蹴球仙術

せんだいしろーによるサッカー戦術ブログ。ベガルタ仙台とともに。

【俺を】CL 決勝T 1stレグ アヤックスvsR・マドリー(1-2) 【落としてみせろ】

■はじめに

  どうも僕です。今回も、「突然上がる海外ゲーム分析シリーズ」第6弾になります。舞台は、チャンピオンズリーグ決勝トーナメント。トータルフットボールの起源たるアヤックスと3年連続頂点を極めているR・マドリーの対戦となります。そんな、「起源」vs「頂点」、決勝トーナメントの雰囲気をおおいに感じるゲームになりました。今回は、アヤックス目線でチーム分析、ゲーム分析を進めています。では、レッツゴー。

■目次

■オリジナルフォーメーション

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  ホーム「ヨハン・クライフ・アレナ」に覇者を招き入れたアヤックス。オリジナルは、4-2-1-3でセット。4-2-3-1ともとれるが、オランダといえば3FW。しかもアヤックス。ここは敬意をこめて4-2-1-3と表記しておく。来季バルサへの移籍が決まっている話題のデヨングは、2センターの一角に。なお、CLというとホームチームは、アウェイゴールを嫌って0-0でゲームを運び、アウェイで決着をつけるといった戦い方を多くみかける。さて、クライフの名前がスタジアムについているチームは、どのような戦い方をするのか。

 一方のR・マドリー。魔術師ジダンによって3連覇。今シーズンは、ロペテギをぶっこ抜いては首を切ったり、ロナウドとお別れしたり、いつものように忙しいシーズンを送っているようだ。今、話題急上昇のヴィニシウスは、左ウィングに。CBナチョ、SBレギロンは申し訳ないがよく分かっていないので、試合のなかで見ていく。こちらは、アウェイゴールを奪えれば優位に立てるが、 先制を許すとスタジアムの雰囲気が変わる。横綱相撲なのは変わらないとは思う。 

■概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析。
  • ピッチ横のエリアは、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

ボール保持時

ビルドアップ:ポゼッション
ポジショナルアタック:ポゼッション

  ビルドアップは、CBが開きGKがボールを持つ、GK+ CB+2センターのオランダ伝統の形。相手がその5人のビルドアップ隊へビルドアップ妨害をかけてきたら、中央にひきつけて開くの原則通り、センターハーフにボールをつけ、SBへレイオフ。そこから、ウィングへの展開とお手本通りのプレス回避を見せる。もちろんマドリーが死んでもボールを繋がせないぜ!ではなかったので、ある程度、自陣のブロックではね返せればOKといったチームだったのもある。ただ、デヨングが相手を背中に引き連れながらボールキープして空いている選手に展開するなど、彼がいるからこそのプレーもあった。

 ポジショナルアタックは、レーンに2人、3人と集めて突破を図り、ファイナルサードで、空いているハーフレーン、セントラルレーンを使用する形を見せた。マドリーがセットディフェンスを4-4-2のような形(ベンゼマモドリッチ2トップ)だったので、よりレーンを意識した攻撃になっていた。

 特に興味深かったのが、ある時まではレーンにオーバーロードさせたと思ったら、一気に開放させて、均等に空いているレーンに立つなど、スペーシングで良い立ち位置を取っていた。特に、「離れる」のスペーシングは、前線4枚は必修項目のような気がする。気がするだけ。

*概念図 

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 左ウィングレーンに3人。左ハーフレーンに1人。綺麗な丁字アタック。

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 左SBにボールがつく。バックステップで離れる準備。

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  SB-CB間でボールを受けるネレス。中央3レーンに配置準備完了。

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 あとは、芋づる式でCB引っぱり出せる。ボックス内、3対2。

■ネガティブトランジション

プレッシング:ゲーゲンプレッシング(レシーバー制圧型)

 ネガティブトランジションは、ゲーゲンプレッシングを採用。パスの受け手に厳しくプレッシャーをかけるレシーバー(受け手)制圧型だ。ボールホルダー付近の1人、2人がプレッシャーをかけている間、周りの選手がレシーバーと1対1の状況を作る。結果、前線4人+センターハーフ2人の6人がボールホルダーとレシーバーを圧迫することとなった。レシーバーとのデュエルも制し、何度もボールを奪い、カウンターにつなげていた。

*概念図

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■ボール非保持時

プレッシング:超攻撃的プレス
セットディフェンス:マンツーマン

  アヤックスの相手ボックス付近からのプレッシングでビルドアップ妨害を図る超攻撃的プレスを採用。マンツーマン、あるいは近い選手への1対1のプレッシャーでビルドアップの基礎から破壊する策をとった。マドリーの4-1-2-3への対抗型で、4-2-1-3とがっつり噛み合わせた形だ。特に15分までは、一貫してこの姿勢で臨み、マドリーにまともにビルドアップさせなかった。30分以降になるとそれが落ち着いてきたのだけれど、その理由は次のセットディフェンスの時に。

 セットディフェンスは、マンツーマンを採用。おそらくだが、それにプラスしてボールホルダーに近い選手が第一プレスマンになっていた気がする。そのため、3ライン形成というより、そのまま4-2-1-3セットディフェンスとなっていた。8分に決定機を迎えるなど、策としては成功していた。ただ、30分ごろから、マドリーのビルドアップの形が変化したあたりから若干プレスが大人しくなった。

*概念図

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 マドリーは、対応手として、CB脇にクロースが落ちることでプレス基準をズラすことに成功。アヤックスは、右サイドのマーク対象を変えることに。右ウィングのツィエクがクロース、右SBのマズラウィがレギロンにつく形に。もちろん状況によって、レギロンをフリーにすることもあったのだけれど、相手ウィングを放置して前線でがっつり捕まえてしまおうという形は維持されていた。じゃあウィングは誰が見るの?答えはCBのスライド。その際は、逆サイドのSBは頑張ってボックスに戻ってCBをこなすことになる(あとはデヨング)。

 そもそも、マンツーマンディフェンスには、2つの弱点があると考えている。①ポジションチェンジ、②サイドチェンジだ。

 ①はどこまでついていくのか?が当然課題になる。地の果てまで追いかけることで有名なビエルサのマンツーマンですら、逆サイドまでついていくのか判断に迷うようで、受け渡しについては「雰囲気で」というのを聞いた。さすが、エル・ロコ。今回も、降りるクロースに、センターハーフがトイレまでついていった感じではなかった。おそらく原則としてマンツーマンだが、ポジションチェンジに対しては、近くの選手に受け渡すことになっていたのでは予測している。多分。

 さて、②は、当然追いかけることになるので、相手が動くところに自分たちも動くことになる。行動の決定権が相手にあるなかで、右に左に動くことになれば、小さなズレが出てくる。①の原則もあればなおさら。それを分かったのか、マドリーも30分以降、特に59分のゴールシーンは、左サイドから右サイド、中央に戻して、左サイドを突破している。トランジションを考慮して、選手間の距離を短く設定していたアヤックスにとって、「広く攻められる」とトランジションの束が解けてしまう。

 上記の対応手については、特に見られず、試合を通してこの形を貫いたアヤックス。ただ、無謀なことを続けていた印象はなく、どちらかというと、マドリーの対応手も織り込み済みといった気がする。気がするだけ。あんまり慌ててなかった。リヌス・ミケルスのプレッシングを現代版に蘇らせたひとつの形として、2ndレグも採用する可能性が高いと思う。

■ポジティブトランジション

ショートトランジション:前線の選手につける
ミドル/ロングトランジション:縦志向

 ショートトランジションは、74分のゴールに代表されるように、奪ったら、前線のウィングやトップにボールを付けていた。そこにはあまり時間をかけずにゴールに直接かかわるプレーが多かった。また、自陣や中盤からのトランジションも、縦志向が強くカウンターに移っていて、何度か決定機を迎えていたうちの1本でも入っていれば、ゲームの行方は変わっていたかもしれない。

■考察

フットボールは戦争だ

 同サイドへのオーバーロード、レーンでの圧迫、もっとミクロにひと対ひとの部分での局地戦で優位に立とうとしたアヤックス。覇者に対して、「俺たちは、相手が絶対王者だろうが、臆せすることなく勝利のためにボールを奪い続ける。さあ、覚悟はいいか?」といった具合に、トランジション勝負をしかけ、勝利を収めた。 

 あとは、そこのがんばりを最後のゴールの部分につなげたかった。VAR判定も含めれば、前半で4度の決定機があった。ある意味、それをしのいだマドリーは、強者らしいといえばそれまでだ。

美しく、勝利せよ

 2ndレグどう戦うのかも楽しみだが、ビハインドを背負っている状況で、前から行くだろうがマドリーがトランジション局面を極力出さないような展開になるだろう。そこをポジショナルに崩せるか否かがかかっている。多分。

■おわりに

  面白かった。ドイツ系のゲーゲンプレス!ゲーゲンプレス!がバリバリ発動するのも面白いし、トランジション局面、デュエルが激しいプレミアも面白いが、オランダのプレッシングも忘れてはいけない。合理的で、一貫してロジカルにやり切ってしまうのがオランダ流のプレッシャー術のような気がする。立ち位置の読み合いの部分で制するのもある。美しい激しさを見せてもらえた。

■参考文献

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birdseyefc.com

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【戦う理由は】プレミアリーグ 第26節マンチェスター・Cvsチェルシー(6-0)【見つかったか?】

■はじめに

 どうも僕です。今回も、オフ企画の一環。「突然上がる海外ゲーム分析シリーズ」の第5弾になります。というか、最近海外ゲーム分析ばっかりじゃないか!というツッコミが待ってそうですが。

 さて舞台は、サッカー王国イングランド。しかも世界中が注目したビッグマッチ。シティvsチェルシー。いわゆる、「ポジショナルプレー」の御旗のもと、前に進み続ける2チームの激突を取り上げる。例の如く、普段追いかけていないにわか勢なので、ひとつのゲームとして見ていく。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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 まずは、ペップシティ。1週間で3試合戦うという狂気の沙汰とは思えない日程を乗り越えるべく、選手の入れ替え。右WGには、B・シウバ、インテリオールにギュンドアン、左SBにはジンチェンコが入っている。まあ、誰が出てもサッカーをするのがペップのチームの印象だ。

 そして、サッリチェルシー。ボコ負けしたり、ボコ勝ちしたり忙しい試合をこなしている。これまで、アザールのゼロトップだったが、サッリとナポリでFWをはっていたイグアインを獲得。早速ゴールを奪うなど、前回対戦時との変化点で気になるポイントになる。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析。
  • ピッチ横のエリアは、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

■思想に殉ずるサッリチェルシーの4-5-1

 シティもチェルシーもオリジナルは、4-3-3。ボール非保持時には、4-5-1になるのが基本型だ。ただ、実際は、鏡のように似てはいるが異なっていた。それが全てとは言わないのだけれど、結果も正反対になった。ここで、2チームのボール非保持の立ち振る舞いを見ていく。

 まずは、チェルシーのセットディフェンス。4-5-1から、インテリオールがボールホルダーに元気よく前プレを仕掛けていく。ただ、一発目は良いが、シティがバックパスやサイドチェンジで動かされると途端にスライドの甘さが目立った。この試合、シティにハーフレーンへ散々縦パスを出される要因になった。

*概念図

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 上記概念図は、一度シティが右サイドにボールを回してから、左にもっていった際の図になる。バークリーも前プレにいって、カバーにジョルジーニョが入る。アザールは、ウォーカーと牽制し合う形。そうなると、数秒だが、左サイドに回すとジョルジーニョのスライドが間に合わなくなる。それでも、カンテは、元気いっぱいにボールホルダーであるCBに前プレをしかけるので、ハーフレーンが空く。

 なぜ、空くか?ジョルジーニョが間に合わないのと、ペドロが絞らないからなのだけれど、嫌なのは左SBのジンチェンコのポジショニングだった。時折、ハーフレーンにレーンチェンジする「アラバロール」を見せたり、サイドに張ったりなど、ペドロがジンチェンコに着く意識が強いのを利用して、ポジションをいじくりまわしていた。恐ろしい男。

 結果として、チェルシーは、右ハーフレーン(シティの左ハーフレーン)を空けては使われを繰り返し、失点に積み重ねることにつながった。さすがに試合途中、遅くても後半から修正が入るのかと思っていたのだけれど、特に変わった様子は見られなかった。まるで何かを信じているかのように、2枚のインテリオールは、CBへ果敢にプレスをかけ続けた。味方や相手の位置や状況がどうであれ。信じる者は、救われる。

 

■ペップシティの可変ウィング「トムキャット」

 さて、シティのセットディフェンス。オリジナルポジションは、4-5-1だが、チェルシーのビルドアップに合わせて、4-3-1-2に変形した。この変形がユニークだった。ウィングがウィングレーンからハーフレーンに絞って、3センター化して対抗。攻撃に移ると、持ち場に戻ってウィングロールを果たしていた。

 シティも2枚のインテリオールが勢いよくビルドアップ妨害のために前プレするのだけれど、ウィングがハーフレーンを埋めるおかげで、スペースを空けさせない設計になっていた。もちろん、SBがフリーになるが、当然スターリングとシウバの走力も計算に入っている。間に合ってしまう。

*概念図

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 先日、ちょうどウィングの可変に関して、粉河高校サッカー部監督わっきーさんと戦闘機F-14「トムキャット」の可変翼(=羽が伸び縮みする機構)のようだと、個人的に呼んでいこうみたいな話をしてたところだったのだけれど、まさかここで見ることになるとは(笑)

 もちろん、ウィングがハーフレーンにレーンチェンジすること自体は、それほど珍しくはないが、ボール保持時のほうが想像しやすい。ただ、実践例はあって、14年W杯のロシア、スイスや今イタリアで話題のサッスオーロもやっている。チャレンジ&カバーのひとつの形として、ウィングの3センター化は型になっていく気がする。気がするだけ。(個人的には、トムキャット呼びを推していきたい)

 

■「正論」で戦うペップと「思想」で戦うサッリ

 試合は、一方的ににシティが得点を重ねる展開に。チェルシーも特に大きな変更を加えるわけでもなく、試合終了のホイッスルを聞いた。シティとしては、シンプルに相手が守ってないとこを攻める。守ってないなら、動かす、攻めるを繰り返した。そしてそれが、この試合においては、正しかったのである。

 ペップはある程度、サッリがやり方を変えずに来ると踏んでいたのかなと。それは、ペップがサッリがどういう人間なのかよく理解していること前提で。最初の5分で対抗型を見極めて答え合わせをする。今回は、正論で殴り続けられると判断したわけなのだけれど、保険としてアラバロールができるジンチェンコ、CBもSBもできるウォーカー起用しておく用意周到さを見せた。非常に現代らしい、ゲームの進め方だ。

 一方のサッリ。自分と、自分たちと、自分が信じるものと闘っているようにも見えた。迷いさまよい、自分との闘いに決着がついていない者がペップから勝利を奪うのは、並大抵のことではない。ここまで、思想に殉ずるタイプには、思っていなかったのだけれど、まだ1年目。いろいろと足りない部分が目立つが、やはり信じる部分がまだ足りないということなのか。

 

■おわりに

 正直なところ、今回のゲーム分析は難しかった。試合自体は、形が目まぐるしく変わって、展開が刻一刻と変わるようなゲームではなかったのだけれど、もっと根っこの部分、本質的な部分を見ていく必要がある気がする。継続して見ていくことで、小さな変化から原理的な部分に迫れることが改めて分かった。あと、ちゃんと試合見て文字にすることも超大事。書いていて、頭のなかが筋肉痛だ。継続は力なり。ではまたどこかで。

 

■参考文献

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コッパ・イタリア ベスト16 ナポリvsサッスオーロ (2-0)「空と海が僕らの心を洗う」

■はじめに

 どうも僕です。今回は、Jリーグオフ企画、「突然上がる海外ゲーム分析シリーズ」の第4弾です。舞台は、イタリア。僕らのサッスオーロです。前回、リーグ戦でゲーム分析したナポリが対戦相手。カップ戦ということもあって、メンバー変更もあるなか、どんなゲームになったかみていきましょう。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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 サッスオーロは、4-3-3採用。いつも見てるわけではないので、このメンバーがどんな意味づけがされているのかよく分かってはいないのだけれど、168㎝の若きアンカーのセンシ、いつメンのボアテング、ベラルディが採用されいているあたり、カップ戦らしさが出ている。一応、ベスト16の舞台だ。しかも相手はナポリアンチェロッティだ。

 さてそのナポリ。ミリクにクリバリ、インシーニェ、カジェホンとわりと力入れてきたのではと思わせるメンバー。ただ、このチームは、サッリボールとアンチェロッティの整える力で手ごわい。リーグ戦も2位につけている。この試合は、4-4-2。ゾーンディフェンスの権化だ。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析。
  • ピッチ横のエリアは、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時でのスケールを採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

ボール保持時

ビルドアップ: ポゼッションの確立

ポジショナルアタック: ポゼッション

 サッスオーロのビルドアップは、GK+CB2人+アンカーの菱形ビルドアップ。SBは、高い位置を取り、2人のインテリオールとともにフラットに並んだ。これによって、ナポリのビルドアップ妨害の争点を設定するのが狙いだ。もっと言うと、①ナポリの2ndラインを無策に自陣に寄せつけて窒息しないようにする、②サッスオーロの選手が動くことで相手を動かすいわゆる「調律」することが意図だ。

 試合を通して、この戦型が維持されていた。つまり、死んでもMFがDFラインに落ちないということだ。近づけば敵も寄ってくる。寄るな。繋げ。これは、ボール非保持時の原則でもあって、おそらくはデゼルビのポリシー、プレー原則な気がする。気がするだけ。

*概念図

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 後方で菱形を形成することで、ウィングレーンの第2レイヤーをあえて空ける。相手がビルドアップ妨害を図ってくると、空けていたスペースにSBが降りる、降りて空けたスペースにウィングが降りることでハーフスペースとウィングレーンでスクエアを形成。GK+2人CB+アンカーで菱形とあわせて、ロンドでビルドアップ妨害を回避して、逆サイドへと展開していった。

*概念図

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 サッスオーロのポジショナルアタックは、基本筋が最初-第3レイヤーへのスキップパスであったり、第3レイヤーの中間で受けるボアテングへのパス、レイオフが狙いになる。ただ、この試合においては、技術的なミスやクリバリを中心とした、ナポリのCB+CHの中央3レーンのボックスに防がれていた印象だ。そこからゲーゲンプレスにつなげればよかったのだけれど…それは、別項で。それを抜きにしても、どこから攻めるのか、小さなズレを見つけるのかは、ちょっと出来ていなかった。それがなぜかは、ちょっとしたトラップの悪さやパスミスによるボールロストで自分で首を絞めた感はある。ナポリがそう強いたというのもある。

 

■ネガティブトランジション

プレッシング: ゲーゲンプレス(エリア制圧型)

 悪い。非常に悪かった。サッスオーロのネガティブトランジションの話だ。いつか、どこかで、デゼルビがまだ整備しきれていないところとして、ネガティブトランジションが挙げられていた記憶がある。まあ、その記憶がなくても悪かった。何が悪かったというと、マークを捨ててエリアを制圧する判断の部分だ。

 例えば、3センターはボールを奪われると相手ボールホルダー付近のエリアを圧縮していく。呼応して、ウィングもプレスバックする。ここまでは悪くない。ただ、SBがマークを捨てて、プレッシングに行かない、逆サイドが絞れていない等で結果水漏れする。メンバーもカップ戦メンバーで難しい面あったのだろうと予想はするのだけれど、ネガトラがコンパクトになることで、攻撃もコンパクトになる。攻守表裏一体。

 

■ボール非保持時

ビルドアップ妨害: 同数プレス

セットディフェンス: 攻撃的プレス

 サッスオーロのビルドアップ妨害は、同数プレス。ただし、チームとしてカバーシャドウプレスかと言われると微妙なところだ。何より、1人で2人を守っているようには、ちょっと見えなかった。あくまで、ビルドアップ隊に対して、同数の妨害部隊を送り込んだという形だ。

 一方のセットディフェンス。4-3-3系によく見られる4-5-1フラットディフェンスではあるのだけれど、少し、いびつな形をしていた。2人のインテリオールがナポリの2センターに積極的にプレスをかけにいくので、動いた後のハーフスペースが空く。そこをセンシ1人でカバーするのは土台無理なので、ウィングが埋める。う、ウィング!?といったところなのだけれど、事実そうだった。よって、形は、クリスマスツリー型4-3-2-1ぽく見えた。

*概念図

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 ちなみに、全体としては、中央3レーンを圧縮密度を上げて封鎖する意図が見えた。スライド時も逆サイドのSBがよく絞っていた。そのため、ウィングがDFラインに降りてSBロールをこなすこともあった。右はその意識が希薄なのか、あまり見られなかった気がする。

*概念図

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 ここでも、デゼルビポリシー。MFは意地でもDFラインに降りない原則が見えた。SBがサイドに出て行ってチェックしにいくが、CBが絞らずチャンネルを空けるシーンが多く見られた。よくアンカーが降りて対応する場合があるが、それはなかった。ただ、インテリオールが元気よく前線にプレスをかけるので、アンカーのセンシまでいなくなると流石にまずいと言ったところなのだろうか。

 センシのネタでいえば、ウィングがハーフスペースからサイドへプレスをかけるとそのカバーに入るが、もともといたポジションを空けることになる。逆サイドのウィングがSB化していることもあり、中央を空けてしまうこともあった。インテリオールのプレスバック次第なのだろうけれど、ちょっとどういう原則でボール非保持時を過ごそうとしているのか。これで守り切れると踏んだのだろうか。分からない。レシャックの言葉を借りれば、ソファ幅は守れるが部屋全体は守れない。それをセンシに強いていた気がする。カンテが欲しくなる。

*概念図

f:id:sendaisiro:20190116233805p:plain

 

■ポジティブトランジション

ショートトランジション: 前の選手にボールをつける

ミドル/ロングトランジション: ポゼッションの確立

 特に後半から顕著だったのだけれど、第2レイヤーでボールを奪って、第3レイヤーの選手に素早く縦に着けていくシーンが見えた。それがボアテングだったりもしたが、CB陣に潰されていたなか、中々見えなかった形だったが、同レイヤーでのボール移動ではなく、レイヤーアップさせていくことでシュートシーンまで繋げていった。

 

■考察

(1)サッリロンドの片鱗を見せる

 本家ナポリに対して、ボールサイドでロンドする構造をもっているのは強みのひとつだと思う。しかも、きちんとボールをつないで、相手を寄せて、オープンスペースに運んでいくのはサッスオーロの強さだ。スペースにつけて、テンポアップ、スピードアップしていけば、より攻撃の精度が上がっていくと思う。

 

(2)ボール非保持時の立ち振る舞いを見直したい

 決して良いとは言えないゲーゲンプレス、リスクリターンの勘定がどうなっているのか分からないセットディフェンスについてだが、いまさら、デゼルビが曲げるとは思えない。やるのはひとつ。ボール保持時に優位な立ち位置をとって、それがボール非保持時にも優位に立てる形にもっていくことだ。基本だがそこだと思う。多分。

 

■おわりに

 2試合しか見ていないサッスオーロを偉そうに語ってみた。ベガルタ以外のチームを見るのも面白い。ネガトラの課題だったり、ボールを持った時のゴールを奪う解の設定など、イタリアだろうが、仙台だろうが同質性、普遍性があって面白い。ピッチは繋がっている。地面は繋がっていはいないのだけれど。あと、センシ。センシは、いいぞ。すっかりセンシおじさんになってしまうところも、サッカーの面白いところで、国も、人種も関係ないのだ。それでは、チャオ、チャオチャオ。

 

■参考文献

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2019年 ベガルタ仙台 加入選手分析

■はじめに

 どうも僕です。今回は、ベガルタネタ。移籍加入してきた選手について。いっぱい旅立ちを迎えた選手たちがいましたね。別れがあれば、出会いもある。流出があれば、そう、流入があるんです。

 ということで、今回、ある理論を用いて、ある仮説を検証するべく加入選手を分析していきたいと思います。例の如く、というか今回はかなり大真面目に書いているので、あまり期待しないでください。オフ企画ということで、ひとつ。では、レッツゴー。

 

ベガルタ 加入選手一覧

 以下、加入選手です。今年もいろんなチームから多くの選手がやってきました。改めて感謝と今後よろしくお願いします。

 飯尾 竜太郎 (←長崎)

 石原 崇兆  (←松本)

 兵藤 慎剛  (←札幌)

 松下 佳貴  (←神戸)

 道渕 諒平  (←甲府)

 吉尾 海夏  (←マリノス)

 長沢 駿   (←神戸)

 シマオ マテ (フリー)

 田中 渉   (新卒)

 照山 颯人  (新卒)

 

 基本的には、今回の補強、成功したのかなと思っています。何をもって成功かと言うと、クラブがきちんとコントロールした、パニックになっていなかった、的確な補強ができたのではないのかと。

 ベガルタは、財政規模的には決して裕福ではありません。レンタル選手が多くなるのも当然の流れですが、レンタルバックのリスクを抱えていることになります。そこの危機感をクラブも持っていて、決して、感情だけではない(もちろんどんな選手もベガルタで活躍してほしいですよ)、クレバーに編成と市場を見極めたのかなと思っています。

 以上を前提に。それでも疑問を感じてしまいます。FWのポジションです。ベガルタの課題のひとつが、石原直樹の後継者です。決して石原自身が衰えているとかではなく、やはり、彼にゴール前に集中してほしいですし、年齢も年齢ですから、今の二重三重タスクから解放させてあげたいと思ってしまいます。

 そうなると、なんでもできるFW。つまりは、ポストもできる、カウンター要員になる、独力でスコアできる、フェイク9もできる、説明不可の角度からゴールを決める、大舞台の経験がある、偉大な指導者から指導を受けたとかとかとか。

 これらの条件を満たすFWとして、僕は、アグエロしかいないと考えています。世の中色んなFWがいますけど、一番興奮するのはアグエロだと思います。彼しかいない。玉突き移籍が起こるサッカー界において、僕は、ベガルタに来る選手だと確信していました。ただ、選手一覧を見ると名前がない。いや、ある理論を用いると実はベガルタアグエロを獲得していたとの仮説が立てられました。

 

■ゼロカロリー理論とは

 今回、分析で援用するのは「ゼロカロリー理論」です。「ゼロカロリー理論」とは、あらゆる食べ物は、ある条件を満たすとカロリーがゼロであるという理論です。提唱者は、僕の大好きな漫才コンビサンドウィッチマン伊達みきおです。

 このある条件を用いて、僕は、「オールアグエロ理論」の立証を仮説立て、論理的整合性を確認したいと思います。

 

■100秒で分かる加入選手分析

 飯尾 竜太郎 (←長崎)

 以下、動画をご覧ください。この角度、リバプール戦のゴールを彷彿とさせます。この角度からゴールを決めるのはアグエロしかいません。なので、彼は、アグエロです。

 しかも、速い。運動量がすごいです。長崎のサッカーには、夢がある。

www.youtube.com

 

 石原 崇兆  (←松本)

 0:53付近。この角度から決めるのはアグエロしかいません。なので、彼はアグエロです。

 しかも、速い。あとめっちゃドリブルで仕掛けます。走り出したらもう止まらない。反町さんのもとでプレーできていたのなら、我らがナベ将のもとでも大丈夫でしょう。

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 兵藤 慎剛  (←札幌)

  横浜、札幌で活躍しているスターです。スターといえばアグエロです。なので、彼もアグエロです。

 あと、横浜出身の選手は、選手の規範になる選手、どのサポーターからも尊敬される選手が多くいる気がする。それは、マリノスというクラブの長い努力の成果ではないかなと。サッカーだけでなく、人として。どうあるべきか。ベガルタが謙虚に学ぶところかなと。

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 松下 佳貴  (←神戸)

 リージョ神戸からやってきました。リージョはペップの師匠です。ペップが率いているのは、マンチェスターシティです。なので、彼もアグエロです。この角度から(中略)。

 ボックス内に思いっきり走って最後に足を出す。書くのは簡単ですけれど、やるのは別。性格面も関わってくるのかなと思っています。でも、彼はできる。できる選手なんだ。

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 道渕 諒平  (←甲府)

 シュートが素晴らしい。弾丸のようにネットを突き刺す。なので、彼もアグエロです。

 ユアスタに帰還するベガルタ戦士。こう書くとかなりエモーショナルな移籍なのだけれど、彼には変な気概など持たず、思いっきりサッカーをしてほしい。文脈は、外野が勝手に考えていることだ。ピッチは、ゴール前は、あなたのものなのだから。

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 吉尾 海夏  (←横浜F)

 ポステコポジショナル軍団の若頭。ペップもポジショナルプレー筆頭です。シティグループです。それ以上に、1:37のデュエル。完全にアグエロです。なので、彼もアグエロです。

 板倉もそうですけれど、レンタルの選手って色んな思いを持って入ってきてくれている印象。所属元のサポーターも、まるで親御さんのように熱く応援しています。ぜひ、ベガルタでも暴れ回ってほしいです。

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 長沢 駿   (←神戸)

 リージョ神戸で(以下中略)。アグエロと同じ1988年生まれの30歳。なので、彼もアグエロです。

 足元の技術もあって、細かい動き出しでヘディングを決めるセンターフォワード。そうセンターフォワードタイプの選手だ。だからといって、先入観や固定観念にとらわれず、彼の良さが一番出る形でボールを渡してあげたいところだ。さもないとタイに行くことになる。

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 シマオ マテ (フリー)

 島尾。スペインでの経験がある。なので、彼もアグエロです。

 モザンビークというアフリカの国出身。プレーしている映像があまり見つからないのだけれど、遠いアジアの国、東北の地でサッカーをするという彼の挑戦は、大きな尊敬を集めるべきだし、きっと力を発揮してくれるだろうと思います。そのためのサポートを僕らは声に込めたいですよね。

 

 田中 渉   (新卒)

 ようこそベガルタへ。ドリブルがすごい。なので、彼もアグエロです。

 正直、あまり見ていないです(笑)でも、縁あってベガルタに来てくれたのです。全力応援ですよ。いざ、ネクスト西村へ。いや、西村の名前をかき消すぐらい、田中渉旋風を巻き起こしましょう。

 

 照山 颯人  (新卒)

  ようこそ、ベガルタへ。もうネタが尽きてきましたが、ここまでみんなアグエロなので、彼もアグエロです。

 CB陣に殴り込め!遠慮はいらないと思います。たくさん挑戦して、たくさん失敗して、たくさん怒られて、たくさん笑いましょう。

 

■考察

 以上のように、論理的整合性は取れているものと考えられます。あとは、シーズンが始まって実証的有効性を確認していこうと思います。開幕が待ち遠しいです。

 

■おわりに

 ここまで読んでいただいた方々に、まずは、感謝を申し上げます。なぜ、そこまでアグエロなのか。それは、2012年、QPR戦で決勝ゴールを決めた時から、僕がアグエロという選手が一選手として好きなだけです。

 戦術戦術言っておりますが、こういうエモーショナルなゴールが大好きなんです。スタンドなんかすごいことになって、試合終了後大変な騒ぎだったんですから。やっぱり、おなじマンチェスターの赤い悪魔に長い間苦杯をなめさせられ続け、シティのファンを名乗るのが大変な時代だったのかなと。そんな悪い夢から覚まさせてくれたのがアグエロのゴールでした。あれこそ、ストライカーなのだと、テレビの前で鳥肌立ちまくりでした。

  日々、アグエロベガルタに来ないか、選手動向をチェックしてながら、ベガルタを愛でながら暮らしています。こういう楽しみ方でもいいじゃない。サッカーを楽しむのに、きまりも、ルールも、レベルも無いんですから。誰もが楽しむ方法を持っていると、僕は思っています。

 サッカーは、続いていく。では、また、どこかの試合で会いましょう。

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プレミアリーグ 第21節 マンチェスターCvsリバプール(2-1)「終盤は駒の損得より速度」

■はじめに

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。ということで、書初めです。「唐突に上がる海外ゲーム分析シリーズ」の第3弾。

 今回は、世界が注目したシティvsリバプール。巷でポジショナルは、死んだとか何だとか言われているなか連敗しているシティ。ストーミングとやらの急先鋒と目されているリバプール。あまりそういった思想軸で見るつもりはなく、ビッグゲームだから面白そうなので見てみます。

 どちらのチームも追いかけているわけではないので、置かれている状況、ゲームの進め方の細かい部分とかとかとか、分かっていないところだらけです。いつも通り、ひとつの試合として見ていきましょう。では、レッツゴー。

 

■オリジナルフォーメーション

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 シティもリバプールもオリジナルは、4-3-3を採用。ただ、リバプールは、ハーフスペース前にウィングを立たせて中央の圧縮密度を上げる流行りの最新型で来るでしょう。「君の陣地でボールは持たせてあげるけど、中盤では息をさせないぜ」といったところか。

 一方のシティは、サネ、スターリングの両ワイドプレイヤーを置く一般的な4-3-3と予想。まあ、シティの場合は、ポジションレス、ボーダーレスが進んでいるので、ウィングロールと呼んだ方が正確に捉えられそう。DFの構成も変わっている気がするのだけれど、これも狙いごとで役割も変化するため試合で確認していこう。

 

■概念・理論、分析フレームワーク

  • ポジショナルプレー概念における「5レーン理論」を援用して分析。
  • ピッチ横のエリアは、「5レーン&4レイヤー理論」を用いて分析。
  • 分析フレームワークは、Baldiの「チーム分析のフレームワーク」(2018)を採用。
  • なお、本ブログにおいては、攻撃側・守備側の呼称を採用せず、ボール保持時・非保持時での呼び方を採用。

 (文章の伝わりやすさの側面から、便宜的に、攻撃・守備を使用する場合は除く)

 

■前半

「すべてをつつみこむ4-3-3」と「全てを拒絶する4-3-3」

 戦型予想通り、リバプールは、3トップがハーフスペース入口を封鎖、3センターがセントラルレーン・ハーフスペースの中央3レーンを埋める形。3センターは、運動量もあって上下左右のスライド、プレスともに強力。また、サラーとマネのスピードは、ボール保持・非保持にかかわらず優位となっていた。

 それでは、シティはどうだろう。こちらは、オーソドックスというか、守っていないところを攻める定跡通り、SBが偽SBロールを採用せず、ウィングレーンでオリジナルポジションを守って、3トップ・3センター脇を狙い撃つ意図が感じられた。

 本来ハーフスペースのカウンター予防として配置される偽SBなのだけれど、今回は採用しなかった。相手の3トップに対する4バックという位置づけか。ビルドアップは、2-3-5のような形に。

*概念図

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戦いは数だよ」を持ち込んだクロップ

 ソロモン攻防戦においては、ビグザムの量産が間に合わなかったのだけれど、クロップは、シティの位置的優位性を活かしたビルドアップ妨害に対して、トランジション時の数的優位性で対抗。一時的に位置的優位を放棄して、局地的・瞬間的な数、トランジション勝負できた。

 17分、ボールサイドの2レーンに集めて、前プレを回避。選手個人のゴリ押しもあって、最後マネのシュートがビックリゴールになりかける最大の決定機を迎える。この攻撃、結果論なのだけれど、リバプールから見て右ハーフスペース入口から出口まで1レーンで攻撃を完結させていた。

  

小さなズレを見つけたアグエロ

 どうするシティ。ペップ。シルバ、シウバは奮闘しているが圧迫気味だし、両ウィングもモヤモヤした様子。流石にハーフスペース・第3レイヤーに飛び込むほどの勇気は、シティの選手ですら少しなかった気がする。それぐらいリバプールの圧縮は、強度が高く強力だったように思える。

 この状況を打開したのは、1トップのアグエロ。21分に、3センター脇、シティから見て左ウィングレーン・第2レイヤーでボールを引き出す。いわゆるフェイク9だ。それまでも、中央だったり、右サイドで似たような引き出し方を試していたが上手くいかず。ようやく、小さなズレを見つけたといった形だ。

 たしかにブロックの外ではあるが、突如現れた客人にサラー、3センター、アーノルド、ロブレンに「誰が見るんだ問題」が発生する。「迷っている間に行けるぜ!」といった具合で、ファイナルサードに侵入を図るサネ。32分には、アグエロ・シルバ・サネのトライアングルから、サネがロブレンの背中をとり、ローポスト侵入に成功している。

*概念図

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 そして、39分。最初のレイヤーのコンパニから、第3レイヤーのサネへレイヤースキップパスが通る。プレス強度の高い3トップ+3センターを飛ばして、一気に、アーノルドの鼻先までボールを運んだ。さらに、ラポルテからサネへの第2レイヤーから最後のレイヤーへのレイヤースキップを送り込む。連続スキップパスで一気に攻撃が加速した。そこから、3度左からのクロスを上げたシティ。最後は、小さなズレを生み出したアグエロのゴラッソ(=大きなズレ)だった。

 事の始まりは、サラーが入口を封鎖するか、SBをケアするか迷った結果生まれたスキップパスだった。ここで、ペップの策が結果として成就する形に。偽SBロールだとハーフスペースの解放は有りえなかった。サラーに対して、ウィングレーンに位置することで、アンカーかSBどちらを見るか迷わせた結果となった。

 *概念図

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 シティが1点を先制して前半を終える。アグエロのゴラッソもあったのだけれど、リバプールもプレー強度が高く、マネのシュートが入っていればといった展開だった。

 

■後半

同点にするリバプールと4-4-1-1への変身

 後半開始から、シティがボールを持つ展開にはなっていたが、お互いオープンな状態で両ゴール前に迫る展開が増えてきた。

 シティは、2CB+アンカー+B・シウバのボックスビルドアップで3トップに対抗。段々と、スターリングも3センター脇にポジションを取るシーンも見られるようになった。

 だからこそ、63分のリバプールの同点は大きかった。アーノルドがドリブルの進行方向を変え、ブロックの外から走り込んだロバートソンに合わせ、折り返しをフィルミーノが押し込んだ。同点後あたりから、リバプールは、4-4-1-1に変え最初のレイヤーを明け渡し、第2レイヤーに人を置くやり方をとった。先制されながらも戦い方を継続し、着実に勝利をたぐり寄せる策のような気がする。気がするだけ。

 

ボトルを握るユルゲンと客席を指さすペップ

 だからこそ、70分のサネの勝ち越しゴールはリバプールにとってダメージが大きい1点だった。シティからすると、配置し続けたウィングレーンからのパスからだった。スターリングが第3・最後のレイヤーの継ぎ目と呼ぶべき場所にポジショニングしており、擬似レイヤースキップパスになったことでプレーが加速した。

 第3レイヤーをカットインしてドリブルしたスターリング。局面だけ切り抜けば、カウンターのようなシーンで、アグエロのクロスランでサネがフリーになった形は、CL6節のホッフェンハイム戦でも似たような形があった。

*概念図

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 第2・第3レイヤー、ハーフスペースを使ってボールを前進させることが特徴のシティ 。この試合では、ハーフスペースを封鎖され、第2・第3レイヤーの監視が厳しかった。その監視を①ウィングレーン活用、②レイヤースキップで解消するという、バルサ時代のペップには考えられなかった対抗型を見せてくれた。もちろん、バイエルンや昨年のシティからすると、その変化も特別なことでは無いのかもしれないのだけれど、リトリートして試合をクローズさせるなど、とにかく勝ちたかったのかなと。試合後、客席を指さしたのが印象的だった。

 さて、優勝街道を走り続けていたなか敗戦したクロップ。ゴールセレブレーションがいつものガッツポーズ&ジャンプではなく、ポケットに入れていたウォーターボトルをしっかりと握りしめるという形で喜びを表現していた。本当のところは分からないのだけれど、やはり、同点にした、追いついた負けないぞといった形で、追われる側に無意識のうちになっているのかなと。これからどうなっていくのか。個人的には、めちゃくちゃに跳びまわって喜びを爆発させるクロップが好きです。

  

■おわりに

 久しぶりにプレミアリーグの試合をちゃんと見た気がします。流し見だったり、ハイライトばっかりだったので、優勝を左右する試合を観れて面白かったです。2人の監督が勝ちたい、負けたくないが試合の現象として出てた気がして、読み解きがいのある試合でした。深く見ていけばいくほど何かが見つかるかもしれないので、ぜひ、オススメしたい試合です。

 

■参考文献

www.footballista.jp

www.footballista.jp

birdseyefc.com

spielverlagerung.com

footballhack.jp

www.footballista.jp

sendaisiro.hatenablog.com

東邦出版 ONLINE STORE:書籍情報/ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう

 「footballhack 美しいサッカーのセオリー ビルバオ×ビエルサのコレクティブフットボール2」footballhack(2012)

http://silkyskills4beautifulfootball.blogspot.com/2012/08/blog-post_22.html

 

 

「5レーン&4レイヤー理論」

はじめに

 どうも僕です。今回は、サッカーの戦術のお話。というより、理論化の話になります。理論とは、英語でTheoryといって、学問的には、因数分解のイメージです。A+B=Cみたいな。もっと複雑な式ですけれど。

 じゃあ難しいのか。そうではないです。もっと言えば、理論とは、この式を使えば誰でも、簡単に、すぐに答えを導ける、間違いを発見できる優れものなのです。

 そんな流れの中において、僕は、先人たちが築き上げてきた基礎から、今回は、「5レーン&4レイヤー理論」をここに提唱したいと思います。 

5レーン&4レイヤー理論とは

 5レーンとは、ピッチを縦5分割して、セントラルレーン、ハーフスペース、ウィングレーンを静的に規定します。一方で、4レイヤーとは、①相手FWの正面、②FWとMFの間、③MFとDFの間、④DF背中で縦横スライドに合わせて動的に規定します。

  この2つの考え方を合わせて、ボールを運ぶ、ひとが動くエリアを明確にして、最終的には「左ハーフスペース・第3レイヤーにポジションを取る」と言ったピッチで起きる現象・事実をきちんと理解することができると考えます。 

 

 

 

4レイヤーの考え方

 4レイヤーのポイントは、以下です。

  • 縦横スライドに応じて、動的に規定される。
  • 5レーンとセット
  • 最初のレイヤー、第2レイヤー、第3レイヤー、最後のレイヤーと呼称
  • 4レイヤーが前提で、4ラインのディフェンスについては、3ライン間の「レイヤー埋め」と規定する。また、レイヤー幅を縮めることを「レイヤー圧縮」、レイヤー幅を広げることを「レイヤー拡張」と呼称する。

 4レイヤーの基本と応用

 (1)レイヤーの基本

 レイヤーの基本、というより、最終目的地は当然、最後のレイヤーでクリーンにボールを持つことです。ただし、最初のレイヤーから最後のレイヤーへの直接攻撃は、特別な場合を除いて難しいと考えます。

 基本的には、最初-第2レイヤー、第2-第3レイヤー間をボールが動くことで、相手のレーン埋めからハーフスペースを解放させ、レイヤーを上がっていくことが重要だと思います。そして、最後の局面で、最後のレイヤーを使って攻撃するのが理想型と言えます。これは、ボール保持側が最も得する、成功した例と言えます。

 ボール非保持側は、この逆になります。最後のレイヤーへのレイヤースキップパスを警戒しつつ、最初のレイヤー、第2・第3レイヤーの圧縮や埋めで対応することになります。そこは、チームや状況によって変わるかなと思っています。また、同時にレーンもきちんと意識する必要があって、レイヤーを圧縮しても、ウィングレーンが空くことになります。そこはやはり、レーンとレイヤーをセットで考える必要があるのかなと考えます。

(2)レイヤーの応用

 ここからは、応用編。応用技とも言えます。

①レイヤースキップパス

 レーンスキップパスがひとつレーンを飛ばすパスであるのと同様に、レイヤーもひとつ飛ばすことで、相手の①プレス、②スライドを間に合わせさせなくします。

 

②擬似カウンター

 名前が良いかどうか分かりませんが、わりと皆さん使われているので。最初のレイヤーから第3レイヤーへのレイヤースキップパスは、第2・第3レイヤーにポジショニングしている選手を飛び越していきます。もちろんそれは、レイヤーを規定している相手にも言えることで、直接第3レイヤーにボールが運ばれることで、まるでカウンターのような現象・状態になります。そうなると、残すは、最後のレイヤーのみになります。

*擬似カウンターについては、設計しているのかどうかもあると思いますが、僕は、ひとつの現象に対して、「擬似カウンター」と便宜的に呼んでいるに過ぎないと考えています。より正確に認識するのであれば、「最初のレイヤーから、第3レイヤーへのレイヤースキップパス」と理解するべきだと考えています。

*概念図

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③オンオフポジショニング

 オフサイドポジションから、オンサイドポジションに移動するオフボールの動きをオンオフポジショニングと呼んでいます。レイヤーで落とし込むと最後のレイヤーから第3レイヤーへの移動です。これによって、ファイナルライン(DFライン)が一時的に下げさせられるので、第3レイヤーが拡張しますので、擬似カウンターが決まりやすくなります。もちろん、ほかのレイヤーでも応用可能だと思います。

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④レイヤー埋め、レイヤー圧縮

 ポイントでも書きました。どちらも、現象的、構造的には採用されているやり方です。これを5レーン&4レイヤー理論に落とし込むと、このように呼べるというだけです。

 ボール非保持側は、第2・第3レイヤー圧縮(=最初・最後のレイヤーのレイヤー拡張)を図ることで、ボール保持側の前進を阻みます。また、初めから、アンカーを置くなど、「レイヤー埋め」することで、前進を妨害することも可能です。一方のボール保持側は、5レーン理論を応用することで、空いているウィングレーンやハーフスペースを利用して、前に進んでいくこともできます。

 

 このように、5レーン、あるいは4レイヤーだけでは実現できない、攻撃や守備があると思います。ポイントで述べたように、2つはセットで考える必要があって、だからこその「5レーン&4レイヤー理論」なのです。 

おわりに

 ことの発端は、仙台界隈、戦術部のりゅうさんからの「ベガルタの擬似カウンターがなぜ少なかったのか?」のお題に答えるべく、継盤研究していました。

 ここのところのベガルタはポジショナルプレーではないのでは?の問いかけもあって、ポジショナルプレー概念のもとプレーしていることを前提に、大ファンのfootballhackさんのスペーシング理論からこの理論を採用して、今回の理論を応用して仮説立て、理論構築を図ろうと思いました。

 予想以上に、現場で実際に指導されている方々からもポジティブな反響があって、そこがとてもうれしいと同時に、好き放題言っているのにも関わらず感謝の気持ちしかないです。

 今回ブログにひとまとめにすることで、より色んなやり方、見方でサッカーと向き合える一助になって、プレイヤー、指導者、観戦者の可能性が広がることを願っています。 

感謝の意味を込めて

①偉大な先人たちの知恵の集合体です。

footballhack.jp

 

②ともにサッカーを学ぶ仲間たちです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【プレビュー】18/12/23 Football Insight 「元J1トップチーム分析コーチ、試合分析セミナー」に行ってみる。

■はじめに

 どうも僕です。Jリーグも終わり、すっかり移籍だなんだで盛り上がる時期になりました。毎週、試合を見て、色んな感情に襲われながら、冷静に試合を振り返る。言葉にする。暮らしに追われながら。なかなか、大変だったのですけど、それはまたどこかで振り返ります。

 今回は、12月23日に開催される「元J1トップチーム分析コーチ、試合分析セミナー」に向けて、言葉に起こしておこうかなと思います。年末の整理整頓みたいなものですね。では、レッツゴー。

 

■Football Insightとは

 以下参照。説明不要です。

note.mu

 これまた説明不要の皆さんご存じサッカーアナライザーさんが発起人で、これまた説明不要のらいかーるとさんのブログとの出会いと自身の体験から生み出された、「サッカーってどう見るの?」「こんな発見があるんだよ」を世に広める素晴らしいサッカーアドバイザリーサービス、それがFootball Insightです。

 

■「元J1トップチーム分析コーチ、試合分析セミナー」とは

 以下、参照。説明不要(二回目)。

note.mu

 どのようにして試合を分析するのか、読み解くのかを実際の試合を通して見ていくなど、試合を見る目を養うセミナーになるようです。ちなみに参加者は、僕みたいな一般ピーポーから、サッカーの現場で一線級で活躍されている指導者さんなど、一味も二味も違うモノノフ達が集うようです。僕はここに居ても大丈夫なのでしょうか。

 講師は、清水智士さん。ベガルタでも分析担当コーチとして、ルヴァン杯ベスト4躍進に貢献。現在は、大同高校サッカー部で若者育成にご尽力されています。

twitter.com

 

■どうして参加するの?

 気づいたらボタンを押していました。なので、脊髄に聞いてください。とはいかないので、脊髄に訴えかけたもっともらしい理由を挙げてみます。

 ①サッカーを学び続けたい

 ②ベガルタに大きく関わった方の講演だから

①サッカーを学び続けたい

 ①は、別にセミナーでなくても良くない?とはありますが、僕は、学びにおいて、場の理論を採用しています。つまり、一度として、同じ学びは無いということです。23日以外にも、日程を変えて、同じ試合分析セミナーがあったとしても、参加者が同じだとしても、教材が同じだとしても、やはり、それはその日の学びがあるという考え方です。

 僕は、野球はディベートだと思うし、サッカーはディスカッションな気がしています。いずれにせよ対話です。対話を通して、ひとつの試合を形作る作業を勝ち負けのフィルターを通過させて、僕たちは試合を見ています。

 僕は、そこにあるチームが表現する意思、喜びとか決断だったりを読み解きたいと思って、いつも試合を見ています。でもそれには、サッカーの試合を見る基礎知識が必要だし、見るためのフレーム、スケールが必要だと思います。別にサッカーだけの知識や理論、考え方、ものの見方だけではないです。全人格的な作業だと思っています。

 そういう意味で、今回のセミナーで、自分の持っているものスケールアップして、持っていないものをビルトインしたいと思います。あとは、これだけサッカーに精通している方々が集まっているのですから、そこにいるだけでも貴重な学びなのかなと思っています。

ベガルタに大きく関わった方の講演だから

 さて②。これは、もっと具体的というか、身近な理由な気がします。今のベガルタというチームの戦い方に大きく関わった方、影響を与えていた方がどう考えていて、今何をやられているのか知ることを通して、ベガルタをより深く見れるのではないのかなと。

 チームとはいえ、ひとの集まりです。それぞれ、個人の考え、意欲、行動は、決して無視することはできないと思います。誰がプレーしているのかも重要ですが、誰から教わって、誰の系譜なのか、何を教わっているのかも同じように重要だと思います。清水さんは、分析担当コーチとして、相手やチーム分析を通して、練習メニュー構築や次の試合への対策などに大きく関わっておられました。そんな方の試合の見方を知ることで、今シーズンのベガルタ、今後のベガルタをより読み解いていけるのかなと思っています。

 

■おわりに

 はい。お気持ち表明は終わり。あとは、その場を思いっきり楽しもうかなと。自分のサッカーへの思いや知識がどこまで通じるのか、通じないのか、どちらにせよ自分の現在地を知ることができる良い機会なのかなと思っています。何か新しい発見があって、今の自分を変えられる!自分の人生が劇的に変わるんだ!までは、ごめんなさい、思っていないです(笑)でも、色んなルーツの方々と丁寧にサッカーを読み解けるのかとは思っています。それでは、当日。