのジャメは、この試合でも光っていた。地上戦のボールを収める、あるいはスルッと抜けていくおかげで、ロングトランジション(自陣からのカウンターアタック)が成立していた。ここで潰されると殴り続けられるのだけに、チームにとって助けられるプレーだった。

 一方で、34分にGKからのボールをカットしてジャメが1対1になったシーンがあった。全体的にミスが目立ったガンバに対して、得点に直結する致命的なミスをシュートまで繋げたシーンだったがジャメは外している。厳しいことを言えばこれは決めなければいけない。

 たとえば長沢の逆転ゴールは、やはり彼がストライカーであることを証明するかのようなゴールだった。あそこで決めなければ居る意味がないと言われても仕方ない状況で、長沢は決めた。途中出場で。ワンタッチで。もちろん、前述のカウンター起点としての役割を考えると貢献度は、プラスマイナスゼロか、少しプラスぐらいかもしれない。けれど、彼のポジションは?登録ポジションは?そのポジションに必要とされる役割は?当然、僕なんかより彼がよく理解しているはずだ。でなければ、あんなにゴールに向かってなんていけない。

 いつか、彼は、ストライカーへの境界線を超える。その日が待ち遠しくて仕方がないのだ。

考察

答えは4-4-2

 手倉森時代とは全く別物の4-4-2だけれど、何周も回った結果辿り着いた世界の果て。それが4-4-2とは。変身後の違和感もなく、相手の基準をズラすのに効果的だ。初めから3-1-4-2なのと、4-4-2からの変身では、同じ現象でも過程が違う。3-1-4-2への変身後にまた4-4-2にして惑わせてもいい。可能性は無限大にある。よくこの答えに辿り着いた。渡邉監督、選手、チーム関係者の努力の成果だ。

今日もそして明日からも

 答えを見つけたからと言って、まだこれがゴールではない。ルヴァンでの好調をリーグに落とし込めた循環を活かしながら、今度はリーグでの成果をルヴァンに還元するなどして、より高い部分を目指してほしい。次節は、王者フロンターレ。難しい試合にはなると思うのだけれど、挑戦する相手としては丁度いいかもしれない。せっかくだ。どこまで通じるか、試してみようぜ。 

おわりに

  ユアスタには、「爆裂!ゴール裏 叫び続けろ!5400秒」という横断幕が掲げられている。正直なところ、ゴール裏だろうが、メインスタンドだろうが、叫ぼうが静かに手をたたこうが、テレビで応援してようが、ベガルタを応援するスタンスというのは、ひとそれぞれにあると思う。強制されるものではないし、自分で選択して自分のペースで応援すれば良いと思う。

 でも、あの日、あの日は誰もが叫び続けていた。チームバスが到着する時。試合が始まる前。選手が見えた時。笛が吹かれた時。ゴールが決まったとき時。試合が終わった時。チャントを歌う叫び。手をたたく叫び。ガッツポーズをとる叫び。「叫び」にも色々な形がある。決して、「大きな声を出す」ことだけではない。自分の応援するチームを信じて尽くす行為が「叫び」だと思っている。勝利が遠ざかれば、それは、勝利への「渇望」になる。誰もがベガルタを信じ、尽くし、続けて、そして勝った。彼らの挑戦を後押して、挫けそうでも決して諦めず。最後まで。

 試合が終わる。鳴り止まない拍手の渦。スタジアムに反響し続ける。5400秒では足りないくらいの「叫び」だった。

 

 「望みを捨てなかった者にのみ、道は拓ける」こう言ったのは真田幸村(真田丸)だ。

<<こちらも合わせて読みたい>>

sendaisiro.hatenablog.com

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【新たな皇帝CB】成長を止めない金正也。「最初のレイヤー」からゲームを動かす。

はじめに

  どうも僕です。今回は、初めてのプレー分析、ベガルタ仙台DF金正也選手(以下、ジョンヤ敬称略)のボールを持った時の立ち振る舞いを見ていきます。使用するフレームワークは、5レーン&4レイヤー理論。なにせ初めて一人の選手にスポットを当てて文章にするので、どういう顔して書けば良いか分からないのだけれど、「このプレーいいな」「感動しちゃったな」のプレーを主にしています。そんな、「親の目ゲーゲン」で9節ガンバ戦の全タッチを見直して書いています。よろしければどうぞ。では、レッツゴー。

5レーン&4レイヤー理論

sendaisiro.hatenablog.com

CB(センターバック)を巡るあれこれ

最終ラインに彼の玉座は無かった

 いわゆるCBとは、ゴールを守り、相手と競り合い、ボールを奪いあう星のもとに生まれた戦士だ。ジョンヤも例外ではない。もっといえば、対人守備に優れ、良い意味でファイトできるタイプのCBだ。CBらしいCB。そんな彼がベガルタに加入して、目の当たりにしたのは、自分の力を「闘い」以外に使うことだった。

 エレガントにボールを繋ぎ、相手の立ち位置を動かし、自分たちが優位に立つためのボールとひとの移動が必要だった。ジョンヤは苦しんだ。少なくとも、継続的にはスターティングメンバーに入れなかったし、今シーズン彼がメンバー入りする姿を想像するひとは少なったように思える。申し訳ないが、少なくとも、僕はそうだった。

皇帝の帰還

 今時、CBがボールを持って、自らアクションを起こしていくこと自体、特段不思議なことではない。ピケだ、フンメルスだ、もちろんそれぞれタイプが異なるのだけれど、大枠で言えば、ボールを持っても苦にしないタイプだ。むしろ、彼らが最終ラインからゲームを創る。今流行り、というより、チームにとって標準装備だ。ボールを扱う技術そのものは、伸ばそうと思えば伸びるものだと思う。ただし、じゃあ誰に、いつ、どのようにボール出しをするのかは、また別の話だ。やりたくても自分の技術ではできないこともある。「足元のあるCB」だなんて簡単に言うのだけれど、難しい話だ。

 そんななか、ジョンヤは帰ってきた。ルヴァンで名乗りを上げ、上向かないチームの快進撃を支える、狼煙を上げるべく帰ってきた。加入以来、長い苦難と努力の果てに、チームが最も必要としているものを携え、いや、強力な武器を持って立ち上がった。

 その武器とは、二つのパスだ。

皇帝・ジョンヤ

第2レイヤーへ面とベクトルを操るおびき出しパス

 ジョンヤの基本ポジションは、FWの前。いわゆる最初のレイヤーだ。ここからボール供給を行うのだけれど、むやみにレイヤースキップを狙ったり、DF背中(最後のレイヤー)に送ったりはしない。そこで引っかけられて、前掛かりになったチームがカウンターを受けていては、攻撃の勢いがそがれてしまう。

 急がば回れ。まずは、最初-第2レイヤー間のボール交換だ。しかも、FWがCH(アンカー)の選手をケアしていようが、まずはボールをレイヤー移動させる。つまりは、前にボールを進めることだ。相手がCHにチェックにくれば、リターンパスを受ける。これによって、ジョンヤ周囲のエリアがクリアリングされる。FWが急いでジョンヤにプレッシャーをかけにくれば、今度は、逆サイドのCBが空いている。または、チェックに来たFWが空けたスペース(第2レイヤー)でCHが受け直すことができる。

 一連のジョンヤのパス交換は、一見地味に見える行動なのだけれど、よく効いている。ポイントは以下だ。注目なのは、これが「対人守備が強い」と呼ばれていたDFがやっていることだ。すでに30歳。学びに限界はない。

  • 恐れず、FWの間を通してCHにボールをつけることから見える、ボールを前進させる意識
  • リターンパスを受ける技術的、精神的な余裕
  • 相手と味方のベクトル、立ち位置を操る。また、マークを預けたり引き受けたりを繰り返す

図1

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図2

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第3レイヤーへ「刺す」スキップパス

 そして、ジョンヤの真骨頂。レイヤーを飛び越すパス、レイヤースキップパスを通せる。レイヤーをスキップさせると相手のスライドが遅れるので、ボール保持側の展開がスピードアップする。しかも、最初のレイヤーから第3レイヤーへのスキップとなると、ボールを受けたレシーバーが勝負するのは、DFファイナルラインだけになる。いわゆるバイタルエリアが丸裸になる。

 前述のおびき出しパスで相手を引き出したり、警戒させつつ、スキップパスを刺す。もちろん前進すれば、DF背中の最後のレイヤーへもパスを通す射程範囲に入る。長短のパスで展開を操り、会心の一撃も持ち合わせる新たな皇帝CBだ。

 

図3

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図4

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おわりに

 この試合のジョンヤを見て、シンプルに感動してしまったのが事の発端です。正直、ほかのボール扱いが上手いDFと比較したら大したことないのかもしれないのですけれど、彼から色んなことが学べると思います。自分の不得意なことから逃げずに克服することの大切さ、学びに年齢は関係ないこと、新時代のDFに求められる2つのパスとかとかとか。まだまだな部分もありますけれど、彼ならきっと打ち克つでしょう。

 今回は、ガンバ戦のボール保持だけでしたが、ぜひ色んなジョンヤを見たいなと、これからも見たいなと思いました。フィールドプレーヤーの一番後ろから味方を一望しながら、いま、彼は黄金に輝いている。それでは、また。

<<こちらも合わせて読みたい!>>

 板垣晴朗さんのジョンヤの記事。「パスワークの号砲」は、良い言葉だなと思いました。

www.jsgoal.jp

 

 

【重力への抵抗】Jリーグ 第8節 鹿島アントラーズvsベガルタ仙台 (1-0)

はじめに

  では、いきますか、アウェイ鹿島戦のゲーム分析。去年のアウェイでは、良いイメージをもっていただけに少し残念な結果に。まあ、いつまでも茨城に魂を引かれるわけにもいかないので、いつもの振り返りをやっていきましょう。では、レッツゴー。

目次

オリジナルフォーメーション

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 ベガルタは、前節同様3-1-4-2でセット。兵藤に代わって新加入の松下がインテリオールでスタメン入り。左利きのキック、パス、動き回ることでを期待しての起用か。あとは同じメンバー。こうなるとやることはひとつで、鳥栖戦からの継続で2トップの攻撃とCBがボール持った時に時間とスペースの活用が肝だ。

 一方の鹿島。SHに移籍してきた白崎がスタメン入り。ただし、安部とポジションを入れ替えたりするのであくまでオリジナル上の話。昨年のユアスタホーム最終戦ではズタズタにされた。今シーズンも立ちはだかる強敵として手合わせ願いますといったところだ。

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

ボール保持時

軸は2トップへのボール。セットオフェンスの型は発展途上。

 ベガルタのビルドアップは、3CB+アンカーのいつもの形。WBが高い位置を取り、CB常田からのフィードを待つ、あるいはビルドアップの踊り場としてCBをプレッシャーから解放させる。

 すっかりおなじみになった平岡、常田、ジョンヤによるビルドアップ。やれシマオが降りるだ、兵藤が降りるだ、おいおい石原先生まで降りるんかいと言っていた湘南戦が懐かしい。 

 そしてポジショナルアタックにおいては、理想型が78分。リャンがレオシルバをおびき出し、ハモンの扉を開く。ジョンヤが楔を打ち込む。ハモンに引き寄せられるDFとフリーになるタカチョー。選手の質と立ち位置、最後に一人余るところなど、きちんと優位な状態を作り出していた。コンセプトとして、第一優先がSB裏へのランニングがあるチーム状況において、こういったセットオフェンスを大事にしたい。

 またクロスマシーンハモンについては、ポジティブトランジションで書くのだけれど、ハモンはエルボー、つまりはハーフレーンの出口・ローポストの入口で待機させて、ボールレシーバーに専念させた方が彼にとってもチームにとっても良い気がする。気がするだけ。シュートブロック、ローポスト防衛のためにDFがくるなら誰かが空くし、来ないなら彼の左足が活きる。まあ、盤上の話かもしれないのだけれどさ。

図1

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中央3レーンを封鎖する鹿島

  さて、鹿島。4-4-2のセットディフェンスなのだけれど、キーはアンカーを2トップがチェックするのとハーフレーンをSHが封鎖することだ。中央3レーンを8人~10人でブロッキングする。ベガルタの2トップ+2インテリオールの4人を自由にさせない対抗型できた。代わりにCBとWBは放置。ベガルタが縦志向強くくること、WBにボールが渡ってからスライド対応で消し込めば中央を割られるよりは良い判断だと思う。多分。

 実際、吉尾、松下は、息継ぎのためにブロックの角、SH前あたりに降りるシーンが見られた。ワンタッチターンで前を向いて、ハーフレーンを襲撃してほしい彼らが降りると怖さが半減してしまう。ただ、ボールが来ないなら、居ないのと同じ。悩ましい。だからこそ、リャンのようなおびき出しとハーフレーンで前を向くことの2つをチラつかせて、判断を迷わせたいところ。言うは易し。まずはできることから。

  

ボール非保持時

見事なスライド。快進撃に向けたキーポイント

  ベガルタのセットディフェンスは、5-3-2。ジャメ・ハモンの2トップが2センターを監視して、2CBは放置。吉尾・松下のインテリオールがSB、蜂須賀・タカチョーのWBがSBにつく。基準を明確にすることで、スライドも思い切り行うことができる。鹿島は、2バックがボールを持てるが出し先がSBになる。その瞬間がベガルタの狙い。5-3-2の守備結界を広げ、押し出すことで、ボールを下げさせることに成功。そのまま、ビルドアップ妨害に移行していく形だ。結。滅。

 大分戦にも見られたが、セットディフェンスから一気にスライドすることでボールを相手陣地に押し込みビルドアップ妨害に移行していければ、相手の最初のレイヤーを圧縮し窒息させることにつながる。

 このブログで「攻撃」「守備」といった分け方をしていない理由でもある。どっちが攻撃しているかなんて、簡単に分けられない。ピッチから境目が見えるか?白線が俺たちに何をくれた?あるのは、ボールを持っているか、いないかだ。

図2

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図3

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左SH安部の存在

 ひとつ気になったのは、鹿島のSHポジション。特に前半は、安部が左SHにポジションチェンジすることで、ベガルタの右サイドで問題が起きていた気がする。安部が押し込むことで蜂須賀が迎撃ポジションをとれず後退。安西の進出、土居、2センターを中心としたボール交換、ポジションローテをやられた印象だ。もし上手くいかなかくても、サイドチェンジすることで、ベガルタをスライドさせることに成功。そこから失点にはつながらなかったのだけれど、何度か危ないシーンを創られた。

 スライドが得意なチームには、スライドさせるのがひとつの策だ。得意なことをあえてさせることで、安心感を与えつつ限界を悟らせなくできる。大分戦のGK高木にボールを持たせたのに通じる。得意なことをやらせられるとやりたくなるのが人間だ。必要なのは、必要なことを必要なときにやることなのに。今回も、縦横のスライドを見せるベガルタに対して、サイドチェンジでスライドを強要させることで、ほころびを見つけようとした鹿島。そもそも3センターの横スライド、WBの縦迎撃スライドは、判断と体力を使う。頭と身体が疲労すれば、当然穴が空く。

 鹿島は、昨年のホーム最終戦でもCBのボール供給能力の低さを突いてきた。今回も、ベガルタの守備に対する対抗型を用意してきた印象で、各チームが参考にする気がする。ベガルタとしても、鬼スライドで対抗できるメンバーなのだけれど、ボールを持つ時間を増やす、ポジティブトランジション移行の整理をきちんとやっていきたい。

図4

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ポジティブトランジション

狙いはいつも通りSB裏。「再現」されるクロスマシーンハモン

  鳥栖戦から継続しているSB裏。ここをハモンとジャメが突く。そこにプラスして、タカチョーが一緒に攻めあがっていく印象だ。3人とも速く、ポジティブトランジション、攻撃状態への移行も速い。その分3人でミドル・ロングトランジションからのカウンターで仕留められれば良いのだけれど、そうもいっていないのが、今のチームのサッカーを難しくしている要因のような気がする。3人とも空を裂く号令を聞いたハネウマのように乱暴なだけに、周りがついて来れない。しかも、君が飛ばせと煽るから、小休止(ポーズ)プレーでボール保持の時間を創ることもないので、次の瞬間には家に帰って、対面する相手選手に付き合うはめになる。

 左ハーフレーンから左ウィングレーンにカットアウトラン、外流れすることでボールを引き出し光速クロスを上げる。これが今のハモン・ロペスのパターンだ。難しい。再現性があるのだから、有効と見るべきなのか。ボックス内に入ってこれない選手がいけないのか、そこを整理すれば、ハモンのクロスが報われるのか。

正解ではなく答えを探したい

 僕にはとうとう分からなかった。ハモンが報われるには、ハモンの心臓の鼓動、すなわちリズムに合わせて行動する必要があるように思える。ドリブルの方向、クロスのタイミング、シュートマシーンになりたい時、ずんだシェイクを食べたい時とかとかとか。そんなこと可能なのだろうか。だからと言って、彼に重税を課して、大人しくさせるのも何だかなあって感じだ。彼がそれで相手に勝って突破している、何度も繰り返せてる、それでオッケーなのか。分からない。

 ひとつ言えるのが、彼も人間で、一緒にプレーしている選手も人間だ。誰だって試合に負けたくないし、もっと良くしたいと思っているわけで。「クロスを上げました」「ボックス内に入ってきました」みたいな真似だけはしないでほしいなと思っていたり、思っていなかったり、やっぱり思っていたり。みんなで攻めて、みんなで守れたら、とっても良いなと思いましたとさ。

 

考察

守備構築に成功

 一時期の誰が何を守っているのかよく分からない守備から随分整理された。そこから、素早く攻撃に転じていく意識も統一されている。それがだめなら、CBを中心にポジショナルアタック。一本槍で難しいのだけれど、突き詰めるしかない。

だからこそ序盤の急戦で仕留めたい

 この試合も13分、15分にチャンスがあったわけで。ああいうところで決めきれないと、今のチームは難しくなってしまう。ありったけの殺意?を込めてボールを強くぶっ叩くこと。まあ、結果ジャメは大外ししたのだけれど。

現実と理想との狭間で

 ある意味今年のテーマでもあった、立ち位置を変えながら優位性を維持しつつ、数的優位を保つやり方。本来、ゴール前で力を発揮する選手がバックラインに降りることになる。優位もへったくれもなくなり、途中で変えた。

 ある意味すでに現実路線に入っているのかなと。というより、より現実的な理想といった方が正しいか。より勝ち点を意識した形。叶えられることから叶える。時間も無いし。ブロックを低く構えて2トップの個の力に任せるあたりは、今あるリソースを最大化するひとつの策に思える。だからこそ、やらねば、やられるのだ。

 

おわりに

  やりたいことを否定され、できることに舵を切る。決して悪いことではない。皮肉なことは、できることを封じられたからこその変化を封じられ、立ち帰ってきた。そしてまた、それだけでは解決しない問題に直面することになった。咎。報い。業が深い。

 冗談だろ。どれだけ僕たちを試したら気が済むんだ。神様は。でも、毎朝起きると新しい自分に生まれ変わっているのなら、毎日が試練で、チャレンジなのかもしれない。そこに正解はないのかもしれない。少しずつ、高いところに登っているのかもしれない。かもしれないかもしれないかもしれない。今はそう言い聞かせてみる。

 

 「後悔するよりも反省する事だ。後悔は、人をネガティブにする」こう言ったのは、ソリッド・スネークだ。

 

 参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html

 

 

【明日はきっといい日になる】Jリーグ 第7節 大分トリニータvsベガルタ仙台 (0-2)

はじめに

 さて、行きますか。アウェイ大分戦のゲーム分析。今シーズンリーグ戦初勝利を得たベガルタを迎え撃つは強敵揃い。まずは、大分だ。やりたいことを続けることは、それなりにしんどいのだけれど、やらなければやられる。やるか、やらないかだ。ということで、今回もゲーゲンプレスで振り返りをやります。では、レッツゴー。

 

目次

 

オリジナルフォーメーション

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 さて、ベガルタ。前節メンバーと変わらず。勝利メンバーを送り込む。前回と違うのは、相手が5バックになるということ。ひと手間、二手間かけないことには崩せないぞ。それとも、トランジション時に守備の約束の束が解けている間に攻め切ってしまうのか。はたまた前からビルドアップ妨害で嵌め殺すのか、塩漬けるのか。大分も策を巡らすチームなだけに楽しみだ。

 一方の大分。様々な苦難を乗り越え、堂々とJ1リーグを戦っている。監督は、軍師片野坂監督。強敵たちを必殺の擬似カウンターで仕留めてきた。ワンタッチゴーラーの藤本も好調だ。ここまでは3-4-2-1、3-1-4-2を使用。この試合、ベガルタの戦型予想がしやすいなかだが、どのような策を立てるのか。果たして結果は。

 

概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

ボール保持時

ビルドアップ:ポゼッション(時々ダイレクト)  ポジショナルアタック:ポゼッション

  ベガルタのビルドアップは、前節同様、3CB+アンカーによる逆丁字ビルドアップ。この試合は、大分がこの4人に同数プレスをかけてビルドアップ妨害を図るのか、それいともCBは放置してアンカーを誰かが見るのかが注目ポイントだ。なので、上記で3-4-2-1と3-1-4-2と書いたのだけれど、あくまでここまで採用したフォーメーションであって、4-2-3-1で「1-3」にあわせたり、4-3-1-2でアンカーとボールサイドのCB、中央CBに息継ぎさせないのかも想定された。片野坂監督は、本当にフォーメーションを電話番号のように使う。4バックも3バックも。いかに数的優位を創るか。そこに注力する。

 正解は3CB放置。藤本にアンカー富田を見させた。最初のレイヤーの優位性、つまりはボールと時間とスペースは与える。その代わり、自陣で好きにはさせないといった狙いだ。狙い通り、5-4-1ブロックを組む大分。シャドーと呼ばれる4のサイドの選手は、ハーフレーンに立ち封鎖。5バックは無暗に迎撃せず、後方でブロックを創ったままだ。

 こうなるとベガルタのポジショナルアタックに影響する。わりとクリーンにボールを持てるCB。でもその先が難しいかった。大分の狙いはこれだ。前節のように、2トップがカットアウトランでレーンチェンジしてサイドに流れると対応が後手になる。しかも、2人のインテリオール(吉尾、兵藤)についていくのも得策でないし、レーンの隙間で受けられると厄介だ。ならばと後方でブロックを創ろう。供給先が無ければ、供給元にボールがあっても死んだも同然だ。と軍師片野坂監督は考えたのだろう。

図1

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 では我らがベガルタ。どうもこうも、やることはひとつ。後ろの優位性を前に繋ぐこと。ビルドアップのタスキをFWに託すことだ。WBの蜂須賀、タカチョー、インテリオールの吉尾、兵藤がボールホルダーであるクイーン(CB)に近いポジションを取り出す。段々と我慢できなくなる大分。瞬間的に、刹那的に、大分WBとCBが引っ張り出されて中央CBとのギャップ、ラインの段差ができる。ジャメがそこを突いた。

 そして続けた。僕たちの声がまるで届いているかのように、逃げずに、勇気をもって続けた。結果は、終盤のインテンシティ(プレー強度、集中力、そのほか正の要素諸々)の低下につながったと言える。難しい。サッカーは難しい。ゲームコントロールが一番の近道のような気がする。気がするだけ。でもそれはどの国も、どこのチームも、どの時代も難しいテーマだ。サッカーは生き物だ。簡単ではない。

図2 

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 そして、大分の対応手。対抗型として3-4-2-1を採用したが、前半終了前ぐらいから3-1-4-2に変更。5-3-2系のフォーメーションでベガルタの攻撃をロックし始める。狙いはもちろん、自陣に飛んでくる優位性の矢の出どころと出した先を封じること。加えて、その矢のために門を開く2人のインテリオールに対して手を施しておくこと。恐ろしい。やはり、軍師だ。

図3

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 交代とフォーメーション変更で、中盤・終盤で差を広げ、ベガルタを窒息させた大分。ベガルタとしては、序盤の急戦でさっさと勝負を決めたかった。というより、今のベガルタにはそれぐらいしかない。交代投入された選手が何か違いを見せたかというと、なんとも言えないというのが今日の結論だ。特に大分とのコントラストがはっきりしてしまった。それが悪いというわけではないのだけれど、後述するビルドアップ妨害で仕留めきれなかった部分など、やらなければやられるのだ。

 

ネガティブトランジション

プレッシング:ゲーゲン+リトリート

 僕からは書くことは無いです。申し訳ない。特筆すべきところは少しなかったような気がする。多分。いつものようにゲーゲンプレスをボール付近で行い、リトリートしていくいつもの形。ロングキックを蹴られても、常田が藤本番を勤め上げた。 

 

ボール非保持時

プレッシング:攻撃的プレス  セットディフェンス:ゾーンの中のマンツーマン

 ベガルタのビルドアップ妨害を見ていく。この試合のひとつの狙いだった。それは、あくまでGKまで深追いはせずボールを持たせること、3人のビルドアップ隊の目の前で牽制することで、 選択させつつ選択肢を削るやり方だ。アプローチは若干異なるのだけれど、大分が仕掛けてきた策に共通する部分だ。時間とスペースはやる。ただ、この先は通行料がいるぜ。と言った具合だ。あとは、前に行くのであれば、擬似カウンターの急先鋒、FW藤本を封じる必要がある。その役割は常田が担い全うした。完璧だった。それだけに、失点シーンは実に勿体なかった。若さゆえの過ち。それがひとを強くする。これから通常の3倍になればいい。

図4

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 大分はビルドアップパターンがいくつかあるが、図4が大体の形。すべてではない。基本は2トップとインテリオールが3トッププレスをかける。CB岩田がレーンチェンジでSBロールをするおかげで、ハモンがめちゃくちゃ気にして、5-4-1のように見えることもあった。現象。

 そこには兵藤が加わって同数プレスを継続。GK高木が加わってきたら、前に立って様子を見るが、パス交換をしている間にジワジワ距離を詰める。GK高木の弱点は足元のうまさだ。え?強みでは?当然強みなのだけれど、なまじボールを触れると味方とボール交換してしまう。結果、2vs2の状況を創る。21分の伏線、43分にはゴール前で2本のシュートを浴びせ先制するところまで行った。

図5

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 ベガルタとしては、ここで仕留めたかった。前節も先制した余裕を使ってゲームを進めていた。ここでやらなければ、いつやるんだ。ハモンもアリバイシュートは良いのだけれど、せっかく運んだ優位性をバッティングセンターのように消費されては何だかなあといった感じだ。2本のシュートで世界一になったFWがいる。リオネル・メッシだ。

 

ポジティブトランジション

ショートトランジション:縦志向 ミドル/ロングトランジション:ポゼッション

  前線がハモンとジャメ、WBにタカチョーが入ると奪ってからは速くなる印象だ。特に3CB脇は狙いたくなる。ビルドアップ妨害からゴールに迫るシーンもあり、そちらに書くこととする。

 

考察

目には見えない頭脳戦

 お互い、後ろでボールを持つ時間があったのだけれど、不用意にはボールを入れない。相手の動きを観察して、隙を見せたら刺す。ベガルタとしても、採用できる戦型、手筋が一本槍のところがあるが、それでも今できる最大限の手を投入していた。

引き離されると難しくなる現実

 フォーメーション変更、選手交代と段々と差を広げた大分。もちろん、先制を許したのも大きい。色々な要素で後手に後手にといつの間にか対応になっていた。だからといって何かを変えるのかと聞かれると難しい。強いて言うのであれば、ジャメかハモンのどちかがゴールを決めていれば、全く違った顔を見せたゲームになっていたかもしれない。

続けることの恐怖に勝て!

 前節に大きな決断を下し、勝利を得たベガルタ。たった1試合上手くいかなかったからって首を引っ込めるような真似はしないでほしい。というかできないのかもしれないのだけれど。 勝利と敗北と。我々ができること、できないことが明確に分かったのだから、あとは自分たちがやりたいことを貫くために、相手に、状況に、環境にどう対応するのか。勝負はこれからだ。あとはもっとボールを持って攻撃をする時間を長くしたい。良い攻撃は良い守備から。良い守備は良い攻撃から。

 

おわりに

 論理的に投了まで追い込まれた。完璧に仕留められた。難しい。サッカーはやはり難しいし、勝つのは同じくらい難しい。やりたいことを貫くことも難しいし、相手に応じて変えるのも難しい。難しいことだらけ。足が遅いことが分かっているなら、相手がスタートするよりも早くスタートする必要がある。相手もスタートが早かったら?途中で昼寝をするような愚か者ではなかったら?やっぱり難しいじゃないか。

 その難しさのなかで、自分らしさという檻のなかでもがいているのが今のチームだ。もっと難しくなる。昔の方が良かったかもしれない。明日は今日より悪くなるかもしれない。それでも明日がほしい。ようやく夜明けを迎えたのだから。また陽の光を見たい。今日よりずっと、明日はいい日になる。いい日にするんだ。

 

 「簡単な人生を願うな。困難な人生を耐え抜く強さを願え」こう言ったのは、ブルース・リーだ。

 

参考文献

www.footballista.jp

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【夜明けの最前線】Jリーグ 第6節 ベガルタ仙台vsサガン鳥栖 (3-0)

■はじめに

 さあ!いきましょうかホームサガン鳥栖戦のゲーム分析!桜開花の仙台。春一番の仙台。担げるゲンは何でも担いだ、拝める神は全て拝み倒したわけではないのだけれど、勝利を願い信じ続けたサポーターにやってきたのは夜明けの明かりだった。ということでゲーゲンプレスで振り返ります。では、レッツゴー。

■目次

 

■オリジナルフォーメーション

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 まずは我らがベガルタ仙台。フォーメーションを前輪駆動型4-4-2抹殺兵器3-1-4-2に。インテリオールに兵藤と吉尾を起用。CB中央に構えるのは左足のフィードが得意な常田。ジョンヤが前節引き続きクイーン(左CB)の位置に。2トップはハモンとジャメのコンビ。今節は、3-4-2-1のベールクト型をやめて、3-1-4-2と前掛かりな狙いだ。これがベガルタのナベさんの決断だった。

 対する鳥栖カレーラス監督になってやりたいサッカーはありつつも、現状の戦力だったり相手だったりに微調整するあたり手練れだなと思わせる。今節は4-4-2。おそらくなのだけれど、3-4-2-1を想定するなかでの4-4-2だったのかなと思う。3トップを顔面からぶち当てるやり方もあったはずだがかっちりとしてきた。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 理由は、ベガルタが「レーンを意識して良い立ち位置を取る」がプレー原則のため。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

ボール保持時

ビルドアップ:ダイレクトなビルドアップ

ポジショナルアタック:ポゼッション

 まずはベガルタのビルドアップ。3CB+アンカーの逆丁字型ビルドアップだ。そこにGKダンが加わったり一手間加えることもあったのだけれど、基本型はこの形を維持した。これまでCHが降りるわ、シャドーが降りるわ、多くのお手伝いさんがいた状況だったが、この試合はまるで何かの強い意思を感じさせられるように3CBでビルドアップを進めた。

 鳥栖の狙いは、後方でブロッキングする、パスレーンを封鎖してWB裏、CB裏をクエンカや金崎に狙わせることのように見えた。よって、ベガルタCBには強いプレッシャーがかからなかった。というより、金崎もクエンカも、ボール非保持時において、二度追い、三度追いしたり、限定・誘導するようなFWには見えなかった気がする。気がするだけ。おかげで、ジョンヤに、平岡に、そして常田にボール供給の時間、息継ぎする時間ができた。

 そしてポジショナルアタック。そもそもの話をすると、3-1-4-2に対して、4-4-2はすこぶる相性が悪い。一般的に。3-4-2-1も4-4-2が守っていないところ(2トップ脇、SH脇、DFとMFの間)に選手をはじめから配置しているので同じようなことが言えるのだけれど、4-4-2にとって3-1-4-2がややこしいのは、4-2は4-4で相手がはっきりしているが、3-1は2で見るのはしんどい。かといって、CHやSHが応援にいけば、WBやインテリオールをフリーにする。しかも2トップなので、1人がサイドに流れても1人は中央に残って牽制できる。いわゆるピン留めだ。こうやって4-4-2に対する3-1-4-2は、「嵌めて外す」が構造的にできてしまう混ぜるな危険状態にできる。ま、数字遊びなのだけれど、これもひとつの事実だ。

*概念図

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 話をベガルタに移す。この試合のインテリオールに起用されたのは兵藤と吉尾。横浜が生んだアタッカーだ。吉尾は、縦のボールをワンタッチターンで前を向く「カイナターン」でスペースやハーフレーンを襲撃。兵藤もスペースやSB・CBの間を攻撃。何度もCBからのボールを受け前進していく。後ろの優位性を前に繋ぐ。実現された瞬間だった。

 鳥栖のSBの迎撃意識の高さも要因だった。何度も迎撃したSB後方のスペースに、「花火の中につっこむぞ!」とばかりに飛び出していくジャメとハモン。そして吉尾と兵藤との合わせ技。強力なコンボ攻撃。おそらく今日のベガルタの狙いだった。構造的な部分による最初期の奇襲。嵌めてから外すことで小さなズレを創り世界に選択を迫る。選択の結果。大きなズレを生み出した。ズレは得点に。得点は勝利へと昇華された。

 そしてポジショナルアタックを最後に彩ったのが常田とジョンヤ。狙いが狙い通りいかなければ、常田のチェンジサイドキックで世界線をリセット。リセットパスで局面を変えてしまう。シンプルに空いている蜂須賀、タカチョーにキックを蹴り込む。そしてジョンヤ。ジョンヤのキックの特長は、最後のレイヤー狙い、つまりはゴールに直結する、死に至らしめるパスだ。ジャメとハモン、2人のインテリオールがSB裏を狙うのと相乗効果でこうかはばつぐんだった。逆に鳥栖は、SBが上がらない選択肢もあったが選ばず。どうして、いつも、常にそうなのか少し分からなかった。

 ベガルタのCBにはCBの、FWにはFWのそれぞれの役割がある。監督には監督の。サポーターにはサポーターの。遅いも早いもない。優れているも劣っているのものない。境目などない。その役割に気づけるか気づけないか。それだけだ。戦う理由が見つかった。

*概念図

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■ネガティブトランジション

プレッシング:ゲーゲンプレッシング(エリア制圧型)

 今回はいつものアリバイゲーゲンではなかった。これまでは、リトリート時間を稼ぐためのゲーゲンプレスだったが、目的が変わった。必ず奪う。そして、ゴールを目指す。2点目のシーンもボールを素早く奪い返す。これが吉尾、兵藤の連続シュートにつながっていく。もちろん、ピッチ各所でも奪っていく、奪って攻めるんだと意欲と行動が見えた。ボールの主であり続けようと戦い続けた。

■ボール非保持時

プレッシング:攻撃的プレッシング

セットディフェンス:ゾーンのなかのマンツー

  セットディフェンスは5-3-2。鳥栖の2CB+2CHのボックスビルドアップに対して、2トップが2CHを監視。SBにボールが出たらWBが猛烈に迎撃。あるいは、3センターが鬼スライドする。迎撃、スライド。これらは記号だ。ここと決めたらボールを奪いにいく、守る。振り切ってやり続ける。

 鳥栖はクエンカが降りたり、SHが降りる、CB間にCHが降りるなど工夫を見せた。それが有効かと言われたらよく分からなかったのだけれど、僕たちも勇気が少し足りなかったころやっていたわけで。動じることもまたなかった。戦う理由が見つかった者は強いのだと思う。 

■ポジティブトランジション

ショートトランジション:縦志向強い

ミドル/ロングトランジション:縦志向強い

  ポジショナルアタックに繋がっていくが、鳥栖が高い位置に取るSB裏へのアプローチが主軸。ボールを奪われ、前にいくのか撤退するのか迷っている間に行けるぜ!とばかりにボールを送り込む。ここは試合を通じて徹頭徹尾行われていて、やはり狙いだったと言える。 

■考察

殉ずるがいい己の答えに。

 弱点を補いあう。聞こえは良かったのだけれど、出来ないことを無理くりやろうとしていびつな構造になっていた前節までのベガルタ。シンプルに立ち位置攻撃で攻略する。できなければ、レーンチェンジでズレを創る。サイドチェンジでリセットする。見事に正面から戦った。そして、勝利を得た。

もう1歩、あと1歩

 ここまで構造的に攻略したのだから、淡々と壊し続けることも必要になる。もちろん今日の狙いとは別の部分になるのかもしれないのだけれど、ひとつひとつ点数を重ねることも求められていくことになる。高いレベルの話だ。ここまで来たのだ。

夜に腐っていた僕たちは間違いなく明日に向かっていく

 目指している良い立ち位置での攻略。ここをもっと突き詰めていかないとけない。明日からまたがんばれるか。大丈夫。忘れたのではない。思い出せないだけだ。できないのでもない。やらないだけだ。君ならやれる。 

■おわりに

  僕はピッチに展開されるサッカーとは、そのチームの監督の意思を表現するひとつの方法だと思っている。それが喜びであれ、怒りであれ、悲しみであれ決断であれ。僕はそれを読み解きたいと思っている。対話だ。サッカーを通じた対話だ。僕は渡邉監督と選手と対話している。そして言葉に置き換えている。

 ひとつの意思はより強大な意思を発揮する。一人一人は微弱でも、次第に大きくなる。それがスタジアムという場所だと思っている。

 今の世の中において。サポーターが勝たせたなんて幻想だ。そしてサッカーは、勝たなければ意味がない。良い試合だったなんて、記録にも記憶にも残らない。勝つ者と敗ける者がいる、それだけだ。ただ、それでも、たとえそうだとしても、言えることがある。とても良い試合だった。チームもサポーターも勝利という一点を見つめ戦い、そして勝ち取った。これを良いと言わず、何を良いと言うのか。

 僕たちは決して負けない。それは目の前の試合に、それぞれが立ち向かう苦難に、僕たちは決して負けない。負けるわけにはいかないんだ。そんな春一番だった。

 

 「よう相棒。まだ生きてるか?ありがとう戦友。」こう言ったのは、ラリー・フォルク(pixy)だ。

 

■参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html